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ホンジュラスの先住民活動家 ベルタ・カセルスさん暗殺される

世界的に著名な先住民環境活動家のベルタ・カセレス(Berta Cáceres)さんが2016年3月3日未明、ホンジュラスの自宅で暗殺された。2015年、その活動が評価され、ゴールドマン環境賞を受賞した彼女の暗殺は、何らかの政治的意図があったのでは、と世界中の人権団体、活動家たちは疑いを露わにしている。

世界的に著名な先住民環境活動家のベルタ・カセレス(Berta Cáceres)さんが2016年3月3日未明、ホンジュラスの自宅で殺害された。

カセレスさんは、ホンジュラス先住民人民組織委員会(以下COPINH)* 設立のメンバーで、過去20年間、先住民コミュニティを脅かすダム建設、鉱脈開発といった、先住民の生活を脅かす開発プロジェクトに異を唱えてきた。

カセレスさんは、2015年、その活動が評価され、ゴールドマン環境賞を受賞している。

「私たちは、偉大なる指導者の死を悼み、彼女のように勇敢に難事業に取り組む活動家たちを応援し続けることで、彼女の偉業に敬意を表します」と同賞の委員は声明を発表した。「彼女は、命がけで闘い、ホンジュラスに散らばった草の根活動家のために、素晴らしいコミュニティを確立しました」

暗殺者たちは、インティブカ県ラ・エスペランザ市街の彼女の家に押し入り、彼女を撃ち殺した。加害者の人数は、レポートによりまちまちだ。

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ホンジュラスの新聞『エル・ヘラルド』によると、メキシコの環境活動家グスタボ・カストロ・ソトさんも今回の襲撃で負傷した。

ロンドンを拠点に活動するNGO団体グローバル・ウィットネスによると、世界中で週に2人の先住民活動家が殺害されているそうだ。同団体の調査によると、ホンジュラスの状況は悪化の一途を辿っており、2010-15年の間に109人の活動家が殺害されている。

先週、カセレスさんは、グアルカルケ川上流で進むアグア・サルカ水力発電ダム計画に反対する、彼女を含むCOPINHのメンバーが攻撃を受けている、と声明を発したばかりだった。彼女は、軍、警察、ダム工事関係者を非難した。

「ホンジュラス政府は、私たちが集会を開く権利、平和的抗議活動の安全を保証すべきです」と彼女は記者会見で訴えた。「それは、あらゆるコミュニティが有する権利です」

COPINHのアグア・サルカ水力発電計画に対する抗議は、数カ所での建設工事を中止に追い込んだ。事態を憂い、事業参画を断念した投資主もいる。

グローバル・ウイットネスは、アクア・サルカ計画への抗議、それ以外の社会運動全般をCOPINH、なかでもカセレスさんが狙われていた、と強調する。

COPINHの活動家で、ホンジュラス北西部、ブランコ川流域の先住民コミュニティ、レンカ(Lenca)の住人でもあるトマス・ガルシアさんは、2013年6月15日、水力発電ダム建設現場付近で抗議活動をしている最中、軍隊によって殺害された。

同年、ホンジュラス政府は、武器の不法所持と私有財産侵害の罪で、カセレスさんに対する逮捕令状を発行したが、彼女は、逮捕状の有効期限が過ぎるまで身を隠した。

当時、カセレスさんは「活動には大きなリスクが伴います」とは覚悟を窺わせていた。「自らの内にある脆さを突きつけられ、生命を脅かされ、肉体と精神のつながりを引きちぎられる危険にもさらされます」

カセルスさんへの度重なる殺害脅迫を深刻に受け止めた米州人権委員会は、彼女に身辺警護を勧めていた。彼女は、襲撃のさいも、警察に護衛されているはずであった。

ホンジュラス政府は、事件当時の警察官不在を認めたものの、不在の原因はカセルスさんにある、と主張している。

「彼女が以前住んでいたカルバリオでは警護の義務を果たしていた」。地元警察署長のセルジオ・パズ・ブエソは『ラ・プレンサ』に対して断言した。「事件の起きた家に移ったことは知らされていなかった」

彼女の身近な関係者たちは否定しているが、パズ・ブエソは、カセレスさん殺害を強盗殺人事件、と断定した。

「彼女の社会活動が原因で殺されたことくらいわかっている」とカセレスの母はグロボTVの取材に答えている。

世界中の人権擁護団体が事件の真相隠蔽に対して警鐘を鳴らす。

「ホンジュラス政府は、強盗殺人、と発表しましたが、事件の真相究明に努めなければなりません」。アムネスティ・インターナショナルのサラ・ラフスキーは語った。今回の殺人事件は、政府は人権問題に取り組まなければならないのに、その努力を怠っている証拠だと彼女は強調する。「一連の騒動は、ホンジュラスやグアテマラの人権擁護活動、この地域の環境保護活動、先住民擁護活動に向けられたおぞましいメッセージです」。彼女は続けた。「今こそ政府や当局は彼らのメッセージに耳を傾ければ」

ホンジュラスの活動家たちは、カセレスさん殺害で動揺している。

「ベルタに起きたことは、われわれにも起こりうるのです」。女性人権擁護者のコーディネイター、ジェシカ・トリニダッドは懸念する。「ベルタは著名人でしたから、一般人とは違います。もし、政府が政治的理由で彼女を暗殺したのであれば、われわれのような人権擁護活動家を取り巻く状況は複雑です」