サンゴ礁が隆起して生まれた島、沖縄。砂浜も、崖も、陸地もサンゴから出来ており、木々も植物も、そしてもちろん人々もサンゴの上。そう、沖縄の時間は、すべてサンゴの上で進んでいるのです。そんな沖縄で、有限会社「海の種」の代表を務めているのが金城浩二氏。お仕事は、ズバリ「サンゴ屋さん」。とは言っても、物産展などで良く見るサンゴの工芸品屋さんではありません。沖縄県読谷村にて、サンゴの養殖と移植活動を行いつつ、展示施設「さんご畑」を運営し、サンゴ礁の再生と海に対する理解のために活動を続ける、自称「生態系オタク」の社長さんなのです。

まずサンゴについての学習から。サンゴって植物だと思っていませんでした?いえいえ、動物なんです。腔腸動物と言って、クラゲやイソギンチャクと同類なんだそう。そして、タンパク質で出来ている身体のまわりに、褐虫藻という藻類を纏っているのがサンゴ。要するにサンゴが、褐虫藻の宿主になっているわけです。そしてこの褐虫藻は植物なので、二酸化酸素を吸収し、光合成をすることによって酸素と栄養分を生み出していると。すなわち、サンゴが出した二酸化炭素は褐虫藻へ、褐虫藻が出した酸素と栄養はサンゴへ。両者はお互いに必要なものを供給しあって共存しているのです。サンゴの美しさは、この褐虫藻の色素が関係しており、生態系のバランスが保たれている海でないと生息することは出来ません。しかし近年、グレートバリアリーフ、そして沖縄本島を含む南西諸島など、世界の各地で見られた美しいサンゴ礁がどんどん少なくなっています。環境汚染、地球温暖化により、サンゴと褐虫藻のバランスが崩れ、海の砂漠化・サンゴの白化現象が進んでいるのです。それは陸地の森林破壊と全く同じこと。十分な光合成活動が行われないことによって、海の生態系はもちろん、私たち人間の生活にも大きな影響が出始めているのです。

生きているアート サンゴの神秘に迫る ①
生きているアート サンゴの神秘に迫る ②

そんな状況をなんとかしようと「サンゴ屋さん」を始めたのが金城氏。地球温暖化や環境破壊など、世間から次々と放たれる警告以上に、氏は本気で危機感を持っていたそうです。なぜなら子供の頃からサンゴと生活してきたから。その美しさにあたりまえのように触れていたから。ずっとずっと生で見てきたから。そして、「サンゴ礁が残る、サンゴ礁が蘇る理由となるものは、全部やってしまおう」と、1998年から活動をスタートさせたのです。

当初は、「変なヤツが変なことを始めた」とか「おかしな宗教じゃないの?」なんて、言われたこともあったそう。当時、サンゴに対しての理解を得ることは、かなり困難だったとのことですが、決して氏の心が揺らぐことはありませんでした。

「だって、この島の、沖縄の始まりはサンゴですから」

そして金城氏は、世界で初めて養殖サンゴの移植・産卵に成功。2007年には、人間力大賞・内閣総理大臣奨励賞・環境大臣奨励賞も受賞し、さらに自身がモデルになった映画『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』(主演:ナインティナイン岡村隆史)も公開。サンゴを取り巻く状況は、広く世間に知られたのです。

しかし、金城氏はまだまだ止まりません。その目線は海から、川、そして陸へ。すべての生態系の流れを視野に入れ、あらたな活動を始めています。そのひとつが「クリーンピック」。ボランティアを中心に行われてきた清掃活動をスポーツとして捉え、優勝を競い合いながら海や山をきれいにしようというゴミ拾いの大会。この大会が実にリアルなのは、優勝チームに賞金が出るというところ。

「環境問題に取り掛かると、ついつい正義の味方のようになってしまう。でも僕の場合、その先は苦しい気持ちしかなかったんです。だから出来るだけオモロイことに変えようと。常々、僕ら世代って、”ゴチャゴチャ言うだけで何もしなかった人”になるんだろうな、って感じていましたから。だから始めたんです」

未来はどうなるなんて誰も分かりません。もちろん金城氏も分かっていないことでしょう。しかし、彼は未来を知っています。どうすれば素敵な未来が創れるのかを。そしてその未来は、子供や孫たちのことだということを。神秘的なサンゴの産卵は、私たちと強く繋がっているのです。