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ショーン・ペンに全く興味のない 麻薬王エル・チャポ

エル・チャポと、メロ女優が交わしたゾワゾワするメッセージのやり取りを読む限り、逃亡中の麻薬王は、自身の安全、アメリカの誇る名優、どちらにも全く興味がなかったようだ。

ホアキン・グズマン、通称「エル・チャポ」と、メキシコのメロ女優「ケイト・デル・カスティーリョ」が携帯電話で交わした、ぞわぞわするメッセージのやり取りを読む限り、逃亡中の麻薬王は、自身の安全、アメリカの誇る名優、どちらにも全く興味がなかったようだ。

メッセージのやりとりは、エル・チャポ第三次脱獄以降に始まった。そして、昨年10月、カスティーリョの仲介で、 エル・チャポとショーン・ペンの密会が実現し、その記事は『ローリングストーン』で公表され世界を騒がせた。チャポとカスティーリョのやりとりも、それと同じく世界中に知れ渡った。

メキシコ当局は、国内の新聞『ミレニオ』にリークされたやりとりが事実である、と認めた。

メキシコいちの悪名を誇る麻王エル・チャポは、とにかく、メロ女優とのコミュニケーションを楽しんでいる。麻王のメッセージからは、アカデミー賞受賞俳優などどこ吹く風、といった態度がありありと伺える。

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麻王は昨年9月に、「あなたに是非会いたい。あなたと友達になりたい。あなたは世界いちの女性だ」というメッセージを送った。

国内有数の厳戒態勢を誇る刑務所から脱獄を果たして三ヶ月経つか経たない頃、エル・チャポはカスティーリョに、シナロアの隠れ家に来るようせがんだ。

「心配しないでください。あなたの安全は約束します」とエル・チャポはカスティーリョに伝えた。

カスティーリョとペンは、あれよあれよという間に「エル・チャポ伝」に巻き込まれた。エル・チャポは、押しも押されぬメロドラマ女優に「生まれて初めて、誰かに守られている」のを実感した、とまでノロけさせてしまう。女優の迷演技かもしれないが、さすがエル・チャポだ。

「私を大切にしてくれる、と約束してくれて、すごく感動しています。今まで誰もそんなこといってくれなかったから」と9月25日のやりとりで、彼女はエル・チャポに返答した。オマケに「お誘いありがとう。来週末なら空いてます!」と加えて。

そして、翌週金曜日、10月2日、彼女とショーン・ペンはエル・チャポに会うべく、シナロアの隠れ家に向かった。その様子は『ローリング・ストーン』の記事に、詳細が描かれている。記事は、沿岸都市ロス・モチスで、エル・チャポが拘束された翌日、1月9日に公開された。

麻王とメロ女優のメッセージ交換を仲介したのは、麻王の弁護士、アンドレス・グラナドスだ。カスティーリョが、 エル・チャポとのやりとりを終わらせようとすると、グラナドス弁護士と彼女の上司は、麻王と彼女のホットラインを開通すべく、彼女に専用携帯電話を持たせることにした。

エル・チャポと弁護士は、どの携帯電話を買うか、どの電話が「可愛くてコスト・パフォーマンスが良いか」を、延々と話し合った、とメッセージが残っている。

そして、彼らはブラックベリーの購入を決めた。「女性らしい色」にこだわったエル・チャポは、ピンク色のブラックベリーはない、と弁護士に何度も説明され、とてもガッカリした様子だった。

このやりとりのなかで、ショーン・ペンという俳優が「あなたに会って伝えたい、とても重要なことがある」らしい、とカスティーリョはエル・チャポに伝えるが、麻王は明らかに「ショーン・ペン」が誰かすらわかっていない。

弁護士は、麻王に「この俳優、アメリカは凄く有名な俳優だ。マジでウケる」と伝えた。「しかも、会いに来たくてウズウズしてるみたいだ」と続けた。

エル・チャポは、「その俳優の名前は?」と弁護士に何度も尋ねても名前を覚えられなかったので、弁護士は、ショーン・ペンが出演した映画のタイトル、発表年のリストを麻王に送った。しかし、その努力は全く身を結ばなかった。

エル・チャポは、「カスティーリョに俳優を連れてこさせろ」と指示した。「彼女が望むなら、もっと大勢連れてきても構わない」

ショーン・ペンは、自身とカスティーリョが、初密会の8日後、追加インタビューのため再度エル・チャポと密会する計画を立ていた、と記事に書いている。だが、密会の数日後、海兵隊による強制捜査により、その計画は潰えた。

10月6日、小さな山村の急斜面を逃走しているエル・チャポが、海軍のヘリコプターから確認された。彼は、女性と子供を連れていたため、海軍は銃撃を諦めた、と政府は報告した。 しかし、この作戦により、何百人もの住民が、当局による襲撃を恐れて山村から逃げ出した。

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蜂の巣にされた山村 エル・チャポ狩りの悲劇

カスティーリョとエル・チャポのやりとりは、10月10日、『ミレニオ』で公表された。

「おはよう、アミーガ。ごめんね、寝ちゃった」と麻王。

何度もやりとりを重ねた末、カスティーリョに対するエル・チャポのメッセージは、かなり砕けてきた。10月の終わりに送ったメッセージで、麻王はメロ女優を「世界で最もセクシーで美しい女性」と褒め称えている。「母親が君に会いたがっている」「君のことを母ちゃんに話したんだ」とものたまっている。

このメッセージのやりとりは、新たにリークされた、監視映像に映るカスティーリョの行動を理解するヒントになる。『エル・ウニベルサル(El Universal)』に、カスティーリョが、9月26日、エル・チャポの弁護士に会い、携帯電話を受けっとっているのでは、という写真数点が掲載された。それに加え、カスティーリョとペンが 、10月2日、その晩にエル・チャポとの密会を控え、グアダラハラ空港に到着したところでは、と目されている写真も掲載された。

メキシコ政府は、カスティーリョ、エル・チャポ、弁護士のあいだで交わされた会話や接触が、 治安当局による麻王追跡の手がかりとなり再逮捕に繋がった、と報告している。

「ペンは記事を書き終えて、『ローリング・ストーン』のカバー・ストーリーになることも約束してくれた。あとは、あなたの承認だけ!」。これが、11月9日、カスティーリョがエル・チャポに宛てた最後のメッセージだ。

ショーン・ペンの手によって公表され、読者を興奮の坩堝に叩き込んだ記事、それに続いて暴露された麻王とのやりとりについて、1月13日、カスティーリョは、沈黙を破りツイートした。

彼女は英語とスペイン語で「今日この日まで、私を支えてくださってありがとうございます」と始まり、こう続けた。「みなさんおわかりでしょうが、たくさんの人が、ストーリーを盛り上げようと面白おかしく書きたてていますが、どれも真実ではありません。私のリアル・ストーリーをみなさんにお伝えできる機会を楽しみにしています」