高級娼婦の宣材を撮り続ける女性カメラマン
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高級娼婦の宣材を撮り続ける女性カメラマン

「男女のカップル写真だけはムリ。一度だけやってみたけど、すごく倒錯してたわ。私が雇われたのは、自分たちがヤってるところを誰かに見せたいからじゃないか、って気がしたの」

ビジネスとしての性産業の合法性を政府が認めていようといまいと、カナダでは風俗業界で働く女性が何千人もいる。モントリオールの性風俗産業における最重要人物がDannyGirl(ダニーガール)だ。彼女は10年来、モントリオールの何千人もの娼婦(以下、エスコートガール)たちの写真を撮影してきた。彼女が撮った写真は、エージェントのウェブサイトや独立系風俗サイトに掲載され、エスコートガールと一晩過ごしたい、と願う顧客たちの股間を刺激し、高額を懐から引き出す。

ダニーガールは、一寸だけファッション・カメラマンとして働きつつも、約20年ヌード写真を撮影してきた。10年ほど前には、被写体をエスコートガールだけに絞った。「ハードディスクに入っているのは、何百枚、何千枚もの下着姿の女の子の写真だけ。顔が写ってないのもたくさんあるから、誰が誰だかわからない」

ダニーガールに、エスコートガールたちを週に何人も、長年にわたり撮影し続けるのがいかなる体験なのか、いくつかの質問を投げかけた。『オズの魔法使い』でカーテンをめくり、偉大な魔法使いのショボい正体を見つけたドロシーのように、複雑かつ巨大化していく風俗業界のカーテンをめくった彼女の世界観はどう変わったのだろう。

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エスコートガールの写真を撮るようになったキッカケを教えて下さい。

最初は、それがメインになるなんて想像もしてなかった。トロントの美術学校に通ったんだけど、14歳の頃から、濡れたり、トップレスだったりする友人の写真は撮っていたわ。ユダヤ人サマーキャンプでも友人を撮った。2人で食堂から抜け出して、大きなシャワールームで彼女をインスタントカメラで撮影したりしてね。そのカメラを入れておいたカバンが盗まれたのはヤバかったかな。あんなフィルム持ってたせいで盗んだ人が警察に捕まったりしてなかな、なんて余計な心配したわ。

友だちのセクシーなヌード写真はずっと撮ってた。高校のときに写真の勉強は諦めたから、写真の勉強をするために大学には行かなかった。でも、タトゥーを入れたセクシーな友だちが、私の家でジャグジーに入って裸になってる写真なんかをMySpaceにアップしてたら、知らない人がコンタクトしてきて、撮影料を聞かれたのが始まり。だから女の子のヌード写真を撮ってお金を稼ぐ、っていうのは自然な成り行きだったの。で、ヌード写真を撮ってほしがる女の子たちは、だいたいエスコートガール。私にとっては、簡単で、コンスタントに稼げる仕事なの。

エスコートガールが顧客になり始めたのは、具体的にいつ頃ですか?

2006年頃。小さな風俗斡旋業者の依頼で女の子数人の写真を撮るようになった。とにかく引き受けていたけど、性風俗業界の大きさに当時は気付いてなかった。この業界の仕事で人並みの稼ぎがあるけど、正直に言える写真家は少ないハズ。やりたいことだし、楽しく仕事できて、ラッキーだわ。リラックスしてできる仕事だからね。

レギュラーで働く女の子たちのセクシーショットを撮ったら、その写真はサイトに掲載されたわ。今ではネット上に私の撮った写真がたくさん載ってる。それで私を知ってくれる人が多いから、知名度は自然に広がった。女の子が下着姿でオイルまみれになってる写真とか、タバコを吸ってる写真が多くて、そういうのが口コミで広がる。撮り続けてもう10年にもなる子も何人かいるわ。だから、広告を出す必要はないわね。

モントリオールはエスコート・ビジネスが盛んなんですか?

基本的に、この街は「性」に対して寛容だと思う。エスコートガールになるのも大したことじゃない。だからたくさんの女の子がなるんでしょう。大きな業界だけど、モントリオールは物価が安い。他の街よりも所得が少ないから。カルガリーだったら2倍請求できる。

エスコートガールの撮影で、なんかヤバいこはありましたか?

そんなの毎日。私は事前にいろいろ質問するタイプじゃないの。どんなもんだかだいたいわかってるから。被写体がどんな人かもチェックしない。身長も髪色も、ポルノに出演してるかどうかも知らない。でも、3月末に撮影した2人が、すごくヒッピーぽい見た目でベリーショートで、お茶を飲んでるような、ヴィーガンっぽい女の子たちだったんだけど、彼女たちは普通のエスコートガールじゃなかったの。精神浄化とかヌードヨガをやってる子たちだった。撮影は自然な美しい身体にフォーカスするものだったんだけど、彼女たちは、女の子2人がピエロの鼻をつけたり、枕で叩きあってじゃれたり、どちらかがオオカミのしっぽのかたちをしたアナルプラグを装着してたり、そういう写真が欲しかったみたい。どんな撮影でもおもしろいわ。

ただ、男女のカップル写真だけはムリ。一度だけやってみたけど、すごく倒錯してたわ。私が雇われたのは、自分たちがヤってるところを誰かに見せたいからじゃないか、って気がしたの。男女のカップル撮影はなんか落ち着かない。女の子2人だったら、どれだけバカみたいでもヤバくても全然大丈夫。女の子の身体はそれだけで美しいから、どう撮っても美しいでしょ。

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現在のカナダの性風俗関連法についてはどう感じていますか? 特に、あなたは撮影で職業としてのエスコートガールと接していますが。

新しい規制で女の子たちがウェブサイトや宣伝方法を変えなきゃならなくなった。どんどん男目線、客ベースの考え方になってる気がするわ。私も腹が立って、女の子たちに完全に賛成なことがあるの。今の規制は、性風俗ビジネスをどんどんアンダーグラウンドに押しやってる、ってこと。間違ってるわ。それより、もっと安全になるよう、税金をしっかり取ったりしたほうが賢いはずよ。エスコートガールはビジネスウーマン。彼女たちの本業がエスコートガールなの。普通の仕事のようにスケジューリングして、ウェブサイトも運営して、電話やメールで対応をしてるんだから。

法律や政府は、いろんなコトをどんどんひとつの箱に放り込んでる感じ。人身売買も、街の娼婦も全部いっしょくたにしてるわ。でも性産業ってもっと多様なの。自分の確固たる意志でこの道を選んだ20〜30代の女性だっている。彼女たちの生き方、仕事を嫌わないでほしい。犯罪者みたく扱わないでほしい。

あなた自身が女性である、という現実が撮影に影響していますか?

女性だからこそ、っていう部分はある。自宅で下着姿の女の子を撮りたがるキモい野郎の写真家もたくさんいる。男性に会って服を脱ぐのに全然抵抗がなくても、やっぱり気張らなきゃならない。私が女性だから、彼女たちの緊張もほぐれるんじゃないかな。私はキモいおっさんとは違うし、赤裸々な女子トークもできるし。それに女性ならではの視点で、彼女たちの身体の細かい点まで気が付いて修正できる。脇の部分のはみでたお肉とか、ストッキングをはいた太ももの肉盛りとか、セルライトとか。男性は気付かないでしょ。この人ならそういうところも気付いて直してくれる、って女の子たちも信頼してくれてる。

新たな顧客を集めるために彼女たちの魅力を最大限引き出しつつも、無料のズリネタ写真にならないようにするには?

どちらにしても「芸術」になるようにしてる。無料のオカズを欲する男たちは、「僕に何してくれるの」的な電話とかテキストとかを送ってくる。「与えすぎずに誘惑する」、これに尽きるわ。多くのサイトでは陰部も乳首も見えないようになってるでしょ。ヌード写真でも隠せばいい。簡単にタダ見せを防止できる。そういう写真を掲載しないと宣伝できないし。

家族やお子さんに、ご自身の仕事を何て説明するんですか?

その点について私はラッキーだし、恵まれてる。私は母子家庭のひとりっ子なんだけど、母は最高にかっこいいの。すごく強くてスーパーマンみたいな母と乳母に育てられたわ。2人とも最高に芯のある女性で、やりたいことをやりなさい、と背中を押してくれるタイプだった。それだけじゃなくて、ビジネスマインドもあったの。私がエスコートガールになるかも、なんて心配するような人たちじゃない。どんな道であれ、私は間違った方向には進まないって信じてくれてたわ。2人とも今私が何をしてるかについては理解があるの。

息子は2歳の頃から、下着姿、トップレスの女の子がウロウロしてる家で暮らしてる。家の中は古いAVとかエロ写真で溢れてるわ。オッパイとお尻だらけ。息子が13歳になったらまた同じ質問をして欲しいんだけど、今のところは全然普通。何事も日常になっちゃえば、大したことないのよ。息子も適応してるし、私自身もそう。でもこれだけは言っておきたいんだけど、私は女性であると同時に母親なの。私は絶対的に女性の味方よ。女の子たちがポン引きに殴られたりしちゃいけない。今、モントリオールのラヴァルって街で少女の買春とポン引きが大問題になってるわ。

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不安になるような境遇で働いていた被写体はいましたか?

ないわ。ある程度仕事を選ぶから。私に写真を撮ってもらいたかったら、一定レベル以上じゃないとダメ。撮影方法にもよるけど、料金を払える女の子は結構限られてる。昔は『NOW』の後ろにある広告用だったけど、今は、自身のウェブサイト掲載用が多いわ。料金は一律じゃない。被写体の女の子の時給と同じ料金にしてる。私の被写体になるのは、だいたい高級エスコートガール。

エスコートガールたちを撮影してきて、あなたの世界観は変わりましたか?

アダルト業界で長年働いていると、セックスや裸体に関係するものすべてに対して本当に鈍感になる。それがすごく普通だ、ってなっちゃう。よくいってるんだけど、もしポルノやストリップ、そういった類いのファンタジーを楽しみたいなら、絶対この業界では働いちゃダメ。『オズの魔法使い』のカーテンの裏側を見ちゃったみたいになるわ。純粋に、性的なものを見て興奮を抱いていた頃には戻れない。アダルト業界がいかに普通に取り仕切られてるか、いかに普通のビジネスと変わりないかに気付いてしまうわ。みんなの妄想ってただの幻なの。Photoshopと凄い照明でつくるんだからね。撮影では、「大陰唇をちゃんと中に入れてよ?」なんて指示したり、前かがみになってる女の子の紐パンを引っ張ってズラしてちゃんとお尻の穴が隠れるようにしたりするのは全然日常茶飯事。今更エロい写真が最高のファンタジーには見えないわね。