Photos : Maruyama Gonzalez

女性誌を中心におしゃれな台湾がフォーカスされている。Instagramには雰囲気が良さそうな景色や台湾グルメなどが無数にアップされているが、それだけが台湾の魅力とは限らない。筆者がお勧めしたいのは、Instagramに投稿されない「裏台湾」である。

とはいえ、さすがに台湾に興味を抱いた人がすんなり入り込めるほど台湾の裏社会のハードルは低くない。

『台湾黑社會』の舞台になっているのは、台北市の萬華地区だ。萬華は中国語であり、台湾語では艋舺(モンガ)という。ここを起点に台湾の発展は始まった。

色と欲を軸に、かつては色街とヤクザが跋扈する場所して知られていたが、日本の歌舞伎町で展開されたような浄化作戦が展開された。特に、2001年に公娼制度が廃止されてからは、売春が違法となり、おとなしい街になった。現在では、華やかさの欠片もないやや寂れた下町というイメージである。もし往時の雰囲気を知りたければ、台湾映画『モンガに散る』を観てみるといいだろう。80年代の萬華で繰り広げられた黒社会の抗争劇に、不良少年たちの青春物語を絡めて描いた作品だ。

旅行者として萬華を訪ねるならば、地下鉄の龍山寺駅が最寄りである。駅前に広がる建物群には茶房やKTVの看板が並んでおり、かつては色街として栄えた痕跡のようなものを感じられる。

「台湾に風俗ってあるの?」

裏台湾について話していると、何度も訪問していても風俗店は知らない人が多い。台湾のなかでも台北市は風俗に厳しい街として知られているが、キャバクラやデリヘルはある。このあたりの事情は、海外風俗に明るい友人たちから

「あるけど、高過ぎ!」と評価を受けている。

デリヘルもシステムとしては日本と大差ない。〈本番アリ〉が前提だ。ただし、違法な商売という意識が強いため、申込みは電話ではなくLINEやメールでの複数回の連絡が必要で、値段も2万元(約7万2千円)と相当な金額になる。キャバクラについてはお店で飲むまでは同じなのだが、その後、女性を連れ出してセックスができる。その値段は、飲み代を含めて1万元(約3万6千円)と高額だ(ちなみにこれはショートタイムで約2時間。ロングタイムで朝まで希望だとさらに2千元追加となる)。庶民的な風俗、とは言い難いものの、システムとして確立されており、大きなトラブルはないのが特徴である。

お金に余裕があればそれでもいいだろうが、せっかくならば、萬華のようなかつて栄えた色街の風情を味わってみてはどうだろうか。しかも、寂れたとはいえ、現在も置屋として営業している店もある。ただし、その評価は決して高いものではない。

「養老院ですよ。初期高齢者しかいません。あんなところお勧めしません」

風俗好きな友人からは、かなり厳しい評価をくだされている。友人のいう〈初期高齢者=60歳以上〉というのはさすがに大げさなようで、中国から来た若い子もいるにはいるらしい。それで、50前後の嬢がかなりの割合を占めるそうで、友人の評価もあながち間違いではないだろう。ちなみに、相場は2千元(約7200円)程だ。

風俗に明るくない人のために解説すると、〈置屋〉では、エントランスあたりで女性を選び、その後、大概が奥か上階に設けられた小部屋で性行為を楽しむ風俗店である。茶房もほぼ同じで、表向きは、茶を飲む店を装っているだけだ。KTVはカラオケスナックのようなところで同じく女の子を選びセックスをするのだが、行為そのものは外部のホテルへ移動するケースが多い。

萬華には華西街夜市がある。台湾を感じるのに夜市ほど便利なものはない。買い物、食事、酒を楽しめるからだ。特に華西街では、スッポンや蛇などゲテモノにくくられるような精力剤的な食材を提供する店が多い。

のどかな台湾のノスタルジックな雰囲気を味わって終わりではない。

地下鉄龍山寺駅前の広場には、多くの老人たちがたむろしている。夏場には、薄着になった彼らのなかに刺青を背負っている人が少なくないことに気がつくだろう。そして、ここが台湾マフィアのいる街だと思い知らされる(現在、台湾の刺青文化は、反社会的というより、ファッション的要素の強いものとなっている)。

そのことを知らしめたのは、2010年に報道された、憨面(台湾中部のマフィア)の親分・李照雄の葬儀に、2万人といわれる関係者が参列した様子だ。アジアはもとより世界中に、台湾マフィアは未だ健在、という印象を与えた。

日本の裏社会でもそうだが、義理事はその組織の力がいかほどのものなのかを推し量るのにちょうどいいイベントだ。憨面がどれほどの力を台湾で握っているのかは、言わずもがな。

さて、萬華が浄化される前には、風俗店が現在とは比べ物にならないほどにひしめき合っていた時代があった。その後は規制を受けて寂れるいっぽうだった、と説明してきた。しかし、2011年、法律改正により規制が緩和された。ただ、台北は風俗店の再展開を認めなかったため、現在の裏台湾の性文化を知るには台北市以外に足を向ける必要がある。

先ほどの風俗通の友人の勧めに従うと、基隆市の三坑に置屋タイプの風俗街があるという。

基隆市は人口40万人にも満たない港湾都市で、本島北部に位置している。アクセス方法は、台北駅から基隆駅行きの台湾鉄道で40分。タクシーやバスでも1時間はかからない。

「車でも鉄道でも、道中の寂れていく町並みと田舎っぽさを味わうのがいいね」

友人たちの大半がそう指摘するように、到着してみると、そこにはお世辞にも都会とはいいがたい雰囲気の駅と風景が広がっている。

だが裏台湾を味わうのならば、ここから100メートルほど踏み込んでもらいたい。というのも、線路沿いに置屋街まで、屋根付きの通路が完備されている。これは置屋を保護しているのではなく、抜けた先にある廟口夜市への順路になっているからだ。

道なりに進んでいくだけで迷うことはない。駅を背にして進むこと数分で、20軒ほどの置屋街に着く。

これまで大きな摘発もされず地元に溶け込んでいる様子は、往時の萬華の雰囲気だ。裏台湾の一端を味わうことができるだろう。ただし、子供が駆け回るなど、牧歌的すぎるところもある。

通りを歩けば、すぐに客引きが声をかけてくる。老婆や中年男性などバリエーションは様々だが、伝えてくる値段は1000〜1200元(約3600〜4300円)とある程度は統一されている。時間は15分〜30分。女の子のレベルに応じて変化することもある。萬華の置屋と比べると、かなり格安なのがわかるだろう。

店の入口は鉄格子になっていて、女の子を確認できる。気に入ったら各店舗の奥にある2畳ほどの小部屋に移動してセックスだ。余計なコミュニケーションは発生しない。置屋とは本来そういった場所であることを思い出させる。また、メインの客層が地元住民であり、日本語や英語を扱える子も少ないため、外国人は、敬遠こそされないが、それほど歓迎されるわけではない。

では、ここで働いているのは、どのようなお姉さんたちなのか。

「嬢のレベル? 20代から30代が中心かな。レベルはそれほど高くないよ。でも台北のアングラエロカラオケの高齢者よりはいいよね」

台湾風俗に通いつめる友人からはそんな返事があった。レベルはともかく、若い子が多いので「じっくり見れば掘り出し物が見つかることもある」とのこと。裏台湾に挑みたければ、検討してみてもらいたい。

風俗街や路地裏を巡り、黒社会の雰囲気を味わうなら、そうしたエリアには夜市が隣接していることが多いので、夜市で裏台湾を味わうのもいいだろう。それは文字通りの「味」で、B級グルメと評されるような庶民の料理である。

先ほども紹介した龍山寺界隈の蛇料理は、すべての店が撮影を禁止しているので要注意だ。もし強引に撮影したら、それこそ〈マフィアの出番!?〉になりかねない。

AbemaTVで放送されている『台湾黑社會』では随所に台湾グルメが登場する。それも、高級料理というよりもB級屋台グルメなので、それについても紹介したい。まずは、EP2の作中で、竹聯幇のメンバー・王啓濱が購入していく腸詰め。粗くカットされた肉が詰まったソーセージで、甘めの味付けと油っぽさが癖になる。

そのまま食べるのもいいが、「大腸包小腸」というもち米の腸詰めで挟んだホットドッグ風がおすすめだ。その際に忘れてはならないのがビール。台湾ビールがスタンダードではあるが、「クラッシック」や「金牌」といった銘柄もあるので好みにあわせて選びたいところだ。フレーバービールもマンゴー、パイナップル、ぶどう、オレンジ、レモンなど、種類の豊富さで人気がある。

ホットドッグにビールの組み合わせというと、ジャンクフード感が漂うのだが、裏社会の住人は案外、B級グルメが好きだったりするのだ。

以前日本のヤクザに聞いてみたことがある。

「どうしてそんなものが好きなんですか?」

普段は贅沢なものや高級料理を食べているのに、目の前で嬉しそうにカップラーメンを用意しているのが奇異に見えたからだ。

「下積みが長かったからな。こういう味も時々食べたくなるんだ」

台湾の黒社会に生きる人々にも、青春の味や下積みの思い出に引っかかるようなB級グルメがあるはずだ。そういったことに想いを馳せながら裏台湾を食べ歩くのもいいだろう。

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【台灣黑社會】  AbemaTV Documentaryチャンネルにて。
6月9日より、毎週 金曜23時スタート。エピソード2は6月16日放送。
詳細・視聴予約はこちらからどうぞ。