音楽はもちろんのこと、トーク・パフォーマンスからスポークン・ワーズ、執筆活動、司会業、ドキュメンタリー作品への出演など、ヘンリー・ロリンズ(Henry Rollins)は、様々な分野で活躍しているが、特に目立っているのは俳優としてのキャリアだ。彼は、かれこれ25年にわたり、テレビや映画に出演してきた。米国では、〈アレに出ていたアイツ〉として結構顔が知られている。〈警官役その1〉、〈警官役その2〉、〈警備員役〉、〈元警官役その2〉などで、タトゥー入りの前腕を組みながら、見事な演技を披露している。BLACK FLAGも知らない平均的な視聴者にとってロリンズは、どこかで見た覚えのある白髪のタフガイだろう。BLACK FLAGやROLLINS BANDのファンにとっては、ヘンリー・ロリンズがいろいろな映画に突然現れ、ラストまでにほぼ間違いなくズタズタされる姿を観るのは、至極のひとときだ。

ロリンズは、役者としての自らの才能にうぬぼれたり、役を選んだりもしない。「俺は役者じゃない」と発言しているし、「ハリウッドはそれを理解している」とも語っている。 清々しさすら醸し出す職人魂のおかげで、彼は、ジェネレーションXのちょっとしたカルト的アイコンになった。3度目のBLACK FLA再結成の予定がない現在、なんであれ、ロリンズの雄姿を確認できるのは、ありがたい気晴らしになる。

そんなみなさんのために、私はたっぷり5日間をかけて、彼の映画コレクションを鑑賞した。そしてランキング作成もしてみた。

ランキングのルールは次の通り。

・映画作品限定。テレビは除く。(『サン・オブ・アナーキー』(Sons of Anarchy, 2008〜2014)ファンは許して欲しい)

・声優作品は除く。

・本人役は除く。

ロリンズの登場時間、役柄のハマり具合、映画の出来、僧帽筋のムキムキ度など、さまざまな要素からランク付けした。

*各作品のネタバレにお気をつけください。

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19位 『クリミナル・サスペクツ』(Scenes of the Crime, 2001)
役:自動車の中で座っている男

この作品は、 ターナー・ネットワーク・テレビジョン(TNT)の昼ドラをつくるような映像会社が制作して、役者全員が〈Supercuts〉でスタイリングしたら、ほぼニコラス・ウィンディング・レフン監督の映画『ドライヴ』(Drive, 2011)になる。劇中、ロリンズは、ほんの一瞬しかスクリーンには登場しない。しかも、張り込みのために車の中で座っているだけで、何のための役どころなのかまったくわからない。とてもがっかりする。ロリンズはどんな役でも演じられたはずなのに。この映画は救いようがない。

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18位 『The New Guy』(2002)
役:刑務所長

D・J・クオールズ(Donald Joseph Qualls)は、映画『ロード・トリップ』(Road Trip, 2000)で、ガリガリのダメ大学生を演じた。それから2年後の『The New Guy』では、ガリガリのダメ高校生役で帰ってきた。クオールズは、地元刑務所の服役囚から〈イケメン〉になる方法を教わる。ロリンズは、その刑務の所長。この映画には、ヴァニラ・アイス(Vanilla Ice)、KISSのジーン・シモンズ(Gene Simmons)、MÖTLEY CRÜEのトミー・リー(Tommy Lee)など、大勢のミュージシャンがいい加減なカメオ出演をしている。音楽オタクを狙った大がかりな出オチでしかなく、葬式の屁と同じく、全く笑えなかった。

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17位 『Kiss Napoleon Goodbye』(1990)
役:ジャクソン

ロリンズとリディア・ランチ(Lydia Lunch)が制作したインディー・フィルム。劇中でセックスしている。賛否のわかれる作品。

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16位 『Suck』(2009)
役:ロッキン・ロジャー(ラジオDJ)

端的にいって、『Suck』はサックだ。バーで演奏するバンドがビッグになりたくて吸血鬼になる。まぁ、人肉賛美は、SXSWのショーケースよりマトモなプロモーションだと思う。音楽産業の大御所たちも大挙してこの映画に出演しているが、悲しいかな、ロリンズはチョイ役。アリス・クーパー(Alice Cooper)は不気味なバー・オーナーを演じ、『ウェインズ・ワールド』(Wayne’s World, 1992)で、ウェインとガースに、ミルウォーキーの意味を説明して以来の最高の演技を披露してくれた。イギー・ポップ(Iggy Pop)は喉をかき切られるプロデューサー役だし、モービー(Moby)に至っては、肉をテーマにしたメタルバンドの攻撃的なリーダー〈ビーフ〉を演じながら、自身の頑固な菜食主義をからかっている。でも、可哀想なロリンズは、ショクジョックの生意気なラジオDJとして、一瞬しか登場しない。しかし、ロリンズの魂は間違いなく浄化されたはずだ。長年にわたってゴールデンタイムに失礼極まりないインタビューを受け続けたロリンズは、ついに復讐できたのだ。

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15位 『The FEAST/ザ・フィースト』(The FEAST, 2005)
役:モチベーション・スピーカー、コーチ

ロリンズの役は、〈貧乏人のトニー・ロビンズ(Tony Robbins)〉と説明されていた。ヤリまくる好色デーモンの大群から、バーを守るメンバー(ジュダ・フリードランダー(Judah Friedlander)など)のひとり。この映画では、ズボンが破れたり、デーモンに押し潰されて殺されるのを別にすれば、ロリンズに見るべきところはない。寸法が全然あっていないデーモンの着ぐるみを着た俳優ふたりが後背位でヤッている光景を見る滑稽さ、ピンクのスエットパンツをはいたロリンズ、以上の短いふたつのギャグを除けば、この映画を観る価値はない。

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14位 『Desperate But Not Serious(Reckless + Wild)』(2000)
役: バーデンダー

いつかアカデミー賞選考員は覚醒し、ノースリーブの芸術を理解するようになるだろう。そうなったらロリンズは、ノースリーブの殺人容疑バーテンダー役で、オスカーを総ナメにするだろう。このバディ・コメディは、ロサンゼルスの軽薄さを、二流の『ロミーとミッシェルの場合』(Romy and Michele’s High School Reunion, 1997)と、四流の『クルーレス』(Clueless, 1995)の中間ぐらいで表現した作品。ジョーイ・ローレンス(Joey Lawrence)も出演している。

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13位 『浮気のアリバイ作ります』(Lies & Alibis, 2006)
役:パティ(雇われチンピラ)

ロリンズの半袖シャツとネクタイ姿がこれほど素晴らしいのはどうしてだろう? まるでデッドリフトしているディルバートみたいだ。人の不倫の揉み消しを題材にしたこの映画で、彼は雇われチンピラを演じており、役の上での名前はパティだった。『となりのサインフェルド』(Seinfeld, 1989〜1998)に出ていたあの男のつもりか、と戸惑ってしまう。そういえば…ふたりが一緒のところを見かけたことがある。

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12位 『ヒート』(Heat, 1995)
役:ヒュー・ベニー(チンピラ)

90年代ハリウッドの大物俳優を論じるなら、この3人は絶対に外せない。アル・パチーノ(Al Pacino)、ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)、そしてロリンズ。この映画界の巨人3人は虚勢を張り合い、凄まじい電話の切り方をする怒った男たちのクライム・スリラーに揃って出演している。しかしロリンズには、スコセッシからの出演依頼、もしくは、他の撮影に参加しなければならない義理でもあったに違いない。なぜなら、この作品では、数秒しかスクリーンに登場していないのだから。数秒のあいだに、ロリンズは、アル・パチーノに顔を掴まれ、窓からブン投げられてしまう。

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11位 『バッドボーイズ2バッド』(Bad Boys II、2003)
役:マイアミ市警TNT(戦術麻薬捜査部隊)リーダー

ロリンズ・ファンは一杯食わされた。オープニング・シーンから堂々と、マイアミ市警特別捜査ユニットのリーダーとしてロリンズは登場したのだから。更に、典型的なロリンズの役まわりをほのめかすサインも散りばめられていた。額に皺をよせ、コンバットブーツを履く姿はクールだ。そして時折セリフも聞こえる。そして通常なら第3幕辺りで、ゾッとするような方法で殺される。しかし、この映画はそうではなかった。ロリンズは最初の5分で姿を消し、それ以降、2時間30分におよぶ本作品に姿を現さなかった。残念ながらロリンズには、ポルシェに乗って銃を撃ちながら、ドラッグ・ディーラーの車の上で360度回転し、「これがバッドボーイズ2のやり方だ…」なんてのたまうウィルス・スミス(Will Smith)を庇いながら、爆発で吹き飛ばされる尊厳も与えられなかったのだ。マイケル・ベイ(Michael Bay)はクソ監督!

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10位 『デビル・ハザード』(The Devil’s Tomb, 2009)
役:フルトン神父

キューバ・グッディング・Jr(Cuba Gooding Jr.)が、傭兵チームのリーダーを演じる作品。このチームは、『A Christmas Story』(1983)で、黄色い目のゴロツキを演じたザック・ワード(Zack Ward)や、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(Orange Is the New Black, 2013〜)で、頭を殴られたプアホワイトの囚人役であるタリン・マニング(Taryn Manning)に加え、更にそれほど有名ではない俳優で固められている。どこかで見たような軍事組織のメンバーの役こそ、ロリンズにはうってつけなのだが、この映画ではなんと神父役だ。ロリンズが演じる神父は、地域を恐怖に陥れる堕天使について豊富な知識を持っているため、映画全編を通して慄き震える演技を披露してくれる。残念ながら、長年頑固なタフガイを演じ続けたロリンズは、上手に感情の機微を表現できていない。恐怖を表わそうとしても、オシッコを堪えているようにしか見えないのだ。キューバは情報を求めるため、たびたびロリンズに迫る。そしてロリンズは、黙示録にあるような難解な言葉をすらすらと口にする。そのさまは兄弟をチクるために、両親の寝室に飛び込んだ子供のようだ。この作品の意義は、ロリンズが慣れた役回りから脱皮しようとした事実だ。

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9位 『ジャックフロスト パパは雪だるま』(Jack Frost, 1998)
役:シド・グロニック(ちびっこホッケーチームのコーチ)

恐ろしい交通事故で死んだ父親役のマイケル・キートン(Michael Keaton)が魔法のハーモニカによって、雪だるまとして蘇るファミリー・コメディー。ロリンズは、ホッケーチームの興奮しやすいコーチを演じている。サウンドトラックには、HANSONがカバーした「Merry Christmas, Baby」が入っている。1998年は奇妙な年だった。

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8位 『クライモリ デッド・エンド』(Wrong Turn 2: Dead End, 2007)
役:デール・マーフィー(米国海兵隊のタフガイ/テレビ番組MC)

公式上映されず、そのままビデオになった『クライモリ デッド・エンド』だが、ロリンズにとってはハマリ役だった。彼は米国海兵隊出身のテレビ番組MC。ストイックで、まさに軍人のような態度を取りながらも、ギャラのためならテレビでぺちゃくちゃ喋るのも厭わない。もし、ロリンズの演じたキャラクターに、ホットパンツを履いた90年代のバンドリーダーという過去があったならば、ほぼロリンズだ。そしてロリンズにはパワフルな戦闘シーンも用意されていた。人喰いレッドネックとの格闘で、相手をやっつけた後には、「カミさんにヨロシク」なんて、シュワルツネッガーばりのセリフもキメた。やったネ!

おそらく今回もロリンズは、オープニング早々に殺される役どころだったはずだ。しかし撮影初日に現れ、海兵隊の作業服を着たロリンズを見て、監督は興奮したに違いない。そこで予定変更、ジョン・ランボーよろしく90分間、森の中を飛び回らせた。結局のところ『クライモリ デッド・エンド』は、記憶に残らない、森を舞台にしたサバイバルホラー映画だ。波打つ広い背中にストーリーを背負ったロリンズが出演していなければ、全く価値はない。ロリンズがシャツを脱いで登場するシーンもあるので、46歳の熟年パンク・アイコンの絞られた筋肉に興味があればご確認を。

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7位 『ロスト・ハイウェイ』(Lost Highway, 1997)
役:刑務所看守

デヴィッド・リンチはこの作品で、見事で奇妙なキャスティングをした。リチャード・プライヤー(Richard Pryor)〈故人〉、 ロバート・ロッジア(Robert Loggia)〈故人〉、ゲイリー・ビジー(Gary Busey)〈自己破産〉を起用。当然ながらロリンズも端役ではあるが看守役を得た。ロリンズには、短いやりとりのセリフが2度ほどあり、いつものように腕を組んでいる。1990年代の作品で腕組みをする役者が必要なら、ヘンリー・ロリンズがまさにその人だ。ロリンズのように腕組みできる役者は他にはいない。絶対誰もいない。

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6位 『The Last Heist』(2016)
役:バーナード(宗教的過激派)

ロリンズは、眼球フェチの宗教的狂信者。銀行を襲撃し、大規模な強盗が繰り広げられるなか、眼球を切り刻んでいる。特筆すべきは、映画レビュー・サイト〈Rotten Tomatoes〉におけるこの映画のスコア〈トマトメーター〉は0%だ。そう、ゼロ。ポジティヴな気持ちになったレビューアーはひとりもいない。目玉を引き抜くたびに、飛び散った血が次第に白いシャツに広がっていくロリンズの姿に、誰も心を揺さぶられていないのだ。レビューアーの負け。

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5位 『Morgan’s Ferry』(2001)
役:モンロー(脱獄囚)

この映画で、ロリンズはご開陳した…みたいなもん。ビリー・ゼイン(Billy Zane)と、『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』(The Big Bang Theory, 2007〜)などに出演していた俳優が、野外のバスタブで体を洗うシーンで、ロリンズは、素っ裸で立ち上がる。当初はセリフ付きだったこのシーン、撮影終了まで2時間近くかかったそうだ。残念ながらちんぽこは拝めない。一瞬、濡れたケツを拝めるだけだ。ゼインも『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』の俳優も、セットで全裸になる必要はなかった。

ちんぽこの話はさておき、『Morgan’s Ferry』は、俳優としてのロリンズを尊敬できる数少ない映画のひとつだ。主要人物の脱獄囚として出演し、完璧には程遠いが、南部訛りにもチャレンジしている。ロリンズは、真実味溢れる演技を披露した。この映画の舞台は1950年代なのに、〈Misfits〉のタトゥーがあるのは大目に見よう。他の多くの映画のように、彼が殺された後は観ない方が無難だ。

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4位 『JM ジェイエム』(Johnny Mnemonic, 1995)
役:スパイダー(肉体改造屋)

この作品では、〈ダウンロード〉〈ギガバイト〉といった単語が新たな可能性を秘めていた1995年にみんなが想像した、デジタルな未来像が描かれている。そして電脳空間バーで、皆が可能性を手に入れようとしている(それは半分真実になった)。このディストピア的デジタル世界の科学者たちは、皆ロリンズのようだ。実際、彼も〈肉体改造屋〉で、正確にいうと、分厚いフレームのメガネをかけたオルタナティブ・ドクター役だ。その場しのぎの地下ラボにある自家製コンピュータで作業し、テクノロジー過多による危険を主張している。その姿は観賞者に衝撃を与えた。ロリンズの役者としてのキャリアは、突然に死ぬ役どころで築かれているようなものだが、この作品では、それが極まり、怒り狂ったドルフ・ラングレン(Dolph Lundgren)に引き裂かれる。そんな役者は他にいない。本当にすごく名誉な役であり、少なくともピープルズ・チョイス・アワード受賞よりも価値がある。更に素晴らしいのは、主演がキアヌ・リーブス(Keanu Reeves)なので、演技がどれほど硬くても誰にも気づかれない。『マトリックス』(The Matrix, 1999)以前のコンピューター・ボーイ的お決まりの演技を披露するキアヌ・リーブスの傍らで、ロリンズは〈20世紀最高の俳優〉マーロン・ブランド(Marlon Brando)のようにも見える。なぜかICE Tも出演している。

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3位 『In the House of Flies』(2012)
役:声(誘拐犯)

ロリンズは、誘拐したカップルをコンクリートの塹壕に監禁する男を演じている。全編を通して、電話口から聞こえる不気味な声の出演だけで、姿は現さない。カップルには食料も水も与えなかったが、ロリンズ本人ならおそらく、最強の拷問として爆音『Loose Nut』責めにしていただろう。確かにこの作品でロリンズは、電話をかけているだけかもしれない。しかし、確実に、みんなの背筋が凍る演技を見事に披露している。遠距離電話でロリンズをフった女の子のエピソードなどを綴った回顧録『Get in the Van』の、淡々とした朗読を聞いたファンならわかるだろう。孤独なサイコパスを演じるのは、彼にとってなんてことないのだ。この映画で、ロリンズは首の静脈をピクピクさせなくても怖い男なんだ、と証明してみせた。

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2位 『He Never Died』(2015)
役:ジャック(不死身の食人鬼)

セットの美術のように扱われ、更にスタントマンとしても頑張った20年間。遂に2015年の『He Never Died』で、ロリンズは初の主役を獲得した。彼は不死身のサイコパス(繰り返しますが、彼にとって大したことではない) を演じ、ウイダー in ゼリーのように輸血パック・チューチューを日課にしていたが、別居していた娘が突然現れてから混乱が始まった。きんたまを素手で潰したり、床にできた血の海を啜ったりと、いつものロリンズらしい忠実な演技はもちろん、ビンゴゲームの場面で、イアン・マッケイ(Ian MacKaye)とハーゲンダッツで働いていた過去は話さなかったが、暗黒時代からのキャリアについて喋り続けるのに丸々1分間費やすなど、真面目くさったユーモラスなシーンがここにはある。ロリンズは、年老いて疲れた眼の奥に潜む灰色の悲しみを表現しようとチャレンジした。確かにミッキー・ローク(Mickey Rourke)のような賞賛は得られなかったが、この役は20年ものあいだ、〈雇われチンピラ〉として職人的キャリアを積んだだけでなく、奇妙で複雑なオファーにも応えた〈パンクス〉へのご褒美のようなものでもある。

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1位 『ザ・チェイス』(The Chase, 1994)
役:ドブス巡査

90年代のロリンズの絶頂。グレーの髪は、後頭部の紛らわしい部分に隠れているし、シャツのいち番上のボタンもはち切れそうになっている。ロリンズは長年、彼がどれだけ警官を嫌悪しているか、叫び続けてきた。それが、この映画では、警官に見えるよう、しっかり役を受け入れているのかが窺える。ロドニー・キング(Rodney King)を殴打した、犯罪をみると勃起してしまうような攻撃的な豚野郎でありながら、神々しいまでに厳格なロス市警官になりきるために、顎にエクボがあるバカ風な自分の容姿を見事に利用している。ロリンズは、クロマキー・スクリーンをバックにパトカーを荒々しく運転する以外、一発ギャグ以上の演技はあまりしなかった。全服の信頼を置くべきIMDBのトリビアによると、ロリンズが共演したジョシュ・モステル(Josh Mostel)との掛け合いは、ほとんどアドリブだったそうだ。

今おもえば、脳みそ海綿体の警官役がロリンズにぴったりなのは疑いもないが、1994年にロリンズに警官役をやらせるなんて、J・F・ケネディの月面着陸宣言と大して変わらないくらい突飛だ。『ザ・チェイス』によってロリンズは、自力でタフガイ専門俳優としての生涯パスを手に入れた。こういう奇跡があるから、ハリウッド、いや、世界は本当に素晴らしい。