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『スーパーマリオメーカー』image: Nintendo

2015年9月に発売された『スーパーマリオメーカー』。マリオ・フリーク垂涎のゲームなはずなのに知らない年配ファンが多いようです。そこで、『スーパーマリオメーカー』の魅力について、一線で活躍するゲームクリエイターたちのマリオ愛とともに紹介します。発売前のコメントを集めたテキストのため、完全に公開タイミングはズレていますので、ゲーム未経験の皆様だけどうぞ。

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ゲームクリエイターのマシュー・クマー(Mathew Kumar)は、『スーパーマリオメーカー』を見て既視感を覚えた。『スーパーマリオメーカー』は、マリオのステージをプレーヤーがカスタムできるソフトだ。

クマーの最新作『Knight & Damsel』は非協力的マルチプレイヤーゲームだが、姫と騎士、どちらがより早く相手を救えるかを競うゲームで、マリオの冒険を明らかな主題としながら、そこにひと工夫加えている。しかし、任天堂のゲームプロデューサー、宮本茂によるマリオシリーズからの影響は、クマーの「ひと工夫」より大きい。「デザインの面で、他のどのゲームよりもマリオから多くを学びました」とクマー。

クマーが2012年に発売された『Sound Shapes』の開発中に、『スーパーマリオブラザーズ』の日本語版攻略本を目にした。クマーはキノコ王国に感銘を受け、それをキッカケに『スーパーマリオブラザーズ』のさまざまな場面を切り取って再構築した。その創作過程はまさに、シリーズのアイコン的障害物を使ってプレイヤー自身がステージを創作できる任天堂の『スーパーマリオメーカー』と同じだ。

クマーによると、スーパー・マリオには、世界観を記憶に「叩き込まれる瞬間」があり、数あるマリオ・ゲームの最初の1分がみんなの内に刻み込まれている理由は、ゲームに調教されるからだそうだ。それぞれのステージで繰返される要素も多いが、マリオには「いつも驚きがある」とクマーは語る。

1985年に発売された『スーパーマリオブラザーズ』は革命的で、最速の横スクロール型ゲームだった。それまでになかった動きはもちろん、世界で一番有名な2人のヒゲ面が決定的だった。とはいえ、多彩なステージ展開がなければ、マリオというゲームは後世に何も残さなかったはずだ。コインブロック、パックンフラワーの土管、向かい合うと恥じらって固まるオバケ。ゲームが進むと、ジャンプは高く、敵との対決は緊張感を増し、仕掛けはどんどん難しくなっていく。

当初、私は『スーパーマリオメーカー』に疑問を持っていた。そのコンセプトは、『リトルビッグプラネット』や『マインクラフト』などの大ヒット作の焼き直し、もしくは、カスタムして難関ステージをつくるアイディアを任天堂が再利用したとしか思えなかった。しかし任天堂ワールド・チャンピオンシップ2015の決勝戦の映像を見て考えが変わった。マリオの世界が「ゲーム体験」としていかに完璧なのか、わかりはじめてきたからだ。多くのプレイヤーになじみ深いゲームの諸要素が道具に変わり、伸び、歪み、変形して全く新しいステージになる。出来上がったステージは、挑戦に値し、プレイヤーを刺激し、ムカつかせる、もしくはそれ以上だ。

『スーパーマリオブラザーズ』の世界観が後続に与える続ける影響、『スーパーマリオメーカー』の魅力について、クマーをはじめ、現代のゲームクリエイターたちのマリオ愛を探った。

「マリオには時代を超えた魅力の秘訣はエレガントなデザインの繊細さではないでしょうか」と分析するのは、宇宙を舞台にしたプラットフォーム・ゲーム『Gravity Ghost』の開発者、エリン・ロビンソン(Erin Robinson)だ。「ゲームのどんな要素にも複数の特徴があります。動かせて、踏み台にできて、集められて、障害物、危険物にもなる。しかも、その特性はマリオやルイージだけでなく、他のキャラクターや物体にも影響を及ぼします。POWブロックまで動かせるんですから、どれだけステージが面白くなるか想像して下さい。それが、世界観に連続性と立体性をもたらすんです。現代のゲームが何とかそれを実現しようともがいている世界観です」

ロビンソンによると『スーパーマリオメーカー』はプレイヤーに最大限の可能性を与えてくれるそうだ。「プレーヤーの想像力を引き出すんです。たとえば、大砲から危なくないモノが大量に発射されたらどうだろう。さらに、発射されたものを集められたら? いくらでもデザインする余地がありますから、従来のマリオもこれにはかないません。みんながどんなステージをつくるのか楽しみです」

プレイヤーがゲームを「壊す」のを意図したPCゲーム『Fjords』の開発者、カイル・ライマガーティン(Kyle Reimergartin)は『スーパーマリオブラザーズ』のテンポ感は「本当にすばらしい」と讃える。「最初に地上の易しいステージを跳ね回り、モンスターを火の玉で退治し、地下に潜り、コインを集め、木に登り、城に攻め入る。クッパまでの道のりは最高によく出来ていて、スリル満点です。本当にさまざまな驚きがあります」

しかし彼は、「私にとってのマリオを台無しにするほどの、とんでもない仕掛けです」とワープゾーンを否定する。

「きっと『マリオメーカー』をやり倒すでしょう」とカイル。「娘が楽しめるように、走ったりジャンプしたりする『スーパーマリオ64』的なゲームにもできます。死ぬのが嫌で、ただ走ったり跳んだりしたいだけのこともあります。クリボーに近づいていく娘のプレイを見るのは本当に恐ろしい。クリボーから10センチ離れて、近づいてくるのを待つ娘のプレイを見るのも、数秒とはいえヒヤヒヤします。娘にとってゲームは、もっと楽しくて、怖味がないほうがいいんです。土管をめちゃくちゃに置いたり、背景がキラキラするレベルをつくりたいです」

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好きなようにマリオを虐めよう! image: Nintendo

ユーザーの創造性に委ね、マリオへのオマージュも込めている「PlayStation 4」向けソフト『N++』の制作者、Metanetのメア・シェパード(Mare Sheppard)とレイガン・バーンズ(Raigan Burns)も『マリオメーカー』を予約した。

「遊ぶのが楽しみです」とシェパードは期待していた。「『N++』のプレイヤーたちを見て、彼らがアイテムや敵を創造性豊かに扱うのは知っています。『N++』で気に入っているのは、DDA(Don’t Do Anything、何もしない)ステージです。プレイヤーは、ゲーム内の物理法則に従うしかなく、仕掛けを利用して飛び跳ね、アイテムにぶつかって押されながら、ひたすら障害物やミサイルを躱さなければなりません。ヒヤヒヤするシーンや間一髪で死を免れるシーンが続発します。だから見ていて面白いんです。そういった瞬間を『マリオメーカー』で見るのが楽しみです」。参考までに、2人の好きなステージは『スーパーマリオワールド』のオバケ屋敷だ。

しかし、クマーは『スーパーマリオメーカー』について少し懐疑的だ。噂では、任天堂のように上手くステージをつくれないだろうし、ユーザーが利用できるツールキットでは、すでにあるゲームで描かれている、ステージ・デザインの微妙な勘どころまではわからないだろう。『スウィート・ロード』(The Wizard, 1989)での劇的な紹介以来、伝説になって今に至る『スーパーマリオブラザーズ3』は、クマーにとって、2Dゲームの最高峰だ。

エリン・ロビンソンは、「Awsome Games Done Quick」のスピードランを見て以来、ゲームに備わったパフォーマンス的側面に関心を抱いている。ゲームのハックでなく、爆速クリア、目隠しプレイ、といったコンセプトを気に入ったようだ。その一方で、カイル・ライマーガーティンは、簡単な川のステージを娘とともに構築するのを心待ちにしている。