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WHITE ZOMBIEが切り拓いた新しいメタルの世界

85年にNYで結成されたWHITE ZOMBIE。B級ホラー&モンスタームービーとバイカーズサイケデリックを融合させ、さらにノイズロック〜ジャンクサウンドをまぶせながら、90年代を代表する唯一無比のミュータントメタルバンドに進化した。その軌跡を紅一点ベーシストのショーン・イスールトが語る。

ご存知の通り、メタルにはたくさんのジャンルがある。冒険家が使う地図のように、探検すれば探検するほど、その世界は狭くなる。現在のメタルは、サブジャンルからサブジャンルに分岐した大規模なネットワークで構成されている。どんなに斬新な新人メタルバンドであろうと、細かく区切られたそれぞれのクラスに押し込めるのが可能だ。しかし80年代後半から90年代にかけて、メタルには可能性があった。それなのにグラムメタルは自らのペニスで己の首を絞め、スラッシュメタルは社会の趨勢に流されてホットパンツに履き替えた。そうこうしているうちに、グランジはピークの陰りに気付いた。その瞬間、メタル界は新たな可能性を手に入れた。今までとは違う、自由に拓かれるであろうメタルの世界。そんな中でもWHITE ZOMBIEほど奇妙なバンドはいなかった。

ニューヨークのロウアー・イースト・サイドを不法占拠していたWHITE ZOMBIEは、スパンキーなノイズ・ロック・バンドとして85年にスタート。B級ホラー&モンスタームービーへの愛と、バイカーギャングのサイケデリック魂、そしてドライブするリフを爆発させ、異様なメタル・ミュータントに成長した。90年代初頭に発生した、忌まわしいメタル追放の流れを、駆け足で生き残った僅かなバンドのひとつだ。2008年には、CD4枚+DVDのアンソロジー・ボックスセット『Let Sleeping Corpses Lie』をリリースしたが、この度、さらなる歴史的作品がドロップされた。ロサンゼルスに移り、メジャー・デビュー作『La Sexercisto: Devil Music Volume One』でブレイクする前の作品を、ギタリストだったジェイ・ユエンガー(Jay Yuenger)自らがリマスターし、さらに初期ヒストリー・ブックも収めた豪華ボックスセット『It Came From NYC』だ。

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WHITE ZOMBIEといえば、必要以上に「YEAH〜!」を繰り返し、ソロはもちろん、現在では俳優や映画監督としても活躍しているロブ・ゾンビ(Rob Zombie)がメイン・キャラクターだが、紅一点ベーシストのショーン・イスールト(Sean Yseult)も忘れてはならない。オリジナル・メンバーの彼女は、ロブ同様、間違いなくWHITE ZOMBIE史に名を刻んでいる。現在、ニューオリンズに住むイスールトは、おもいっきり笑いながら、『Let Sleeping Corpses Lie』は糞ボックスだった、と言い放ち、糞と可能性に溢れていた、あの頃のニューヨークを懐かしそうに回想してくれた。

80代後期から90代初頭のニューヨークについて教えてください。やはり汚くて、危ない街だったんでしょうか?

全く! 地下鉄ではナイフを持った連中が後ろにいたり、道端ではアルコールを飲んでいる連中がたむろしたり…。私が最初に済んだアパートは、デランシー・ストリートとクリントン・ストリートの交差するところで、しょっちゅう知らない車がつけてくるような、ゾっとするエリア。タイムズ・スクエアは、ポルノ映画館だらけだったけど、一件だけ5ドルでホラー三本立てをやってる映画館があった。ロブと私は通ってたんだけど、館内には大きなラジカセを轟音で鳴らしているヤツがいたり、赤ん坊が泣き叫んでいたりして滅茶苦茶。アパートはネズミとゴキブリで一杯…まあ、とにかく(笑)。

過酷な日々だったんですね(笑)。

そう。13th St.の1stと2nd Ave.の間に引っ越したのも忘れられない。ロウアー・イースト・サイドから抜け出してステップアップした、といえば聞こえはいいけど、結局はそこも最悪なブロック。『タクシードライバー』のジョディ・フォスター(Jodie Foster)が有名なシーンを、そこで撮ったんだけど、性転換した売春婦の専門ブロックだった。

WHITE ZOMBIEには、メタルとホラー映画の影響がありました。でも、それ以上に異端的というか、シーンからはみ出していましたね。

そう。私たちはアートスクールの学生で、ロブはイラスト、私はグラフィックと写真を勉強していた。自分たちのまわりにあるものすべてに影響されていたわ。CBGBに出ているハードコアの連中とも顔見知りで、毎週日曜の昼のパフォーマンスは全部観ていたんだけど、それと同時に、SWANSやHONEYMOON KILLERS、PUSSY GALOREみたいなノイズ・バンドにも惹かれていた。結局、一緒に演奏するようになるんだけどね。ロブと出会った頃、彼はVAN HALENとKISSが好きで、AC/DCを愛していた。私はBLACK SABBATHが好きだったんだけど、パンクとかゴス、THE CRAMPSとかにものめり込んでいた。私たちは、これを全部一緒に瓶詰めしたかった。最初は少し時間がかかったけど、それが私たちのやりたかった音楽だった。

バンド活動で、絶対やりたくなかったものはありましたか?

ロブは全部って。彼には嫌いなモノが多過ぎた。ちょっとでも「好き」という要素があるくらいじゃ、ロブは丸ごと嫌になってしまう。それで私たちは、何か新しいモノを考えるしかない、と判断した。当時、物凄く人気があって、私たちが大嫌いだったのがグランジバンド。彼らはシューゲイザー…自分の靴を見て演奏していた。「それはないでしょ…、お客さんはライブを楽しみに来てるのに」って不満だった。だから私たちは、指さえ見ないで演奏した。おもいっきり楽しんだ。ステージの上では、誰も止められないくらいに走り回った。とにかくお客さんを楽しませようと決めていたから。お金が貯まったら、ロブはKISSを真似て、ストロボ・ライトやスモーク・マシーンを買ってきた。街灯を盗んだりもした。みんなが私たちを「おかしい」って。そう、断言できる。私たちはロウアー・イースト・サイドの異端児だった。

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共演したバンドや、その観客から反感を買ったりは?

いつもそう。ロウアー・イースト・サイドでは、いつもアートを気取ったノイズ・バンドと演奏していたから。もちろん、私たちの音楽にもノイズ要素はあったけど、彼らとは合わなかった。WHITE ZOMBIEはロックンロール・ショーをやっていたから、みんなは私たちをチャールズ・マンソン・グループのように観ていたわ。一緒に出演したバンドと観客の全員が、腕組みして立っていたりもした。だけど、それが典型的な当時のニューヨーク。どのライブもほとんどそう。でも、’89年頃からメタル寄りのバンドと共演し始めた。BIOHAZARD やCRO-MAGSのようなバンドが、私たちに話を持ちかけてきたから。彼らは、WHITE ZOMBIEをブルックリンにあった「L’Amours」のライブに呼んでくれた。でも、このショーで私たちは完敗する、とわかったから、思う存分モッシュしたの。

メタルやハードコアのシーンは、一般的に閉鎖的だと思われていますが、そんなところから話があったのは興味深いですね。

夜中の2時頃、セント・マーク・プレイスで、ロブと私はポスター貼りをやっていた。そしたらCRO-MAGSのハーレー(Harley Flanagan)が、こっちに向かって来るのが見えた。私たちは長髪だったから、「これはやられる」と逃げようとしたんだけど、そしたら彼は、「お前たちのバンドいいよな! 一緒にやらないか?」って。それから彼らと一緒に演奏するようになった。最高だった。私たちの音楽に惚れ込む人がいるのがようやくわかったから。今までは、合わない隣人と一緒にいただけだった、と。

これまでに、おかしなラインナップのライブとかありましたか?

KYUSSやMELVINSみたいな、私たちの好きなバンドとやるのはいつも最高だった。ものすごくクール。でも1度だけ、TOADIES* と共演したんだけど、まったく理解できなかった。彼らはクールで、歌も良かったけれど、なんか変だったの。あとは、時々、アラニス・モリセットみたいなアーティストとラジオに出たりもした。名前は覚えていない。

パンクやノイズ・サウンドをストップさせ、バイカーズロック寄りになったいきさつを教えてください。

バンドは最初からそういう方向に向かっていたから。私は、ノースキャロライナで、CORROSION OF CONFORMITY を聴いて育ったんだけど、彼らはジャンルレスの音楽をやっていて、私は、彼らのような音楽に慣れ親しんでいたしね。あと、80年代に登場した、SLAYERやMETALLICAのような新しいメタルバンドには、多少ならずともパンクのエッセンスが入っていた。そんな要素が重なって、私たちはメタリックで、よりグルーヴしているものを望んだの。BIOHAZARDやPANTERAもそう。

確かにPANTERAはグルーヴ・メタルを確立しましたけど、その中でもWHITE ZOMBIEは、どういう存在だったのですか? 孤立していたのでしょうか?

最初は完全に孤立。だってPANTERA知らなかったんだから。「L’Amours」での彼らはすごかった。セント・マーク・プレイスのレコード屋まで出掛けて、PANTERAの中古CDを探した。もう一つ、ニューヨークでクールだったのはPRONGかな。結局、彼らとはその後たくさんライブをやるようになったんだけど、彼らもすごいグルーヴを持っていた。

WHITE ZOMBIEのサウンドは、メタルを完全に変えてしまいました。ハリウッドのヘアメタルとはまったく違っていましたから。どうしてそんな独自のサウンドになったのですか?

私たちはアイツらが大嫌い、ゲェーッ。あんな糞みたいな音楽はやりたなくなかったの。とてもシンプルな理由。あとは、私たちがロサンゼルスに引っ越した日の出来事なんだけど、その日はとてもいい天気だった。そしたら、新しいマネージャーが、私たちをRAINBOWのコンサートに連れて行こうとしてね、最悪でしょ。街を歩く若い娘は、みんな合成のブラジャーをつけて、おっぱいをチョロまかしてた。男たちは、スプレーで固めた大きな髪をして、メーキャップを重ねに重ねて…。信じられなかった。ゾっとした。それがメタルシーンが大嫌いになった原因。