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METALLICAのドラマーは、デンマーク出身の元天才テニスプレーヤーで、熱狂的なアート愛好家で、世界でも有数のラーズ(Lars)という名の男のひとりだ。また、長い間メタル界では、ズタズタな評判を保ち続けている。どこかのメタル・アイコンが亡くなると「代わりにラーズが逝っとけ」というフレーズが毎回纏わりつく。それを目にした経験のない人は、どこのロック界で生きているのか教えてほしいものだ。「メタル・コミュニティーは堅物だらけ、思い上がり野郎ばかりだ」とラーズが発言すると、この冒涜に対してメタル・コミュニティーもすぐさま彼に飛びかかる。彼のドラム・スキルも定期的に酷評される。あまりにも何度も「クソッタレ」と呼ばれてきたため、〈Lars〉〈Asshole〉でググると、スモーガスボードほどの失言や、『ラーズが嫌悪されるワケ』と題した掲示板のスレッドが列挙される。

言葉を変えれば、ラーズ・ウルリッヒ(Lars Ulrich)は嫌なヤツなのだろう。だから私は身構えていた。彼のプロモーションチームが取材場所に指定したトライベッカの気取ったレストランに向かいながら、「さて、どれだけのクソッタレなのかな。中年になったから、少しは落ち着いたかな」などと考えていた。

しかし、ウルリッヒはクソッタレではなかった。ネガティブな要素も一切感じられなかった。それどころか、親しみ易く温かい人柄だった。 通行人に晒され、プロモチームに取り囲まれながらも、彼は非常に穏やかだった。よく考えながら、心を込めて応えてくれた。ある男が立ち止まって彼を凝視しようと、それすら意に介さない。素早く写真を撮られても、不安げな様子さえ見せなかった。私が彼から受け取った印象は、ひたむきさと、思慮深さだ。私の質問に熱心に耳を傾け、応えをさがすのに目を細めていた。エゴイスティックな男、という評判をよそに、自己認識はしっかりしているし、謙虚さも見受けられた。「仕事として演奏するのは、どういう気持ちか?」と訊いたときは特にそうだった。彼は、世界における自分のポジションをよくわかっていた。「毎日きちんと仕事をする人たちにとって、METALLICAが仕事、ってのは…少々失礼かな」と彼は語った。

確かに、たった30分のカフェ・デートだけでは、相手について知れる範囲は限られている。そんななかでの判断ではあるが、メタル・コミュニティを敵にまわしてしまうこともあるラーズ・ウルリッヒに集まる悪評に、私は同意しかねる。タイトな黒のタートルネック、派手なイタリア製の皮ブーツスタイルをよそに、私が会話をしたのは、戯言にまったく興味のない人物だった。それがスカンジナビア人ゆえの現実主義なのか、ゴマスリだらけの世界で人生を送ってきたからなのか、私にはわからないが、とにかくウルリッヒは、いい奴だ。ファンにはそれを知るチャンスがないのかもしれない。

「俺はデンマーク人だ。デンマーク人は、自らと相容れない存在に疑問を感じないんだ」と彼は説明する。「別に、ブツかりたいワケじゃない。自分はとても率直でオープンだ。52歳でアルバムを創るのは、決して簡単じゃないんだ。本当だよ」

インタビュー当時、ウルリッヒは記者相手のめまぐるしいプロモーション・ツアーをこなしていた。1日中、インタビューと撮影に追われていた。そして、バンドの最新作である『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』(Hardwired… to Self-Destruct, 2016)には、何十年振りに高評価を博している。この8年ぶりのフルアルバムは、頑強でタイトに仕上げられた傑作なのだ。

「ジェイムズ〔・ヘットフィールド(James Hetfield)〕と2人で、ルート101を北にドライブしたんだ。その道中、アルバムを最初から最後まで聴いた。ドライブで通して聴けないようなアルバムはダメだからね。それがカー・テストなんだ。もう25年も続けてる恒例行事だよ。とてもわかりやすいテストだし、目的地にも気分的に早く着く」

『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』は多くのファンを刺激した。何十年も前に全盛期を終えたバンドに期待するファンが未だにいる。しかしそれは、METALLICAに対するリアクションのいち部であり、正反対のリアクションもある。そんな興味深い2面性を備えているのがこのバンドだ。もしかしたらそれ以前からかもしれないが、クリフ・バートン(Cliff Burton)が死んでメタリカは終わった、と罵るメタルヘッズがいる。しかし、90年代半ばのあやふやだった時期、近年のパッとしないアルバムも含め、今なお彼らをリスペクトするメタルヘッズもいる。メタリカを愛するヘッズにとっては、初めて『メタル・マスター』(Master of Puppets, 1986)を聴いた瞬間、初めてライブで「オライオン(Orion)」を聴いた瞬間に昂った記憶だけで十分なのだ。刺激に飢えたアンチは、アルバムがリリースされるたびにガッカリしていたのも事実だ。しかし、2016年のMETALLICAは、1986年、1996年、2006年のMETALLICAとは違う。彼らが過去に発表したアルバムと同じものを、現在のMETALLICAが創るワケがない。

しかし、『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』は、『メタル・ジャスティス』 (…And Justice For All, 1988)と『メタリカ 』(Metallica, 1991: 通称〈ブラック・アルバム〉)の架け橋のような作品だといわれている。長年聴けなかった、ダイレクトなMETALLICAがここは詰まっている。『デス・マグネティック』(Death Magnetic, 2008)より何万倍も良い。相変わらずやりたい放題だし、ほとんどの曲は長過ぎる。アホみたいな90年代風グルーヴも聴かれる。ジェイムズのヴォーカルは洗練され過ぎており、ミックスにも不満が残る。しかし、「アトラス、ライズ!(Atlas, Rise!)」とか「スピット・アウト・ザ・ボーン(Spit Out the Bone)」などは、エッジが効いた王道のスラッシュメタル・ソングだし、初期のNWOBHMから受けた影響すらも堂々と表現している。そう、これはファンが長い間待ち焦がれた作品なのだ。

『デス・マグネティック』、コキ下ろされ続けているルー・リード(Lou Reed)との『ルル』(Lulu, 2011)から『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』の間に、どんな変化があったのかはわからない。中心メンバーも変わっていない。新しいベーシスト、ロバート・トゥルヒーヨ(Robert Trujillo)は、私が15歳のときにMETALLICAに加入した。現在、私は29歳だ。オリジナルメンバーのジェイムズ、ラーズ、カーク・ハメット(Kirk Hammet)は、ナップスターのいっ件など、これまであらゆる嵐に晒されてきた。しかし現在もなお、METALLICAはここに立っている。リードしている。いつもの通りだ。

30年間、名声、富、幸運、論争、関係者の死を経験しても、いいバンドは潰されない。

『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』聴きました。

どうだった?

ヤバいです。

でしょ。ありがとう。

たくさんメモを取りながら聴いたんですけど、《アトラス、ライズ!》を聴いたとき、真っ先にDIAMOND HEADが浮かびました。あなたたちのルーツに立ち返ったような音ですね。

この作品について、たくさんインタビューを受けた。「どうつくったのか?」と訊かれても何もわからない。本当に自分ではわからないんだ。6ヶ月後、もしくは1年経ったら、そのストーリーはまとまるんだろうけど、今はまだない。だからこそ他の人の意見に興味がある。

NWOBHMの影響と、METALLICAの凡ゆるキャリアが混在していますね。曲のスピード感、全体に溢れる攻撃的なスラッシュ・ヴァイブ、ギターソロ、どこをとってもメタルです。長い間、ファンが待ち望んでいたはずです。

それが〈METALLICA〉ってバンド名の由来だからね(笑)。俺にとっては、曲が良くて、それがリスナーに届くか。曲が酷くて、それがリスナーに届かないか。そのどちらかだけ。あとはすべて細かい話だよ。それ以上はなんともいえないね、もう少しアルバムと距離をおかないと。でも、ファンが気に入ってくれたら単純に嬉しい。親しい友人に何曲か聴いてもらったんだけど、彼らも気に入ってくれたみたいだった。ラジオのインタビューも受けたけれど、「ニューアルバムについて教えてください! どんなサウンドなんですか?」って訊かれても、「…多分、METALLICAなサウンドだ。それ以上は知らない。俺にはわからない」と伝えるしかなかったからね。

ひとつだけいえるのは、少しだけ許容範囲を広げるようにした。前作『デス・マグネティック』で俺たちはある打開策を見出したんだ。プロデューサーのリック〔・ルービン(Rick Rubin)〕に座らされて、自分たちにもっと寛大になるんだ、と諭された。だから、DIAMOND HEADやその他の影響がわかるとしたら、それは正解だ。俺たちは何年もの間、常に何か違うパターンや、違う音をつくろうと努力していた。やり過ぎたのかもしれない。前作をつくっている最中にリックがいったんだ。「過去を認めればいいんだ。過去から刺激を得て、それを受け入れればいいんだ」ってね。その手法が『デス・マグネティック』にも、今作にも取り入れられている。

既に認められている現在のあなたにとって、周囲の意見は、どれほど重要なんですか? 長年、あらゆる状況に晒されてきて、今さら細かく気にするようにも思えませんが。

(笑)。いいか、どんなアーティストでも、ミュージシャンでも、ライターでも、詩人でも、もちろん絵描きや映画製作者も含めて、どんなクリエイティブな人間も、選択肢があるならば、作品を嫌われるよりは理解されたい。2016年になった現在、誰もが意見を発表できる。もちろん俺たちは、それをありがたく受け入れる。それを取り入れるさじ加減の調整が俺は得意なんだ。デヴィッド・フリック(David Fricke:『Rolling Stone』誌のシニア・エディター)や仲間たち、もしくは自分自身の「なんだ、これは?」という意見は、そのほかの意見とは別物だ。どこかの17歳のガキがインターネットで「ジェイムズが呑んだくれていたときのMETALLICAの方が良かった」なんて不快なコメントを投稿するんだ。リスナーはナンセンスな書き込みをする。けれど誰だって、『Rolling Stone』ではいいレビューをされたいハズだ。そうやってバランスが取れているんだ。

けれど今のところ、圧倒されるほど良いリアクションばかりだ。もちろん、25人いたら全員じゃない。俺たちは15年前からずっと「METALLICAなんてクソ食らえ」って賞金首になったままだ。しかし実際、そういうヤツは全体のうちのほんの僅かだ。アーティストとして歳を重ね、上手くなったけれど、テクノロジーが進化や、豊かな経験のせいでオプションが増えてしまうんだ、。オプションが多いと、面倒も増える。若くてクレイジーで、活気に満ち溢れていた20代の頃は、大して何も考えてなかった気がするんだ。とにかくやるだけだった。今はいちいち、「OK、こっちの方がいいか? それとも、こっちか? 待て、どれがマシだって? このふたつ? もう少しスローにもできる。そこのキーを変えればいいだろ。いや、こうした方が…じゃあ、オーバーダブしよう」となる。いつの間にか、17通りのクソみたいなオプションを前にして、徐々にすべてが重荷になるんだ。だから、みんながまだ期待してくれているのがわかって嬉しいんだ。なかなかいいアルバムだって? ああ、いただいておく!

年齢について触れていましたが、あなたたちに歳をとって欲しくない、と考えるファンがいるのは興味深い事実です。未だに18歳のままのスラッシュ・キッズでいて欲しいという想いが、どこかにあります。

きっと、どうしようもないんだよ! それもロックン・ロールの要素なんだ。ハードなロックは特に奇妙だよね?

「デモの方が常にいい」ってヤツですね。メタルファンは、自分が初めて見つけたときの状態で、バンドを凍結保存しておきたい。しかし変化して、ポピュラーになると…。どういうリアクションが起こるかは、あなたがいち番よく知っているはずです

キャリアを重ねながら、いろいろなレベルで俺たちは状況と戦ってきた。『ライド・ザ・ライトニング』(Ride the Lightning, 1984)に「フェイド・トゥ・ブラック(Fade to Black)」を入れたとき、メタル・コミュニティーの大勢が正気を失った。でも、以来ずっと、それが俺たちのいち部になった。でも俺たちは、こうあるべきだ、というイメージに決して順応しないし、したくない。ある意味、ハードロック、ヘヴィメタルの美学のなかで、その1点が俺たちには相応しくなかった。俺たちにとってはくだらなかった。だからこそ、できる限り同調する姿勢を避けてきたんだ。何度もコースから外れた過ぎた時期もあったけれど、型にはまって、自分に挑まないよりはマシだ。ハードロック狂の連中からは「おい、『メタル・マスター』をやれ!」なんていわれる。もしくは「どうして、髪を切ったんだ?」とか。「なんでああなった? なんでそうなった?」とね。そういうもんなんだよ。

メタルの本質は、保守的だと考えていますか? もちろん政治的な意味ではなくて、いち部のファンが、自分たちのアイドルとその作品に、猛烈に執着するという点においてです。

ひとついえるとすれば、歳を重ねるにつれて、いかなるものにも白黒つけないようになる。確かに、保守的な歪みが見える部分もある。しかし…失礼になるから、名前はあげないが…、すべての保守的なバンドに相対して、MASTODONや、KVELERTAK、SLIPKNOTなど、奇妙で、新しくて、クールな音楽にずっと挑戦し続けているバンドがたくさんいる。今までと違う新しいものは、常に誕生する。新しいハイブリッドも生まれる。俺たちが育った80年代の、剣やら魔術やらの中世のたぐいは、俺たちに向いていなかったんだ。俺たちの態度も、どちらかというとパンクだったからね。俺の大好きなDIAMOND HEAD、JUDAS PREIST、AC/DCなんかと同じくらい、THE RAMONES、THE SEX PISTOLS、THE CLASH、ANTI-NOWHERE LEAGUEもすべて愛していた。俺たちはいつも、どこかパンクなものを受け入れがちなんだよ。MOTÖRHEADがその典型だ。彼らには、ものすごく影響を受けている。

なるほど。究極のクロスオーバーですね。

 その通り。

レミー〔・キルミスター(Lemmy Kilmister)〕の死を知ったときは、どう感じましたか?

すごく落ち込んだよ。彼の誕生日パーティーで会ったとき、弱っていたけど気はしっかりしていた。病気なのはわかっていたけれど、それほどだとは知らなかった。そのパーティーの2週間後、彼は逝ってしまった。こんなに早いとは予想もしなかった。

彼は病状を誰にも知られないようしていたそうですね。ある意味、彼のファンに対する親切心だったのでしょう。私たちを心配させないように。彼は本当に大きな存在でした。あなたも同じように良く知られています。そのヴァイタリティーや力強さは、たくさんのオーディエンスに影響を与えています。そのプレッシャーを感じていますか? 年老いた話をしないようにしたりとか?

俺はここに座ってピザやマクドナルドではなく、鳥の胸肉とサラダを食べている。今日は6時間労働だ。10年前は8時間だったし、20年前は12時間だった。いっている意味わかるよね? 自分の人間らしさに誇りを持っているんだ。俺たちは常に正直だ。ファンと同じ立場で、親しみ易くいるよう努力している。俺には隠し事がない。70年代は、LED ZEPPELINとかKISSとかの時代だった。もちろん失礼をいうわけじゃない。彼らを高く評価している。しかし、その頃のバンドには伝説的で神秘的な要素があったけれど、そういうのは時代と共に去ったんだ。今の時代は、そんな風に逃げるのではなく、受け止めるべきだ。SNS上でも、できるだけ率直でいるよう、俺たちは努めている。

あなたたちは常に、普通の人間らしいバンドでしたものね。

そう。俺自身、いつも真実を伝えてきた。たとえそれが、その瞬間だけのものだとしてもね。過去にはいろいろあったけど、この数年間は落ち着いて活動している。妙な出来事に遭遇したり、騙されたりもしていない。夜は、割と安心して枕に頭をうずめている。考え事もない。このまんまだ。METALLICAは常に何かしら文句をいわれる。なぜかは知らない。君だったら、そのすべてをリストアップできるだろう。「このアルバムにはベースが足りない」「どうして髪を切るんだ」「なんでオーケストラとやってんだ」「カークの黒マニキュアはクソだ」。35年も続けているから常に何かいわれている。

理想の中年像になりましたね。METALLICAで家を買えたんですから。

おかしな話だ!

後悔はないですか?

もちろんある。だけど俺は、人生において、基本的にそういう考え方をしない。どんな状況においても、最終的にはその状況に対してベストを尽くすだけだ。そう考えると後悔はない。ナップスターの件についてもそう。何に巻き込まれているのか、全くわからなかった。ストリートのケンカだよ。正にストリートのケンカから始まったんだ。なんだこいつらは、どこかに消えろ、これはストリートの殴り合いなんだ、ってね。しかし、あっという間に世界のステージの中心にいた。「どうして、こんなことになったんだ?」と考えてばかりいた。しかし、これまで何度もいい続けてきたように、それが俺たちのやり方だ。考えるより行動だ。METALLICAという存在には、すごく衝動的な面がある。俺はそれが気に入っている。だからファンの大半も、その衝動性を理解してくれていると嬉しい。計画に沿って、全てのステップが慎重に考えつくされていくような、ガチガチのガードで固まっているようなものは不自然だ。まぁ、たまには全員で「クソ、もう少し考えておくべきだった」と反省したりもする。

常に注目されているのは大変ですよね。変な気分になりませんか? カセットテープのトレードをしながら育ったキッズが、レコードを何枚もつくって、あっという間に有名人になりました。ちびりませんでしたか?

あまり気にしていない。そのおかげで十分いい目にもあった。必要とするあらゆる扉を自由に開けられるだけ有名になったけれど、ここで君と一緒に座っていられないほどではない。もっと超有名人だったら、この状況はありえない。立ち止まって写真を撮るようなヤツはいる。でも、METALLICAのドラマーがチキンを食べている写真を撮ったところで、対して価値がないとすぐに気づき、そのまま去っていく。それでいい。

『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』で、もっと新しいファンを増やそうとか、批判しがちな人たちを納得させようとか考えましたか? それとも、どちらかといえば、現在のファンをもっと満足させたいですか?

俺たち全員、いろんな人間がいるのを知っている。俺は、この世の物事のほとんどは、グレーだと考えている。だから〈どの層に〉なんて考えていない。50代、40代、30代、20代、ティーンネイジャー。なんでもありだ。どれかひとつを無理に特別扱いしたりしない。世界中のいたる所にいる13、14歳のキッズにとって、このアルバムはいわゆる通過儀礼になるだろう。今でも、そんなキッズがたくさんいる。たまにSNSをチェックするんだが、Instagramのフォロワー数は200万ほどいて、若者も多い。素晴らしいよ。バランスがとれているんだ。特に、ファン層が若いスカンジナビアなどでは、14歳の女の子が最前列にいたりする。親が、子供たちを連れてきている場合もあれば、子供が親を連れてきている場合もある。これは素直に楽しい。

俺は左右されない。昔のように、いちいち数字を追ったりもしない。もう別物なんだ。10年や20年前は、ゲームのように、その特定のルールの中で動いていた。最近は誰もルールなんて守っていない。今の音楽業界は、さらに堕落している。まったく予測不可能で、いわば西部劇みたいなもんだ。今の時代は、〈みんなが何をしているか?〉ではない。〈自分が何をしているか〉だ。〈自分のための行動をしているか〉なんだ。だから前に比べると楽になった。1ヶ月ほど前、自分の音楽を前にして自問自答した。「俺たちは一体、この音源をどうするんだ?」ってね。昔ながらのお手本に添う必要がない。どうするのがベストか、どう共有するのがベストか。ミュージック・ビデオをつくって、1曲目を配信した。それは、たった2日間で完成した。火曜の夕方に撮影をして、そのまま夜中にひとつかふたつ修正した。そして水曜の朝には、俺たちのYouTubeページにあげた。この回転のクソ速さといったら、どうだ?

かなりパンクですよね。

 よくいってくれた! それが俺たちだ。彷徨う真のパンク野郎どもだ。なによりも今の時代において大事なのは、〈自分にとって上手くいく方法は、何だ?〉だろ。〈業界やビジネスの中で、自分は当てはまる場所はどこか?〉なんて考えはもう無意味だ。

METALLICAが自分の仕事だ、と認識した瞬間を覚えていますか?

その話は既に何度かしているんだが、1986年、オジー〔・オズボーン(Ozzy Osbourne)〕とのツアーで、ヴァージニア州ハンプトンでライブをした。ライブ前に、マネージャーのクリフがやって来て、俺たちをツアーバスの最後部に座らせた。そして全員の目を見ながらいったんだ。君たちは、家を買えるほど金を稼いだってね。居心地の悪い沈黙が流れ、「本当か? 俺たちは、本当にこれで生活をしていけるのか?」とお互い見つめ合った。「マジか?」という瞬間だったな。もちろん、俺が音楽を糧にしているのはわかっている。だから俺の仕事だといえるだろう。なんていうか…俺たちは恵まれていた。俺たちの得意分野だったんだから。

あなたたちは、なぜ続けているのですか? もう続けなくてもいいほど、あらゆる成功を収めました。あえてやる意味を教えてください。

本当に楽しいからだ。今でも楽しい。楽しくなくなったり、しっくりこなくなったら考えるけど、それが差し迫っているわけではない。それより問題は身体面だろう。とにかく俺は、みんなと音楽をやるのが本当に好きなんだ。ほかの誰かとの演奏なんて想像もつかない。ジェイムズと曲を書いて、プロデューサーのグレッグ・フィデルマン(Greg Fidelman)とくつろいで…。楽しいに決まっている! 俺の見解はこうだ。俺にとっての実質的な仕事というのは、責任ある父親としての子育てだ。もちろん、嫌な仕事という意味でないし、そこには目的がある。どちらかというとMETALLICAは男の溜まり場…そう、逃げ場に近い。現実世界との関わりを減らし、4人で集まり、少しだけ若返れる場所がMETALLICAなんだ。ユルくていいしね。家での俺の生活は規則正しいものだ。子供、宿題、7時の夕食。さらに、学校への送り迎えと、その当番のオーガナイズ、野球、ベースのレッスン、ごまんとある子供同士の遊びの付き添い。それらすべてをこなしている。逆にMETALLICAでツアーに出るとゆっくり寝られる。俺は昨晩この街に来て、友人たちとシャンパンを1杯飲んだ。今朝起きてからは、写真撮影をいくつかこなし、君とここに座り、1時間ほど自分について話している。悪くない日だろ? もちろん、子供たちを学校へ連れてくのと、どちらがいい日か? なんて話ではなく、そのオプションが有り難いんだ。これがその質問の答えだ。インタビューは、自己セラピーにもなるな。

でも、この手の質問は、既に何回も訊かれいますよね?

長くやってきただけにね。だけど、俺の精神状態は毎秒毎分違う気がする。例えば、明日、同じ話をしたとする。明日のムード、明日の考え、世界に対する明日の見通しによって、答えは少し変わるかもしれない。そりゃ、そうだろ? 今日の3時から5時までのあいだが、俺の真実だ。明日の3時から5時は、また別の真実があるかもしれない。そんなもん、誰にもわかるはずない。

では最後の質問です。やはりステージの上で死にたいですか?いわばレミーのように。それとも徐々に身を引きたいですか?

徐々にしたいね。レミーには失礼かもしれないけど、俺は徐々に身を引きたい。

どこに埋葬されたいですか?

埋葬はいやだ。どうしたいかまだわからない。もちろん、考えるべきだ。世界のどこにいても、自分はデンマーク人だと感じる。デンマークのパスポートもまだある。だからある時点で、しかるべき形で帰郷するだろう。…骨壷の中か、もしくは…いや、それ以上はやめておこう。喋り過ぎだ! まだわからない。また君と話す機会に備えて、弱火で煮込んでおくよ。