ドイツで刑事法の教授ら122人が、麻薬法改正と大麻合法化の嘆願書に署名

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ドイツで刑事法の教授ら122人が、麻薬法改正と大麻合法化の嘆願書に署名

4月にドイツで122人の刑事法の教授たちが麻薬法改正と大麻合法化を求める嘆願書に署名したことを受け、立案者であるブレーメン大学教授のロレンツ・ブーリンガー博士に話を聞いた。

今年4月、ドイツで122人の刑事法を教える教授たちが、麻薬法改正と大麻合法化を求める嘆願書に署名した。現在ドイツには、麻薬使用を制限するドイツの法律(脚注①)があるが、1981年に改正されて以来、内容が見直されることなく現在に至っている。1994年、憲法であるドイツ基本法の改正が行われたが、その際も麻薬法が見直されることはなかった。このたび嘆願書に署名した学者たちは、時の経過とともに法の有用性が失われていると主張している。今回VICE は、嘆願書の立案者であるブレーメン大学教授のロレンツ・ブーリンガー(Lorenz Böllinger)博士に話を聞いた。

ブーリンガー教授、こんにちは。今回の嘆願書のねらいは何ですか?

基本的には、再び国会をきちんと機能させようというのが我々のねらいです。憲法上で定められている通り、あらゆる法律は科学的な正当性を証明した上で、定期的な見直しと改正がなされなければなりません。ドラッグが危険か否かに関わらず、刑法が真に有用で意味をなすものであるかどうかが、むしろ問題なのです。

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どういう意味でしょうか?

アメリカを例にとって言えば、ニクソンの「薬物との戦争(脚注②)」は絶対に勝利を収めないということです。ドラッグは、それが犯罪であるか否かに関わらず、使用し続けられます。我々はあらゆる研究を重ねてきましたが、結果はいつも同じ。ドラッグによる景気循環は、法定条項とは一切関係なく存在し続けます。

つまり、ドラッグは今後も常に使用され続けると言うことでしょうか?

ドラッグはこれまでも常に存在しており、人々のこうした種類の娯楽に対する欲望もまた、常に存在し続けます。その点は議論の余地がありません。

ブーリンガー教授、あなたはマリファナを吸ったことがありますか?

私は68歳ですが、マリファナを吸ったことがあります。良い面も悪い面も、どちらもよく覚えています。

ドラッグの全面的な合法化を求めているのですか?

はい。でもだからと言って、誰もがスーパーですぐにドラッグを買えるというような状況を目指しているのではありませんよ。我々の要求は、それぞれのドラッグについての詳細な規制モデルに関して研究を重ねた上で得た専門知識に基づいています。大麻のように危険性が低いものについては、より広く開放することを求めます。おそらく、数量制限か販売登録手続きを設けて規制するといったところでしょうか。これがヘロインや覚せい剤になると、より厳しいモデルを適用しなければならないでしょう。

それはよいアイデアかも知れませんね。ドラッグの消費量が増加するのではという懸念はありませんか?

その心配はありません。良い証拠として、ポルトガル、スペイン、ベルギーなどの国では、前述のモデルが10年間にわたり機能しているのです。オランダでは、大麻は40年もの間合法で、非常に上手くいっています。消費量は増加していません。それどころか、僅かながら減少しています。

あなたの嘆願書には、120人以上の署名が集まっていますね。今回のようなイニシアチブをとるのに、なぜこんなにも長くかかったのでしょう?

よい質問ですね。私の意見では、誰もあえて政治家相手に問い正したくなかったのでしょう。加えて麻薬法は、監視機能や制御機能を保つために有効な手段ですからね。

我々の社会は、ドラッグ合法化の準備が整っているでしょうか?

我々は、メディアによって過去40年間ずっと洗脳されてきました。個々のケースは著しく誇張されてきました。例えば死亡事件についてです。ドラッグによる死亡事件のほとんどは、ドラッグの成分が予測不可能であることによって起こります。もしドラッグがきちんと処方されていれば、起こり得ません。しかしメディアでは大雑把に「ドラッグによるもの」と括られてしまうのです。

ドイツ連邦政府の薬物委員(脚注③)であるマリーン・モートラー(Marlene Mortler)と話したことはありますか?

いいえ、でも彼女に嘆願書を送りました。返事は期待していませんが。

もし彼女に会ったら、何と言いますか?

笑ってしまうでしょうね、本当に。彼女はこの1月に薬物委員に任命されましたが、彼女のやっていることは農業と観光業だけです。この状況は、政府が麻薬法の是正に対していかに関心が薄いかを真に表していると思います。政府は、ただ波風を立てずそっとしておきたいのです。

あなたの嘆願書が、状況を変えられるでしょうか?

問題に対する注目を喚起することは出来ると信じています。ただ、政治を変えることは難しいでしょうね。過半数は、法改正反対に投票するでしょうから。

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ブーリンガー教授、貴重なお話をどうもありがとうございました。

日本でもドラッグについてのニュースは連日報道されている。最近では、違法性はなくとも問題を引き起こす「危険ドラッグ」の使用が社会問題となっている。本インタビューでブーリンガー教授も述べているとおり、一口に「ドラッグ」と言っても、危険度の低いものから高いものまで様々だ。厳しすぎる規制や社会の目が薬物について誤った情報を拡散させ、問題が起こりやすくなるのも事実である。

ドラッグは、政治的要素も多分に絡む複雑な問題であるが、近年法改正の動きも少しずつ出てきている。アメリカでは、コロラドとワシントンの2州で娯楽用大麻の販売が合法化された。VICEでは引き続き、海外諸国でのドラッグ事情を追って行きたい。

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Translated & Edited by Rieko Matsui

(脚注①)麻薬法:ドイツの連邦法で、麻薬規制を一般的に取り扱うもの。麻薬法には3つの別紙が、LSDなどの取引不可能な麻薬を規定するもの、コカの葉などの取引は可能であるが処方することができない麻薬を規定するもの、モルヒネなどの取引および処方の両方が可能な麻薬を規定するものがある。

(脚注②)薬物との戦争(War on Drugs):参加国の協力の下に違法薬物の取引を削減することを目的として行われた、アメリカ合衆国連邦政府による国外での軍事支援および軍事介入を表す用語。1971年6月に米大統領リチャード・ニクソンによって初めて用いられた。違法な向精神薬の生産、流通、消費の阻止を目的とする、一連のアメリカ合衆国の薬物政策を含む。2009年5月、アメリカ国家薬物取締政策局は、薬物における実施政策を大きく変更する計画はないが、バラク・オバマ政権が「逆効果だ」と主張する「薬物との戦争(War on Drugs)」という用語を使わないと伝えた。(一部Wiki引用)

(脚注③)薬物委員:薬物、主に麻薬の依存・濫用防止を目的として国民を教育するためのドイツ連邦保健省内の機関。2014年1月より、バイエルン州を地盤とする地域政党であるCSU(キリスト教社会同盟)のマリーン・モートラーが就任。