租税回避のメガ・リークが世間を騒がせている。今のところ英国では、ふたつの大きなトピックがある。保守党元議長アシュクロフト卿が風呂場に駆け込んで「なんてことだ」と繰り返す光景、そして英国の君主制がある種の特権階級にとっての温床であるというショッキングな新事実である。

いわゆる〈パラダイス文書(Paradise Papaers)〉は、主に、バミューダ諸島のアップルビー法律事務所から流出した数百万件の書類だ。同事務所は、〈タックス・ヘイヴン〉ネットワークを利用して、富裕層が自らの資産を世界中に隠す手助けをしている。最も議論を呼ぶのは、貧しい国民を搾取して罪に問われている質屋チェーン〈Brighthouse〉に英国女王が間接的に投資していた事実だろう。

VICE UKは、Tax Justice Networkのジョン・クリステンセン(John Christensen)取締役に電話取材をオファーした。いかにして女王が数年前のジミー・カー(Jimmy Carr)氏と同じ立場になったのか、そして、一連の顛末が富裕層に租税回避を奨励してしまう可能性について、質問した。

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VICE:〈パラダイス文書〉のリークに驚きましたか?

ジョン・クリステンセン:そうでもありません。数か月間、関わってきましたから。この文書に対する観点はあまりに多く、関係者もあまりに多いので、暴露は続くでしょう。数週間は続くと予想しています。

女王はどのようにして質屋へ投資することになったのでしょう?

まず、これは珍事ではありません。女王の財産は、女王固有の独立財源を確保するためのランカスター公領担当大臣の管轄下にある資産管理チームによって処理されています。カテゴリー分けすれば、女王は超富裕層です。超富裕層が、たくさんの国々、さまざまな有価証券に投資するのは珍しくありません。厄介なのは、女王の資産管理を任されているのであれば、倫理的問題に特別な注意を払い、〈Brighthouse〉のような企業との関わりを避けるだろう、と世間が信じていることです。管理者がそうしなかったのは重大な過失です。なぜなら、現在、女王の威厳がリスクにさらされているからです。

女王がオフショア投資ファンドを利用していたのは予想外なんですが、この事実が示唆している真実は、この手の資産運用は当たり前、ということなのでしょうか?

それこそが問題でしょう。租税回避は、富裕エリート層のあいだで、まさに、ありふれた財テクです。彼らにとって、タックス・ヘイヴンの利用は当然であり、租税回避も全くもって普通なんです。

問題は、租税回避が合法か否かが私たちにはわからないことでしょう。租税回避の仕組みが合法が否か、判断できるのは裁判官だけなので、「合法だ」と主張するジャーナリストがいるとすれば、そのジャーナリストは厳密には間違っています。

ここ30年ほどで租税回避は当たり前になりました。つまり、賢い選択と信じられています。もちろん、租税回避は民主主義への強烈な当てつけです。ですから、女王が租税回避のスキームに関わることによって、彼女の威厳が損なわれるのは当然です。

では、それは常態化していると?

現代資本主義に深く食い込んでいます。そして彼らは、「私たちがこのサービスを利用するのは税制として中立だからだ」と主張し、何事もなかったように振舞います。「富裕層は然るべき税金を納めているはずだ」と。 それこそ、彼らが知り得る立場にはいないのが前提です。彼らには、彼らの顧客が税金を払っているか否か、全くわかりません。圧倒的多数のケースで、彼らは税金を納めていませんし、オフショア信託やオフショア企業をまさしく租税回避のために利用しているからです。

資産運用業界が世界規模で仕掛ける、ある種の大規模な〈ごっこ遊び〉です。そこで彼らは「顧客が税金を納めるか否かは、私たちの責任ではない。とにかく私たちはタックス・ヘイヴンを利用するし、租税回避をサポートするだろう」と言明しています。


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この手のスキームに夢中になる大勢の著名人は、一見もっともらしい理屈で自己弁護しようとします。「ある人が、何らかの目的をもった共同事業体の少数株主だったとする。その事業体が別の事業にも携わっており、オフショアの資金でショッピング・センターに投資したとする。少数株主は、一体、どうやってそんな情報を知り得たというのだろうか? 」。そんな詭弁を受け入れるべきでしょうか?

いいえ、受け入れるべきではありません。まず、法の前で〈無知〉は何の言い訳にもなりません。彼らはもっとよく知るべきです。全般的に、オフショア構造に関わるあらゆる租税回避スキームの怪しさを知るべきで、それをきちんと避けるべきです。皆がこれに関与するから、普通のことになるんです。彼らは、〈不公平〉の度合いが増し、公共サービスが崩壊している現状に対して全くの無関心で、その責任を引き受ける覚悟もできていないようです。

女王が何らかの法的問題に巻き込まれる可能性はありますか?

現状から判断するのは難しいですが、そうはならないでしょう。私は今日、「女王は責任を負わなければならない。結局、彼女はバミューダ諸島、ケイマン諸島、チャンネル諸島の元首でもあるからだ。これらの諸島は、世界中のタックス・ヘイブンの大部を占めている」とブログ記事を投稿しました。国家元首として、これらの場所から不正を排除する責任からは逃れられません。

2013年、女王に手紙を送りました。そして実際に返答もありました。私は、こう言いました。「さあ、どうかデーヴィッド・キャメロン首相に、積極的な行動をとるよう圧力をかけてはいただけないでしょうか? 」。もちろん、そんなことは起きませんでした。しかし、女王には国家元首としての責任があります。そして、英国は間違いなくオフショア金融サービスの世界最大の当事国です。ロンドンは、世界的な金融の首都であるだけでなく、これらの島々すべてと非常に密接な間柄にあります。英国が行いを改めるべき期限はとっくに過ぎています。女王が脱税について個人的に責められるべきではないにしても、国家元首としてこの惨状を是正するのに充分な労力を費やしていなかった、と私は確信しています。

状況が好転する見込みはありますか?

残念ながら英国については、ブレグジットの影響で事態が悪化する可能性は高いです。ブレグジットのおかげで、国際社会における英国の地位の崩壊が始まっています。現首相は、年初、匙を投げました。これまで以上に、タックス・ヘイヴンの温床になるだろう (英国を法人税回避に優しい国にする) 、と世間はいいます。それらを踏まえて、事態は悪化するかもしれない、と懸念しています。

つまり、多くの議論が起こっても好転しないのでしょうか?

その通りです。あなたが世界的なレベルで起きていることをフォローしていればわかるでしょう。私は、ブリュッセルやOECDなどの関係者と意見を交換しています。彼らはおそらく、特に情報の共有、会社の所有権についての情報を得るための公文書作成にむけた国際的協調を阻む筆頭ロビイストが英国だ、と非公式に語るでしょう。

昨年、パナマ文書が開示されました。今年は、パラダイス文書です。この手のリークが今後も起きる可能性はあるのでしょうか?

私たちが知っているのは、氷山のいっ角に過ぎないでしょう。モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)、アップルビーは、どちらも大規模なオフショア法律事務所です。大規模なオフショア法律事務所は他にもたくさんあります。これは、システム上の問題であり、国際的問題でもあります。国際的エリート層の大半は、数十年間にわたって自らの財産をオフショアに預けて租税を回避し、犯罪まがいの活動にも勤しんできました。繰り返しますが、これは氷山のいっ角に過ぎません。


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