ペルビアン・ブラックメタルの雄〈Goat Semen〉が2015年、アルバムリリースのタイミングで、Noiseyの取材に応じていた。国内でのブラックメタル普及を目指し、今更ながらエリック・ネイラのインタビューを公開。南米産ブラックメタルのベスチャルなサウンドは、ベスチャルな南米の環境から生まれるべくして生まれたサウンドだ。

§

エリック・ネイラ(Eric Neyra)率いるリマの4人組〈Goat Semen〉は2000年以来、終末的な調べが鳴り響くスプリット、デモ、EPを大量にリリースしたが、2007〜2013年のあいだ、ほとんど活動していなかった。しかしバンドは、ついに〈Hell’s Headbangers〉と契約を結び、バンド史初のアルバム『エゴ・スム・サタナ(Ego Svm Satana)』を昨年リリースした。

エリックは、南米メタルシーン、〈ゴート・ザーメン〉というバンド名について、以下のように応えてくれた。

みんなが何より知りたいのは、アルバムのリリースに、ここまで時間がかかった理由です。

メンバー・チェンジがあって、リハーサルにあまり時間が割けなかった。最終的には、アルバム収録曲の作曲にたくさんの時間を費やし、リハーサルに入るまでに、私自身が心から楽しめるカタチになった。数年かかった…何年もかかるなんて、すごくおかしいけれど、結果的に、望み通りのアルバムが完成した。生々しく、残忍で、ダークで、腐ったような南米の狂暴性があって…それはどれも2000年のバンド結成以来、私たちが死守してきた旗印だ。

『Ego Svm Satana』の曲は、何年もかけて少しず創ったんですか? それとも、最近、一気に創ったんですか?

アルバム制作を開始したのは2009年、〈Ego Svm Satana〉のリフが、あと少しで完成しそうな時期だったはずだ。その後、ベレス(Beleth)がギターを弾き、ネクロス(Necros)がバンドに加入して、アルバム収録曲をがっちり固め始めた。ただ、〈Warfare Noise〉〈Madre Muerte〉〈Holocausto〉は、ヘルファッカー(Hellfucker)が加入する以前に完成していた。作曲、歌詞のアレンジが終わったのは2011〜2012年にかけてだ。

リマの環境は、どう作詞作曲に影響しているんですか? 外から見ると、すごく落ち着いますが、どんな街にもダークサイドがありますよね。

現在、リマは社会的、政治的に安定しているけど、俺たちのいう〈安定〉について理解したければ、ここに住まないとわからないだろう。ある種の無秩序、不愉快さを経験せずに、通りを歩くことはできない。でも、リマの何が作詞作曲に影響を及ぼすかというと、新聞やテレビで毎日のように暴力や流血沙汰が報じられていた80〜90年代初頭の状況だ。ストリートのいたるところで政治的対立、破壊的暴力が繰り広げられていた。そんなライフ・スタイルは、コロンビア人やペルー人だけにしかわからないだろう。南米では、各都市がそれぞれの社会問題を抱えているが、俺は、ここでそうした時代に起きたことを表現しているだけ。リマは、Hadez、Mortuorioみたいな、最高に野蛮なバンドが生まれた街なんだ。それに加えて、古代ペルーにあった儀式、神々、自然との繋がり、自然理解などの要素、またそれに対する信仰、信心もインスピレーション・ソースだ。

このアルバムは、アーサー・リスク(Arthur Rizk)がミックス、マスタリングを担当していますね。クリアでありながらも、ブラックメタルらしいサウンドを堪能できます。アーサーは以前、クリアなデスメタルサウンドをInquisitionのレコーディングで実現しています。外部プロデューサーとの協働に踏み切った理由は何ですか? 結果、バンドにどんな変化が生まれましたか?

アルバムのミックスとマスタリングを進めるのに、最高のタイミングでアーサーに出会えた。ある日、私は、アーサーからGoat SemenのFacebookに送られてきたメッセージを受取った。そこには、彼のGoat Semenへの関心、かつてInquisitionと仕事をした、と記されていた。その頃、プレ・ミックスを始めたばかりだった。作業を始めた時点で使用していたスタジオの機材が、求めていた666%のレベルに達していなかったので、私はBelethと相談して、レコーディング・データを米国に送り、Arthurに作業してもらった。すべてのトラックをファイル化してアーサーに送るだけでも5日を要し、その後、ミックスとマスタリングが終わるまでに、ほぼ2か月を要した。アーサーの仕事は、本当に素晴らしい。デモ段階から、Goat Semenならではの雰囲気と暴力的なオーラを再現し、大きな役割を果たしてくれたアーサーにはいつでも感謝している。

リマのメタル・シーンは、バンド同士が親密なようですね。例えば、Goat SemenはEvil Damnとメンバーがかぶっていますし、Evil Damnと Disinterのメンバーもかぶっています。その一方、南米のメタル・コミュニティは非常に強力で、大きな広がりを見せています。あなたは現在、南米の他のブラックメタル・バンド、デスメタル・バンドと何らかの連携を図ってるんですか? 今後の活躍が期待されるペルーのバンドも教えてください。

ペルーのメタル・シーンは、あなたが想像するほど親密ではない。それよりも、活動を世界に広めるために、バンドメンバーの英語習得が必須だ。Disinterは、長い歴史を誇る偉大なデスメタルバンドで、ペルーではマスター・ピースである2つのデモを90年代にリリースした。彼らが発表した最初のデモ『Laments from the Castle of Sorrow』は、私の中で殿堂入りしている。Disinterは90年代初頭に解散し、その後、Disinterでギタリストだったニマー(Nimer)と私は、ずっと仲良しだよ。Evil Damnのベーシスト、マリオ・シコラーヒャ(Mario Psicorragia)とも知り合いだ。彼から、Evil Damnでボーカルをやらないか、と誘われたりもした。その当時、Evil Damnのギタリストは、以前Disinterのメンバーだったオルデプ(Ordep)とニマーだ。バーで飲んでいる最中にその話を聞いたから、はっきりと覚えてはいないが、翌日、マリオから改めて電話でオファーを受けた。それから1週間後、みんなでスタジオに入り、さらに1ヵ月後には、サテリコン(Satyricon)にドラムを叩くよう依頼した。そんな風に2004年を過ごした結果が、ラブクラフトにインスパイアされたデスメタルバンド〈Evil Damn〉だ。私はアルゼンチン、コロンビア、ブラジル、エクアドル、チリ、ボリビア出身のさまざまなバンド、マニアと連携を図っている。南米のメタル・シーンはより強力になるべく成長している最中だ。コロンビアのMorbid Macabre、ブラジルのBode Preto、ボリビアのNekromanteion、アルゼンチンのInfernal Curse、チリのForce of Darkness、ペルーのMorbid Slaughter、Evoked Terror、Grave Desecration、Two Face Sinner、Morbosatanをチェックして欲しい。

曲名、歌詞からバンド名に至るまで、〈ヤギ〉はあなたの音楽活動において、常に強力なテーマです。さらにあなたは、Goat Vengeance、Goat Messiah、Goat Wrathといった〈ヤギ〉を戴くバンドを結成し、合計4つの〈ヤギ〉バンドで世界的に活躍しています。プレ・インカの時代、古代ペルー人は蛇を崇拝し、ヤギは多くのペルー人にとって宗教的犠牲であり、食料、衣料などに用いられていたようですね。あなた独自のヤギ崇拝の根源を教えてください?

私は、エリファス・レヴィ(Eliphas Levi)のヤギ観に基づき、バンドのキャラクター形成にヤギを選んだ。ヤギの骨格全体が深い意味を象徴し、角は男性や創造性の象徴でもある。古代ペルーでは、〈自然〉と〈自然のフォース〉との間の強い紐帯が信じられており、崇拝の対象でもあった。古代宗教において、アンデス地方の野獣は人間に近しいイメージで扱われていた。ピューマ、コンドル、蛇は地球の主であり、空気、水は、人類とは不離の潜在的関連性がある。私たちは、古代宗教のイメージを、Goat Semenのアルバム『Ego Svm Satana』のアートワークでも控え目に採用している。ドイツの友人に誘われてヤギ・バンドのコンピレーションにも参加した。もちろん、喜んで誘いを受け入れた。私が知る限り、この手の作品は2つしかない。

バンド結成から15年が経過した現在、あなたは、Goat Semenの活動拡大を図っているようですが、バンド名を〈Goat Semen〉(ヤギの精液)にしたのを後悔していますか?

仮に私が来月、新バンドを結成することになり、バンド名を選ぶとしたら、まっさきに〈ヤギ〉を思い浮かべるはずだ。バンド名を後悔したことはない。今でもこのバンドの方向性に合致していると信じている。わざわざインタビューしてくれてありがとう。ヤギ万歳! 地獄で会いましょう!