若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_01

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_02

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

世の中の見方を写真という媒体を通じて表現する。街中や出会う人、そして頭の中にあるもの。人の共感を呼ぶものもあれば、人から煙たがれるものもある。それが何かの役に立つのかと問われれば、ビジネスの世界ではおそらくただの無駄とされるものだろう。ただの無駄で終わるか否か、あるいはその先に何かをもたらすかは、それぞれの作品と自分自身との関係次第。
今回紹介する作品は抽象的で美しい彫刻か何かを被写体にしたようにも思えるが、実態は、、、。「若き写真家が見る歪んだ世界」、第4回目は山本渉の作品とインタビューを紹介したい。

作品を創る際のコンセプトを教えてください。

ひと言でいうと自然がテーマです。常に自然について関心を持っていたんですが、最近は同世代の人たちも同じ関心を持っている人が増えてきたし、それも当然かと思うので、ちょっと言うのをためらうこともありますが。

ただ、ひと言に自然といっても抽象的な単語なので、かなり幅広いテーマだと思うのですが、具体的には自然のどういうことに興味があり作品創りをしているのですか?

父がハンターみたいな人で山の生活に慣れていたので、小さい頃から山に連れて行ってもらってました。小規模に川をせき止めて魚をとったり、罠を仕掛けて獣を捕獲したりしてました。そんな風に自然がすぐそばにある環境で育ったこともあり、私にとっては自然という言葉の意味がすごく曖昧なんです。だからこそ自然と人間の関係というか、すごく抽象的ですが、その間に興味があり写真で表現したいと思っています。

自然が好きということから、なぜそれを表現するのに写真という媒体を選ぶようになるのですか?

写真を始めたときにまず写真というかプリントができる過程が植物に似てると思ったんです。そもそも植物って光や水がないと枯れてしまいますが、暗室プリントの場合も写真は光と水がなければできない。葉の葉緑体が光をあびて光合成して根などから水分や養分を吸い込んでその固体が時間をかけて成長するという過程が、プリント作業で引き伸ばし機にネガを入れて印画紙に拡大した光を浴びせて現像液に浸して写真を完成させるという過程に似ているなと。さらに現像作業で使う液体って一般に強いアルカリ性と酸性なんですが、アルカリ性の現像液にひたした後に酸性の液体につけて現像停止、そして水洗するという工程なんです。さらに現像液につける時間の長さや成分によって仕上がりが全然違うということを知ったときに、紫陽花のことを思い出しました。紫陽花の花の色って、省略していえば土の成分がアルカリ性か酸性かで変わるんです。アルカリ性が強ければ赤になって、同じ株でも土の成分を酸性に変えるだけで青に変わる。そういうのを以前から面白いなって思っていた身としては、写真に出会ったときに、それが有機的なものに思えたんです。この話はフィルムカメラでないと当てはまらないことなんですがね。

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_03

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_04

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_06

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

では、そろそろ今回の作品について教えてほしんですが、一見すごくミニマムな彫刻を撮影しているように見えます。さらに自然とはとても思えない作品です。山本さんを知っている人はもちろん驚かないと思いますが、知らない人はこの写真を観て、被写体の実態を聞いたら、きっとなお興味深く感じると思います(笑)。

そうですかね(笑)。これはオナホールに石膏を流し込んで固めたものを撮影している作品です。

これがオナホールっていうのにも驚きますが、これのどこが自然なのか教えて下さい。

この作品を作るきっかけで自然というのが大きく関わっています。僕は北関東の田舎出身で、先ほど述べたように小さいころから自然に興味があって森に遊びに行っていたんですけど、自転車とかで森の果というか奥の奥を探索していると森の反対側に出たときにエロ自動販売機があって。夜になると電気が煌煌とついていてカブトムシとかクワガタとかが集まるので、夏はそこを目指してよく行ってました。そのうちに好奇心からエロ自動販売機に売っているオナホールを買ってみたんです。するとその穴の形が自動販売機の下に生えてるキノコとかムカデとかに良く似ている形状だったんです。

それでオナホールは自然だと?

はい(笑)。オナホールは私にとって都会のキノコなんです。

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_07

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_08

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_09

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

では、オナホールをこのような写真表現で作品にしようと思ったきっかけは?

まず、秋葉原でオナホールがワンフロアに1000個くらい売っている雑居ビルを発見しました。それで幼い頃の記憶が蘇り、色々と見ていくと当時見たものより形状もコンセプトも多種多様になっている。言ってみれば物凄い進化をしているんです。私がこの作品で「自然」と考えるのは個別の形状ではなくて、オナホールだけでここまで種類が増えたという欲望の生態です。この特殊なオナホールの生態系をぜひとも研究しなくちゃって秋葉原でアルバイトを始めました。そこからこの作品ができるまでは結構時間がかかっていて、透明なオナホールを選んで透かして撮ったり、半分に裂いて内部の形を魚拓をとるようにしてみたり、色々実験しましたが最終的には穴に石膏を入れて固めて凸型の立体物を撮るという、オナホールからペニスを抽出したような作品を作るようになりました。はじめは自分の記憶に基づいてキノコとか貝とか自然環境の生物っぽいものだけを選んで撮ろうと思ってたんですが、なにせ、オナホールが自分の想像を完全に凌駕していたのでなるべくたくさんのオナホールを撮りたいと思うようになりました。

若き写真家が見る歪んだ世界vol.4ー山本渉ー_10

© Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

確かにこの上の写真なんかはキノコには見えないですよね?

はい。透明の素材でできているものですが、某人気アニメのキャラクターですよね。体が穴の形になっているっていう。透明のオナホールにLCLローションなるオレンジの液体を入れると、オレンジ色のキャラクターが浮かび上がる。そして実際に挿入するとそのキャラクターが歪んでなにがなんだかわからなくなって、完全にそのキャラを所有する感覚、脳内でその女の人とセックスしている感覚を呼び起こすというものがあったりして。

かなりグロテスクな話ですが、作品はかなり美しい物体に感じますよ。そのギャップが面白いですね。

ガウディが作ったドアノブに似ているなんて言われた形のものもあります(笑)。ただ被写体が被写体だけに、海外にもTENGAはありますが、こういった日本の秋葉原のディープなオナホールって少ないから説明が難しかったり、日本で作品を展示する際も場所によっては卑猥だという理由で難しかったりします。私は写真自体から卑猥さというのは伝わってこないと思うのですが、なかなか発表するのが難しい部分もあります。そういう問題はありますが、まだまだ作品にできていないオナホールがたくさんあるので、当面はこれを撮り続けていきたいと思います。

山本渉
1986年生まれ。栃木県出身。最近の展示に「欲望の形 -器の濃き影-(NADiff Gallery)」や「Unseen Photo Fair 2014 “Anima on Photo-Hidden sense of Japanese Photography”」など。「欲望の形-器の濃き影(Yumiko Chiba Associates)」と「線を引くDrawing a Line(MCV MCV)」という写真集をリリースしている。
直近では2015年7月3日から5日まで行われる「アート大阪2015 企画展示 ”写真の力”」に参加する。
http://artosaka.jp/jp/sp_exhibition.php
http://wataruyamamoto.jp