シアワセになれないと思ってない?ローラのトランスジェンダー相談室 Pt.2:タトゥーの先にあるもの (1)

ようこそ、ローラの相談室へ……連載第二回目です。前回はトランスジェンダーの親、そしてパートナーの性転換についての相談でしたが、今回は二つの異なった相談・質問に対し、ひとつにまとめてローラは答えてくれました。

ローラ・ジェイン・グレイス:フロリダ出身の人気パンク・バンド、AGAINST ME!のフロント・ウーマン。2012年にトランスジェンダーを告白し、その後は女性として日々を送っている。AGAINST ME!での活動はもちろん、彼女を追ったドキュメント・シリーズ「True Trans」も公開された。

「あなたの人生にとってタトゥーが持つ意味を教えてもらえないでしょうか。あなたは腕を黒くすることにしましたよね。前からそのことを考えていたのですか?」

「うつ病がひどくなってきたので、大学をしばらくの間休むことにしました。自殺願望もあり、それに伴った衰弱などもあります。この最も辛い時期をどうやって耐えればいいか、アドバイスをいただけませんでしょうか?」

その瞬間のことはよく覚えています。リビングルームのカウチに座って、コンピューターを膝の上に乗せていました。自殺願望の精神的な衰弱からは立ち直りつつありましたが、極度にボロボロで、内臓感染のために気分も悪かったのです。私の結婚は終わり、また煙草を吸い始めました。心理セラピストにもかかっていましたが、彼女はいつも私の頭の中に現れ、その瞬間が私は大嫌いでした。

彼女は抗うつ剤剤を私に勧めました。でもそれは強い薬で、気分が良くなっても服用を止めることが出来ないものでした。私は断りました。すると彼女は代わりにスポーツジムに通うことを勧めました。ドーパミンのレベルを高めるために、毎日疲れるまでワークアウトしなさい、ということでした。

なのでそれを試してみました。筋肉が増えましたが、あまり私は好きではありませんでした。

シカゴにも来たばかりだったので、友達もおらず、どの方向に進むべきかも分からず、とにかくカウチに座って体の中で血を流しているだけの苦しい状況でした。自殺の想念から気を紛らわせる必要があったので「シカゴ、タトゥー」と検索をしました。ローガンスクエアにバターファットというショップを見つけ、そこに私の好きなタトゥー・アーチストがゲストとして来ることを知りました。ガッキンとケンジ A-ラッキーという二人とも日本人です。

私はもう何年もタトゥーをしています。最初にしたのは14歳のときで、親友のジェームズが私のくるぶしに自家製のタトゥーを施してくれました。その後違うアーティスト達によるタトゥーを受け続けましたが、どちらかというとその場の勢いで作ったものが大半です。旅行に行ったときのタトゥー、なにかの記念のタトゥー、または後悔するタトゥー…例えばすぐに別れてしまう恋人の名前などですね。これらはそんなに大きなものではないので、特に事前にあまり考えて入れたわけではありません。

ガッキンとケンジ A-ラッキーは、あまりタトゥーに色を使わず、主に黒だけを使う手法です。私は二人にメールを送り、予約をお願いしました。まずケンジが最初に返事をくれたので、彼とのセッションを2日間予約しました。ケンジには私の両足にタトゥーを入れて欲しかったのです。曼荼羅を彫れば、どの方向に行けばよいのか分からないとき、私の両足の下に世界が広がり、どうすればよいかを教えてくれるのではないかと思ったからです。

ケンジと私には言葉の壁がありました。彼は英語をあまり喋ることが出来ず、私の日本語は無に近かったからです。私は両足の甲に小さな曼荼羅を考えていたのですが、彼が描いてきたデザインはそれぞれの足を完全にカバーするものでした。セッションはそれぞれ10時間かかりました。一方の足が終わったら、一日休みを取ってもう一方の足を。毎晩家に歩いて帰りましたが、それはとても苦痛で、特に踵を彫ったときは大変でした。でも、この時のドーパミンによるハイな気分は現実とは思えないほど最高でした。気分が良くなり、自殺願望が減り、もっとタトゥーを入れたくなりました。

将来タトゥーを除去するにしても電気分解療法はとても苦しいです。巨大な針を何週間も足に刺すのは痛いし、整形手術も痛い。もちろん性転換手術も痛いでしょう。でも私は痛みにコントロールされるのではなく、痛みをコントロールしたいと考えるようになりました。 タトゥーは痛いです。でも私はそれに耐えることにフォーカスしています。そして終わったら気分が良くなります。生活の嫌なこともそれほどには思えなくなります。自分で対照的な状況を作り出しているようなもので、肉体的な痛みを与えることで感情的なトラウマを消すことが可能になったです。 両足の痛みが取れた後、今度はガッキンとのセッションを予約しました。これは彼の住む京都でのセッションでした。京都へは2014年に2回訪れたことがあります。今回は首を彫ってもらいましたが、それぞれのセッションは10時間ほどでした。タトゥーによって出されるドーパミンと時差ボケの体へのショックが相まって、普通よりもハイな経験でした。それで、どんどん予約を入れたのです。私はもう中毒になっていて、ハイになるためならどんどん入れます。

This is going to hurt you a lot more than its going to hurt me! Ready @gakkinx Laura Jane Graceさん(@laurajanegrace)が投稿した動画 –


今は背中に入れています。ケンジとガッキンの二人で彫り始めたところです。4日間連続で25時間ぶっ通しでタトゥーをしました。二人同時にタトゥーを彫るときもあって、ものすごい量のドーパミンが出ました。本当にすごいドーパミンでした。人生最高の時間で、その時のハイな気分は今でも続いています。また一週間後に彼らとの次のセッションに行ってきます。

この耐えるメカニズムは、誰にでも勧められるものではありません。「うつなら顔にタトゥーをしたらいい気分になりますよ」。と言っているのではありません。

ここで私が言っているのは、生きるのをあきらめたときに私が選んだ方向は、ドーパミンを出すために体にショックを与えることだったということです。あなたも自分に合ったやり方を探してください。

私にとっては、この経験を記憶するための印にもなっています。体を見て、タトゥーの黒を見て思い出すのです。私はいつも形を変えていたいのです。いつも同じところに止まっていたくはありません。私は死にたくはありません。生きたいのです。

人生、恋愛、音楽などなど、ローラに聞いて欲しいことがありましたらこちらまでメールを送ってください。すべての質問に秘密を厳守します。もちろん匿名でも結構です。

 

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