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日中にアラスカ州のノームからカウンシルまでを結ぶ全長116キロの砂利道路を南へ向かう。街が終わってゆく。

2003年、当時19歳だったアメリカ人先住民女性が、ノームの廃金山で死亡しているのが発見された。その2年後、警察官マシュー・クレイ・オーウェンズが殺人罪で有罪判決を宣告された。彼の逮捕直後、とある雑誌の取材、撮影でノームに送り込まれたのだが、その記事が出版される前にとある雑誌は廃刊になってしまった。それ以来、私は、この場所に取り憑かれた。アメリカ国内のどこよりも、ノームには、辺境特有の粗さや露骨さがある。どこか撮影したい場所があるか、とVICEに尋ねられると、真っ先にノームが思い浮かんだ。

ノームに惹かれた理由のひとつは、アウトサイダーの街だからだ。100年以上前、3人のスカンジナビア人が小川で金を探り当てたことで、急速な発展を遂げた。何千人もの山師、セックスワーカー、おこぼれにあやかろうとするお調子者が続々と「北辺のシン・シティ」に流れ着いた。周縁で生活していた先住民たちも、この北の歓楽都市を目指した。そしてまた、この街では忽然と人が消える。ある者は失踪事件を、連続殺人、もしくはオーウェンズ巡査の仕業ではないか、と疑い、ある者は、UFOにさらわれたのではないか、と想像する。近年、研究者たちは失踪の原因を、過酷な気候とアルコール依存症の蔓延によるもの、と結論づけた。

ノームは、自然の法則と物事の秩序を、まず最初に失った。この不毛な街では、沈まない夕陽のせいか、真夜中だというのに幼い子供たちがブラブラと歩き回り、カップルたちは流氷を筏代わりに、逢瀬を楽しんでいる。ビーチ沿いの岩場には、チープなモナーク・カナディアンウィスキーに吞まれ、意識を失った瀕死の悲しき迷える魂と、投げ捨てられた空瓶が、いたるところに転がっている。ノームで人気のあるお酒は何?、という質問に、“モナーク・オン・ザ・ロック”というジョークがあるほどだ。

フォトグラファーとして、余所の文化を撮ることに違和感を覚える。北京、コロンビアの首都ボゴタ、といった余所で撮影すると、自らが侵略者か詐欺師になったかのような気分になる。そんな外国と同じようなエキゾチックさをノームには感じるのだが、余所者が余所者のために造った、どうしようもないくらいアメリカ的な場所であるのもわかっている。だからといって、ノームの居心地がいいワケではないが、どこかしら、このままいなくなってもいいかな、と唆される場所だ。

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浮かんでいる家 ノームカウンシルロードにて。初めてノームを訪れた際にも同じ写真を撮った。冬の間冷凍保存状態になるおかげで、その時と変わることなく浮かんでいた。

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82歳の象牙彫刻家、ジェイムス・オミアック。

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スロープと名乗る金鉱労働者、彼の裏庭にて。

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ブラッド氏の金。

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町で遊び回る子供たち。

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エイデンとロニー。ノームレクリエイションセンターにて。

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ザ コーラー ファミリー エクスペリエンスというバンドのテイトとデーブ。ナザレーンの教会にて。

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エミリー・リーデル。「海の金」というリアリティーショーの主役。

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ジョリーン・オレソン。The Arctic Native Brotherhood Clubの大人のプロムにて。

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ノームの墓地。

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街のダウンタウンにあるビーチで氷山から造ったいかだの上で抱き合う2人の若者。

VICE MAGAZINE「THE PHOTO ISSUE 2015」記事より