マクラメ編みのプラントハンガーやマクロビオティック・フード、アヤワスカの儀式などがはびこる現代の北米のメインストリームにおいて、メキシカンパーカ(バハジャケット)のリバイバルは遅れている。自然な風合いや手作りならではの質感、かすかにシャーマニズムを感じさせるシルエットは、アドベ・インテリアや新たなウェルネス論をとらえたインスタ画像にインスパイアされたカルチャー層を魅了する。

手織りのメキシカンパーカは、決して消え失せていたわけではない。時代を超越する魅力がある。70年代のサーフ・カルチャーやドラッグ・カルチャーを象徴するアイテムではあるが、異端者、メインストリームを外れた人たちの生活のおいても普遍的な存在である。1969年に開催されたウッドストック、2016年に開催されたPHISHのライブでも見られたメキシカンパーカは、反体制派の不屈の精神や、最も顕著なところでは、根深いマリファナへの理解を表す。それゆえに、〈ドラッグ・ラグ〉という別名があるくらいだ。

ニューハンプシャーからサンフランシスコまで、全米のリベラルな小都市や大きな街において、メキシカンパーカを販売する店の存在が、地元のマリファナ文化が今なお繁栄している証になる。私はメイン州バーハーバーで催されたサマーキャンプに参加したおり、日帰り旅行でそのような店を訪れた。ヘンポリウムという店名で、定番のタイダイドレス、琥珀のジュエリー、お香と並んで、メキシカンパーカが当然のごとく売られていた。ピースサインが施された店の窓の外には広場があり、メキシカンパーカを着てみすぼらしいバンダナをしたベトナム戦争の退役軍人がベンチに集まって、私たちの方に向かって訊いてもいないことを、わざわざ叫んで教えてくれた。それ以来、私にとってメキシカンパーカは、メインストリームに属さない人たちの知識の深さと、70年代半ばの気まずい体験の両方からなる、ほろ苦さを思い出させる存在となっている(さらに、店の名前がヘンポリウムだったため、私は長年、メキシカンパーカが麻(hemp)で作られているのだと勘違いしていたが、実際にはコットンとアクリルや再生繊維で織られている)。

メキシカンパーカは、アウトサイダーを自認するサーファーのサブカルチャーを通じて、北米にたどり着いた。サーフィンが新しい娯楽だった1930年代の西海岸では、米国人のサーファーたちが、新たなブレイクや観光客のいないビーチを求めて、メキシコのバハカリフォルニアまで南下した。彼らは地元住民の上着(ストライプのような、メキシコの伝統的なセラーピブランケット)を見て、そのスタイル(スペイン語ではsudadera de jergaという)を真似た。前を閉める必要のないパーカは、ずぶ濡れで疲れ切った彼らが、岸に上がって楽に着られるものだった。カリフォルニアへと持ち込まれた途端、やや実験的でドラッグの要素が混ざり、フォルクスワーゲンのワゴンのカルチャーと一時的に同義語となり、60年代後半から70年代のヒッピームーブメントと共に全米を横断した。

THE GRATEFUL DEADがサマー・オブ・ラブ以後も生き残れたように、メキシカンパーカも今日に至るまで全米のデッドヘッズに愛用されている。高校や大学を舞台にした映画では、新入生を案内するガイドがキャンパス内の芝生を指差すと、必ずと言っていいほどメキシカンパーカを着てハッキーサックで遊ぶマリファナ好きの学生がいる。『初体験/リッジモント・ハイ』(Fast Times at Ridgimond High, 1982)では、中途半端な笑みを浮かべ、ピンクのメキシカンパーカを着た10代のサーファー、ジェフ・スピコーリ (Jeff Spicoli) が、ハンド先生の歴史のクラス宛にピザを注文した。メキシカンパーカは、アメリカにおけるヒッピーの落ちこぼれの象徴となったのだ。

その陽気でハイな美学は、ステューシー(Stüssy)のような影響力のあるサーフ・ウェア・ブランドの影響もあり、ハイファッションの世界にも受け継がれた。ステューシーは80年代から、ポケットがひとつ付いたロゴ入りのメキシカンパーカを展開している。さらに新しい、より高級市場向けのニューヨークのブランド、バハ・イースト(Baja East)は、独自のリラックス感を打ち出した高級品を販売しており、シーズンごとに異なるラグジュアリーな(つまりは高価な)素材で織られたメキシカンパーカが登場する。最近のランウェイでは、アレキサンダー・ワン (Alexander Wang) からプロエンザ・スクーラー (Proenza Schouler) まで、注目のデザイナーたちが洗練されたデザインで生まれ変わったメキシカンパーカを発表している。カリフォルニアのニット・ウエア・ブランド、ジ・エルダー・ステイツマン(the Elder Statesman)が2140ドルで販売したカシミアのメキシカンパーカは、ハイエンドでの展開を裏付ける最も良い例だろう。

大麻文化がどんどんメインストリームの文化に溶け込み、複数の州が大麻の合法化に成功した今、メキシカンパーカはさらに幅広く受け入れられている。メキシカンパーカはこれ以上、DAVE MATTHEWS BANDのファンが着ているみすぼらしい上着でも、カウンターカルチャーにおける理想主義の象徴でもなく、大麻を独自のルートで、または合法的に手に入れる、ニューエイジのヒッピーたちのコスチュームとして再び注目されている。新作映画『オーシャンズ8』(Ocean’s Eight, 2018公開予定)では、リアーナ (Rihanna) が演じるナインボールというキャラクターが、緑とゴールドと赤と黒のストライプの織物のパーカを着ている。かつてコーチェラで、バウンサーの頭上でマリファナたばこを巻いていたチャート1位のアーティスト以上に、メインストリームにおけるメキシカンパーカのアンバサダーにふさわしい人物はいるだろうか?