カニエ・ウェストに学ぶ、18の人生哲学

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カニエ・ウェストに学ぶ、18の人生哲学

名実ともに世界一のラッパー、カニエ・ウェストの昨今のインタビューで生きること、家族について、音楽や才能についての発言をまとめた、18の項目。

カニエ・ウェストはほぼ間違いなく世界一のラッパーだろう。発言や行動は常に好機の的となり、ひとつひとつがメディアに取り上げられる。新曲をリリースする度に、彼は今この瞬間につくれる最高の曲を生み出したのだと気づかされるし、ライブを観ると毎回、これが人生最後のライブではないかと思わされる。時にはバカなヤツに見られようと気にしないし、むしろバカなヤツだと思われることで、自分自身をより深く理解してもらえるかもしれないと考えている。

彼をこれほどまでに興味深いポップ・スターに仕立てあげた大きな理由として、メディアとの関係性があげられる。アルバム「Graduation」をリリースしたあと、彼はインタビューに答えることを拒否し、ブログやツイッターにおいても、音楽に関する発言はされなくなった。(しかし私はそれでよかったのだと思っている。彼は間違いなく音楽の天才であり、天才は時には黙る必要があるのだから。)

昨年、アルバム「Yeezus」をリリースしヒップホップを再構築した彼だが、その少し前から沈黙を破り、ニューヨーク・タイムズなど複数メディアのインタビューに答えた。下記にまとめたインタビューでの発言から見えてくる彼の考え方や知恵を読んでほしい。きっと、あなたの人生にも役に立つことだろう。

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カニエ・ウェストの考え方:
1. 基本的な哲学

一番好きなのは、ドープな曲。「ドープネス」…つまり、出来る限りドープなモノをつくって、お金を稼ぎたい人たち。サンダルにソックスを履くような、いわゆるセレブのルールには従わない。常にヤバいヤツでいたい。

2. 才能について

俺はクリエイトすることに関しては天才だ。そうとしか言いようがない。

3. 人生のコツ

人生は山あり谷あり。自分の仕事をさっさとこなして、幸せになることが人生のコツさ。

4. カニエ・ウェストについて

とても変わったやつだけど、正直者。たまに社会に不適合な人間にもなる。俺はただ、自分の曲を聴いてくれる人たちを気持ちよくさせたいだけ。

5. 死について

時には完成した作品に失望することもある。でも、本当に作品が完成するのは、自分が棺桶に入ったときだからね。祖父はよく「人生とはライブだ」と言っていた。

6. 長生きすること

生きている時間が長くなるほど、信頼を築くことができる。

7. 偉大な作品について

「New Slaves」 (脚注①)の中の2番の詞は我ながら史上最高の出来。「星の王子 ニューヨークへ行く」(脚注②)とか「俺たちニュースキャスター」 (脚注③)みたいな感じでさ…ラップの詞というのは、ああいうモノであるべきだ。

8. メディアについて

メディアが誰かの作品について「崩壊」と表現するとき、俺は作品が良くなったんだと考える。彼は常にアーティストや彼らのクリエイティビティ、信念を破壊しようとしている。彼らをぶっ潰すためならなんでもやるね。

9. 正義を勝ち取るために

まず、正義について語ること=戦争について語ることではない。俺の中の正義とは、人々がしっかりとそれぞれの夢を追うことができるよう、サポートしてあげること。ひとつひとつの勝負、全てに勝てるわけじゃない。これは長い闘いだ。全てに勝とうとしていたら、戦争に勝つことはできない。

10. 自らの影響力について

影響力を自慢したいとは思わない。俺は神がもたらす「何かすごいもの」をつくりたいだけ。

11. 未来について

よく未来を題材にした映画で車が空を飛んでいたよな。ただ、今現在車は空を飛んではいない。その代わりに、映画を2秒で送信できるようになった。つまり、未来とはインターネットのことなんだ。

12. 未来を予見すること

「Slow Jamz」 (脚注④)という曲の中にある「light-skinned friend look like Michael Jackson」というフレーズを書いたときに、自分がスターになることを確信した。その時はヴァージン・レコード(脚注⑤)のエスカレーターで、「俺が無名でいられるのもこれが最後だな…」って気分に浸っていたんだ。だから今の自分は、あのとき思い描いた通りの自分。

13. 自尊心を持つこと

俺の曲を全曲聴くといい。君を鼓舞するコードで出来ているから。カニエ・ウェストのファンであるということは、俺のファンじゃなくて、実は君自身のファンだってこと。きっと自信を持てるようになる。俺の曲は、ずっと解決できずにいた問題や状況を打破するための起爆剤で、朝に飲むエスプレッソのようなものさ。

14. クールでいるために

俺がやることはいつもクールで、革新的だと思っている。今はよく分からないかもしれないが…とにかくクールなんだ。家族を持つということはスーパー・クールなことだよ。毎晩一人の女の元に帰ること、子どもと家のリビングで遊ぶこと、赤のレザー・ジャケットではなくパパっぽい格好をすること、母と呼べるような女性を持つということ…全て最高にクール。

15. カニエ・ウェストから一言

「Fuck you」。これが俺からのメッセージ。

16. 自分を信じること

色んな人に「お前にラップは出来ない」と言われてきたし、いかに俺がラップをすべきでないかを説かれた。まぁ俺も自分をラッパーだと言ったこともないし、ラッパーよりもメッセンジャーだと思ってきたんだけど。ただ、自分の持つアイデアの源は最大限活用したいし、それを使ってみんなと会話したいと思う。

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17. マルチクリエーターとして

俺は作品を完璧に仕上げる方法を知っている。「Dark Fantasy」(脚注⑥)なんて、それこそ完璧な曲だろう。ただ、俺は良い作品をつくるために生きているわけじゃない。音楽的、文化的、社会的な意味で未知の領域への道筋をつくるために生きている。もし、ラップもライブもやるなと言われたらどうすると思う?きっと持てる限りの自分のプラットフォームをつかって、「何かを作りたい。次のラルフローレンを作りたい」と言うべく立ち上がるだろうね。まだ俺は36歳、まだ別の目標だってあるし、常に自分は万能な気がしている。思うに、みんな自分の意識や考え方にしばられて、鈍感になっているんじゃないかな。お前は何も出来ないやつだと育てられたら、本当に何も出来ないやつになってしまうだろう。逆に俺は「お前なら何でもやれる」と言われてきた。常に次の10年を考えている。それがカニエ・ウェストだよ。

18. 情報について

このインタビューを読んだ人は口々に色んなことを言うだろうね。「俺はカニエが何を言いたいのかわかる」「アイツ嫌いなんだよね、いつも怒ってそうな顔してるし、アイツの歯もイヤ」「なぜカニエは音楽だけに集中しないんだ?彼の音楽が好きなのに」「昔のカニエは良かったよね…」などなど。
でもきっとそういう人たちは5年後や10年後にこのインタビューを引用して、カニエが言っていたことは正しかったんだ!彼がここで言っていることは今まさに起こっていることじゃないか、と騒ぎ立てるだろう。俺は社会が仕組んだこういうルールには従わない。くだらない情報操作、ブランディングやマーケティングはお断りだよ。
唯一の贅沢は、時間だと思う。家族や彼女、子ども、そしてアイデアと夢を守ることが重要なんだ。

Translated & Edited by Kentaro Okumura

(脚注①)New Slaves :2013年リリースのアルバム「Yeezus」の中に収録さている曲。

(脚注②)星の王子 ニューヨークへ行く:1988年公開のコメディー映画。主演エディ・マーフィー。監督ジョン・ランディス。原題は「Coming to America」。

(脚注③)俺たちニュースキャスター:2004年のアメリカのコメディ映画。アダム・マッケイ監督、ウィル・フェレル主演作品。原題は「Anchorman: The Legend of Ron Burgundy」。2013年にマッケイ監督、フェレル主演による、続編『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』が公開された。

(脚注④)Slow Jamz:トゥイスタがカニエ・ウェスト、ジェイミー・フォックスとフィーチャーしてリリースした2003年のシングル曲。カニエのデビュー・アルバムでのリードトラックにもなっている。

(脚注⑤)ヴァージン・レコード:イギリスのレコードレーベルで、米ユニヴァーサル ミュージック・グループの傘下。主な所属アーティストに坂本龍一、ジャネット・ジャクソン、スパイス・ガールズ、セックス・ピストルズ、ダフト・パンク、デヴィッド・ボウイ、フィル・コリンズ、ブラー、ブライアン・イーノ、マッシヴ・アタック、マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツ、ローリング・ストーンズなど。

(脚注⑥)Dark Fantasy:カニエの5thアルバム「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」に収録されている曲。