〈TODAY IS THE DAY〉と検索すると、遠藤舞akaまいぷる(ex. アイドリング!!! 3号)の記念すべきデビューシングルがトップ表示されるジャパンだが、ここに〈バンド〉というキーワード加えてみよう。洗足学園音楽大学出身のイカしたロックバンドさえスルーすれば、暗黒世界に轟音を降り注ぎ続けるカオティック・ノイズメタルバンドに辿り着く。まいぷるの初々しい水着グラビアに勝るとも劣らない興奮を味わえるのだ。そう、テネシー州ナッシュヴィル出身のTODAY IS THE DAY。彼らがシーンに与えた影響はとてつもなくデカイ。

TODAY IS THE DAYが結成されたのは1992年。創始者はスティーヴ・オースティン(Steve Austin)。彼を核としてメンバーは幾度も入れ替わっているが、現在もバリバリ轟音中である。ちなみに現MASTODONのブラン・デイラー(Brann Dailor)&ビル・ケリアー(Bill Kelliher)もTODAY IS THE DAY出身。また、スティーヴ・オースティンは、自身のスタジオ〈AUSTIN ENTERPRISE RECORDING AND MASTERING:AERM〉を設立し、LAMB OF GOD、CONVERGE 、DEADGUY、UNSANE、BANEなどのプロデューサー/エンジニアとしても活躍。今や血染め職人の巨匠だ。

そんなTODAY IS THE DAYの初期を代表する作品が、1997年に発表された4thアルバム『Temple of the Morning Star』。当時、驚くほど多くのリスナーが、同作をバンドのファーストアルバムだと勘違いしていた。それほど彼らは、〈知る人ぞ知る〉バンドだったのだ。

彼らは『Temple of the Morning Star』以前のアルバム3作を〈AMPHETAMINE REPTILE RECORDS〉からリリースしていた。ミネアポリスを拠点に、90年代半ばにはHELMETの名を世間に広めたノイズロックレーベルだ。TODAY IS THE DAY は、独特の不協和音を用いた耳障りなアバンギャルド・メタルサウンドに加えて、〈AmRep〉(AMPHETAMINE REPTILEの略称)が醸し出していたダークな美的センス、アウトサイダー・ヴァイヴスと見事に馴染んでいた。しかし90年代のオルタネイティヴ・ムーヴメントに乗っかって、AmRep所属バンドもこぞってメジャー移籍。HELMETを筆頭に、SURGERY、BOSS HOGが表舞台に乗り込んだ。更に代表バンドだったTAR、GOD BULLIESも、それぞれTOUCH & GO、ALTRENATIVE TENTACLESといった大手インディペンデントレーベルに移籍。AmRepには、TODAY IS THE DAY以外に目ぼしいバンドがいなくなってしまった。しかし、元々このレーベルのオーナーであるトム・ヘイゼルマイヤー(Tom Hazelmyer)は、自身のバンドであるHALO OF FLIESのためにレーベルをスタートしており、また〈Haze XXL〉の名前で、版画家~デザイナ―としても活躍していたため、レーベルの運営に本腰を入れていたわけではなかった。そこで何の未練も残さず、1997年あたりからリリース数を減らし、作品のプレスもストップ。第一線でのレーベル運営から撤退した。そこでTODAY IS THE DAYは、あらたなレーベルと契約を結んだ。90年代後半のアンダーグラウンド・メタルシーンと密接につながっていた名門〈RELAPSE RECORDS〉である。(ちなみにAmRepは2000年に復活。限定200枚とか、木製ボックスセットとか、シルクスクリーンジャケットとか、100%趣味丸出しでMELVINS、UNSANE、HELMET、BOSS HOG、H・O・F aka HALO OF FLIES 、REDD KROSSなどの作品をリリース。レーベルの軌跡は、『THE COLOR OF NOISE』というドキュメンタリー映画にもなっている。)

NEUROSISやEYEHATEGOD のようなバンド同様、TODAY IS THE DAY も様々なジャンルの狭間を歩んでいた。メタル、インダストリアル、ハードコア、ノイズロックなどのエッセンスが感じられるが、生み出された楽曲は単なるパーツの寄せ集めを軽く凌駕している。『Temple of the Morning Star』の制作を振り返り、オースティンは次のように語る。

「当時私は、ナッシュヴィルの倉庫内にある自分のスタジオで暮らしていたんだが、ボロボロで疲れ切っていた。唯一わかっていたのは、自分の活動に自信がある、ということだけ。ツアー中になにが起きようと、毎日、毎日、ただただ、この音楽を伝えたいだけだった。この気持ちだけは手放さなかったね。あの忌々しい倉庫に幽閉されていた日々は、抑えるのが困難なほど、私の神経を酷く逆なでしていた。しかし、ある意味では最高の状況でもあった。なぜなら、自分の生活をコントロールできていたからだ。気の向くままにレコーディングしたり、作曲もできたからね。でも本当にあのスタジオはめちゃくちゃ酷かったんだよ。電気が合法の不法占拠地みたいなもんだ。そんな環境のなかで昼も夜も『Temple of the Morning Star』の作業をした。この作品は、自分にとってのバイブルなんだ」

「TODAY IS THE DAYの音楽スタイルは、私にとって、ごく当たり前なんだ。自らの創造性には壁を設けていないし、どんな禁じ手もない。他の誰かみたいになりたいとも、誰かみたいだった経験もない。もちろん、たまには自分が嫌になるときもあるだろう。しかし、少なくとも自分でいられるのは確かなんだ。『Temple of the Morning Star』の頃は、すべてにうんざりしていた。同調するのに吐き気がしていた。ただ、これまでで最も〈リアル〉なレコードをつくりたかった。それだけだったんだ。そしてそのためには自身のプライドと同時に、恥ずかしいほど叙情的な自分を晒け出すしかなかった。自分の欠点や弱さをありのままに曝け出す。つまり内面にしっかりと目を向けて、自らを破壊するさまを全ての人々に見せたかったんだ」

「悟りたい、超越したい、そう望むのであれば、先入観にとらわれてはいけない。そうなってしまうと全体像の半分を見失う。自分にとって音楽とは、音を媒介に溢れる思想であり、感情の発露だ。『Temple of the Morning Star』を聴いて、私と同じ感情とヴィジョンを抱くヤツはいないだろう。全てが時間の断片であり、誠実さこそがリアルなんだ。作品についても、聴けば録り直したくもなる。だが、そうしてしまうと、作品に誠実でなくなってしまう。ありのままの姿が誠実だ。醜いとか美しいとか、そんなのは問題じゃない。人が大切にしている少なくともひとつのもの、他に何も信じていなくても信じられるものこそ100%のリアルなんだ。そんな想いをみんなに伝えたいし、その事実を知って欲しい」

1997年当時、NEUROSIS、SOILENT GREENといった、エクストリーム・メタルシーンのなかでも、特にオリジナリティを持ったバンドはRELAPSEから作品をリリースしていた。TODAY IS THE DAY もこのフィラデルフィアを拠点とするレーベルに参加し、さらにバンドを高いレベルに押し上げ、幅広いオーディエンスを獲得していった。『Temple of the Morning Star』がRELAPSEから発表され、新しいファンたちは TODAY IS THE DAY 特有のコントロールされたカオスに晒されたのだ。

2017年、『Temple of the Morning Star』のリリースから20年が経った。それを記念し、ニューヨークの〈THE END RECORDS〉は、『Temple Of The Morning Star:20th Anniversary Deluxe Edition』を今春リリース。この再発盤は、FAITH NO MORE、ロブ・ハルフォード(Rob Halford)、そしてMAYHEMの作品などで知られるマオール・アッペルバウム(Maor Appelbaum)の手でリマスターされ、様々なフォーマットで発売された。

「THE END RECORDSのアンドレアス・カツァンバス(Andreas Katsambas)が、再発したがっていたんだ。この作品には、様々な背景や、知られざるエピソードがあった。だからオリジナル音源を回収し、膨大なDATのマスターテープ発掘からスタートさせたんだ」とオースちん。

『Temple Of The Morning Star:20th Anniversary Deluxe Edition』には、タイトル曲である「Temple of the Morning Star」のアコースティック・バージョンや、BLACK SABBATHの『Sabbath Bloody Sabbath』のカバーなど、数曲のデモトラックも含まれている。さらにそのデモトラックのほとんどは、キーボードではなくベースで演奏されているため、ここでは未体験のTODAY IS THE DAYサウンドを味わえる。また、プロフェッショナルの映像作家によって撮影・録音された、97年の『The Whisky A Go-Go』でのライブ演奏もDVDに収められている。アッペルバウムは次のとおりコメントした。

「このリマスターでは、作品から新しいなにかをつくり出そうとはしていない。すでにこのアルバムは完成されていたからだ。だから、新たに解釈しようと試みた。作品の手直しはしていない。強化しただけなんだ」

バンドの重要性を測る真のバロメーターは、そのバンドが他のアーティストに与えた影響である。『Temple of the Morning Star』のリリースにより、TODAY IS THE DAYは期せずして、カオティックでノイジーな新しいメタルバンドのために重要な土台を築いた。DEADGUYの『Fixation On a Co Worker』と共に、TODAY IS THE DAY はオールドメタルやオールドハードコアのファンに向け、全く新しい音楽へのアプローチを紹介したのだ。アッペルバウムも同意しつつ、さらにこう語る。

「TODAY IS THE DAYは、ファーストアルバム『Supernova』(1992)の頃から知っている。同様のスタイルを持っていたバンドは他にもいたが、TODAY IS THE DAY がいたからこそ、世間はこのシーンに目を向けたんだ。ある知り合いが、TODAY IS THE DAYの曲を弾いてくれて、それで私は彼らの存在を知ったんだが、とてもユニークな印象を受けた。非常にアグレッシブでありながら、そこにはある種の情緒も感じられたんだ。とても鮮明に覚えている」

『Temple of the Morning Star』リリース以降のTODAY IS THE DAYは、順調に活動を重ね、10枚のアルバムをリリースしている。最新作である『Animal Mother』(2014)は、Sunn O)))のグレッグ・アンダーソン(Greg Anderson)のレーベル〈SOUTHERN LOAD〉からリリースされたが、年内に予定されている待望の新作は、THE END RECORDSからリリースされるそうだ。また、スティーヴ・オースティンは、UNSANEのクリス・スペンサー(Chris Spencer)と共に、新バンドUXOを結成。血まみれ兄弟の契りほど美しいものはない。

現在TODAY IS THE DAY は、『Temple Of The Morning Star:20th Anniversary Deluxe Edition』のツアー中だ。

「世界中のファンたちとの再会を楽しみにしている。私のすべての愛と心は、ファンのみんなに向けているんだから!」とオースちんは締めくくった。

愛と心だけでなく、轟音もそう。ぜひここ日本でも『Temple Of The Morning Star』をカマして欲しい。