偉大なる写真家〈ジル・フリードマン (Jill Freedman)〉 は、キャリアを通じて米国の社会から逸脱した人々の生活を記録してきた。ここで紹介するのは、1971年、彼女がクライド・ビーティ=コール・ブラザーズ・サーカス(the Clyde Beatty-Cole Brothers Circus)とともに、1971年に東海岸を旅しながら撮影した写真だ。このプロジェクトで生まれた写真は、1975年に出版された彼女の写真集『Circus Days』に最終的に収録された。一定時間で、すばやく現像でき、様々な用途に使われていた〈安定化処理〉という暗室でのプロセスを経て印刷されたこの写真は、彼女の全作品のなかでも際立っている。これから紹介する安定化処理で現像された写真の所在は、長きに渡り不明だった。フリードマンは、それらの写真を編集したのは覚えていたが、長い間目にする機会がなく、紛失、もしくは廃棄されたのではないか、と考えていた。しかし、私たちは、フリードマンとともに、彼女が紛失したと思い込んでいた写真を探しだした。

今回紹介する写真は、フリードマンが観たサーカス団の生活だ。

サーカス団は、決して実現しなかったすべての旅、酔いが覚めた朝に消えてしまった無謀な企みを思い出させるものだ。儚い幻想のように、今日ここに存在しても、明日には消えてしまう、私たちが謳歌することのない〈自由〉そのものだ。自らを証明する番号が記された請求書、子どもたち、クレジットカードがあふれる世界における、自由で名もなき存在なのだ。

サーカス団は、活気にあふれた幼年期のような時空間を提供し、ただ生きる喜びを祝福する。魔法のような時空間で、ミステリーや恐怖、幼年期に感じる喜びにあふれている。グロテスクで美しく、奇妙で驚異的だ。記憶するよりも、ただ感じるだけで、そこでは、空想が現実のようにリアルになる。非常識な出来事が、目では捉えられないほどの猛スピードで通り過ぎ、人々を興奮させる。未知の体験、冒険が、現実世界の向こう側で、あなたを待っている。あなたの町は、あなたが考えるよりもずっとエキサイティングだ。女性たちはもっと自由で、男性たちはもっと裕福で、毎日チョコレートを食べたって構わない。サーカス団では、年相応の振る舞いや良識ある行動以外なら、何でも許される。

子どもが愛するすべてのものを、にぎやかに讃えるのがサーカス団だ。くだらない冗談、不快な音、無礼な仕草、半狂乱の行動、目の回るような恐怖、ドラマや勇気、大胆不適で悲痛な美しさがそこにはある。それは、正気を失った道化師たちの邪なエネルギーとともに奏でられる。綱を渡り、ボールをジャグリングし、ネットの上で飛び跳ね、空中を転がる。まるで子どもたちのように、何の目的もなく、まさに全く意味のない行動による純粋な喜びを祝うのだ。絶対に大人にならないという、自ら誓った遠い日の約束を守るかのように。自分は〈ヤツら〉のひとりにはならない、と。だからこそ、サーカス団は不変なのだ。決して変わらない。

ジル・フリードマンの作品は、現代美術館(the Museum of Modern Art)、国際写真センター(the International Center of Photography,)、ジョージ・イーストマン・ハウス(George Eastman House)などで常設展示されている。77歳にしてインスタグラムを定期的に更新しており、ニューヨークのスティーヴン・カッシャー・ギャラリー(Steven Kasher Gallery)のアイコン的存在だ。将来的には、これまでに発表した7作に次ぐ、より多くの写真集を出版したいと望んでいるそうだ。そのなかには、シェリル・ダン (Cheryl Dunn) が2013年に手がけたストリートフォトグラファーについてのドキュメンタリー『Everybody Street』にフィーチャーされた「Firehouse and Street Cops」も含まれている。