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11月1日、イラクのハイダル・アル=アバーディ(Haider al-Abadi)首相は、モスルで有志連合軍相手に戦闘中のIS戦闘員に対し、「もし神が望むなら、われわれは蛇の頭を切り落とすだろう」と国営テレビで表明した。「ISにはもう選択肢は残されていない」と首相は続け、「降伏するか、死だ」と言明した。

アバーディ首相のコメントが発表された直後、イラク政府軍特殊部隊の選抜隊がISの最大拠点、モスル市境界の外側に到達した、と報告があった。モスル奪還に向けて、イラク政府軍と有志連合軍による激しい攻撃は、すでに4週目に突入している。

BBC記者で、イラクの精鋭な対テロ部隊に従軍しているイアン・パネル(Ian Pannell)氏によると、イラク政府側はモスル市東部郊外で、ISからロケット型の手榴弾や小型兵器によるかなり激しい抵抗を受けているという。

11月1日朝、政府軍の選抜部隊は、モスル東端のコクジャリ近辺に侵攻した。2014年にISがモスルを制圧して以来、政府軍が同市内に進軍するまでに2年以上もの月日が経った。モスルは、戦略上の要衝であるのに加え、 ISのアブーバクル・アル=バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)最高指導者が国家樹立を宣言した地でもあるだけに、同武装組織にとっては意義深い場所である。

「特殊部隊はモスルを急襲した」。イラクの特殊部隊に所属するサミ・アル=アリディ(Sami al-Aridi)陸軍少将はAPにそう述べた。「ダーイシュ(IS)は反撃している。彼らは、カラマ近辺とわれわれの部隊の攻撃を遮断するためにコンクリート壁をつくっていた」

ISの本拠地であるイラク北部のモスル市周辺の町村では、アメリカ軍の指揮のもと、イラク軍とクルドのペシュメルガ部隊による有志連合軍が、同市をISから奪還するための激しい戦いを続けていた。1日朝のモスル襲撃は、この激戦に続くものだった。

戦闘が激しくなるにつれ、市内に残された住民は、以前にも増して人道的危機に瀕している。軍と人道支援機関の代表者らは、ISが住民を集め、「人間の盾」として利用しようと計画しているのでは、と懸念している。

「軍事的に重要なポイント、エリアで民間人を人質にとり、部隊の軍事行動を防ごうと、ISIL(IS)は、卑劣極まりない作戦を画策している」。10月28日、国連職員のラヴィナ・シャムダサニ(Ravina Shamdasani)氏はこのように述べている。そして、救助団体によると、未だ100万人ほどの住民がモスル市内に残されているそうだ。また、有志連合による奪還作戦以降、数万人の住民が、ISの手により「人間の盾」としてモスル市街地に連行された、との情報も囁かれている。

「10月31日、ISは、硫黄の焼却を理由に、ミシュラックに住む人々に家から離れるよう命令した」とモスル住民のアブ=ヤセル(Abu Yaser)は語った。「ISは、午後に戻るようにと指示したので、子供も大人もみんなが一度は家を離れた。硫黄がすべて焼き尽くされ、煙が晴れると、家族がめいめい帰宅しようとすると、ISはそれを禁じた。これからここで激戦が起こるから全員がモスルに移動すべきだ、とISは私たちに告げた」

モスルから数キロ離れたファドヒリヤ村では、11月1日、アメリカ軍の空爆によって、子供3人を含む8人の市民が死亡した、とガーディアンは伝えている。市民への危険は増すばかりだ。

11月3日、イラク政府軍はモスル市内中心部に近づいたが、住民の大勢は未だに街の中に残されたままだ。ISは、「人間の盾」を利用し、人口密集地での反撃を仕掛ける可能性もある。一方、シリアでは11月6日、同じくISと戦闘中の「シリア民主軍(SDF)」が、米軍主導のもと、ISの首都ラッカ奪還作戦を開始した。共にISの重要拠点であるり、街の中心に近づくほど戦闘は激しくなる。市民の安全は確保されるのであろうか。

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