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Illustration by Taylor Lewis

今回の大統領選後、米国民はたくさんのものを失った。アメリカンドリームに対する信念、選挙関連のヘイトクライムで脅かされる自己の安全、そして選挙人団への信用問題などである。しかし、最も憂慮すべきは、多くの米国民が性欲を失った、という報告だ。

セックスは、人間の最もベーシックな欲求を満たす行為であるが、一部米国民にとって、この行為が道義に反したものになりつつあるそうだ。ドナルド・トランプ(Donald Trump)は、猥褻行為からさまざまな暴言、非礼な振る舞いなど、素の自分をさらけ出しながらホワイトハウスへ登りつめた。この男は、マイノリティ、女性、LGBTQなどの権利を脅かしている。トランプの根底にある欲求が大統領選勝利の原動力になっているのであれば、そんな男の欲求に屈服したくない、とトランピズムに反発する米国民が多いという。

選挙前、『コスモポリタン』誌では「トランプのおかげで何週間もセックスをしていない(I Haven’t Had Sex In Weeks. I Blame Donald Trump)」、『スレート』誌でも「ドナルド・トランプが、アメリカのセックスライフに危機をもたらす(Donald Trump is Ruining America’s Sex Life)」といった見出しが掲げられており、トランプがアメリカ人の性欲を奪うのではないか、といった世論が高まっていた。10月には不妊治療アプリ『Kindara』による、928人の女性ユーザーを対象にした調査では、大統領選がセックスライフに悪影響を与えている、と民主党支持者の19パーセント、共和党支持者の9パーセントが回答している。これらはすべて、日焼け用スプレーで毛穴が詰まり、汗をかかないと揶揄されていた男が、アメリカ史上最も「好き者」大統領になる以前の話である。

そして選挙後、ソーシャルメディアで、性欲減退の嘆きが目につくようになった。私は、取材協力者を募集したところ、即座に驚くべき数のメールが届いた。男性、女性、黒人、白人、異性愛者も同性愛者もみんな、最近は性的興奮を持続できない、と一斉に返信してきたのだ。

「選挙後、性的欲求が完全になくなってしまった」とダグ(28)は嘆く。「何もかもがセクシーに見えない。自分の髭が伸びて、唇の上にかかり、食べ物が付いていても何も感じない。それほどセックスもしたくない。これは予測していたトランプの副作用とは逆だ。こんなときはセックスをして楽しむしかない、と考えていたのだが、逆に無気力状態になってしまった。トランプが大統領になって、すべてにセクシーさがなくなってしまった」

一連の猥褻疑惑に謝罪もせず、自由主義国家の大統領となったトランプは、性暴力の被害者にとってはトラウマの引き金となり、性被害者を支援するスタッフたちにとっても明らかに嫌悪の対象である。「選挙以来、まったく性欲がない」と返してきたのはアンジェラ(31)。「性的被害にあった後、何ヶ月も経験した症状に似ている気がします。アメリカ人の大部分が、本当は『性被害にあった方に責任がある』と考えているという事実を選挙で知り、トラウマが甦ってきました」

トランプが、このような女性のトラウマの引き金になったのに不思議はないが、これだけではトランプが大統領になってから、多くの人がセックスレスになっている完全な説明にはならない。

ロサンゼルスで開業している臨床性科学者ステファニー・ハンター・ジョーンズ医師は、選挙後に「トラウマを受け、セックスに対する欲求を無くしてしまった」患者が、男女問わず非常に多い事実に「ショックを受けた」そうだ。「患者の不安がなんであれ、まず、最初に語られるのは選挙結果です。少なくとも各カウンセリングセッションの半分は、選挙結果への対処法相談に費やされます」

確かにここ数週間、米国民の頭の中は、この選挙結果をどう受けとめるかでいっぱいだった。ザッとソーシャルメディアを見渡しても、多くのフィードには、怒りのテキストから、陰謀説を唱えるコメントのスレッド、更には抗議の写真で埋め尽くされていた。今、性欲を維持できるのは、世界に関心を持たない反社会的人間ぐらいなのかもしれない。

ハンター・ジョーンズ医師は、不確かな将来に対する「ショックと恐れ」が性欲減退の原因だと考えている。患者の多くが「トランプ政権を深く恐れ」、「経験の未熟さと判断力の欠如を挙げて、自らの安全に不安を感じている」という。

セックスをしている場合でも、行為中に潜在的な恐れを感じるという報告者もいた。「選挙結果に対して、どう対応していいのかわからず、セックスでも、他の場合でも、抑圧された感情が表に出てしまいます」とウェンディ(24)は語っている。「食欲や睡眠欲も減っています。私は有色人種なので、今までに無かった恐れを感じています。将来もわからないし、厳しい状況です。私自身もパートナーも、セックスでの快感をえられなくなっています」

「日常生活や、仕事に集中するのも難しい状態なので、ベッドルームで集中するなんて、とても無理です」と彼女は続ける。「私の権利が奪われるのではないか、友達や家族が国外退去を強いられるのではないか、私や私の愛する人たちがヘイトクライムの被害に合うのではないか。心配が絶えません。私が付き合う男性は、みんな有色人種です。ですから、彼らが午前5時に私の家から出るのは危険かもしれない。本当に心配なのです」

このような恐れは、多くのアメリカ人にとって厳しく痛ましい現実となった。恐れとセックスは相容れない。選挙後、多くの女性は避妊リングを買いに走った。トランプ政権がオバマケアで認められた避妊具へのアクセス拡大を覆し、中絶そのものもさえ制限されるのではないかと恐れたのだ。次期政権は、最高裁で何が起ころうとも、安心してセックスできる、と保証しているが、選択の権利が奪われるという恐れは、確実に性欲減退に繋がっていく。

もちろん男性に避妊リングは必要ないが、恐れているのは女性だけではない。「男性も女性と同じように、われわれが直面する将来の不確実性に対して恐れを抱いている。それが性欲減退に繋がっている」とハンター・ジョーンズ医師は説明する。

これら全てに対する処方箋はあるのだろうか。われわれは再び性欲を取り戻せるのだろうか。ハンター・ジョーンズ医師は次のように語る。「選挙のショックが癒えるのには時間がかかります。しかし、恐れには直ちに対処しなくてはなりません。自分自身の気持ちを大切にし、私は安全で危害は及ばない、と自分自身を安心させるようにしてください。これは、自己を愛す、という非常に重要な行為の一環です」

トランプは、われわれが自己を愛するのを嫌うだろう。ならば、抗議の一環としてでも進めるべきだ。

「トランプが他の全てのものを奪っても…」とヘザー(27) は書いている。「…女性のオーガズムだけは奪えません。私はオーガズムを得るために闘ってきました。恥、トラウマ、そして、女性は自慰するものではない、と教える社会と闘ってきたんです。だから抗議のために、自慰はやめません」