2017年3月に発売した写真集『Buzzing at the Sill(バジング・アット・ザ・シル)』は、イラク戦争とアフガニスタン紛争を取材していた2009年から制作に着手した。長年にわたり、その地域に従軍写真家として米軍に配属され、戦争を記録した。米国に戻ると、母国について、数多の答えようのない疑問を抱くようになった。ワシントンDCの郊外で育ち、多角的な歴史教育を受けたつもりだったが、やはり、その教えはアメリカ例外主義に支配されていた。どういった経緯で、私たち米国人は、アメリカ例外主義に至ったのだろう? どういった視覚的イメージにこの歴史観が反映されているのだろう? どういった社会の力がこの主義を維持するのか、はたまた破壊できるのか? それは、どうすれば視覚化され、支配的になるのだろう?

前作『Disco Night Sept 11 (ディスコナイト 9.11)』では、運命の日に受けた攻撃から始まった米国の戦争を記録した。今回のプロジェクトは、ある意味、過去の作品の延長線上にあるが、より個人的な内容になっている。『Buzzing at the Sill』には、私の家族や友達の写真、無残に殺害された若いトランス・ジェンダー女性の母親であるリニース・ネルソンと、彼女の親戚のポートレートを掲載した。その他には、道端のアトラクション、拷問にかかわるモノ、美しい景色、メランコリックな人物も。私にとって、これらの多種多様なイメージはお互いに無関係ではない。テーマとしての人種、帝国主義、社会のヒエラルキー、それらの交わりに、私は興味がある。殊の外、自分の興味と強迫観念が交錯するケンタッキー・ダービーに、私は何度も通った。

私にはやるべきことがまだまだある。テロ、愛国主義、終わりなき戦争の付随的被害をテーマに米国を描く、別の本の作成に没頭しているところだ。

10年間以上この仕事に取り組んでいるが、今でも途に就いたばかりのような気分でいる。