メタル愛は背中で語れ

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メタル愛は背中で語れ

写真家メルヒオール・フェラドゥー=テルセンは、ヘルフェストで最も見事なベストとバックパッチを探し出して撮影してきた。そして5人の専門家による委員会が、その写真にコメントを付けた。

これまでの人生でパッチ付けてる人ってまわりにあんまりいなかったですね。ニューウェイヴ聴いてたらいないかぁ。エコバニとかバウハウスとかスミスのパッチなんて無かったでしょうしね。子供の頃、穴の空いたズボンにスヌーピーのパッチ付けてもらったくらいかー。あ、いた!学生の時に、ひとりぼっちメタル君がいましたね。でも彼は残念ながら天然パーマだったなー。学校辞めちゃったなー。でもって、どうです、コレ!!こんなに並ぶと壮観ですねぇ。みなさんの背中から「ウリャ~俺の人生どうだ~!」って圧が聞こえてきそうです。ちなみにアイロン接着なら「くもの巣のり」ってのがイイそうですよ。

ヘルフェストの魅力は、夢のようなラインナップ、常識を越えたセットリスト、豪華なステージ、そして子供たちにとって申し分ない教育の機会、あるいはオウテカやアルノ・シュミットといった退屈な音楽についての会話がまったく存在しないことだけにあるのではない。それはスタイルにもある。あらゆる時のあらゆる場所でのスタイル、あなたのスタイル、私のスタイル、そして何といってもバックパッチだ。何百何千何万何十万何百万というバックパッチのスタイルだ。ヘヴィーメタル流ライフスタイルの基本的な装備であるパッチ付きベストは、単なる衣服ではない。それは鎧であり、護符であり、ヘヴィーメタルファンをひとつにまとめるシンボルであり、夜の闇を照らす灯台の光だ。

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われわれが愛して止まない、写真家メルヒオール・フェラドゥー=テルセンは、ヘルフェストで最も見事なベストとバックパッチを探し出して撮影してきた。そして5人の専門家による委員会が、その写真にコメントを付けた。委員会のメンバーは、ルロ・ジミー・バティスタ(「noisey」フランス語版の編集長)、ギョーム・グワーデス(「noisey」フランス語版のパッチに関する記事の主な寄稿者)、マルクとマチュー(仏バンド「COBRA」のメンバー)、レイモンドovトッド(ヘヴィーメタルの大手再発レーベル「Triumph Ov Dead」オーナー)、そしてマリーヌND(「Retard Magazine」編集長)だ。

ルロ:重厚感のあるベストだね。計算し過ぎという印象を出さずに、知識が豊富でレベルの高い美的センスを見せている。中心にあるパッチがいい土台となっていて、SLAYTANIC WEHRMACHT のパッチがヴィンテージのポイントを押さえ、MASTERでストリートカルチャーに精通しているところを見せている。そしてVENOMだ。コレ…もしくはMERCYFUL FATE…がないと、どんなベストも完成しないからね。でもHEINEKENのパッチについてはどう解釈していいか分からないな。

マーク:こうやってパッチを何枚も重ねるのは嫌いだね。美しいベストというのは、色々な形やサイズのものを、それぞれが重ならないようにしながら調和の取れた配列に並べていくという、慎重に計算された作業の成果だからね。

ルロ:普通こういうベストは嫌いなんだ。ゴチャゴチャし過ぎているから。でもこのベストの背景にある歴史は明らかにクールだね。詳しく見てみると、たくさんの古いパッチ…DESTRUCTION、MEGADETH、DARK ANGEL…が、MIDNIGHTといった最近のもので覆われているのが分かる。だからこの彼は、メタル狂で違う時代にまで好みが広がっているか、兄のベストをもらって、だんだんとその名残を消す作業を続けているかのどちらかだね。どちらにしろ、彼には最大限の敬意を感じるね。

マチュー:いや、もっと単純な別のメッセージでしょ。「私はブラックメタルからスラッシュメタルに移りました」っていう。

マーク:これは全く反対の方向性だね。パッチは重なり合っていなくて、宙に浮いているように見える。残念なのはバンドの選び方が、規律と秩序に関する特定の好みを示唆しているところだ。

ルロ:一見するとすごく保守的なパッチマニアだ。袖無しのベストだし、すべてが折り紙付きの一流バンドだ。IRON MAIDENが完璧な対称位置に並べられ、AC/DCが三角形にレイアウトされている。その一方で、だんだんとこのベストが音楽フェスティバルのリストバンドとセットになっているように見えてくる。これが好きと言えるかどうかはよく分からない。

グワーデス:最初は本当にレコードのコレクションの写真を背中に貼って歩き回っているのかと思ったよ。

マチュー:いや、これは素晴らしいって!この人は、規則正しく自分のやりたいことをやっているね。残念なのはMARILYN MANSONだけどね。

ルロ:これは私のお気に入りだな。バックパッチのチョイスはどのベストでも重要なポイントだ。独創的でありつつ、グループへの特大の崇敬を表したイラストが描かれていることで、ベスト全体の効果が400%生かされている。ほんの少し高すぎる位置が残念。

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マーク:どんなベストでも、絶対に必要な基本要素はバックパッチだ。バックパッチがないとベストとして成り立たない!でもこれはパッチワークの作品にしか見えない。ベストじゃないんだ。なんでヘヴィーメタルほど厳格な場で、バックパッチについての厳しいルールが無いのか理解出来ないね。

マチュー:そんなにムキになるなよ。彼はさ、「パッチは好きだけどバックパッチは好きじゃない人」っていうだけでしょ。この人はデニムも好きじゃないと思うな。コットン部分を全部覆うことは出来なかったけど、いいやり方だと思う。リュイーヌであったIN SOLITUDEのコンサートで、ズボンで同じことやってる人を見たよ。

グワーデス:わ!人間キャプチャテストだ!この人はすぐにでもパターゴルフ場に行けるね。

マーク:切り抜きパッチに対する虐待だ。切り抜きパッチは控えめに、中心的なパーツとして使うか、ベストの上部に使うことになっているのをコイツは知らないのか?このベストは見た目にも心地良さを感じないし、悪趣味なショートパンツと合わせるとさらに目障りだ。とは言っても、「Never Stop The Madness」と書かれたパッチは特別賞に値する。

マーク:いったい何があったら、こんな若者が「Anti-cosmic Metal of Death」と書かれたバックパッチの隣にLED ZEPPELIN を貼るようなことをするんだろう。更に少し重なっている点にも注目すべきだ。

レイモンドOvトッド:これはチャック・シュルディナー(DEATH)の死を決して乗り越えることが出来なかった、強迫観念に取り付かれた人のジャケットだ。彼が毎年12月13日に目に涙を浮かべてチャックの死を悼んでいることは疑う余地もない。チャック・シュルディナーの一連の優れた作品に対する全面的服従、大量のロゴ、バックパッチの選択…特にファンから満場一致で愛されているとは到底言えないアルバム…は高ポイント。マイナス点は、流血の装飾が付いていない二番目のバンドロゴ。特に首の下のよく目立つ位置に置かれているから。それから『The Sound Of Perseverance』のパッチ。これは本当に必要だったかな?

マーク:これは最悪レイアウト賞決定だね、本当に。私にとってパッチジャケットは、単なる忠誠や評価の印以上のものだ。それは多種多様な対象に対する情熱を示す方法だ。例えばTシャツは、一回着るごとに、ひとつのバンドに対する愛を示すことが出来るだけだ。帽子をかぶれば2つのバンドまで出来るかもしれない。だけどジャケットは帽子をいくつもかぶることが出来るようなもので、LED ZEPPELINとWATAINに対する愛を同時に示すことができる。でもこのジャケットには意味が無い。ひとつのバンドに対する愛情があまりにも行き過ぎている。

マチュー:いやいや。それでも注目に値する面白いポイントがあるよ。脇にパッチ付けてる。

ルロ:この人は、カジュアルでリラックスした方法でヘヴィーメタルを楽しんでいる。うまく配置されてるし、すぐに目につくバックパッチがある。LED ZEPPELINとMOTÖRHEAD を土台に、SACRED REICHとMISFITSで折衷主義を表し、VOIVODでアンダーグラウンドに属することを示し、MÖTLEY CRÜE とLYNYRD SKYNYRDで、ビールを3杯飲んだ後でも彼がまだピンピンしていることを想起させる。この人は地球上の誰とでも4分未満で友達になれるだろう。

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マリーヌND:これには100%満足です。大きな巻き毛のポニーテール、「俺をなめるな」的なピアス、それにデニムではなくてノースリーブの革のベストにすべてを縫いつけている点。パッチは完璧に整列されていて、これらの全体の組み合わせに「戦利品コレクション」の様相を与えています。労力と汗と、これらすべてのコンサートで味わった苦悩を感じ取ることができます。間違いなく一級品です。

ルロ:これは大好きだな。ホルンを吹いているこの人は、EXTREMEのバックパッチと完全に一貫性のない一連のパッチ…DEF LEPPARD、HAMMERFALL、OVERKILL、QUEENSRŸCHEを付けている。でも彼を酷評しようとするのは間違いだ。彼はリスクを恐れていないし、気に触るならむしろ好都合なんだ。

マーク:こんなにカッコイイお尻なのに、なんでヘルフェストに来てるんだろう。観光地のカルヴィやマラケシュだったら大騒ぎされるだろうに。

レイモンドOvトッド:彼はあまりにも多くのバンドを愛し過ぎている。だから選択するのに臆病でHELLHAMMERにするかAIRBOURNEにするか、MANILLA ROADかGUNS N’ ROSESか、決めることが出来ない。みんなからの同意を得ようとし過ぎているんだ。結局は、彼のベストは中学の机みたいになっている。自分の好きなバンド名を彫刻してるんだけど、結誰もそんなのには注意を向けない。あと大きな間違いがもう一つある。素晴らしいOMENの上に何枚ものパッチが縫い付けてあること !これは決してやってはいけない。ダメ、絶対!

マーク:これはステッチに問題があるな。こういうタイプのベストを来ている人に対しては、常に大きな尊敬を持ってきた。ひとつひとつのパッチを縫い付けているところを想像させられるからだ。ハードロッカーは返し縫いとかお縫製をマスターする必要はないけど、これは本当にやっつけ仕事だな。

マチュー:この人は明らかに、極端なkvltシーンから外に出ていないね。メインステージの影さえ見ていない。

マリーヌND:この人については懐疑的です。水平方向のレイアウトとブロック状にまとめたパッチという方法を選択したことは認めますが、ポニーテールとベルトには深い疑問を感じます。よく分かりませんね。彼のベストには尊敬の気持ちを起こさせるのに、髪型がすべてを隠して台無しにしています。男性諸君に今後の参考のために言っておくわ。8年生(中学2年生)の時の気違いじみたテニスの先生と同じ髪型をした男と付き合いたがる女の子はいません。

マーク:失格。これはポンチョだよ。

ルロ:最初、肩にタオルをかけているのかと思った。90年代に、ドイツでパッチ付きのタオルを何度か見たことがある。ドイツ人はいつでも我々と比べてきちんとしているからね。

マーク:なんてこった!ここはテクノのフェスティバルじゃないぜ!

グワーデス:いや、空白の力だ。本当に死が存在している。戦争の傷跡。実際に軍服を着ていることで一層強化されている。ガンベルトを付けていないのは、そうすると仕事を思い出すからだ。

以上、委員会によるパッチ審議でした。いかがでしたか。パッチでメタル愛をアピールするファンより、委員会メンバーの過剰なメタル愛をひしひしと感じる、本末転倒な爆笑企画でしたね。今後も委員会のスピリチュアル・メタル・ジャーニーから目が離せません。