01.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-1480587994

ロンドンは、荘厳で美しい巨大都市であるが、高級化と均質化が進み、街は取り返しのつかないほど大きく変容している。私たちは、自ら街の魅力を損なう行いに加担しながらも、それを棚にあげて「ロンドンは昔とは変わってしまった」と嘆いている。こうして、ロンドンの街から薄汚い壁や石畳の道が消え、朽ちることのない輝かしいガラスと金属のビルが急増している。

そんななか、Lurkersと呼ばれるアーティスト集団が、街の変貌を35ミリフィルムのカメラに収めた。彼らは「ロンドンにある、あまり面白くなくてマイナーな場所への愛着を、分かち合うのを誇りにしている」とメンバーの1人、フレッド・ラーク ( Fred Lurke)は語る。そして、彼らが時間をかけて、ロンドンのなかでも、閑散としてグラフィティで埋め尽くされたアングラな場所を撮り続けた結果、図らずも、首都がたどった美的変化の記録になった。彼らはそれらを全てまとめ、『隠れたロンドン (Lurking in London) 』として新たな写真集をリリースした。

「私たちは長年、何も考えずに、急速に変化を遂げるロンドンの街を記録してきました。この本は、その取り組みの集大成です。自分たちが集めたものを見て、多くの建築物や目抜通りが、数年前の趣を失ってしまっているのに気づきました」

世界には、この種の本がたくさんあるのに、どうしてグラフィティの本をつくったのか、と尋ねる間もなく、ラークは続けた。「これはグラフィティの本ではありません。グラフィティもその一部ですが、常に別の要素があります。面白い建物、被写体、ファッションなど。私たちの目的は、ロンドンの風変わりな場所に、新しい生命を吹き込みたいんです」

彼らの写真は、一般的にいう〈美しい街〉とは異なる街の様相を映しだす。屋上、廃墟、地下などが、店頭、団地、郊外などと混在している。そのどれもが、あの懐かしい汚れの層で覆われているように見える。不動産広告のロンドンではなく、これこそ、私が知っているロンドンだ。

02.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480586769

03.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480588907

04.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480586779

本に収められている写真のなかで、彼らのお気に入りはどれか、と問うと、「私たちは、ユーストン (Euston) 地域の屋上のシリーズが、特に気に入っています。高いところから眺めた街の情景が撮影されているからです」とルークは答えたが、「どの写真も気に入っているので、それ以上は優劣はつけられません」と付け加えた。

それが、彼らの本当の気持ちだろう。首都ロンドンでは、警察がグラフィティの取り締まりを強化しており、〈私有財産を汚す〉と最大で10年の禁固刑に処される。このようなプロジェクトをまとめるために、法に抵触もしただろう。

「私たちが最初に手がけたプロジェクトでは、屋上でヘリコプターに追いかけられる始末でした。このプロジェクトの多くは、法律に照らし合わせるとグレーゾーンにあります。だから、多くの場合、誰も気に留めない場所、決して見つからない場所に通って描いています。厳密にいうと違法ですが、盗みをしているわけではありません」

05.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480586802

この時期にこの本を発売する理由、Lurkersが何を話題にしようとしているのかを尋ねると、「異常な速さで街の高級化が進んでいます。人々はサウス・トッテナム (South Tottenham) を、今では〈Soto〉と呼んでいるぐらいです。私たちは、従来の機能を果たさなくなった、たくさんの建築物を紹介し、前代の人々が残した遺産として残したかったんです。それ以上の意味はないとしても、少なくとも、ロンドンが昔どんな様子であったか、往年の住人が思い出す糧にはなるでしょう」

高級化には、もちろん負の効果もあるが、それによって、面白みには欠けるとはいえ、とても美しく変化した場所もある。昔日のロンドンを懐かしむのは容易い。若い頃を振り返ると、街は、今までよりもっと興奮を与えてくれたが、大抵、午後11時を過ぎると1人ではどこも歩けなかった。ノスタルジックな思いに浸るだけの価値が、本当に、昔のロンドンにあるのだろうか?

「昔の写真を見て、楽しい思い出に浸るのは、非常に簡単です。人々は、現在の状況をポジティブに捉える方が、ずっと難しいと感じています。ロンドンが変貌を遂げているのは悲しいですが、私たちは、この街に大きな信頼を寄せており、この街には、高級化に逆らい、エッジを取り戻し、良い方向に進む力があると信じています。私たちの本は、その過程の一部であるような気がします」

06.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480587856

07.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480587870

08.lurkers-london-graffiti-gentrification-interview-body-image-1480587949

現在、グラフィティ文化は、かつてないほど人気がある、といっても過言ではない。この街だけでなく、世界中のストリート・アートを紹介するインスタグラムのアカウント、フェイスブック、ウェブサイトなどが無数にあり、バンクシー (Banksy)、ベン・アイン (Ben Eine) 、スペース・インベーダー (Space Invader) といったアーティストは、今や、カルチャーのアイコンになっている。ここで疑問なのは、この飽和状態のマーケットのどこに、Lurkersが入り込む余地があるかだ。

「インターネットやソーシャルメディアを通じて、カルチャーは使い捨てられる時代にになりました。つまり、何かを体験するために、家を出る必要がなくなったんです。ほとんどのコンテンツはオンラインで、私たちひとりひとりがそのような状況に加担しているのです。そこに、私たちが本をつくった意味があります。本はフィジカルで、カルチャーを感じさせてくれる物体です」

ロンドンは確かに人々の情熱を駆り立てる。Lurkersや彼らのアプローチも、もちろん、そうだろう。最後に、ルークに、この本を通じて成し遂げたい野望は何か、と尋ねると、答えは簡単だった。「人々がロンドンを正当に評価してくれるといいと思う」