若い子の貧困は犯罪にどう関係していますか?

とくに地方の子を取材していると顕著なんですが、若者の貧困は本当に切羽詰まっていて、「大学進学者=負け組」的なところまできています。かつての日本には、地方のどんな貧しい村に生まれても、努力して大学進学すれば、その貧しさから抜け出せるって考えがあったけど、いまの子にとってそれは幻想です。当たり前ですよね、立派に4大出ても就職につまずき、社会人になってもブラック企業で散々な目に遭うといったケースがこれだけあるわけで。となれば、大学行っている時間があったら地域のコミュニティのなかでしっかり働いて早く子供を作らないとやっていけない、みたいな。そこの閉塞感に耐えられない子や地元のコミュニティに馴染めない子が裏稼業の世界に行き、現状でいいじゃんと諦めている子はマイルドヤンキー化していく。僕らのころも就職氷河期でしたが、高校時代がバブルだったのでバイトすれば時給1200円ぐらいでいろんな仕事がありました。そうやってアホでも食ってこられた我々40代は、成人して選挙権を持ってから20年以上生きてます。その結果、いまの格差拡大や子供の貧困があるのだから、ここらで僕も含めて40代以上の全員が自ら加害者意識を持って、いまの子たちをケアしていかないとマズいですよね。若い世代をきちんと育てられないことの結果は、将来、自分たちの社会に跳ね返ってきますから。

いまの子たちにとってのいい大人像は?

詐欺の子たちに関して言えば、いい大人っていうのは、残念ながら詐欺の先輩たちなんですよ。身近でわかりやすい成功者像ですね、羽振りがよくてカッコいい。先輩たちにも裏稼業なりの消耗があるわけだけど、それは見えないわけです。そして先輩後輩の関係でいうと、先輩たちにかわいがられる子たちはいいけど、ダシ子ウケ子のような使い捨ての人材も本当はケアしなきゃ意味がないと感じます。

たくさんの裏稼業の子を取材してこられましたが、彼らにとって鈴木さんの取材や本はどんな意味があったと思いますか?

出した本は不良の子にとって教材として、例えば、詐欺の店舗で下の子を教育したり自分たちのモチベーションをあげたりするために購入されているというフシがあり(笑)。まあ、そうなりますよね。取材に関しては、僕自身が理不尽が嫌いで、彼らが受けた理不尽な扱いなんかに対して、本人たちが諦めちゃっていても僕が諦めきれなくて怒るんです。「お前それでいいの!」「それ絶対怒っていいことだから」って。取材で彼らの話を聞いている僕がムカついてエキサイトしちゃうので、それで元気が出る子もいるし、病んじゃう子もいるのかもしれない。他人に言語化してもらって、自分の置かれた状況や当時あったはずの憤りなんかを再認識するっていう作業にはなると思うんです。

鈴木さんは自分のことじゃないのに取材中に怒ってしまう。

それはもう義侠心とか正義感じゃなくて、単に病気ですね。発達障害的な癇癪があって。「キャンディ・キャンディ」って子供のころにテレビで放映していたアニメーションを覚えてますか? イライザやニールがキャンディに意地悪をするのを見て、癇癪起こしてテレビをぐしゃぐしゃにしたことがあったんです。大人になっても変わらなくて、他人がされた理不尽に自分が激高しちゃう。それが原動力ですね。自分の病気で商売しているような罪悪感は常にあります。

取材対象から影響を受けることはありますか?

女の子の取材と男の子の取材では違います。女の子の取材では、取材対象の闇に引っ張られてドーンと落ちて、思考停止してしまうこともあります。が、うちのヨメさんの現実引き戻しパワーが凄まじくて、僕が泣きながら車を運転して取材から帰って家に入るとヨメさんが半裸で大の字で寝ている(笑)。「遅えよ」なんて言われて「はい、すみませんでした」みたいな。ヨメさんがいないと、つらすぎる取材は続けられなかったと思います。一方で、自分は記者稼業は、記者稼業単体で商売にならなければやってはいけないと思っています。どんなに善意があってボランティア精神で始めたとしても、それで食べていけなければ途中で体力が途切れてしまう。取材執筆活動以上にいろいろなことに手を広げれば、裏稼業の記者だから裏稼業やれば的な誘惑は常にあります。けどそこで距離感を間違えたら、すべてが無駄になってしまいます。なので、男の子の取材に関して言うと、あくまでもビジネスのうえでの記者活動っていう一線を守ってやっているんで、影響を受けたり引っ張られたりすることはないですね。むしろ男の子の取材は、「強い彼」を取材するなかで「こぼれてくる弱い彼」を拾う作業ですし、ことさらに引っ張られることはないです。

これから先はどうしようと思っていますか?

自分がやってきたような取材活動は45歳ぐらいが限界年齢だと思っているんで、そろそろ次を考えないと。

あと3年ぐらいですか。書くことは続けるんですよね?

いや、全然関係ないことやるかもしれないですね。真面目な話、45ぐらいになると20歳の子の取材がさすがにキツくなってくるかな、というのがあって。あと、つき合いが長い取材対象者はどんどん偉くなっていっちゃう。偉くなるか飛んじゃうか。男の子はカッコ悪いところ見せたくないから潰れたら連絡とれなくなりますけど、女の子の場合は潰れたあともケアしていかなくちゃならない。幸せになった子もいますよ。16のときに取材した女の子がいまや23、4で子供がふたりとか。でも、人生長いんでね。いまが良くても悪くても、先はわからないから。こうした取材対象の確保もありますが、結局、取材活動の原動力が私的な憤りや癇癪でしかない時点で、それを感じない取材で書いたところでろくなものはできないのは見えています。取材したものを出し切ったところが、限界かなと思っています。とはいえ、後継者的に同じテーマとポジショニングで取材を続けてくれる人が出てくることも望んでいます。取材記者は楽しいですよ。僕は自分以外の人はみんな僕より凄いと思っているんです。誰もが僕の知らないことを知っているわけですから、みんな取材対象者にはなりうるんですよね。例えば僕は千葉県育ちですが、茨城県民はほとんどの人が僕よりも茨城の知識があるわけで、猛烈に茨城のことが知りたくて、茨城の情報を広く伝えなければ! と思えば、茨城県民全員が取材対象です。誰の話でも聞き込んでいくと知らないことだらけで、本当に楽しいですよね。

プロフィール
鈴木大介(すずき・だいすけ) 1973年生まれ、千葉県出身。記者。「犯罪者側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女たちの生きる現場を中心とした取材活動を続ける。近著に『最貧困女子』『最貧困シングルマザー』『奪取「振り込め詐欺」10年史』『ギャングース・ファイル 家のない少年たち』などがある。週刊モーニング連載の人気コミック『ギャングース』のストーリー共同制作者でもある。

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『老人喰い ─高齢者を狙う詐欺の正体』鈴木大介(ちくま新書)
定価:本体800円+税