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何度目かの冬を迎えるレバノンのシリア難民たち

レバノン・ベッカー高原、アル・マルジュという町にあるシリア難民のキャンプ。しかし、膨大な難民数を収容することができず、キャンプ地として認められていない場所にも無数のテントが張られている。地元の農家から土地を借りた難民たちが暮らしているのだ。

レバノンに難を逃れたシリア国民の数が110万人を越えた。同じく隣国、トルコに逃れたシリア国民は195万人とレバノンを大幅に上回る。しかし、レバノン共和国の人口は約450万人、面積は10,452平方キロメートル(岐阜県程度)で世界第161位、1人当たりGDPは9,190ドル。トルコ共和国の人口は約7770万人、面積は780,576平方キロメートル(日本の約2倍)で世界第39位、1人当たりGDPは10,040ドル。受け容れ難民数がトルコよりも少ないとはいえ、レバノンの負担は大きい。

この状況は、レバノン経済、同国の限られた資源を圧迫している。国際社会からの支援だけでは難民を賄いきれず、治安も悪化した。国民の我慢も限界に達しつつあった。そして2015年、レバノン政府は、大量のシリア難民流入を防ぐため、ビザ発給による入国制限を開始。更に、難民の在留資格更新を制限するため、難民による高額の費用負担と新たな規制を導入した。

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ベッカー高原、アル・マルジュという町にあるシリア難民のキャンプ。しかし、膨大な難民数を収容することができず、キャンプ地として認められていない場所にも無数のテントが張られている。地元の農家から土地を借りた難民たちが暮らしているのだ。家賃、光熱費、そして生活費を稼ぐため働く難民たち。幼い子供たちも学校を休んで働いている。

彼らは、欧米諸国への移住を望んでいるわけではない。パリ同時多発テロ事件以降、アラブ民族やムスリムへの偏見が溢れた中での生活は耐えられそうにないからだ。彼らの希望はただひとつ。
「シリアに帰りたい」
2月27日午前0時、シリアでは、米国とロシアが主導する敵対行為停止合意が発効された。しかし、空爆や戦闘は未だに続いている。
2016年1月8日、レバノン政府は、100人以上のシリア難民を強制送還した。さらにベイルートのラフィク・ハリリ国際空港では、トルコに向かう途中のシリア難民150人も同様に強制送還。また、家主や雇用主、更には警察、ボランティア・スタッフなどによる難民への搾取や虐待、嫌がらせなども勃発している。
レバノンのシリア難民たちの未来はどうなるのだろう。来年もまた同じ場所で冬を迎えるのだろうか。

原題:Arab Winter: Syrian Refugees in Lebanon’s Bekaa Valle(2015)