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長髪とショートカットのクロスオーバー THE CRUMBSUCKERS

「ハードコアとメタルクラシック…たくさんの変わったパーツを詰め込んで、ひとつのアレンジになっていった」

先にセカンド・アルバム『BEAST ON MY BACK』を手にしたら、このバンドの印象決まっちゃいますよね。いくらその前に素晴らしいファースト・アルバムを出していてもねえ。ビーズティー・ボーイズと長髪メタルくんとロッテの井口選手と若かかりし火野正平みたいのがキレイに収まっている。大体ココで98%の方がレコ棚に戻してしまうと思うのですが、お家に持って帰った漢のみなさんもプレイしてのいきなりピアノソロに「ゲゲゲ~」と。このうちの99%の方がレ○ファンとかディスク○ニオンさんにお連れしたかと思います。そのTHE CRUMBSUCKERSが今年の五月に復活!一体ここ日本でどんだけの人が「ウォー!」となるかは疑問ですが、本国はもちろん「ウォー!ウォー!」となっております。ヤバ!乗り遅れちゃいけない!やっぱトレンドはニューヨークからでしょ!ってことでTHE CRUMBSUCKERSにインタビューです。

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THE CRUMBSUCKERSは、NYロングアイランドのボールドウィン出身。メンバーの髪型はロングとショートが入り交じり、彼らのベッドの周りにはVAN HALENとBAD BRAINSのポスターが貼られていた。スラッシュメタルとハードコアを融合させた彼らはCBGBの「ハードコア・マチネ」への出演を皮切りに人気を集め、クロスオーバーの傑作ファースト『LIFE OF DREAMS』(1986)と、メタル感を強め過ぎて正当に評価されなかったセカンド『BEAST ON MY BACK』(1988)を出して表舞台から消えた。彼らは2006年に一度だけ再結成したが、9年後の現在、またまた復活しブラック・アンド・ブルー・ボウルに登場する。オリジナル・メンバーのゲイリー・メスキルが語る。

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THE CRUMBSUCKERSのほとんどのメンバーがフロリダにいるとは知りませんでした。

出身はロングアイランドだけどね。ほとんどの奴はボールドウィンで育った。でも年月が経つにつれて他の場所に落ち着いているんだ。ほとんどのメンバーが、今ではこのフロリダにいるよ。例外がクリス・ノターロ。彼はまだロングアイランドだ。

再結成への準備はどうですか?

週末毎にクリスが来てフロリダでリハーサルをやっているんだ。地元だからガソリン代がかからないのがイイね。もちろんこれからのショーのための移動代はかかるけど、その心配はあとで(笑)。今回の再結成は『LIFE OF DREAMS』からのメンバー、5人中4人がステージに上がるんだ。残念なことにデイブ・ウィンは参加しないから、PRO-PAINのアダム・フィリップスにセカンド・ギターを頼んだんだ。

ウィンはどうして参加しないんですか。

これについてはたくさん話し合った。彼はかなりじっくり考えていたよ。でも結局、自分の技術に満足していないと言っていた。それが理由だけど「もう上手く弾けない。再結成をダメにしたくない。もちろん、一緒にプレイしたいけどね」と話していた。

も事前に分かって良かったですよね。

そうだね、デイブはいい奴さ。もし『LIFE OF DREAMS』のラインアップをブラック・アンド・ブルー・ボウルで披露出来たならとても最高だろうね。本当にそれが夢だった。前回の再結成よりもっとすごいものになったろうしね。でも残念ながら、うまくいかなかった。惜しかったなぁ、5人中4人だからね…。でもアダムも素晴らしいギタリストさ。

2006年の再結成は『LIFE OF DREAMS』のリリース20周年記念のために行なわれましたが、今回には何か特別なことがあったのですか?

2006年の再結成は大成功だった。ミッドタウンのBBキングズでやったショーも満員だった。バンドは何年も死んだ状態だったから、最初はどの会場でやればいいのかも分からなかったんだ。でも当時のエージェントから、BBキングズはパーフェクトだ…って説得されてね。正直自信は無かったんだけど、その通りになって良かった。その後、多くの人から「また復活しないのか?」って訊かれまくってね。特にMADBALLのフレディ(・クリシアン)が、何度もバンド再結成をおねだりしてくれたんだ。去年は他のバンドのツアーがあったから無理だったんだけど、今年はどう、と思い切ってメンバーに話した。そしたらみんな興味があったんだ。フレディに話したら、彼がブラック・アンド・ブルー・ボウルをおさえてくれたよ。フレディはかなり好奇心旺盛で、バンド再結成にまつわるアイデアをたくさんくれたよ。彼がいなかったら、こんなに早く再結成出来なかったと思う。それにかなり驚いたのは、メンバーがとても前向きだったんだ。全員がやる気だったらもうやるしかない。俺たちはみんなここにいるし、そして元気だ。俺たちはやれるし、ファンもそれを長年求めていた。だからやるしかないよね。

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最近はあらゆるバンドが再結成しています。それには賛成、それとも反対ですか?

正当な理由があるなら…ファンのためであるなら大賛成さ。金銭的な理由ならちょっと考えるけど。もちろん、そのバンドが音楽的にもうまくいくという条件でね。だって、ラストになるかもしれない演奏が下手っていうのは絶対に嫌だからね。2006年はとても良かったと思うし、まわりからも評判も良かった。今年も、もう一度ファンの期待に応えるのは可能だと思う。

誤解しないでほしいのですが、私は正反対の意見です。バンドが金銭的な理由で再結成するのは正当だと思っています。アーティストなのですから、それを仕事として続けるのは間違っていないし、個人の問題だとも思います。

なるほど。

どう思いますか?

正直よく分からないな。ファンはただ古いお気に入りの曲が聞けるのを望んでいる。ノスタルジアを好み、昔の思い出すべてが呼び起こされるのが好きだ。その点はとてもクールだと思うし、自分も再結成についてはそう感じていて、君の言うことは正しい。結局はバンドそれぞれの選択だね。再結成を一度、または何度もやることについて、他人がとやかく言うことではない。

今回の再結成で終わりだと思っていますか?

今の時点でバンドのキャリアについて大きく変更したり、新しい音楽を一緒に作ったりする計画はないし、ブラック・アンド・ブルー・ボウルの先のことも考えていないよ。だからメンバーが集まるのはこれが最後になると思う。なぜなら、みんな、他のことでとても忙しい。クリスはハードコア・シンガーとして本格的に復帰するのにかなり努力してたみたいだよ。彼は長年、遠ざかっていたからね。とても難しかったんだ。

今、彼は何をしているのですか?

彼は造園業をしている。あとたしかテキスタイルのビジネスにも手を出していると思う。造園業は父親の代からだね。企業向けにハイウェイとかいろいろやっている。多くの時間が取られて、そしてもちろん彼には家族がある。多くのメンバーはまだ音楽をやっていて、チャック・レネハンと自分もいろんなバンドをやっていて忙しい。ダン・リチャードソンは、運輸業で車やリムジンを保有して忙しくしているよ。彼はいつも仕事の電話を受けている。こんなメンバーをまとめるのは難しいから、今の時点では本当に5月以降のことは考えていない。彼らがもっとコンサートをやりたいならきっと考えるけど、現時点ではないだろうね。

RORSCHACHのメンバーたちとも同じ話をしたんです。彼らはたくさんショーのオファーを受けているけれど、5人のメンバーには家族が合って、メンバーでお金を割らなければならないので、そんなくだらないことは出来ないと。

うん、大変だよね。ワンステージに対するギャランティーを見ると「おっ、かなりの大金だ」と思う。でもステージをして出費を全部払って、残ったお金を5等分する。そうなると、金銭的なことよりも、音楽に対する愛とか音楽を求める気持ちの方が強くないと納得出来ない。まあ、音楽をやる俺たちのインスピレーションに関して言えば、きっとお金はリストの最後だね(笑)。

今回のショーでは、どちらのアルバムからがメインになるのでしょう?

『LIFE OF DREAMS』は全部やって、『BEAST ON MY BACK』からはたぶん6~7割かな。時間が許せばね。どれくらいの時間になるのか正確にはまだ分からない。でもファンの大多数は『LIFE OF DREAMS』が好きだ。彼らを怒らせたくはない。だから全アルバム曲をやって、あとは『BEAST ON MY BACK』のお気に入りを何曲か演奏するよ。

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親切ですね!今一度アルバムを聞きながら考えていたのですが、ほとんどの曲が時代のキーワードをうまく使っていますね。歌詞の中にロナルド・レーガンがたまに出てきます。そういう点は続けるのですか?アップデートしたい気持ちはあります?

政治に関する古臭い言葉は気にならないね。できるだけ忠実に再現するよ(笑)。歌詞を知っている人なら、最近の俺たちのやり方にクスクス笑うだろう。

おっしゃる通りです。それに知っていますか?ロナルド・レーガンの調子がまだ悪いってことを。

もちろん(笑)。俺たちは彼の遺産を生かしておく。そういう風に見てくれよ(笑)。

あなたたちは正に「クロスオーバー」の始まりでした。当時は「メタルとハードコアを合体させたい」というような意識を持っていましたか?それとも、自然に発生したものですか?

いやスタイルのことを言うと、自分たちが何をやっているのかを全然分かっていなかった。環境によるものが大きいと思う。俺はNWYUの番組「ノイズ・ザ・ショー」をよく聞いていた。素晴らしかったな。そのラジオを聞くことによりバンドを始め、ニューヨークのコンサートへ行き始めた。MISFITS、BAD BRAINSとか、初期の偉大なパンクとハードコアのバンドさ。本当に全部見たね。

何歳でしたか?

行き始めたのは14歳。当時の14歳が当然行き着くジャンルさ。THE CRUMBSUCKERSを始めたのは15歳。ロングアイランド出身だから、パンクとかハードコア・シーンの知り合いはあまりいなかったんだけど、バンドをやりたいヤツらは知っていた。VAN HALEN好きからMINOR THREAT好きまで…そんなヤツらとセッションしてたよ。MISFITSやBLACK FLAGのカバーとかもやったね。そしてオリジナルを書くようになるんだけど、ハードコアとメタルクラシック…たくさんの変わったパーツを詰め込んで、ひとつのアレンジになっていった。でも同時に、他のバンドがやっていることも取り入れたよ。クロスオーバーのアーティストとして他にはD.R.I.がいて、俺たちはひとつの共同体だと思っていたね。それがクロスオーバーとして知られるようになった。そのジャンルの中で一番有名なのはS.O.D.だと思う。

D.R.I.の話に戻るけど、彼らの初期の作品は本当にかなり過激だった。ものすごく速かった。ブレヒト兄弟が演奏していたころだと思う。ファースト・アルバムは、大のお気に入りだったよ。あと『4 OF A KIND』あたりのレコードは、さらにクロスオーバーのスタイルが進んでね。彼らはもっとメタルの影響を入れていた。あとC.O.C.。彼らはもうちょっと過激だった。でもオリジナル・スタイルを持っていて最高だった。当時のすべてのバンドは本当にBLACK SABBATHを評価していたし、彼らのリフや作品にとても刺激されたね。それはクロスオーバーのバンド仲間では共通の認識だったよ。

D.R.I.やC.O.C.はニューヨーク以外のバンドですが、どのように交流が始まったのですか?

数年間、日曜日の(GBGBハードコア)マチネにいつも参加していたからね。そこで知り合ったんだ。彼らのイースト・コーストやミッドウエスト・スタイルがかなり好きになったね。エッジが効いていてハードだったな。若者にはアピールするものがあった。

マチネはどんな感じだったのですか?

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いつも興奮していたよ。仲間もみんなマチネに通っていた。ロングアイランドでの生活とはまったく対照的でね。それまで俺たちは郊外で育ち、その環境だけで楽しんでいた。でもこの頃になると、週末にはCBGBに入り浸りになった。危ないこともたくさんあったね。でもそれもクールなことだと感じていたんだ。

もちろん、DMSのようなスキンヘッズではなかったんですよね?

そうだね。でもかなり初期の頃は、自分たちのことをロングアイランドから来たよそ者だと思っていた。溶け込むに少し時間がかかったけど、ハードコアのシーンで自分たちの居場所を見つけたよ。マンハッタンで最初に演奏できたのは、AGNOSTIC FRONTのロジャーのおかげだ。場所はCBGBでH.R.&COMPANYのオープニングだった。1981年だったかな。反応がかなり良くて、するとニューヨーク市内でももっと多くのショーが簡単に出来るようになった。CBGBではたくさんのマチネで演奏したし、自主企画も始めて、ロングアイランド出身のバンドたちをたくさんブッキングしたね。

バンドをしていたから、たくさんの友人が出来たと思いますか?

もちろん。共通点もたくさんあるしね。レコードにたくさんの目が向いて、完全な仲間意識が生まれて。「ニューヨークのショーに出してもらえるなら、お前らをロングアイランドにあるライト・トラック・インとか、コネがあるところにブッキングするよ」って感じでね。ハードコアとパンクシーンはどんどん大きくなっていった。その結果、多くのバンドが才能を開花させたんだ。

インターネットのおかげで、当時のシーンの情報は今も手に入りやすくなりましたが、まだ再評価されていないと感じるバンドはありますか?

ロングアイランドのTHE NIHILISTICSだね。本当に好きだった。いつも彼らにしかできないことをやっていて、でも正当に認められたことはない。もっと広く再評価される必要のあるバンドのひとつだと思っているよ。なぜか厄介者扱いだったんだよね。

最後に自分で買った最初のメタルアルバムは何か覚えていますか?

KISSの『ROCK AND ROLL OVER』。でもメタルでいいのかな?

良いアルバムですね。

今でもすごいアルバムだよ。そう言えるね。KISSのこれら初期のレコードに挑戦するのは難しい。今までで最も人気のあるロックミュージックさ。あともちろんSABBATH、そしてJUDAS PRIESTやIRON MAIDENも。