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フロリダ銃乱射事件が全米中のLGBTコミュニティに落とした影

数カ月前にマティーン容疑者は、マイアミのダウンタウンで男性同士のキスを目撃し、激怒していた。

12日未明に発生し、50余名の犠牲者を出した銃乱射事件により、フロリダ州および、全米中のLGBTコミュニティに動揺が走った。

現地時間で12日の午前2時頃、ラテン音楽イベントを催していたフロリダ州オーランドにある人気のナイトクラブ「パルス(Pulse)」を銃器で武装したオマル・マティーン容疑者が襲撃、クラブ内で銃を乱射した。数時間にわたり人質を取り、立てこもったマティーン容疑者は、午前6時前に警察との銃撃戦の末に射殺された。

マティーン容疑者の父親、ミール・シディークはNBCニュースに対し、今回の事件は「宗教とは何も関係ない」と断じたが、数カ月前にマティーン容疑者はマイアミのダウンタウンで男性同士のキスを目撃し、激怒していた、とも取材に応えた。

「私たちがマイアミのベイサイドに行くと、人々は音楽をかけて楽しんでいた。そこで息子は、彼の妻、彼の息子の前で男性同士がキスするのを目撃し、激怒した」と父親。「彼らはお互いを乳繰り合い、キスしていた。それを見た息子が、『あれを見ろ、息子の前であんなマネするなんて』と逆上した。私たちがトイレに入ると、そこでも男性同士がキスの最中だった」

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「パルス」はロン・レグラー(Ron Legler)とバーバラ・ポーマ(Barbara Poma)によって共同所有されており、HIV/AIDSで亡くなったポーマの兄弟への哀悼の意も込めてオープンされた、と報じられている。「パルス」という店名は、亡くなった兄弟の鼓動を意味しており、クラブとともに彼に生き続けて欲しかった、とポーマは話している。ウェブサイトには、このクラブは「楽しみとファンタジーに溢れたスポット」だと称している。

ボー・アダムス(Beau Adams、28)はかつて「パルス」でドアマンとして勤務していた経験があるそうで、彼のボーイフレンドも店内のバーで裏方として働いていた。事件当日、アダムスは店内にいなかったが、このクラブには頻繁に通っていたそうだ。12日の朝、アダムスは彼を心配した友人からのメールや電話の着信音で目を覚ました。彼によると、オーランドはストレートとゲイが固い絆で結ばれたコミュニティであるという。ボーイフレンドとともに、当局による犠牲者の発表を不安な心持ちで待っている、とアダムスは心情を吐露した。

通常の「パルス」は、「ストレート、同性愛者、すべての人種、すべてのスタイルなど多種多様な人々が集っていました」とアダムス。「ドアをくくれば、来店客の幸せそうな顔が目に飛び込んできました。このような事件が起きたなんて信じられません」

「今朝、目を覚ましてから、耳に入るのは上空を旋回するヘリコプターの音だけです」とアダムス。「信じられません。ここはオーランドですよ。こんな事態が自分たちの身に降りかかるなど思いもしませんでしたが、今日、事件が起きてしまったんです」

オーランドのダウンタウンでは、12日の午後7時から開催された、コミュニティによる哀悼式への参加を予定していた。彼はコミュニティが「結束しより強固になる」ことを望んでいた。

「『#PulseNightclub』は、私たちがありのままで過ごせる今までにないクラブでした。憂鬱です」
ウラジーミル・V (Vladimir V):TVプロデューサー、ライター

50名の犠牲者に対する哀悼式は全米中で催された。ニューヨーク市にある伝説的なゲイバー「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」もそのひとつだ。

バラク・オバマ大統領は今回の銃撃事件を「テロ行為であり、ヘイト行為である」と非難した。

「今日はLGBTコミュニティにとって、痛ましい日になった」とオバマ大統領。性的指向やジェンダーに起因する攻撃は「われわれ全員への攻撃だ」と付け加えた。

今回の銃撃事件は、アメリカが国を挙げてLGBTの尊厳を訴える、毎年6月の「LGBTプライドの月間」に発生した。同月間は1969年にニューヨークで発生した「ストーンウォールの反乱(Stonewall Riots)」に端を発し、1970年代から始まったとされている。

12日の銃撃事件が発生するまで、LGBTコミュニティを狙った襲撃で最も多くの犠牲者を数えたのは、1973年に起きたニューオーリンズのバー襲撃だ。同事件では、バーの正面ドアから爆発物が投げ込まれ、32名が死亡した。この事件に関しては誰も起訴されていない。

同性愛者の人権擁護団体であり、米国ではじめてゲイであるのをオープンにして選挙で当選し、公職者となったハーヴェイ・ミルク(Harvey Milk)に因んで命名された「ハーヴェイ・ミルク財団(Harvey Milk Foundation)」は、オーランドでの犠牲者について「将来、夢、潜在的な貢献が私たち全員のもとから奪われました」と声明文を発表した。

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「憎しみと差別は深い悲しみを生み続けており、世界中で大勢の命が奪われています」とその声明文には記されている。「願わくは、世界中いたるところにある、憎しみの根源と、マイノリティ・コミュニティに向けられた暴力による分断に立ち向かう強さを手に入れられますように」

「昨晩、9.11以来最悪のテロが国内で発生しました。アメリカのLGBTファミリーを襲った悲劇的な事件は、残された子供たち、母親たち、父親たち、隣人たち、友人たちの未来を変えてしまいました。数日以内に、私たちは、今回の憎きテロ行為による新たな犠牲者を知らされるでしょう。犠牲者のほとんどは、「LGBTプライド月間」に私たちのコミュニティの楽しさを享受し、ダンスするために集まった若い女性、男性たちでした。このLGBTクラブを標的にした憎き犯罪行為により、犠牲者たちの将来、夢、コミュニティに対する貢献の可能性が、われわれから奪われました。オーランドのLGBTコミュニティとフロリダ州中部にいる私たちの仲間は固く結束しています。今日、私たちは、悲しみに暮れる人々、心身両面に受けた大きな傷から立ち直るために困難に立ち向かわなければならない人々に愛と祈りを捧げます。しかし、私たちの愛と祈りだけでは不十分です。憎しみと分断は、深い悲しみを生み続け、世界中で大勢の命が奪われています。オーランドの仲間たちを癒すために手を差し伸べ、負傷者たちが傷を癒すための勇気をサポートし、願わくは、世界中いたるところにある、憎しみの根源と、マイノリティ・コミュニティに向けられた暴力による分断に立ち向かう強さを手に入れられますように。この悍ましい暴力事件を機にさらなる結束を誓い、事件の犠牲になった仲間たちに追悼します」 このような悲しい声明文を発表せざるをえない現実に、胸が痛みます。オーランドのLGBTコミュニティとリーダーたちは私たちの祈りに包まれています。#hope

スチュアート・ミルク(Stuart Milk):LGBT人権活動家、ハーヴェイ・ミルク財団共同創設者

様々なLGBT擁護団体、著名人たちがソーシャルメディアを通じて、今回の事件への弔慰や支援を表明している。

「『#Orlando』とタグ付けされた悍ましいニュースで目を覚まし、気が滅入りました。幸せそうに笑顔でダンスしていた人々が理由もなく射殺されたのです。友人たちを抱きしめてあげてください」
ロス・マシューズ(Ross Mathews):TVショーホスト

「私はゲイだが、恐れない。愛がすべてを克服する。#PrayforOrlando」
リッキー・マーティン(Rickey Martin):歌手

「哭くことしかできない」
エレン・デジェネレス(Ellen DeGeneres):コメディアン、女優

「オーランドの悲劇に直面し、全米の市民が献血、愛、支援を施すために集結したのに深く感動しました。これこそ、真の私たちです」
ラヴァーン・コックス(Laverne Cox):女優