Photo via Flickr user Peter Miller

1996年、ビール醸造会社のクアーズ(Coors)は、野球バットの形状をしたビール瓶を限定で発売した。瓶には木目模様まで刻まれ、しっかりバットが再現されていた。最初にこのビールが発売されたのはアリゾナ州ツーソンだったので、同地で春季キャンプを張っていたコロラド・ロッキーズ(Colorado Rockies)のファンを迎え入れるにはピッタリだった。瓶バット・ビールはホームラン(大ヒット商品)を叩き出し、現在でもeBayでは、何十ドルもの値でコレクターたちが取引している。

あれから21年。テラピン・ビール(Terrapin Beer Co.)が、クアーズを超えるビール会社の仲間入りを果たした。なぜなら野球バットそのものをビールに浸して最新ビールを販売したのだ。

アトランタ・ブレーブス(Atlanta Braves)の今季最初のホームゲームが開催された夜、サントラスト・パークを訪れたファンは、テラピン社のチョップセクショナー(Chopsecutioner )ビールを初めて口にした。これは、ミズノ製の野球バットを製造する際に出た木屑を、醸造の際に加えて熟成させたビールだ。「発酵後、ビールを木屑の上に移し、冷ましてから熟成します」。テラピンの共同創業者ブライアン〈スパイク〉ブコウスキー(Brian “Spike” Buckowski)は、CBSスポーツに語った。「木材を回転させながら削る、バットの製造過程で生まれる木屑を利用して、ビールを熟成させています」。(USAミズノは、ブレーブスの公式パートナーなので、ビールのバットに選ばれたのだろう)

チョップセクショナーは、典型的な野球スタジアム用ビールである。「テラピンのヒット商品であるIPAビールの〈ホップセクショナー(Hopsecutioner)〉と同じ5つのホップを使用していますが、アルコール度数は低く、軽いボディのビールです」。ジョージア州に本社を置くテラピンビールのホップセクショナーは、アルコール度数7.3。ジョージア州アセンズに詳しければ、大勢がこのビールのせいで、二日酔いに悩まされている現実を知っているだろう。メジャーリーグの平均試合時間と、アトランタの夏の平均気温が30度以上である状況を考慮し、ブコウスキーはチョップセクショナーのアルコール度数を5.0 パーセントに抑えた。

「暑い日差しのなか、野球観戦しながら、7.3パーセントのアルコールが入ったビールを飲むのはかなりきつい。何本か飲むとしたらなおさらです」

実は、野球のバットが醸造過程で使用されたのはこれが初めてではない。2011年、センター・オブ・ザ・ユニバース・ビール会社(Center of the Universe Brewing Co.)と、フレモントビール会社(Fremont Brewing)が、共同で老舗野球用品メーカー〈ルイヴィルスラッガー(Louisville Slugger)〉のバットで風味付けしたビールを60樽ほど醸造した。チョップセクショナーは、バット製造の際の木屑を利用しているが、このIPAビールは、3週間もバットを丸ごとビールの中に浸して製造したものだった。この〈ホームフロントIPA〉は、その夏、セーフコ・フィールドでシアトル・マリナーズの試合が開催された際に数回のみ販売された。

「バットを浸すことで、風味が増すかどうかはわかりませんが、野球に関連付けた独自のアイデアには間違いありません」とセンター・オブ・ザ・ユニバースの共同創業者で、メジャーリーグの元ピッチャーであるクリス・レイ( Chris Ray )は、当時ESPNに語った。「少しは風味が加わるかもしれませんが、カエデは硬材です。だからこそバットに使用されるのです。ですから、あまり液体を吸収しません。少しでも風味が加わればそれでよし、そうでなくても、話としては面白いだろうと考えました」。また、レイのビール収益は、軍人の家族を助ける慈善事業〈Operation Homefront〉に寄付されている。それ以来、9つから11のクラフトビール会社がセンター・オブ・ザ・ユニバースと共同で、ルイヴィル・スラッガーのバットで熟成したホームフロントIPAを製造し、毎年異なる軍人向け慈善事業に寄付している。

アトランタでは、サントラスト・パークにあるテラピンの醸造ラボで、チョップセクショナーの生ビールが味わえる。また、バット風味ではない〈オン・デックIPA(On Deck IPA)〉〈スイング・バッター・ブラウン・エール(Swing Batter Brown Ale)〉も同時に販売されている。今シーズンは、ポストシーズンにも進めなかったブレーブスではあるが、来季こそチョップセクショナーで祝杯をあげたいものだ。