一枚の写真から襲撃事件へ

1 ヤクザとオリンピック - 最も危険な写真を公開

日本大学の理事長・田中英寿氏(左)と山口組組長・司忍氏(右)

「私は日本大学の職員です。田中理事長に従えない者も多くいます。6~8年前、田中が理事長に就きました。この写真は、名古屋にあるクラブで、山口組の幹部らと共に昇進祝いをしたときのものです。田中はこうした写真を私たちに見せつけて何年も脅してきました。どうか調査してください。」

手紙と共に送られてきたツーショット写真、10億の値がつくという。右側にいるのは、日本オリンピック委員会の副委員長を務める田中英寿氏、その隣には日本最大の“ヤクザ”、山口組組長である司忍氏だ。彼の左手を見れば分かるだろう。

今年9月、日本にあるほとんどメディアに送られきたという。多くのメディアが掲載を見送る中、写真の撮影された場所や日付、二人の交流関係について調べようと、右翼系の敬天新聞が唯一取材を開始。しかし、ある日事務所に帰る途中、記者が2人の金属バットを持った男に襲撃されたという。

警察当局によれば、その翌日には大手メディアに対して写真を掲載しないよう脅迫があったという。脅迫電話を受けた記者の一人は、「われわれは敬天新聞を攻撃した。写真を掲載すれば、お前らも同じ目に遭わせる」と言われたと証言している。

日本大学の広報担当は、「田中理事長は(山口組の幹部といった)人々と会ったという事実はなく、写真は偽造だと考えている」と述べ、田中氏へ直接インタビューは出来ないと突っぱねられた。田中氏は大学を通じ、数年前“偶然に”福田氏と会ったと述べている。事実関係を確かめられないことを理由にどのメディアも写真を掲載しなかったが、VICEが世界で初めて公開することになった。

2 ヤクザとオリンピック - 最も危険な写真を公開

田中理事長(右)と山口組幹部、山本巌(左)(2004年撮影)

事件の犯人をめぐる、一つの仮説

警視庁は田中氏が山口組と関係しているかについて、現在調査中だという。暴力団排除条例の下ではこういった交流は違法となる。田中氏は、日本大学の理事長ほか、日本オリンピック委員会や国際相撲協会でも幹部を務めているが、以前にも黒い関係があると噂されていた。

3 ヤクザとオリンピック - 最も危険な写真を公開

田中氏(左)、住吉会・福田氏の昇進を祝うパーティにて(1998年撮影)

これは1998年9月にホテル・ニューオータニで行われたパーティーで撮影された一枚。住吉会の会長に昇進した福田氏を祝う会だという。住吉会組員によれば、この当時は住吉会との親交があったという田中氏も、2003年頃より山口組との親交を深めていったという。

しかし何故今冒頭の写真が流出したのか?襲撃・脅迫事件を起こしたのは、山口組の組員ではないと見られている。2011年まで刑に服してから司氏は、市民を攻撃しない、窃盗や強盗はしない、麻薬の売買・使用はしないといった、山口組に古くからあるルールを厳守するよう指導しているためだ。中には、あまりに伝統的な価値観についていけない組員もいるという。山口組ではないとすれば誰が?

山口組と敵対する住吉会が、写真を流出させたのではないかという仮説もある。襲撃事件を起こし、山口組の仕業であると思わせ、2020年の東京オリンピックに向け建設ビジネスから山口組勢力下にある建設業者を追い出し、出来るだけ多くのパイを獲得することが目的だったのではないかということだ。

月刊誌『FACTA』は、国税局による日本大学の脱税疑惑を調査によって写真が流出したのではと見ているが、日本大学で田中理事長と権力争いをしていたものが写真を流出させたとの情報もある。しかし、この写真一枚で田中氏が日本オリンピック委員会の席を失うことはなさそうだ。日本の権力者たちとヤクザの関わりは、そう簡単に切れるものではない。

日本社会は“黒い影”を容認している?

2013年1月、東京地方裁判所によれば、大手建設企業がオリンピックの建設プロジェクトでヤクザを雇い、トラブル解決のため脅しに使っていたという。

4 ヤクザとオリンピック - 最も危険な写真を公開

 

この写真には安倍首相とアメリカの政治家マイク・ハッカビー氏、そして山口組幹部・永本壹桂氏が映っている。写真が流出したのは2012年、撮影されたのは2008年頃だと見られている。安倍総理は写真について、永本氏のことを知らずに撮られたものだと主張しているが、安倍総理の祖父であり元首相の岸信介氏も、山口組とは強い繋がりがあったとされている。1971年、山口組幹部の一人が殺人で逮捕された際には、保釈金を援助したとされている。オリンピックにヤクザが絡んでいるのも当然か。安倍総理だって気にしていないのだから。

VICEが取材したアメリカの連邦当局調査員は「2012年、アメリカ政府は山口組と住吉会に対して経済制裁を実行している。アメリカ国民が組員や幹部との交流するのも禁止だ。こういった写真が流失すれば、国際犯罪に対する日本の危機感の薄さに疑問を抱かざるを得ない」と述べている。

日本社会に深く根を張るヤクザ。現在21もの派閥が存在し、合計で60000人もの組員が存在すると言われている。2020年に行われる東京オリンピックに向けて、色々な動きが出てくることだろう。