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日本が誇るスラッシュハードコアバンドRAZORS EDGEが結成から20年を迎えた。20年っていうと、アレですよ。江角マキコが29歳から49歳になり、木村太郎が58歳から78歳になり、チビノリダーに至っては24歳になっちゃう年月。江角がミニスカートで脚立をブイブイいわせていたときも、木村が安藤優子とブイブイいわせていたときも、チビノリダーが電車で男っていたときも、RAZORS EDGEはスラッシュで疾走し続けていた。それも1度も立ち止まることなく。フォレスト・ガンプより走っているのだ。

20周年を記念して、ベストアルバム『RAZOR MANIA』がリリースされた。CDの収録可能時間ギリギリまで詰め込んだ見事な40曲超え。iTunesにブチ込んだときの眺めは爽快である。

また、おめでとうツアーである『RAZORS EDGE 20th Anniversary “THRASH‘EM ALL!! Tour 2016”』も開催。あとはファイナルとなる地元大阪のファンダンゴ公演を残すのみとなったが、この公演を最後に、11年間ギターを務めてきたTAKAがRAZORS EDGEを離れることになった。しかしRAZORS EDGEは、これからも走りまくり、ジャンプしまくるのは確実。なぜなら彼らにはビックドリームがあるから。大きな目標が残っているのだ。そう、男子走り幅跳びの記録は、まだまだ更新されるのである。

過去の栄光にすがる元バンドマンのVICE JAPAN編集長、川口賢太郎も同席し、フロントマンであるケンジ・レイザーズにインタビュー。

「川口さ、打ち上げ中に抜け出して、僕の自転車、電柱のてっぺんに引っ掛けたよな?」
「新品だったから悔しくて。でも面白かったろ?」

オッサンふたりは、久しぶりの再会を楽しんでいた。

§

RAZORS EDGE結成20周年おめでとうございます。

ありがとうございます。

早速ですけど、まずは、「速くて短い音楽をやって、生き残る方法」をお伺いしたいと考えております。

はい(笑)。速い音楽で生き残っていくのは、永遠のテーマですよね。ほとんどのバンドが段々遅くなって、そのまま終わってしまう。特にハードコアのバンドはねえ。ボストンのバンドなんて、ほとんどAC/DCみたいになって、お客さんが減って、悲しい解散を迎えるっていう歴史がありますし(笑)。でもスラッシュメタルとか、NAPALM DEATHを始めとするグラインドコア系バンドもそうなんですけど、彼らはテンポチェンジを取り入れて生き残っていますね。しかし、「俺たちは初心を忘れていない!」って、「ババババ!」って、一瞬でも入れる律儀なところがあるんですね。あそこにいろんな秘密が隠されていると思います。やっぱりグラインドコアでいうと、NAPALM DEATHが最前線で生き残っているというのはデカイですね。曲は一緒に聞こえちゃうんですけど、リスペクトしています。

ケンジさんはテンポチェンジを取り入れようと考えなかったのですか?

そうですね。でも初期に比べたら、僕らの中での遅いテンポとかは入れています。でも、やっぱり速い部分にも拘っているのは確かでして。最新作である『RAW CARD』も割とゴリゴリに速いですけど、そういうところで、これまで得た知識を出していくっていう。

知識というのは?

自分が今まで聴いてきた先代たちの速いバンド。それも速いけど何故か飽きない、格好良いバンドですね。いろんなバンドが変化しながら活動していますけど、カッコ良く変わったバンドは勉強になりますので、自分たちも試しながら、ちゃんと見習っていくっていう作業をしていますね(笑)。

具体的に見習っているバンドを教えていただけますか?

NAPALM DEATHはやっぱりすごいですよね。今でも15歳くらいの子が「やべえ!」っていって聴いちゃうんですもん。速いバンドの入り口になってるというか。そういう意味ではグラインドコア界のBEATLESみたいなもんだよなあ。

川口:SLAYERはどうなの?

SLAYERもアリだね。『SEASON IN THE ABYSS』で遅くなっても格好良かったもんね。珍しいバンドだよ。

川口:遅いっていっても、モッシュパート的な遅さと、曲の遅さがあるでしょ? その違いってなんなの?

モッシュパートは、暴れるためにわざとテンポをごっそり落とすやり方やんか。あれはダンスミュージックとしてアリになるんだよね。テンポが遅いから格好悪いんじゃなくて、そこで暴れろみたいな、ヒートアップするポイントになるというか。ニューヨーク系のバンドとかは、ダウンビートで暴れるじゃない。あれは、すごい発明だと思う。普通にテンポが落ちちゃうとMETALLICAの『ロード(LOAD)』みたいに、つまんない感じになっちゃう。物足りないんだよね。

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それにしても20年って本当に長いですよね。

結構、長かったですね。やっぱり。

21年前も速いのがお好きだったんですか?

はい(笑)。ライブもそういうのばかり行ってましたし、子供の頃からなぜか速い音楽が好きだったんですよね。

子供の頃の速い音楽ってなんですか?(笑)

小学校の演奏会とかに、合奏団さんとか来るじゃないですか。そこにめっちゃ速い木琴の人とかいるでしょ? 「トゥッツツツ、トゥッツツツ、トゥッツツツ、トゥルルルル」とか。ああいうイングヴェイ(・マルムスティーン:Yngwie Malmsteen)みたいなものなんですけど、あれに興奮してましたね。「なぜ、こんなに速いのが叩けるんだ?」って。その格好良さを小学生のときに見出してしまったから、こうなっちゃったと思ってます。普通の子は、笑っていただけでしたから。

初めてバンドを組んだときも速かったのですか?

友達のバンドにベースでちょっと入ったのが最初で、その頃はジャンクバンドみたいなのをやってました。COWSとかAMPHETAMINE REPTILE RECORDS周りの。

良いご趣味ですね!

当時1995、6年だったので、直撃でしたね。もちろんハードコアも好きでしたし、NIRVANAとかのグランジものも。でもやっぱりすぐにハードコアをやりたくなって、1年後にはRAZORS EDGEを始めました。まぁ、速い音楽の原点には、中学の時にお兄ちゃんがX好きって言う友達がいて、「これ速いだろ?」っていわれて。「うわ、やべえ!BON JOVIより速え!」みたいな。中学2、3年だったかな。ビックリしなかった? あの速さ。

川口:仙台のライブがYouTubeに上がってて、これがめちゃくちゃ格好いいんだよね。

最近ちょこちょこ昔のヤツが上がってるよね。文化祭なのかな? 体育館で演奏してるやつとかもテープだけ上がってる。音楽的にもハマったし、格好も。hideが好きだったんだけど、でも全くヴィジュアルには行かへんかったなあ。なんでだろ? GASTUNKは好きだったんだけど、その他ヴィジュアル系とかはあんまりだったなあ。

ハードコアはどこら辺のバンドを聴いていたんですか?

GASTUNKの前身バンドEXCUTEに興味を持ってその流れで原爆ドームがジャケのオムニバス『A FAREFUL TO ARMS』を買って聴いたらそっちの方が格好良かった。LIP CREAM、GAUZE…って一気に突き進みましたね。で、ちょっと後になって、BLACK FLAG、MINOR THREAT、BAD BRAINSとか。でもイギリスのハードコアは同時期に聴けていたんですよね。DISCHARGEとかGBHとか。タワーレコードとかにもあったので。

そうですよね。当時アメリカものは、ほとんどありませんでしたものね。あってもR.E.M.とか。「アメリカ、だせー!」って思ってましたもの。

だから、アメリカのハードコアに出会ったときは、本当に衝撃的でした。「こりゃイギリスよりもアメリカだな」と。そこに日本の好きなハードコアをミックスしたバンドをやりたいって思うようになりました。それがRAZORSなんです。

RAZORS EDGE結成当時の90年代中盤には、海外にも速いバンド多かったですよね。

いっぱいいましたね。当時は、ファストコア専門のSLAP A HAMっていうすごいレーベルもあったし、パワーバイオレンスっていわれたCAPITALIST CASUALTIESとかSPAZZとか、「ズカズカズカッ」って、グラインドとハードコアの間みたいなサウンドですね。でも僕的には、ビートは速いんですけど、疾走感っていうものはあんまり感じなかったので、そこはRAZORSとリンクはしなかったですね。日本のバンドの方が疾走感があるし、それに、ちょっと乗れないでしょ? 「ジャジャンジャ、ジャジャンジャ」ってアタマで乗るのが疾走感だと思うんですけど、「ダダダダダダダ」っていうのは点が多過ぎで、線になるみたいな感じですから。

川口:疾走感の限界ってどこにあんの?

それは結構目指したよ(笑)。

川口:で、どこだったの?

わかんねえ、やっぱり(笑)。「ドッタン、ドコタン、ドッタン、ドコタン」をめちゃくちゃ速くするのも疾走感のマックスだと思うんだけど。でも、それってNOFXとかになるんだよね。

川口:ゴアグラインドとかあったのに、なんでそっちに行かなかったの?

行かない、行かない。あんな声出ないもん(笑)。それにゴポゴポいって、全曲一緒になるのがイヤだったからねえ。せっかくバックで幅広い音楽性を見せられるのに、ボーカルで全部一緒になるっていうのは、もったいないと思ってた。まぁ、むちゃくちゃ格好は良いけどね。1曲だけ聴くのが好き(笑)。

曲をつくる上で、大切にしているイメージとかはあるんですか?

なんですかねえ…遅くても格好良いリフで作られた曲が格好良いと思っているので。だからAC/DCとかも本当に好きなんですよ。あれをスラッシュハードコアにしたらRAZORSになる。RAZORSを遅くしたらAC/DCみたいな格好良さもあると思っています。ハードコアバンドが勿体無いのは、ビートとボーカルのシャウトに任せ過ぎているところ。もっとリフとかを大事にして欲しいんです。本当に格好良いハードコアバンドは、リフも格好良いし、その格好良いものが全て合わさったときに、オリジナリティのあるものが出来ると思っています。それをやっていたのがGAUZEとかLIP CREAMとかOUTOとか。やっぱりリフが良いんですよね。ちゃんと昔のロックを聴いてきたんだろうなっていうのが分かるからスゴイですね。速い音楽だけ聴いて、速い音楽を始めたら、絶対に良くならないですから。

「もうこのスタイル無理かも…」なんて考えたことは、ありませんでしたか?

ファーストアルバムを出したときに「もう書かれへんな」と思いましたよ。どのリフをつくっても1回出てきているリフになっちゃうので、「やばい、これは無理」って。でもRAMONESとかAC/DCって、自分たちで使ったリフをもう1回使っちゃうようなバンドだけど、結局格好良くなってるじゃないですか? そうなればいいんだと割り切ってからは、書けるようになりました。だから今はメンバーが大変ですよね。同じようなリフがあって、それも何曲かに使われてたりするので。よくわからなくなるっていわれています(笑)。

シーンの流れもありますよね。いろんなムーヴメントが現れては消えていく中で、RAZORS EDGEは、何をモチベーションに活動していたのですか?

自分の本当に納得する曲が書けてないから、また書いちゃうだけなんです。「こんなすごい曲を書けたからもういいや」ってなったら、落ち着いちゃうと思うんですけど…川口は、そういうのなかった?

川口:俺は死ぬまで無理だと思ってやってたから。

アハハハ!そっか(笑)。

川口:だから今は別にやらなくてもいい。死ぬまでに1曲書いたらいいんだもん。

俺もそれはあるな。本当はあと1曲でいいんだもんな(笑)。

じゃあ、完璧な曲ができたら…

いや、そのおかげで楽しくなっちゃう可能性もあるので、わからないですね(笑)。

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さっきもちょっと話しましたけど、20年の間にいろんな流れがありました。例えば90年代中盤以降には、ミクスチャー〜ラップメタル系が流行って、ハードコアバンドも少なくなっていましたよね?

そうですね。

活動自体、やり難くはありませんでしたか?

最初の頃は、好きなものをピュアにやってたので、あんまり感じませんでした。あっちはあっち、みたいな(笑)。結局僕らは、2000年代になってからPIZZA OF DEATHに入って、今もずーっといるんですけど、それまでAIR JAMやハイスタ(Hi-STANDARD)周辺の盛り上がりに関わるようなバンドも回りにいなかったし、まったく別の話だと思ってました。「あそこに行きたい」って考えたこともなかったし(笑)。活動してたら誘われちゃっただけなんで、あんまりやり難いということはなかったですね。

川口:ファンダンゴにいたからじゃないの?

かなあ? あそこいただけで楽しかったからね(笑)。

川口:当時のファンダンゴなんてねえ。

おかしなヤツしかいなかったからねえ(笑)。

川口:それこそ速いのから遅いのまでねえ。

当時、大阪にはPIZZA OF DEATH所属のバンドっていましたっけ?

TOASTとMOGA THE ¥5ですね。TOASTは、俺らの2、3年前にSLAP A HAM界隈のバンドと交流があって一緒にレコードを出したり。当時みんなの憧れでしたね。

RAZORS EDGEもPIZZA OF DEATHに所属していますから、やっぱりハイスタとかAIR JAMの凄さは肌で感じていましたか?

そうですね。もうしょうがないですよね。あれは通らざるを得ないほどの影響力。俺らでいう「ひらけ!ポンキッキ」みたいなものですから。絶対、音楽の原点。ポンキッキでビートルズを知ったんですから。

確かにそうですよね(笑)。

今もハードコアバンドで10歳くらい下の若い子と対バンとかするんですけど、その根元にはハイスタがドーンといるんですよね。ハイスタを知らないハードコア好きなんて見ないくらい。ハードコア好きなヤツは、絶対にあそこを通ってます。だから若い子は頭が柔らかいですよね、メロコアもハードコアも、皆同じように聞ける人が多いっていうか。

川口:それってイヤにはならないの?

そういうもんでしょ。イヤとか好きとかの話じゃない。俺たちのときは、先輩たちが思ってたかもしれないし。「今の子はボアダムスとハードコアを一緒に聴くんだよ? おかしくない?」っていわれていたかもしれない。

若いバンドはどうですか?

もちろん、カッコ良いバンドもいますけど、自分のような音楽の聴き方はあんまりしてないような気がしています。滲み出るものの深さを知れたら、もっと好きになれるかな? っていうのはあるんですけど。

川口:若いスラッシュはいるの?

スラッシュはいないね。本当に。スラッシュハードコアも、メタルもいないでしょう? 今は。

川口:そもそも何で「スラッシュ」を謳ったの?

何でだろうねえ(笑)。多分自分たちがハードコアを始めたとき、グラインドとかファストコアのバンドが友達に結構いたのよ。その中で「ハードコアを始めました」ってなると、ジャパニーズハードコアっていうニュアンスに近くなるけど、そうじゃないし、そんなに厳つくもない。もっとアメリカンなサウンドだからって「アメハやってます」ともいえないし。そんなときに自分の好きな日本のコンピで、『THRASH TIL DEATH』ってあったでしょ? あれの「スラッシュ」の意味をちゃんと調べたら、そんなに重くないっつーか、疾走感みたいな感じだったから、「これだな。スラッシュハードコア」みたいな感じでフィットした。自分達を形容するにはちょうどいい言葉だと思ったんだよね。

川口:いないよね、日本には。

あんまりいないよね。