真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (1)

フォトグラファー ハル。布団圧縮袋に裸の男女が入った摩訶不思議な作品を撮るフォトグラファーをご存知だろうか?外国人が日本に観光に来た際、まるで観光名所を訪れるかのように、ハルに連絡し、俺たちも撮ってくれと撮影の依頼をするなど、口コミで密かに噂になっているという。
作品を見れば、なんともグロテスクでありながらも、なぜかポップ。話を聞けば聞くほど、ハル自身の辛辣な悩みが作品に表れており、その奇妙なテイストにも深く頷ける。フォトグラファー ハルを動かす衝動に迫るインタビュー。

まず、この作品のコンセプトについて教えて下さい。

コンセプトとしては、「そんなに好きなんだったら、もっと、もっとくっついちゃえ」です。好きな人同士、カップルをできうる限り引っつけたいって欲求が芽生えまして。

いつから、そういう欲求が芽生えたんですか?

僕自身、ひとつのシリーズの写真を撮影していく中で、次のシリーズのアイディアが浮かび、写真集として具現化していく過程を踏んでいるので、最初に撮り始めたものから説明すると、もともと夜クラブに遊びに来ているカップルに惹かれたのが始まりです。もちろん、普通は写真を撮らせてくれって声をかけると緊張したり畏まったりするんですが、たまにカメラの前でキスしたり、いちゃついたりする人がいて、これは面白い、カップル撮影の肝だなって思って。それを突き詰めていくと、どれだけ2人が距離を縮めて写真に写るかで、2人の愛の深さや、関係性の深さみたいなものを表現できるんじゃないかと思ったんです。具体的には、このときに、まず「もっとくっついちゃえ」っていうコンセプトが出来上がりました。それで続編『PINKY & KILLER DX』という作品を作るんですが、あとはドンドン、エスカレートしていきます。

真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (2)

写真集『PINKY & KILLER』

真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (3)

真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (4)

写真集『PINKY & KILLER DX』

これがパリのセレクトショップ、コレットの目にとまり、世界で注目を集めるきっかけになった作品ですね?

そうですね。とにかくカップル2人が抱き合って距離を縮めて撮影する。それを200組くらい撮ったんです。そしたら、たまたま評価されて。でも、まだまだエスカレートします。この作品を撮影していくうちに、本人たちの意思に関わらずくっつかざるを得ないものを見つけまして。それがバスタブで、中に2人を押し込んじゃえば、強制的にくっつかざるを得なくなるっていうのが肝だなって。ここら辺で、僕の中でも明確に2人を凝縮させたいって欲求がより具現化された感じです。それでできたのが『Couple jam』っていうバスタブシリーズの写真集です。

真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (5)

真空パックに込めるカメラマンの衝動「PHOTOGRAPHER HAL」 (6)

写真集『Couple jam』

このタイトルにはどういう想いが込められているのですか?

フルーツで作ったジャムと、ジャムセッションのジャムと2つの意味を掛け合わせて名付けています。イメージとしてはカップルを凝縮して煮込んでいくイメージで、フルーツジャムならぬカップルのジャムを作る。そしてモデルと僕との即興による化学反応が起こるというジャムセッション的な行為ということを掛けて名付けてます。あと、イメージソースとしては子供が木の上に登って逃て、それをトラが追いかけてきて木の周りをグルグル回っているうちに溶けちゃってバターになっちゃうっていう、幼少期に観た『ちびくろサンボ』から来ています。表紙を見てもらえれば分かりやすいのですが、黄身とトラのイメージの黄色と、とろけていく感じが象徴的だと思います。