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ジョージ・クリントン この男 ファンク

ファンクの精神は40年経っても健在なのだ。そして現在のジョージ・クリントン(George Clinton)はいかにファンクしているのか? 預言者に言葉を訊いた。
ジョージ・クリントン この男 ファンク

ジョージ・クリントン(George Clinton)とは宗教である。「そんなことない」なんてほざけば、それは冒涜だ。確かに音楽界のアイコンに関するテキストは、少々大袈裟なものが多い。しかし、このDr.ファンケンシュタインを預言者だとする考えは、まったくもって誇張ではない。宗教というものの本質的な定義が、大いなる存在と対話する一連の信念だとするならば、Pファンク* は正にそれだ。この帝国は、ジェームス・ブラウン(James Brown)の流れを汲み、真言を届け(「ファンクのモノマネは許さない!そんなことしたら鼻が伸びちまうぞ!」)、儚い命の人間を不死の生物に変えてきた。そう、『Mothership Connection』** で踊り狂う行為は、祈りを捧げることだったのだ。そして、それは今も変わらない。ファンクはスタイルを変えながらも、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)を筆頭に、フライング・ロータス(Flying Lotus)とサンダーキャット(Thundercat)、そしてSHABAZZ PALACESとのコラボレーション、WOKEなどでうねり続けている。

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* P-Funk。ジョージ・クリントン率いる総勢50人以上からなる集団。母体となるグループはパーラメント(PARLIAMENT)とファンカデリック(FUNKADELIC)。 ** 76年発表。パーラメント名義での4作目。オープニング曲はスバリ「P-Funk (Wants to Get Funked Up)」。

だが、簡単に現在に至ったわけではない。主な宗教はたいてい平和を求めるが、常に悲惨な状況と直面せざるを得ない性質を有している。クリントンは、火の池に放り込まれたこともなければ、イナゴの群れに悩まされたこともない。しかし74歳になった今も、ツアーをやって金を稼がなければならないのは不当である。クリントンは、彼の著作のほとんどの権利を持つ、ブリッジポート・ミュージック創業者のアーメン・ボラディアン(Armen Boladian)との争いにここ数年間を費やしてきた。ボラディアンは、著作権に関する書類を改ざんしたと疑われており、もしクリントンが自身の楽曲の版権を握っていたら、サンプリングで何百万ドルもの収入を手にしていた。しかし、現実にはボラディアンがそれを手にしている。ファンクの力もご都合主義の魔の手から逃げることはできない。しかし、クリントンはまだ戦うだけの若さを持っているのだ。

自身の裁判で注目を集める一方、Pファンクの黒幕は、著作権を騙し取られたことに対して、クリエイティブ・ルネサンスともいえる戦略を採った。2014年に、ファンカデリック名義で33年ぶり、33曲収録のアルバム『First Ya Gotta Shake the Gate』を発表したのだ。もちろん、この作品は、どこかの老いぼれがひと花咲かせようとしているだけの作品でない。一連の争いに対するパワーが漲っているのだ。そして先述通り、そんなパワーは、彼のDNAを継いでいるアーティストの音を聴けば、更に明らかである。ケンドリック・ラマーは、クリントンの解放主義的ファンク魂を開花させ、クリントン自身も参加させたアルバム『To Pimp A Butterfly』を発表した。フライング・ロータスの未来志向もクリントンのサウンドの系譜を継いでいる。また、WOKEの『The Lavishments of Light Looking』が、ツー・ステップの星として輝くのも、間違いなくクリントンの影響がデカい。つまりファンクの精神は40年経っても健在なのだ。そして現在のクリントンはいかにファンクしているのか? 預言者に言葉を訊いた。

ケンドリック・ラマーとの共演について教えてください。

ヤツのアルバム『To Pimp a Butterfly』に入っている「Wesley’s Theory」に参加した。それが初めての共演だ。その後すぐに、俺の曲(『First Ya Gotta Shake the Gate』収録の「Ain’t That Funkin’ Kinda Hard On You」)にも参加してもらった。ヤツは完全にスターになった。一緒に1曲やっただけで、絶対ビッグになる男だ、ってわかったんだ。

共演のきっかけは何だったのですか。

孫たちだ。「最高にかっこいいヤツだから、一緒にやれ!」ってね。今でもそれは正しかったと思っている。ヤツは、俺の歳と同じくらいの話し方をするんだ。音楽の創り手でもあるが、同時にビジネスとしての音楽にも、たくさんの知識や意識を持っている。

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概念的に、「ファンク」とは何だと思いますか。

ファンクはどんなときでも生き続けていく。それは自分の力を尽くすってことで、全力を尽くしたなら、あとはただファンクに任せればいい。大抵、自分の行くべき先に連れて行ってくれる。俺は今ラッキーなことに、ルイ・ヴェガ(Louie Vega)やケンドリック・ラマー、それから、聞いてくれよ、アイス・キューブ(Ice Cube)とも仕事をしている。俺たちで「Ain’t That Funkin’ Kinda Hard On You」のビデオを創った。ケンドリックとアイス・キューブのバージョンもすぐに出る。要するに、出来る限りのことをやれば、あとはファンクが然るべきところに導いてくれるんだ。俺は今、新しいヒップホップや古いヒップホップ、そしてエレクトロ・ダンスミュージックの中間…っていう、絶好のポジションにいる気がする。相変わらず好きににファンクしている。

ファンクに解放主義的な要素はありますか。

いつだってファンクに飛び込むには敵が必要だ。俺たちの敵は、世界中で起こっている戦争だけじゃない。パフォーマーや作者を守るための著作権だってそうだ。大ゲンカだ…。俺たちを守ってくれるはずのエージェントや出版社、レコード会社なんかが、何をやってきたかを知ってしまった。ヤツらは、銀行みたいに著作権を抱え込もうとしている。絶望的な気分になった。だからこそ、33曲も詰め込んだニューアルバムを創ったんだ。まあ、モチベーションをもらったわけだ。

ここでの敵は、黒人アーティストから搾取しているレーベルということですか。

まあ、特に黒人アーティストがそうだが、これはすべてのアーティストの問題だ。レーベルは、若くて野心にあふれたヤツを根こそぎ捕まえる。アーティストは、はじめの一歩を踏み出すためなら何だってやる。でも一旦捕まったら、レーベルはアーティストを利用しようとする。今がちょうどその時期だ。ヤツらは、俺や今活躍しているミュージシャンの子供たちから、著作権を取りあげようとしている。金をふんだくろうとしているだけじゃなく、ずっと著作権を抱えこんでおくつもりだ。あまり知られていないがな。

あなたは、最初ドゥーワップ・グループとして音楽を始めましたよね。サイケデリックに転向することで黒人のオーディエンスとの間に距離ができるとは思いませんでしたか。

ポップスやクロスオーバーに行くってことは、最初のオーディエンスを失くすってことだ。たまたまブラックミュージックが、次世代のポップスになったっていうだけ。10年間「ブラックミュージック」とされたものが、次の10年間は「ポップス」と呼ばれた。最近の黒人のほとんどが、「ロック」を完全に白人の音楽だと信じているよ。リトル・リチャード(Little Richard)やチャック・ベリー(Chuck Berry)なんて知りもしない。ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)が、少々サイケデリックをやっていたことくらいしか知られてない。だから、そうだな…、今日あんたたちが聴いてるブラックミュージック…ヒップホップは、ほとんどがまったくのところポップスなんだよ。

自意識を広げるという考えについてはどうですか。それもファンクに一役買っていたのでしょうか。

その通りだったね。67、68、69年には、作曲に関わるすべてに関係していた。クラシックを演奏するときだってそうだった。当時のトレンドが空気になり、音楽に吹き込まれ、アーティストの思想を刺激した。フランク・ザッパ(Frank Zappa)が登場した。かなり変なヤツだったが、ドラッグのように自意識を広げた。思考の領域に影響していたね。更にTHE BEATLESが、自分たちの曲で、当時の若者の意識を相当カバーした。意識が広がっていくと、あらゆるタイプの音楽の良さがわかる。クラシックや、ジャズ、クラシック・ロック。ずいぶんと世界を知ったものだ。

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サン・ラ(Sun Ra)の影響は受けましたか。

名前は知っていた。でもディスコグラフィーは知らなかった。単にジャズのアウトサイダーだと認識していた。彼の音楽を聴いたことはなかったが、何年も経ってから、彼のキャリアが俺とすごく似ているとわかった。彼はシカゴで音楽を始めたとき、ドゥーワップをやっていたんだよ。あらゆる音楽の素晴らしさを理解した男だった。それにエイリアンがコンタクトしてくるような人物だった。90年代に夢中になったな。

フライング・ロータスと出会ったきっかけを教えてください。

ケンドリック・ラマーの紹介だ。一緒に「Wesley’s Theory」をやったんだ。ヤツのスタイルにはしびれた。実際、今パーラメントで一緒に作品を創っている。フライング・ロータスと一緒のアルバムだ。

それはすごい!

本当にいい連中だ。スペースシップもんだよ。

WOKEの『The Lavishments of Light Looking』のセッションはどうでしたか?

あっという間だったね。リリースする1ヶ月半前にやった。

あっという間に完成したわりに、よく練られた印象を受けるのですか。

フライング・ロータスのおかげだ。ヤツのやり方に従った。「やってもらいたい曲がある。絶対やるべきだ」ってね。で、気づいたらリリースしていたってわけさ。

完成した作品を聴いてどうでしたか。

ブっ飛んだ。とにかく、すごかった。それに、その週にリリースとは知らなかったんだ。

フライング・ロータスのファンキーさを教えてください。

おいおい、ヤツのすべてがファンキーだよ。スタイルは別だけど、コンセプトなんてものを取っ払った、いかしたファンキー・ミュージックをヤツは展開している。ジャズっぽいけど、若い連中にもとっつきやすいしな。しっくりハマるカテゴリーは、まだ見つけられないが。

33年ぶりのアルバム『First Ya Gotta Shake the Gate』の原動力は何だったのでしょう。やはり著作権騒動ですか。

そうだ。著作権の問題で「あぁ、誰かを蹴っ飛ばしたい!」とムシャクシャしてたんだ。でも、この問題を注目してもらうためには、過去のことを叫んでまわるんじゃなく、「今の何か」を発表する必要があった。だから俺はアルバムを出し、同じタイトルの自伝も発表したんだ。

あなたは今でも未来的です。

基本的にはそれが一番だ。未来的、アフロ・フューチャリズム* だな。

* SF的な想像力を展開する黒人アーティストの宇宙、未来、テクノロジー表現。

アフロ・フューチャリズムという言葉について教えてください。

以前は、どう捉えればいいかわからなかった。でも、フライング・ロータスは、「未来的になろう」と意図的に動いている。ヤツの音楽を聴いて、とても納得がいったんだ。サン・ラとジミ・ヘンドリックスもそうだった。俺自身はコンセプトとしてやっていた。水中に潜ってみたり、宇宙に飛び出したり、色々とね。フライング・ロータスは、アフロフューチャリズムを代表する素晴らしい音楽で、俺たちが『Mothership』でやっていたのと同じことをしているんだ。