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MADE IN GM JAPAN -硬派と進化の狭間で-_01

Photos by Taijun Hiramoto

ファッションの主流に身を任せる良さには、世の中のちょっと先の部分を感じ取り、常にその時代にあった自分をプレゼンし続けることができるという利点がある。しかし、一方で、自分のやりたいことを貫き、信念を持っているつもりでも、いつの間にか流行に流され、元の姿形、アイデンティティーまでもが崩壊しかけてしまうという欠点も含んでいる。
特に昨今は時代が急激にシフトする。例えば、90’sがブームと言われながら、その半年後には70’sだと、そしてまた半年経つと違うトレンドが打ち出される。まるで、進化し前へ進むことは美徳であるが、一方で1本筋が通った硬派という美徳は、もはや時代遅れの錆びれた言葉のように忘れ去られているかのようだ。しかし、目まぐるしく移り変わるからこそ、同時に硬派という美徳を思い起こすことが、見た目だけ装う「普通」ではなく、自分と向き合い自身のスタイルに回帰するというノームコアの本質を捉えることに繋がり、モダンでありながら男らしいスタイルを築くことに繋がるはずだ。

そんな折、自身の好きなものを、身の丈にあったペースで作り続ける孤高の精神性を宿すブランドがある。その名もMADE IN GM JAPAN。ブーツという実に男らしいアイテムを題材とし、職人気質なタフネスさを追求する反面、一見クレイジーとも思えるアヴァンギャルドなカラーリングを打ち出したりする。それは、まるで時代の移り変わりなどに脇目も触らず、ただ無心に自身のクリエイティブに打ち込み前進する、実に男らしく潔い姿勢が感じられる。
そこで今回、MADE IN GM JAPANの新作「orange」のリリースを機にデザイナーである村上久典にインタビューを敢行することにした。

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ENGINEER BOOTS 6th model「orange」

まず、素晴らしい発色のエンジニアブーツですが、どうしてこのカラーを作ろうと思ったのですか?

着想はヴィンテージのスニーカーから得ています。中学生の頃、コンバースのチャックテイラーやワンスター、アディダスのキャンパスなどのヴィンテージを買い漁っていた時期があって。そのイメージから来ていますね。

具体的にはヴィンテージスニーカーのどういう部分に着想を得ているのですか?

当時のスニーカーって派手なマスタードやパープル、レッドなど、特にスウェード素材のものですがキレイな発色を放つアイテムが普通にあって、なおかつデニムやチノパンとの相性も良かったです。実際に僕自身も毎日履いているのはレッドのオールスターをカスタムしたものだったりします。それならば、エンジニアブーツのイエローや、オレンジという発色の良いカラーもコーディネートにハマるはずだと思ったんです。確かに一見アバンギャルドに見えるかもしれませんが、履いてみたら意外と馴染む。そこが狙いだし、実際に足を通し鏡を見た瞬間に、お客さんの反応が一変するのも面白いところですね。また、こないだ、うちのブーツを履いて海外に行ったお客さんから言われたんですけど、見知らぬ外国人にいきなり呼び止められ、なんだ?そのクレイジーなブーツは!!今すぐ売ってくれ、いくらでも出すぞって懇願されて困ったという話を聞きました。確かにクレイジーに思えるかもしれないですよね。こんな色のエンジニアブーツは他ではなかなか見かけないですからね。

まあ売ってくれって言われても困りますよね?履いてる靴がなくなっちゃうわけですからね。そもそもブーツ作りにおいて、アイディアさえあれば、この発色を簡単に出すことができるのですか?

多分靴のことだったり、革のことを熟知していれば可能だと思います。例えば、このオレンジの革はイタリアのブッテーロという、いわゆるメゾンブランドなどが主にバッグに使う張りのある硬い革ですが、これを靴に使用する、なおかつ発色を維持するっていうのは普通はやらない技術だし、手間なんです。ブーツに使う革はバッグなどのものより、使用環境のため耐久性に優れている必要があります。だからこそ、一般的にはより油分を含ませて柔らかくして耐久性を出すんです。しかし、油分を含ませるということは同時に、革が濁ってしまいこの発色は出せないというジレンマがあります。そのため、油分を含ませるのとは別の方法で、柔らかくし靴として十二分な耐久性をもたせています。だから革の構造というか、在り方みたいなことを理解していないと技術的に作ることができないんだと思います。

ヴィンテージスニーカーから得たストリートらしい感性と、靴職人としての技術力と探究心が伴って可能になるということですね。また、フォルムも特徴的で主張がかなり強い部分ですよね。

そうですね。靴のフォルムを決定づけるのは何より木型がすべてなので、ここに最もこだわりを持っています。オリジナルの木型を一から削り出し、それをもとに製作しています。特にトゥーの部分が特徴的だと思うのですが、コッペパンのようにボテっとしたフォルムを意識しています。

先ほどカラーはヴィンテージスニーカーから着想を得たということでしたが、フォルムはどこから着想を得ているのですか?ヴィンテージスニーカーというと、一般的には現在のスニーカーより細身ですよね。なぜボリューム感のあるフォルムを選んでいるのですか?

フォルムに関しては、完全に自分のイメージというか、これは好き嫌いになってしまうと思うんですが、もちろんアメリカ製のワークブーツをいくつも履いてきて、ゴツすぎて野暮ったかったり、一方で華奢すぎて頼りなかったり、自分の好みのフォルムがなかったんです。だからこそ、ゴツすぎず華奢すぎない自分の理想像みたいなフォルムを追い求めた結果たどり着いたものです。だから、僕の頭の中のイメージとしか言いようがなくて、口で説明するのが難しいので形にしているというか、、、。

なるほど。そもそも、ファッションの中で、どうしてここまで靴作りに没頭するようになったのですか?

基本的には昔から平面的なものより立体物の方が好きなんです。例えばアンディーウォーホールの作品でも、もちろんマリリン・モンローを描いたシルクスクリーンのポップアート作品にも惹かれるのですが、ブリロだったり立体物になったものが好きです。これらが大量に陳列され、ひとつの造形物として成しているその様はより好きなんです。さらに言えば、70年代のプリマスのクォーターパネルのプレスラインとか、バイクで言えばトライアンフのクランクケースとか、立体物の中でも丸みを帯びた美しい曲線を描くものに特別惹かれるんです。女性だったら完全にお尻とか(笑)。だからファッションの中でも立体物である靴に惹かれたんだと思います。もともとアパレルの生産をやっていたんですが、どうしても靴が作りたくて、一から勉強したらやっぱり楽しくて。最近ではブーツを縫えるミシンや、革を裁断する機械を購入したり、アッパーに関しては自分のアトリエですべて縫えるような環境を整えていたりと、ますますエスカレートしてますね。

多くのカジュアルブランドが自分が履くための延長線上に服や靴を作っていると思うのですが、やはり、自分が履きたい靴を作るという感覚ですか?

これは全くないですね。どちらかと言うと、ある特定の身近な人を想像して、その人ならどんな靴を履いていたらカッコイイかってことを想像しないと作れないです。自分が服や靴を着て体現することに、あまり興味がないんです。またビジュアル的にカッコよくないって自覚しているし、カッコよくなりたいとも思っていないかもしれません。だから世の中に出すときに、少なくとも最低限、そのイメージした人だけは良いねって言ってくれる、この人だけは似合うだろうっていうのが、制作する時の原動力になっています。しかし、基本的なブーツの構造というか、芯の部分は絶対に変えません。フォルムは最初に作ったピンクとモスグリーンのものから一貫して同じ木型を使ってますし、ソールもビブラム社の705番を使用していたり、微調整する部分はありますが、大枠は絶対にブラしません。そこは自分のエゴというか、自分が作っているアイデンティティーなのだと思います。

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ENGINEER BOOTS 1st model

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ENGINEER BOOTS 2nd & 4th model

では時代感はどれくらい意識しているんですか?昨今アディダスのスタンスミス、ニューバランスなど、メンズのシューズはスニーカーが主流だと思うのですが、、、

トレンドは全く意識してませんね。ただ日々生活していれば、いろいろな情報が自然に入ってくる中で、多少なりとも流されている部分をしっかり自覚できるように振舞っています。僕自身のアトリエも地元である仙台に構えているのは、そこが大きな理由です。おそらく東京でアトリエを構えたら様々な人に会い刺激を受けることで、別のクリエーションが広がり、スピード感も上がるかもしれません。しかし、それ以上に、自分の道を進むことの方が、僕にとっては重要なことで、大切にしたいこと、楽しいことなのです。ただ、もともとスニーカー好きが高じて、靴作りにのめり込んだ部分もありますから、作りたいスニーカーの構想をもとに着手しています。

話は変わりますが、最近どんな音楽を聴いていますか?

竹原ピストルがお気に入りですね。特に「俺のアディダス」って曲を良く聴いています。

やっぱり靴の歌なんですね。話があまり変わらなかったですね(笑)。

そうですね(笑)。タイトルだけを聴いたら靴の曲だと思うかもしれないですが、実際には全然違うんですけどね。まあでも、年中靴のことばっか考えてますから。そのおかげなのかどうかはわからないですが、とにかく、作ってみたいってアイディアが浮かんだら、すぐに行動します。そして自分の手を動かして、未熟で、とても目も当てられない物が最初はできるのですが、とりあえず形にします。それで分かることがいっぱいあるし、今のGMがあるんだと思います。やりたい、こうしたいって構想がある人は多いと思うんですけど、それを最後まで形にしない人、いろいろな理由で何も行動しない人が多いと思います。このブーツもそうですが、発色の良いオレンジってアイディアが浮かんでも、靴用の革がないとか、売れなそうとか、時間がかかりそうだとか、すごくコストがかかりそうだとか、いろんな理由でストップしてしまうと思うんです。でも、僕はとりあえずダメでいいから作ってみる。そうすると、じゃそれを現実的に製品にするには、どうすれば良いのかって次の方法論が見えてくるんです。それで、いろんな人に相談して、協力してもらって、みんなに履いてもらえる状態に仕上げます。効率が悪いですし、リリースするタイミングも今回のようになる前になってしまうことも多く、暑くてすぐに履けない、今いらないっていうような、トレンドどころか季節感までも無視したようなサイクルになってしまい、よく反省させられます。それにも関わらず多くの人が、僕の作り方や仕上がりに納得してくれて購入してくださっているので、本当に有り難いし嬉しいことだと思っています。

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