Juan Moyano / Stocksy

「フェラのときにコンドームなんてつけるの? それって包装したままのアメをなめてるのと同じじゃない」

HBOのドラマ『インセキュア(Insecure):シーズン2』で、大きな話題を呼んだ〈オーラルセックス〉のエピソード。女子たちはセックス・トイの展示会に参加したり、上手なフェラのやり方を教えてくれる授業に参加したり…。そのなかでナターシャ・ロスウェル(Natasha Rothwell)演じるケリー(Kelli)が投げかけたのが上記の疑問だった。それに対し主人公のイーサ(Issa)たちは大笑いする。

今やコーヒー味、ガーリック味、豚肉ベーコン味のコンドームがある。さらにはマリファナ味なんてコンドームもある(ハイにならずにハッパの味と香りを楽しみたいひと向け)。また、McCondom社は、スコッチ味のコンドーム、その名も〈whisky dick〉(〈ふにゃちん〉を意味するスラング)を発売した。その他の有名ブランドもこぞって〈フレーバー・コンドーム〉商戦に参入し、大手メーカーのDurexとTrojanも数種類のフルーツ味ゴムを発売した。

ケリーの疑問はまったくもって正しい。フェラのために誰がわざわざコンドームをかぶせるのだろう? 米国疾病対策予防センター(CDC)によると、性行為をする成人のうち、85%がオーラルセックスを実践しているが、その際にコンドームを装着するのは2%しかいない。18歳から34歳の計4000人を対象としたTonic独自の調査でも、オーラルセックスでコンドームを使う、と回答したのは、たったの4%だった。〈包装したままのアメをなめるのと同じ〉と考える人は多いようだ。

しかし、そうなると今度はこんな疑問が生まれる。そもそもコンドームメーカーは、どうしてわざわざ味付きゴムを製造しているのだろうか? 実のところ、使用されている現場にはなかなかお目にかからないが、味付きゴムは確かに売れているのだ。ただし、有名ブランドは売上を公開していないため、詳細は確認できない。そこで小売店に直接訊ねてみた。

「間違いなくよく売れています。再発注してるくらいですから」。マサチューセッツ州ケンブリッジにある、革製品とランジェリーを扱う〈Hubba Hubba〉のレイン(Reign)はそう証言する。「棚に置かれたまま、使用期限切れになったり、ホコリをかぶるようなこともありません」

Hubba Hubbaでは、〈Trustex〉と〈Endurance〉という2ブランドの味付きコンドームを扱っている(Endurance製品は、カラフルでキャッチーなグラフィックが描かれた、おしゃれなプラスチック製ケースに入っている)。バチェロレッテ・パーティー(*結婚をひかえた女性のために開かれるパーティー。セックストイなどを持ち寄り、女性だけで楽しむ。)などを盛り上げるアイテムとして味付きコンドームを購入するお客さんと、普通に使用するために購入するお客さん、ちょうど半々くらいだろう、とレインは見積っている。「もちろん、オーラルセックスのために、味付きを購入するお客さんもいますよ」と彼女はいう。しかも客層は基本的に若く、女子大生が多いという。

ChanelやValentinoなど、高級ブティックが並ぶボストンのニューベリー・ストリートに佇む、その雰囲気に不似合いなアダルトショップ〈Condom World〉でも同じだという。「もちろん、〈普通〉のコンドームのほうが多いですが、味付きコンドームも毎日売れています」。そう語るのはマネジャーであるマイク(Mike)だ。同店は約1000種のコンドームを取扱っており、そのうち味付きは数パーセントだという。しかし、それでも十分な売上になるそうだ。

〈Condom World〉のように、〈コンドーム〉というワードを冠する店のお客さんなら、普通より冒険心がありそうだが、一般層のあいだには、そこまで味付きは浸透していない。その原因についてマイクは、値段と〈得体の知れなさ〉が問題ではないかと考えている。

「ほとんどのお客さんは、宣伝で目にした商品を選ぶ傾向にあります。Trojanならみんな知っていますよね。ですから、一般的にはやっぱりTrojanを手に取るお客さんが多いんです」とマイクは語る。「たくさんのお客さんが来店しますが、みんな、馴染みのブランドの商品を手にします。だから私たちは、先を見越して動こうと努めています。お客さんに情報を提供し、商品について会話できるような環境にしようとしているんです。まぁ、もちろん、ただ単に『味付きコンドームなんて無理』というお客さんもいますけどね」

フィラデルフィアにある〈Condom Kingdom〉でも、箱売りの味付きコンドームはそこまで売れていない。長年店のマネジャーを務めるニコール(Nicole)も、コンドームのボックスを購入するお客さんが味付きを選ぶ確率は低いという。ただ、店ではバラ売りのコンドームも取扱っている。「バラ売りだと、何種類か買って帰るお客さんがいますね」とニコール。「だいたい『それぞれひとつずつください』という感じで」

トロピカル・パンチ、ミントチョコレート、バナナ・スプリット(おえ〜…)など、7~8種類の味付きコンドームが、なぜバラで売れる傾向にあるのか。その理由はいくつかあるとニコールはいうが、ひとつは値段の問題だ。「楽しめるのかわからないモノに投資なんてできませんよね」、とニコール。また、〈おみやげ要素〉もある。ニコールの店を訪れるお客さんは、地元住民だけでなく、観光客も多い。彼らにとって、味付きコンドームは、軽くて笑えるおみやげなのだ。

しかし、ニコールによると、〈見てよ、これ。変な店で見つけたんだけど〉的な、最初はウケ狙いアイテムとして購入しても、その後、味付きを気に入り、次の来店時には箱買いするお客さんもいるという。そしてHubba Hubbaのレインと同じように、味付きコンドームの購買層は女子大生が多いという。ニコールはその事実を、統計的意義があるとはいえないが、それでも、大きな文化的変化の徴候としてとらえている。

「ストレートな関係におけるスタンダードがあり、コンドームを買うのは男性しかありえない、という状況でした。しかし、すばらしいこと、に性において女性が主導権を握るようになりはじめると、その流れがコンドームの購入にもつながっています」と彼女は説明する。「今でも、コンドームを常備している女性への偏見はありますし、とんでもなくバカバカしいレッテルを貼られていたりもします。でも、そういう偏見も薄れてきているのです」

今だに異性愛至上主義で〈ヴァギナにペニスが入る〉ことを重視する性教育がまかり通っているからこそ、味付きコンドームのような、シンプルかつちょっとふざけたモノが、性に関する会話の呼び水になる。「この商品を見て、『どうして味がついてるの?』『味付きコンドームの目的は何?』と不思議がる人もいます」とニコール。「そこからスタートして、オーラルセックスの弊害から身を守り、性病の感染経路についての知識を得るようになるんです」。実は、オーラルセックスでも感染症にかかる可能性がある。淋病、梅毒、ヘルペス、ありとあらゆる病感染の危険性があるのだ。今こそはっきりさせておくが、フェラのあとにマウスウォッシュでうがいをしたぐらいでは充分でない。

だからこそニコールの店では、売れ筋でも何でもない味付きコンドームを、切らさないよう仕入れている。「変な名前で、おかしな笑える店ですが、教育的観点もあるんですよ」とニコールは微笑んだ。「そのおもしろさが話のきっかけになるのであれば、それはすばらしいことです」