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チョコレート産業のダークサイドと未来

カカオ農家では、児童労働の習慣が根強く残っている。アメリカのNGO団体「スレイブ・フリー・チョコレート(Slave Free Chocolate)」によると、西アフリカの農民たちのあいだでは、労働力としての児童が、一人当たり約28,000円で取引されている。ガーナに西隣するコートジボワールの首相は、カカオの取引価格が10倍にならなければ強制労働は無くならない、と断言した。

2015年の春、フードライターであるミーガン・ギラー(Meagan Giller)は、小規模生産のチョコレートについて調査を始めた。当初、彼女は、土壌がワインの個性を左右するのと同様に、土壌がカカオ豆にどのような影響を与えるのか、記事としてまとめようとしていた。しかし、彼女が目にした資料に記されていたのは、リック(Rick Mast)とマイケル・マスト(Michael Mast)の兄弟が、チョコレート業界でいかに反感を買っているか、という事実だった。ブルックリン発、マストブラザーズの板チョコレートは1枚約1,200円で販売されており、洗練された包装紙も話題となり、人気を集めている。

「チョコレートに関するインタビューをしていると、毎回マスト兄弟の話題になり、話が脱線してしまう」とギラー。

ギラーが取材した専門家たちは、マストブラザーズのチョコレートについて、「不純物が混ざっている」「粉っぽい」「異臭がする」「マズい」と酷評した。マストブラザースは、現在、ブルックリンに製造工場を1軒、直営店を1店舗、ロンドンにも1店舗を展開しており、今後はロサンゼルスにも出店する予定である。50名の従業員を抱えているが、企業の決算報告書は公開していない。

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高級チョコレート界に、マストブラザースのような逸材はなかなか現れない。

ギラーの情報源によると、マストブラザーズが創業当初に販売していたチョコレートのほとんどは、彼らが謳う「ビーントゥバー」ではなく、市販のチョコレート・ベース、トッピング用チョコソースを溶かして製造されていたそうだ。結局、マイクロソフト社のウェブ・マガジン『Slate』が、マストブラザースに向けられたチョコ業界の悪評を世間に知らしめたものの、誰もが納得する証拠が提示されていたわけではなかった。

ちなみに、「ビーントゥバー」とは、カカオ豆が板チョコになるまでの全ての工程を自社で処理する、チョコレート製造スタイルだ。

2015年12月、テキサス州ダラス在住のフードブロガー、スコット・クレイグ(Scott Craig)が、自身のブログで『マスト兄弟:髭に隠された嘘(Mast Brothers: What Lies Behind the Beards)』という調査記事を4回にわたり公開した。その記事でクレイグは、「ビーントゥバー」へのこだわりを強調するマスト・ブラザースの言い分を入念に検証したうえで、彼らをペテン師だ、と結論づけた。

マストブラザーズの共同創業者であり、CEOのリック・マストに対し、広報担当者を通じて何度もインタビューを申し込んだが、拒否された。マストはオンライン上で、クレイグの記事に対して「根拠がなく、誤解を招く恐れがある」と反論している。

「マストブラザースは100%『ビーントゥバー』チョコレート・メーカーです」とマストは断言している。「多くのお客様にご愛顧賜っております弊社のチョコレートは、創業以来…中略…カカオ豆からチョコレートを製造していますので、弊社に対する申し立てや中傷は誤りです…中略…。創業当初、弊社が製造するチョコレートの全てが豆選びから始まっている、と皆様にお知らせしたことはありませんが、『ビーントゥーバー』チョコレート・メーカーを標榜してきました。事実、弊社のチョコレート製造は豆選びから始まりますので、『ビーントゥバー』チョコレート・メーカーの名に恥じることはありません」

とはいえ、他にも反発があった。ナショナル・パブリック・ラジオが運営するウェブメディアには、「マストブラザーズのチョコレートが好きなヤツらは間抜けだ」と題する記事が掲載され、ニューヨークの食文化、レストランを紹介するGrub Streetは、「論争の影響で消費者がマストブラザースのチョコレートを直営店に返品する騒動が起きており、直営店の売り上げは最大66%低下した」と報じた。これに対して、マストブラザーズは、グループ全体の売り上げは伸びている、と主張した。

高級チョコレートにまつわる議論は、マストブラザースの一件にとどまらない。産業全体として、チョコレートの適正価格が問われている。本来、高級チョコレートの価格が10ドル(約1,150円)で落ち着いているのが異常なのだ。

小売価格はもっと高いはずだ。

2007年、「クラフト・チョコレート」メーカーは10社に満たなかった。今日、その数は200近く、そのうち約60メーカーが「ビーントゥバー」を謳っている。

クラフト・チョコレートは、大量生産のそれとは全く別物だ。アメリカ食品医薬局(the US Food and Drug Administration)によるチョコレートの定義は、少なくとも10%のカカオを含んでいる、とのこと。ハーシーのミルク・チョコレートのカカオ含有率は11%。それに対して、クラフト・チョコレートは、通常、60%以上のカカオを含んでいる。

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学者やチョコレート専門家は、カカオ豆は、適正価格の半額以下で取引されている、と見積っている。

ハーバード大学の民俗誌学者であり、NPO団体ファイン・カカオ&チョコレート・インスティテュート(Fine Cacao and Chocolate Institute)の代表を務めるカーラ・マーティン(Carla Martin)教授は、「現在調査中だが、10ドル(約1,100円)は、持続可能な市場価格ではない」と明言している。世界で生産されるカカオ豆の約2/3を栽培している西アフリカの農民たちは、本来受け取るべき対価の1/3、もしくは1/4しか受け取っておらず、収入の多い農民ですら、法定貧困レベルの生活を強いられている。

ほとんどのカカオ農家は、法定貧困レベル以下の生活水準で暮らしている。世界銀行の定める国際貧困ラインは、1日の生活費1.90ドル(約215円)だが、ベルリンを拠点とするNGO団体メイク・チョコレート・フェア(Make Chocolate Fair)によると、コートジボワールのカカオ農家は1日50セント(約56円)、ガーナのカカオ農家は1日84セント(約95円)の賃金しか得ていないそうだ。2015年9月、ガーナ議会で「食品、農業、及びチョコレート問題(Food, Agriculture & Cocoa Affairs)」を担当するオウス・アフリー・アコト(Owusu Afriyie Akoto)議員は、次の収穫期以降、ガーナのカカオ農家との取引額を倍にするよう要求した。

大手チョコレート・メーカーのなかには、企業の社会的責任(CSR)を果たすべく、カカオ農家の生活水準改善への取り組みを強調するメーカーもあるが、事態は悪化の一途をたどっている。当初、カカオ農家は小売価格の16%を受け取っていた。しかし、その後、製菓業界の度が過ぎた利潤追求により、カカオ農家の利益が蔑ろにされるようになった。その結果、カカオ農家の得る対価は、小売価格の3-6%にまで落ち込んでしまった。この現状に対して、メイク・チョコレート・フェアは、「チョコレートの値上げが必須だ」と強調する。

チョコレートの消費者は、19世紀半ばまでは貴族階級に限られていた。彼らは、修道僧、アフリカ大陸や南米の植民地を行き来する経営者たちからチョコレートを仕入れていた。その後、工業化が進み、一般大衆もチョコレートを楽しめるようになった。「需要を満たすため、数え切れないほどのアフリカ人が奴隷労働を余儀なくされた」とマーティン教授。

1585年に、商業用として初めて、カカオがテノチティトラン(現在のメキシコシティ)からスペインのセビリアに運ばれて以来、「タダ働き」同然の奴隷労働に支えられて、カカオ豆の価格は非常に低く抑えられてきた。

ヨーロッパの「持続可能なカカオ生産を支援する」NGO団体連合が発行する『ココア・バロメーター』2015年版に、「カカオの価値と価格の不均衡を是正すべきである」と記されている。つまり、「消費者に提示される小売価格は、製造コストを反映していない」のだ。

カカオ農家では、児童労働の習慣が根強く残っている。アメリカのNGO団体「スレイブ・フリー・チョコレート(Slave Free Chocolate)」によると、西アフリカの農民たちのあいだでは、労働力としての児童が、一人当たり約28,000円で取引されている。ガーナに西隣するコートジボワールの首相は、カカオの取引価格が10倍にならなければ、強制労働は無くならない、と断言した。

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「市場構造は、安さを追求するあまり、生産地、生産者の都合を顧みずに成立してしまっている」。チョコレート・ガレージ(The Chocolate Garage)の創業者、CEOのサニータ・デ・トレル(Sunita de Tourreil)は指摘する。「児童労働問題は悪化する一方だ」

2001年、米国上院議員トム・ハーキン(Tom Harkin)、下院議員エリオット・エンゲル(Eliot Engel)、チョコレート製造業者協会は、カカオ原産国の児童労働問題をなくすために、「ハーキン・エンゲル議定書」を締結し、2005年までに「最悪な形態の児童労働」を根絶する旨を宣言したが、期限までに実現しなかったため、この議定書は延長された。それでも議定書は効力を発揮しなかったため、2010年には、「ハーキン・エンゲル議定書の遂行を目指す共同行動宣言ん」が採択された。

チョコレート製造業組合(Chocolate Manufactures Association)のラリー・グラハム(Larry Graham)は、当時、「カカオがどこから来たのか、カカオの製造が環境へどのように影響するのか、カカオの製造に関わった人々がどのような扱いを受けてきたのか、常に気を配らなければならない。そうすることで、チョコレート産業は変革される」と語っていた。

しかし、アメリカ合衆国労働省(the US Department of Labor)が研究費を援助 するトゥーレーン大学の公衆衛生・熱帯医学研究所(School of Public Health and Tropical Medicine)が2015年6月に発表した報告によると、2001年以降、カカオ農家の児童労働は18%も増加しているそうだ。

それとともに、カカオ農民の高齢化は深刻だ。コートジボワールのカカオ農民の平均年齢は51歳。世界保健機構(World Health Organization)によると、コートジボワール男性の平均寿命は52.5歳。つまり、老農民には後継者がおらず、将来的に労働力は不足し、奴隷労働者を増やさざるを得ないのである。

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コリン・ガスコ(Colin Gasko)は、2007年以来、「ビーントゥバー」にこだわり、クラフト・チョコレートを製造し、世界有数の「ビーントゥバー」チョコレート・メーカーとして知られている。彼は、マサチューセッツ州で「ローグ・チョコラティエ」を、ガールフレンドのサポートを頼みに、従業員を雇わず経営している。

ガスコは現在20歳で、2015年のインターナショナル・チョコレート・アワーズ主催の国際コンクールで金賞を受賞。彼は、チョコレート産業におけるカカオの取引価格問題は氷山の一角に過ぎない、と語る。「価格はもっと、もっと高くするべきだが、そう簡単な話でもない」

カカオの取引価格が保証されれば、カカオ農家は安定した収入を得られるようになる。しかしその結果、低品質のカカオが市場に流通する恐れがある、とガスコは懸念する。それに対して、大手チョコレート・メーカーは、収穫効率の良いカカオ品種を開発すれば、あらゆる問題を解決できる、と主張している。

ガスコは、「大手メーカーは病気になりにくい、収穫率の良い品種を開発すればいい、と考えているようだが、カカオの香りを重視しなければならない」との意見を持っている。「カカオの遺伝的多様性を保護する方法も開発しなければならない。そこで問題になるのは、どの種を保護すべきか、私たちが理解していないことだ」と続けた。

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「チョコレート産業の問題に取り組むメーカーは、ほとんど利益を上げていない」とドゥ=トゥレイユは語る。ローグ・ショコラティエは、ポルセラーナ(Porcelana)というカカオを80%含んだチョコレートを1枚18ドル(約2,000円)で販売しているが、利益はほとんどない。ガスコ自身、最低限の利益しかあげていないので、彼は、ガールフレンドと、二人の間に生まれたばかりの娘と一緒に実家で暮らしている。

「私たちの給与を時給に換算すると、時給4ドル(約460円)で、週6日もしくは7日働いていることになる」とガスコ。

小規模事業で高品質の原材料を仕入れるのは難しい。「ビーントゥバー」にこだわるローグ・ショコラティエと同規模のチョコレート・メーカーは、一度に1-2トンのカカオを調達するが、通常、カカオ豆はコンテナ(12.5トン)単位で取引される。少量で取引されたカカオ豆には、輸送の際に30%の料金が上乗せされるため、小規模メーカーの支払う金額は、どうしても割高になってしまう。

ベネズエラ北西に位置するマラカイボ湖(Lake Maracaibo)の南側だけで栽培される、純正のクリオロ種のポルセラーナと呼ばれるカカオ豆を仕入れるには、1トン当たり12,000ドル(約136万円)、それに加え、最高4,000ドル(約45万円)の空輸費用を支払う場合がある。ちなみに、一般的に消費されるチョコレートに使用されるカカオの取引額は、1トン当たり3,200ドル(約37万円)だ。

ガスコは、小規模生産にこだわらないが、投資家と手を組むつもりもない。「利益を最大化する責任が生じるだろうし、チョコレートの製造工程を手抜きしないといけなくなる」。現在、事業を拡大するべく、個人ローンで資金を調達しようと奮闘している。「小規模の事業は魅力的だが、それで食っていくためには、いずれ適切な事業規模を見極めなければならない」

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もし、既存のチョコレート・ソースから、良質なチョコレートをつくるのが骨の折れる作業であれば、「ビーントゥバー」で良質なチョコレートをつくるのは、複雑骨折するようなアホらしい作業である。

アラン・マクルアー(Alan McClure)は、ミズーリ出身の37歳。フランスで修行し、2007年、初めて自らのチョコレートを販売した。ミズーリ州コロンビアを拠点にする彼の会社、パトリック・チョコレートは、「ビーントゥバー」チョコレートで名を馳せ、ガスコのライバルと目されている。ここ五年で、パトリック・チョコレートは、2010年以降、15のグッドフード賞を獲得した。

マクルアーのチョコレートづくりは、様々な工程からなり、とても時間がかかる。大手チョコレート・メーカーであれば、下請けの製造加工業者に発注するような作業だが、マクルアーは、唯一の従業員である妻と二人で、全工程をこなしている。

まず、生のカカオ豆をふるいにかけ、手作業で選別する。ここで、埃、泥、豆の破片、豆殻、痛んだ豆、くっついてしまった豆、未成熟な豆、平豆(フラットビーン)、小さすぎる豆、葉、枝が取り除かれる。

次に、マクルアーは、時間、オーブンの温度変化、空気の流れ、香り、豆の変化、豆の焼ける音に細心の注意を払いながら、小分けにした豆を焙煎する。それが終わると、破砕され、サイズごとに分けられ、風簸により豆殻や種皮が吹き飛ばされる。苦味になる胚芽、幼根も、この工程で取り除かれ、最後に残るのがカカオニブだ。

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そして、カカオニブをペーストにする。カカオニブに天然ショ糖を加え、外部加熱で暖めながら攪拌すると、カカオバター(ココアバター)が染み出し、なめらかな液状になる。次の工程は、コンチングだ。ショ糖とカカオを、カカオバターと馴染むよう攪拌し続ける。その工程は、4-5日を要し、チョコレートに不要な雑臭も取り除かれるため、酢酸のような刺激臭を放つ。マクルアーは、この工程に、花崗岩製の特注精製機を使用する。

その後、チョコレートの香りと風味を増すために、ブロック状にして、時間をかけて乾燥、熟成させる。それからチョコレートを溶かし、温度調整によって艶やかでなめらかな口当たりを際立たせて、ようやく板状に成形される。成形された板チョコを丁寧に包装する。それで儲けが出れば、御の字だ。

マクルアーは、「ビーントゥバー」チョコレート事業を確立させるために悪戦苦闘している。事業を成長、拡大させないでどうするんだ、という周囲の声に気圧され、最初の6年間は事業の成長を追求したそうだ。

約10年の試行錯誤を経て、彼は、少ないながらも利益を上げられるようになった。それは、事業拡大ではなく、縮小によって実現したのだ。

2014年、マクルアーは、大学院で風味についての研究を始めた。8名の従業員は、転職するか退職するかで、会社を後にした。マクルアーは、全く人材を雇用しなかったので、最終的に従業員はいなくなった。商品製造規模も、週2,782枚(約180キロ)から、週700枚に縮小した。常備していた12種類のチョコレートも、月替わりで三種類だけを製造するようになった。マクルアーは、販売価格を30%値上して14ドル(約1,600円)に設定、オンライン販売を75%拡大した。それにともない、卸業者相手の最大25%ディスカウントもストップした。

マクルアーの選択は、今のところ、すべて功を奏している。

「私たちがつくる小規模生産のチョコレートを、楽しみにしてくれるお客様が少しでもいてくれれば、喜ばしい限りです。何人かでも構いませんので、私のチョコレートへの想いを感じていただければ幸いです」

セネカ・クラッセン(Seneca Klassen)は、ハワイ、オアフ島で、カカオ栽培、製造、製品パッケージ、販売まで、全工程を自社で処理するアメリカ唯一の「ツリートゥバー」チョコレート・メーカー、ロノハナ・エステート・チョコレート(Lonohana Estate Chocolate)の創業者だ。消費者の手に渡るまでに何が起きているのかを知るには、全てのステップを管理するしかない、それが彼の信条である。

クラッセンは、2009年に初めて苗を植えた、14エーカー(東京ドーム1.2個分)のカカオ農園を所有している。彼にとって、「いつの時代もチョコレートは安すぎる」そうだ。ロノハナ・エステート・チョコレートの商品は1枚14ドル(約1,600円)で販売されているが、未だに利益はない。クラッセンは儲けを期待していない。

クラッセンは、カカオ農家にとって持続可能なシステムをどう構築するか、悪戦苦闘しているようであるが、カカオ取引の適正価格は見極めている。彼によると、カカオ1トン当たり、市場価格の3倍を上回る10,000ドル(約113万円)以上で取引されなければならないそうだ。ちなみに、クラッセンが損益分岐点売上高を得るには、1トン当たり25,000ドル(約283万円)でなければならない。

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とある業界人は、「私が食べたいチョコレートは、破産してしまったか、破産寸前、もしくは、近い将来必ず破産してしまう会社の製品です」と嘆く。「誰一人として成功しない」

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マストブラザーズが経営難に陥っている様子はない。チョコレート業界の玄人たちが、「商業的につくられた味がする」「ごく普通の味」と酷評するチョコレートが、幅広い層を魅了しているのも事実だ。良質なダーク・チョコレートを楽しむのは、芳醇な香りのスコッチ・ウィスキーを嗜むのと大差はない、と宣う通には不評であっても、ハーシーの板チョコを食べて育った人には好まれる味なのかもしれない。

加えて、マストブラザースが成功した理由はその包装にもある。手厳しい批評家でさえ、 包装デザインの美しさを評価する。

「カカオ農家、クラフト・チョコレート・メーカーの双方に利する、より良い環境を整えるためには、チョコレート産業が抱える問題を消費者に伝え、消費者の意見に耳を傾けることが大切だ」とデ・トレルは話す。チョコレート産業の現状を知れば、消費者は、慎重に購入する商品を選択するだろう。

明確なロードマップはない。しかし、マーティン教授は、極端な不平等、暴力などの問題を克服した歴史的事例を教えてくれた。

「強制労働といえば、タバコ産業も、かつては同じ問題を抱えていた。その当時、問題が解決するなど誰も想像しなかった。しかし、彼らは、非常に真摯な態度で問題に取り組み、克服した」