中国南西部で大規模な狂犬病予防キャンペーン

国営新華社通信が報じたところよると、今年の7月から8月に中国南西部・雲南省の保山市西部にある施甸県で狂犬病により5人が死亡。犬に噛まれる被害も数件報告された。これを受け市当局は4,900匹の犬を殺処分、10万匹にワクチンを接種した。

中国の地方政府が、狂犬病予防のため犬を大量殺戮することは珍しくない。2009年には、漢中市で約3万7,000匹の犬が殺処分された。また2006年には、雲南省で半年間に3人の狂犬病による死者が出たことを受け、一週間で約5万匹の犬が絞首、感電、撲殺といった方法で殺戮されている。当局は複数の省において、所有する犬の大きさや数の制限、および動物所有許可を申請するよう要求している。

こうした状況について、動物保護団体と愛犬家らは激怒し、犬を大量殺戮する必要はないと主張している。たしかに狂犬病ウイルスが動物から人に感染したことで死に至る可能性もあるが、ワクチンを接種させれば発症を抑えられる。世界保健機関(WHO)によれば、狂犬病による死者数は全世界で年間約6万人に上るが、死亡するケースはワクチン接種が整っていないアフリカ、アジアの農村地域に偏っているという。

中国における犬の殺戮

世界最大級の動物福祉団体Humane Society International(HSI/※1)は、2006年に実施された犬の大量殺戮を受けて中国政府へ10万ドルの援助を行うと共に、人道的動物管理プログラム施行のための指導を提供した。HSIのウェイン・パーセル(Wayne Pacelle)会長は当時、駐米中国大使に宛ててこう書いている。「これ以上中国当局が大量殺戮を続けると、何十万、何百万という犬が殺されることになる。それを防ぐために、我々は解決策を提供したい。人間と動物の福祉にとって、それが求められている」。

しかし中国は歴史的に、毛皮や食用といった様々な目的で犬を利用してきた。現在でも、中国東北部・南部では広く犬肉を食べる習慣が残っており、広西省チワン族自治区玉林市で夏至の日に開催される「犬肉祭」(※2)では、毎年1万匹の犬が食用処理されると言う。犬を殺す是非については、国内外で議論を呼んでいる。

日本も調査捕鯨をめぐって世界から批判を浴びているが、クジラはダメでもマグロはいいのだろうか?犬はダメでも牛はいいのか?猫はダメでも鶏はいいのか?その境界線を引いているのは誰なのだろう。地球に住むすべての人が、一つの倫理観を共有することが不可能だとすれば、犬やクジラに直接対峙する人が判断するしかないのではないか。各者の価値観を軸に論じた先の「正しい答え」は、一言に「モラル」という言葉で片付けられるほど簡単なものではなさそうだ。

約5,000匹の犬を殺処分した施甸県(しでんけん)

Location of Shidian within Yunnan (China).png

出典:ウィキメディア・コモンズ

Translated & Edited by Rieko Matsui
Photo by Alexander von Halem