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Photo by Bill Damon via Flickr

「これでいくらいになりますか?」。ひとりの女性が段ボールに詰めたレコードを抱え、ニヤニヤしながら私の店にやってきた。この種の持ち込みの後は、必ず論争が起こるのを私は知っている。なので、エネルギーを浪費し、まずは愛想笑いを試みた。そして、彼女が抱えている80年代のヒットアルバムと、彼女の自信に満ちた眼差しを見て、これはなかなかハードな仕事になるぞ、と私は予感していた。

レコードブームによって、レコードというフォーマット自体に注目する人が増えている。レーガン政権以降、倉庫で埃をかぶっていたレコードを、正真正銘の金鉱だと信じる向きは予想以上に多い。地元テレビ局による「レコード・ストア・デイ」のニュースを観た後、一目散に屋根裏を漁る。そんな光景は容易に想像できる。

テレビのニュースでは、どこだかわからない町のレコード屋の外に並ぶ、献身的なコレクターたちを映している。レアな「限定盤」をゲットするため、口角泡を飛ばしながら、開店をひたすら待つ熱烈な客人たち。そして店の主人は、レジの音を始終鳴り響かせながら、レコード販売が過去数年急増し、忙しくてたまらないと大喜びで説明している。さらに、レコードを売って、お金を手渡す場面もニュースは報じる。当然、誰もが一攫千金を狙い始める。

「ニュース観た? アンタの古いJETHRO TULLのレコードも高く売れるハズ」「マジで!?」。そんな会話がたくさんの夫婦間で飛び交ったに違いない。しかしレコード屋の店主である私は、これら可哀想な夫婦の夢を砕かなければならない。厳しい試練に直面し、私は苦しめられている。カビまみれの段ボールに入ったVAN HALEN、JOURNEY、REO SPEEDWAGONのレコードは、どこにでもある平凡なレコードだ、と宣告しなくてはならない。もちろん優しく微笑みながら。そして、彼らの期待はゆっくりと憤りに変わる。

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Photo by Eddie Cepeda

もちろん、みんなが一攫千金を狙っているわけではない。ただ邪魔なものを整理したい。昼食代を稼げればいい。地元経済の役に立ちたい。泥沼の離婚を経験して、前夫の所有物を処分したい。非常に稀であるが、この中に誰もが欲しがる掘り出しレコードが紛れ込んでいるパターンもある。ニック・ドレイク(Nick Drake)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、TELEVISIONなど、貴重なファーストプレス盤だらけの箱を抱えて、「いくらでもいいです!」と、駆け込んで来たお客さんもいた。

しかし、今回持ち込んできた女性は、そういう類の売り手ではなかった。レコード1枚ごとに2〜3ドル支払うと伝えると、彼女は明らかに気分を害し、「冗談でしょ!」と私に怒鳴った。「マイケルは死んでるのに! それにこれは、80年代のオリジナルレコードなのに!」「お客様、それはわかるのですが、『スリラー (Thriller)』 と『バッド(Bad)』は、当時最も売れた2枚です。レコード屋はもちろん、倉庫、地下室、フリーマーケットなどに数千枚もあるんです」。しかし彼女は私の説明を遮り、「もういい! カリフォルニアに持って行って数千ドル稼ぐから!」と宣言した。もちろんこの2枚は、マイケルのサイン入りレコードでもなかったのだが…。私は彼女にとって、彼女の無知を食い物にする、欲張りなレコード屋の主人でしかなかった。2016年も終わりを迎えるが、これまで大きな金額の買取はほとんど無い。

さて、ここからは、レコードを売ってみたい皆さんへのアドバイス。未経験の人も多いだろう。怠け者の叔父さんがくれたレコードを処分するにはどうしたらいいのだろう? レコード屋に騙されないように売るにはどうすればいいのだろう? 段ボール、もしくはビールケースにレコードを詰め、母親のSUV車、またはタクシーに乗せ、地元のレコード店に持っていくのがいち番簡単な方法だ。しかし、恥をかかないように、まず次の手順に従って欲しい。

レコード屋が求めているものとは?

店に電話し、レコードを買い取ってくれるかどうかを尋ねるのはよいが、いくらになるかは電話で確認すべきではない。それは医者に電話で、大腸内視鏡検査をしてもらうようなものだ。医者同様に、まずは詳細に調べる必要がある。

レコードの状態を確認しよう。自分でもだいたい見当はつく。レコードジャケットがボロボロだったり、傷がたくさんあるレコードは、「ヴィンテージ」ではなく「ガーベッジ(ゴミ)」だ。店にとって、傷だらけのものは必要ない。ピンタレストでも見ながら、アクセサリーやインテリア、ギターのピックとして再利用するのをオススメする。

オペラ、クラシック、ミュージカル、コンポーザー系レコードは、家に置いていた方がよい。お婆ちゃんが所有していた演歌のレコードは、どこも買い取ってはくれない。レコード屋はもちろん、リサイクルショップや古本屋などに行く機会があったら確かめて欲しい。これら遺品整理の残り物がたくさん見つかるはずだ。

店によって力を入れているジャンルは違うが、ひとつアドヴァイスするなら、60年代物を持っていくように勧める。さらにいうなら、サイケデリックやジャズ (ハンク・モブレー (Hank Mobley) のようなモノ。間違ってもケニーG(Kenny G)ではないので、気をつけて)、ポップス、サブジャンル含むロック 、ニューウェイヴ、ブルース、カントリーのいくつかは良い。ヒップホップのアルバムは、シングルよりも発売数が少ないので、これらも使える。

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Photo by Eddie Cepeda

自分の所有レコードをよく知っておこう

popsike.comcollectorsfrenzy.comあたりのサイトをチェックして、自分のレコードがどのくらいの値段になるか最新情報を入手しておこう。しかし、LED ZEPPELINの『聖なる館 (Houses of the Holy)』 が、Ebayで25ドルで売れていたとしても、レコード屋も同額で買ってくれるわけではない。Ebayの出品者と違い、店では賃料、光熱費、保険、賃金などの費用がかかる。店舗は時代遅れのビジネスモデルかもしれないが、意義深い空間でもある。音楽を買える物理的な場所の重要性を論じるのは、まぁ別の機会にしよう。

レコード屋が、同じレコードを25ドルで売るためには、それよりかなり安い値段で買い取らなければならない。レコードを2枚売っても5ドル程度にしかならない場合も多い。ならば、レコードを100枚持って行って、大量に買い取りを依頼する方が効果的である。

オンラインでは多分難しい

自分でEbayに出品し、できるだけ高く売ろうと決めた場合は、幸運を祈るしかない。しかし、これまでいち度もEbayに出品した経験がない場合は、出品者の評価がまだ付いていないので、良い値がつく可能性は非常に少なくなる。例えば、MINOR THREATの赤盤7”や、バナナのステッカーを剥がしていないオリジナルの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ(Velvet Underground and Nico)』を持っていないのであれば、ほぼ1銭にもならないだろう。(ちなみにファイルでは、ステッカーも剥がせないし、ピンクのバナナも現れない)

レコード屋で騙されないために

いかがわしいレコード屋の店主が騙そうとする場合はどうだろう。

レコード1枚10セントでの買取が相場だ、そう売り手に伝えている店主もいる。しかし、少なくとも1ドル以上払えるものでなければ、在庫として持つべきではない、というのが私の持論だ。店主が安値を付け、「本当は買っても役に立たないんだけど、お客さんを助けるために値付けしてあげるね」といわれたら、それは間違いなく嘘だ。そんな欲張り店主に売るのなら、レコードは捨てた方がマシ。

そして、店主が騙そうとしているのが確実ならば、ハッタリをかましてみよう。もし本当に欲しいものならば、店主はあなたを帰したりしない。中古レコードは、レコード店スタッフの生活の屋台骨である。在庫はたくさん必要だし、できるだけ高値で店に並べたい。だから試してみればいい。「ありがとう。でも、そんなに安い値段では売れません」と勇気を出していってみよう。店主は、あなたがドアノブを握る前に必ずや引き止めるだろう。

もちろん、ほとんどのレコード屋店主は、あたなを騙しはしない。信頼もできる。評判のよいレコード店は、その評判を傷つけないようにしているから、あなたが持ってきたレコードの価値を、優しく教えてくれるだろう。そして、私たちはいつでも『スリラー』1枚に喜んで2、3ドルを支払う。今までにつくられたレコードの中で、最高にクレイジーな1枚なのは間違いないのだから。