VICE Guide to New York Hardcore - AGNOSTIC FRONT_top

「初期はすんげぇカッチョ良かったんだけどねぇ~」…長いことやっているバンドには切っても切れないお言葉。でもそんなカッチョ悪い時代もね、世間の目を無視です。振り切るんです。したら「あら、やっぱカッチョいいいかも」になっちゃうワケで。だってパーソンズも24年ぶりの武道館ですってよ!(一度も解散してないって知ってた?スゲエ!!)やっぱ時の流れって優しいですね。そんな優しさに乗って活動して来たのがニューヨーク・ハードコアの超重鎮AGNOSTIC FRONT。ストップした時期もありましたが、数えてみれば結成から33年。佐藤江梨子と同い年です。あんなに発育した娘と同じなのです。(ちなみに熊田曜子とも)そりゃ酸いも甘いも経験してるわな。今回はそんなリビングレジェンドをご紹介。ハードコアの花道はまだまだ続くよ!

思春期

AGNOSTIC FRONTは、1980年に元THE ELIMINATORSのヴィニー・スティグマ(ギター)を中心にマンハッタンにて結成。82年頃から本格的に活動を開始し、ドラムはWARZONEのレイビーズ、そしてCAUSE FOR ALARMのキース・カブラやURBAN WASTEのジョン・ワトソンなどが歌っておりましたが、四代目ヴォーカリストとして元THE PSYCHOSのロジャー・ミレットが加入。(ロジャーのインタビューはコチラに)ここからがリアルなAGNOSTIC FRONTのスタートと言っていいでしょう。83年にデビュー・シングル「United Blood」を自主制作でリリース。BLACK FLAGからNEGATIVE APPROACHにも通じるハードコア・サウンドは、ドッタンバッタンひっくり返りながら思春期が疾走しまくるニクいヤツ。様々な意味でシーンに衝撃を与えます。

しかし翌84年にはモノホンの衝撃が。ファースト・アルバム『Victim In Pain』が投下されると、ニューヨークは大騒ぎに。AGNOSTIC FRONTのジャケットなどを手掛けたショーン・タガートもこう言ってます。

「プエルトリコから戻ってくると、CRO-MAGSのパリスが「AGNOSTIC FRONTを観ろ!」って言うんだ。前に観たのは覚えていたから「何言ってんだ?クソだろ!」って言ったら「いいから俺を信じろ」って。そしたら驚くほど良くなっていた!!ニューヨーク最悪のバンドから最高のバンドに生まれ変わっていたんだ!!」(フル・インタビューはコチラ

一気に成長して、歴史的名盤をぶっ放したAGNOSTIC FRONTは、THE EXPLOITEDやUK SUBSとのツアー、そして地元ではCBGBを中心にライヴ活動し、THE CRO-MAGS、MURPHY’S LAW等と並んで、ニューヨークを代表するハードコア・バンドになったのです。ちなみにこのときのメンバーは、スティグマ、ロジャー、そしてロブ・カブラ(ベース:CAUSE FOR ALARM)、デイヴ・ジョーンズ(ドラム)。

ただですね、彼らは自ら「スキンヘッズだ」と公言していたんですね。「でも俺たちは英国のそれとは違う。ファシストでもレイシストでもない。ただアメリカを愛しているだけなんだ」そうは言っても、その愛国主義的思想から、ライヴ会場はスキンヘッズだらけに。もちろん敵も増えていくわけです。そんな風潮の中、86年にリリースされたのがセカンド・アルバム『Cause for Alarm』。ここに収録された「Public Assistance」で、貧困者や身体障害者、老人などへの公的扶助に対し、「そんなもの貰ってないで、自分でなんとかしろ!」なんて歌ったもんだから、さあ大変。特にパンク専門誌マキシマム・ロックンロールは、徹底的にAGNOSTIC FRONTを叩き始めます。更に音楽的にも大きな変化がありまして、一気にスラッシュ~メタル化しちゃうんですね。元々のハードコア・ファンからは不評を買ったものの、新たな層を巻き込んでセールス的には大成功。クロスオーヴァー的側面からは、これまた名盤となりましが、この展開に不満を抱いたキッズたち…YOUTH OF TODAYJUDGE、GORILLA BISCUITSなどが、「ユースクルー」として台頭。AGNOSTIC FRONTの変化がきっかけで、ストレートエッジ・シーンが再燃したってのも面白い歴史ですよね。ちなみに今作でのメンバーは、スティグマ、ロジャー、ロブ、そしてアレックス・キノン(ギター:CAUSE FOR ALARM)、ルイ・ビーット(ドラム:CARNIVORE etc)。

更に恒例のメンバー交代。スティグマ、ロジャー、そしてウィル・シェプラー(ドラム:MADBALL)、アラン・ピーターズ(ベース:ABSOLUTION etc)、スティーヴ・マーチン(ギター)の布陣となって、87年にサード『Liberty & Justice For…』をリリース。前作に比べるとハードコア感は戻りました。IRON CROSSのカバーもあれば、ストレート・エッジを批判した曲も収録。そして89年には傑作ライヴ・アルバム『Live at CBGB』を発表。ベースもクレイグ・セタリ(YOUTH OF TODAY、STRAIGHT AHEAD、NYC MAYHEM、REST IN PEACES、SICK OF IT ALL etc)になって、一気に「アグノ復活!!」のロードを走り出したと思ったら、ロジャーがトホホ…のドラッグ密売容疑で逮捕。しばらく活動を停止します。

出所したロジャーは、獄中生活の想い出をたんまりと歌詞に注ぎ込みます。そして92年に4th『One Voice』をリリース。ここではマッド・ヘンダーソン(ギター:MADBALL)が加入。音の方はかなりヘヴィー。でもヘヴィーメタルではなーい。ミッドテンポにシフトダウン。モッシュ的アプローチもキメキメ。相変わらずギターはスラッシーで、いわゆるこの後に続くニューヨーク極悪ハードコアのベーシックを展開。傑作なのですが、後輩であるSICK OF IT ALLとかの影に隠れちゃった感があるなぁ。そして同年12月にCBGBでのライヴを最後に解散します。スティグマ、マッド、ウィルはサイドプロジェクトだったMADBALLを本格的にスタート。ロジャーはおやすみ。ちなみにこのラストライヴは93年に『Last Warning』としてリリースされました。長かったナァ!思春期!

アニ期

ニキビ時代が長かったので、こっからはスピードアップしますよ!1996年に再結成。メンバーはスティグマ、ロジャー、そしてロブ・カブラが復活。ドラムは新入りジミー・コレッティ。そしてBAD RELIGION やNOFX、OFFSPRINGなどの大成功でノリに乗っていたEPITAPHと契約し、5thアルバム『Something’s Gotta Give』を98年にドロップ。RANCIDのティム・アームストロング、ラーズ・フレデリクセンも参加。だからってワケではないけど、ハードコアよりもパンク~Oi臭超高め。これまたの変化に賛否両論でしたね。更に間髪入れずに6th『Riot, Riot Upstart』を翌99年にリリース。プロデュースはRANCIDのラーズ。当時のパンク・ブームもあってか、メディアにもガンガン登場。MTVアワードとかもね。Oi Oi言うてます。セールスもまずまずだったとか。

そして順調に2001年には7th『Dead Yuppies』を。更にこの頃ロジャーは、もっとOi~初期パンク・テイストが強いプロジェクト・バンド、ROGER MIRET & THE DISASTERSをスタートさせていて、一気にロッキン・アニキ色が爆発。ジョー・ストラマーからTHE 虎舞竜に匹敵する貫禄。深夜のTV番組でMCやっててもおかしくない貫禄。やはり初期からのファンは減って来ちゃったかなぁ。EPITAPH時代もここでおしまい!

オジ期

このまま頼れるアニキ路線で行くかと思ったら、まだまだ走る!迷って走る!いや迷ってるんじゃないな、ちゃんと考えてる。「ただいま考え中~」から、解答が早いだけ。いきなりココに来て4th『One Voice』の続編なのだ!8th『Another Voice』が届けられたのは04年。メンバーは、スティグマ、ロジャー、マッド・ヘンダーソン復活、そしてマイク・ギャロ(ベース:ON THE RISE)とスティーヴ・ギャロ(ドラム:ON THE RISE、INHUMAN)となっておりますが、も覚えなくていいです。で今作、続編ですからね、ガッチガチのタフガイコアで来ましたよ。極悪モッシュコアですよ。HATEBREEDのジェイミー・ジャスタがプロデュースでヤングの心を掴んだ!!…いや、残念ながら掴みませんでした。EPITAPH~アニ期から入ったファンにしてみれば、こりゃ酷でしょ。初期ファンからもこれまた恒例の賛否両論。

でもですね、世間の声なんて気にしませんよ。だってもうオジ期ですからね。07年の9th『Warriors』でも武闘派ハードコアを展開。(でもジャケは酷いので、もうちょっと世間の目を気にした方がイイと思ったよ)更に11年にはメタル色薄め、キャッチーになった10th『My Life My Way』を。この二作のプロデュースは、ロジャーの弟であるフレディ・クリシアン(MADBALL)。兄弟愛掲げて「マイライフ!マイウェイ!」。「ああ~まだやってんのか~」てな風潮だったのですが、いやいやこのビデオ観て下さい。このおじさんたち、ちょっと可愛く思えて来た。愛おしくなって来た。

そして2015年です。メンバーはスティグマ、ロジャー、マイク・ギャロ、そしてポーキー・モー(LEEWAY、BOTH WORLDS、MERAUDER)、クレイグ・シルヴァーマン(SLAPSHOT、BLOOD FOR BLOOD etc)。11th『The American Dream Died』を出しました。プロデュースはまたまたフレディ。トビー・モース(H2O)、ルー・コルラー(SICK OF IT ALL)も「オジキの頼みなら何でも聞きますぜ!!」と参加。でねぇ、コレが良かったんです。初期風のファスト・チューン、シンガロングなOi、そして『One Voice』を彷彿させるメタリックな案配まで、これまでのアグノ歴史がスルスルーと。でもまったくチグハグしてなくて、熱い魂一本でグサリと突き刺してやがるから恐れ入ったと。

どーです、この熱血バンクは!EMOい!泣ける!オジキ・パワーの団結力、ゴイスー!!

オジキは警察にも怒ってるのだ!!

これはB’zみたいで面白い。

更にこの春には「United Blood」と『Victim in Pain』以前に収録されたデモ音源集『No One Rules』もドロップ!思春期とオジ期が両方楽しめる2015年。贅沢な年だなァァ~。

冒頭でも述べましたけど、やり続けているからこそAGNOSTIC FRONTはカッチョイイ。結成当初のイメージとはずいぶんと変わりました。悪いこともたくさんやりました。でもね、山もあった。谷もあった。だからこそ時が経つにつれてAGNOSTIC FRONTからは人間のオイニーがプンプン溢れて来たワケで。そのリアルさこそが現在のAGNOSTIC FRONTのハードコア・ライフ!ロジャーが孫を抱いてステージに上がったとしても、それが生き続けるAGNOSTIC FRONTのハードコア人生だと強く思うのです!!

VICE Guide to New York Hardcore - AGNOSTIC FRONT_01

「おめーら、分かってんだろうな!」
「へいオジキ!一生ついて行きやす!!」

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