小林勇貴監督

この秋、商業デビュー作『全員死刑』の公開が控えている小林勇貴監督。だが、もう1作、忘れてはならない映画が存在する。『Super Tandem』、『NIGHT SAFARI』、『孤高の遠吠』──。良識を蹴破る問題作を世に放ち続けた小林勇貴と不良たちの新たな犯行。インディペンデント最新作『逆徒』、8・26劇場急襲!
 

※本インタビューでは映画の具体的なシーンに触れています。「ネタバレだ!」などと文句を言わないでください。

いいから、さっさと公開しろ! 強制参加型反抗映画『孤高の遠吠』を待ちながら vol.1 小林勇貴監督インタビュー
 
映画と不良。強制参加型反抗映画『孤高の遠吠』を待ちながら vol.2 ユキヤ(赤池由稀也)インタビュー

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前回のインタビューでは『孤高の遠吠』を中心に、映画のつくり方を聞きました。出演者の赤池由稀也君や、由稀也君に紹介してもらった地元の不良の子たちを取材して、彼らが実際に体験した事件などの具体的なエピソードを集めて再構成し、シナリオを書いたと小林監督は言ってましたね。『逆徒』のストーリーも同じようにしてつくったんですか?

いえ、これまでのやり方とは真逆です。まずストーリーの大筋を考えます。そして登場人物の行動を不良の子たちに説明して、どうリアクションするかを聞きながらシーンをつくっていきました。「だったら俺はこうする──」とか答えてくれますから。主演の牧野(慶樹)君、それから中西(秀斗)君、梅本(佳暉)君、由稀也君たちに聞いていきました。

たとえば、どんなリアクションがありましたか?

「君たちがぶっ殺したはずの奴が這いあがってきたらどうする?」と聞いたんです。それで襲ってきたらどうするか──。すると中西君が、「どうするんスかねぇ……いちど殺しちゃってるからなぁ」と答えたんですよ。ハッとしました。加害者は自分たちがしたことが枷(かせ)になるんだ! と気づいて方向性がハッキリしました。ふつうのエンターティンメントなら死んだはずの奴が戻ってきたら派手な戦闘シーンが始まりますけど、そういうことじゃない。

牧野慶樹(ヨシキ役)

いま言った「ぶっ殺したはずの奴が這いあがってきたら」というのは冒頭でリンチされたヨシキ(牧野慶樹)のことですね。

そうです。一方、やられて死にかけた人間は何かが解放されて、やった奴らをオモチャみたいに感じてる。

リンチのシーンが終わって、タイトルバックで夜の公衆便所で服を燃やす映像が流れ、のどかな昼間のバーベキューのシーンへと続くのが嫌な感じでした。

便所のシーンは、川崎の中1男子リンチ殺人事件に触発されて撮ったんです。加害者の少年たちは殺した子の衣服を証拠隠滅のため公衆便所で燃やしました。それでチャラ、なかったことにしようとした。これは怖いですよ。ずっと前から俺はリンチが大嫌いなんです。悪者をつくって安心しようとする図式は不良の世界だけじゃなくて職場や学校、ネットでもあるじゃないですか。リンチに対する嫌悪感が映画を撮る動機のひとつです。2014年の『NIGHT SAFARI』は先輩に命じられたリンチを拒否するというオチがつきますけど。

その前後に撮った『Super Tandem』と『孤高の遠吠』にもリンチのシーンがあります。

『孤高の遠吠』が完成して、まだ上映が決まってなかったころに1日だけFC2動画で公開しました。それが川崎の事件が報道された日なんです。ニュースを見てムカついて、すぐに公開しました。事件がダブって平気で観れない、とTwitterに感想を書いてる人がいて、意図は伝わったと思いました。伝わってよかったとは言い難いですけど……。『ライチ☆光クラブ』を撮った内藤瑛亮監督は神戸連続児童殺傷事件が忘れられなくて、自分の映画に酒鬼薔薇聖斗を反映させていると何かで読みました。今回、俺にとって川崎の事件がそうなりました。『逆徒』はチャラの話です。どんな酷いことをしてもなかったことにして責任逃れ。その象徴として炎を燃やしました。

そこにバーベキューを繫げたのはどうしてですか?

2014年にカナザワ映画祭で『NIGHT SAFARI』を上映してもらったとき、雑談のなかで主催の人が言ったんです。「少年のリンチ事件の報道を見ていると、よく事件後にバーベキューをやってるけど、あれってなんだろう。暴力をチャラにしたかったのかな」と。それがずっと頭に引っかかっていて。

今回は牧野君演じる無軌道な一匹狼ヨシキが、富士宮と富士の不良グループに災いをもたらします。ヨシキはいわゆる“厄ネタ”的存在ですが、キャラクターづくりで参考にした作品はありますか?

やろうとしたのは実録ヤクザ映画の不良版です。厄ネタモノでは、『現代やくざ 人斬り与太』、『実録 私設銀座警察』、『仁義の墓場』、『新・仁義の墓場』なんかをあらためて観ました。1973年の『仁義なき戦い』のヒットから77年の『北陸代理戦争』まで実録路線のヤクザ映画が全盛期で、いろんな監督がこぞって暴力を撮りまくるなかで、登場人物の不死性に触れはじめました。あのままヒットが続いてジャンルが過熱していくと心霊みたいなものに到達し、バイオレンスとホラーが同居する瞬間があったんじゃないか、と思うんです。でも、『北陸代理戦争』を最後に実録路線が終わってしまった。

松方弘樹演じる主人公のモデルとなった組長が、映画と同じ状況で殺された事件がきっかけで、実録ヤクザ映画がつくれなくなって。

『北陸代理戦争』の松方弘樹には若干の不死性があったと思うんですけど……。『逆徒』では、実録ヤクザ映画を受け継ぎつつ、厄ネタに不死性や心霊的な要素をぶつけて羽化させたかった。主演してもらうにあたって牧野君には、さっき挙げた映画をひと通り観てもらいました。あとはヤクザ映画ではないけど、不死性のヒントで『太陽を盗んだ男』も。牧野君は律儀な男で、徹夜してすべて観てくれたんです。そして一緒にヨシキのキャラをつくっていきました。自分にとっても、いままでない刺激的な体験でした。