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『怪獣の教え』が教えてくれる新しい次元

横浜赤レンガでの公演が好評を博し、予定していなかった再演が実現する『怪獣の教え』。「演劇」「音楽」「映画」を組み合わせた全く新しい複合型芸術作品=シネマライブがこの先、どう変化するのか目が離せない。

昨年11月に横浜赤レンガ倉庫にて、5日間7公演すべて満員御礼という記録を打ち立てた伝説的舞台『怪獣の教え』がいよいよ再演を迎える。直後から再演が熱く望まれ、業界内だけでなく、多くのシーンに衝撃を与えた本作。「演劇」、「音楽」そして「映画」を組み合わせた全く新しい複合型芸術作品=シネマライブ『怪獣の教え』はこの先、どの様に変化するのか目が離せない。

『ポルノスター』で監督デビューを果たし、『青い春』『空中庭園』『モンスターズクラブ』『I’m Flash!』など、話題作を次々に生み出してきた豊田利晃監督が演出・脚本・映像を担当。自身が魅了され心酔する小笠原諸島を舞台に、怪獣を復活させるべく島を目指す男・天作と、天作の従兄弟・大観、「怪獣の教え」の秘密を知る女性・クッキーの姿を描く。国家の秘密を暴露したことで政府から追われる天作を演じるのは、『モンスターズクラブ』にて比類なき存在感を放った窪塚洋介。豊田監督の創り上げる世界観に欠かすことの出来ないエレメントとして数多くの作品に登場する渋川清彦が、島育ちのサーファー・大観を演じる。さらに世界の島を転々としながら暮らすクッキー役は、前回の舞台で豊田作品へ初参加を果たした太田莉菜が務める。 更に前回同様、怪獣デザインに現代美術家のピュ〜ぴる、衣装に伊賀大介、音響をzAk、照明に高田政義、音楽にTWIN TAIL (メンバー:中村達也(Dr)、ヤマジカズヒデ(Gt)、青木ケイタ(Sax & Fl) + GOMA(Didgeridoo))が参加する。また、監督自ら撮影した映像もステージ上で映し出されるライブシネマ 『怪獣の教え』。監督本人に、東京公演に向けての率直な感想、意気込みを聞いた。

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横浜赤レンガから、今回は東京ブルーシアター。 とうとう東京で実現しますが再演に向けての意気込み、新たな挑戦はありますか。

赤レンガを終えて、もっと多くのお客さんに観せたかったのが今回の始まりです。前回の横浜の公演後、お客さんの反応も凄く良く、熱狂みたいなものもあった。それ以上にやってる側が熱くなった。もっとやりたい。もっとできるんじゃないか、もっと良くなるんじゃないか、やりたらない、という想いがありました。だったら、鉄は熱いうちに打てじゃないけど、早く次の公演をやりたい、そう思って、色んな人の協力を得て、今回のブルーシアターが実現しました。横浜赤レンガが巨大な実験場であり、リハーサルであり、今回の六本木ブルーシアターが本当に本番。そういう気持です。横浜赤レンガで突き詰めたことを、更に突き詰める。新たな実験がそこにあるだろうし、今回は新しい場面もひとつ増える。役者、ミュージシャン、スタッフ、みんな楽しみにドキドキしながら日々を過ごしています。

前回の横浜赤レンガ公演での窪塚洋介、渋川清彦、太田莉菜は監督からみていかがでしたか。

窪塚とは、舞台が始まる前に一緒に小笠原へ行ったり、時間をかけてコンディションをつくっていったので、お互い刺激し合いながら挑めて、舞台で爆発すると。実際、窪塚自身が本番中に気を失うにいたるまで、舞台にはまり込んでいった。そういう姿を見て、本当に素敵だな、立派だな、と感心しました。窪塚とともにそこまで到達できたのに、僕自身も興奮しています。良いものができて、充実感がありました。

渋川清彦も、公演前に一緒に小笠原で時間を共にしました。渋川さんとは長い付き合いなので、彼がやりたい役、演じたい役柄というものも知っていました。それをふまえて「大観」というキャラクターを書いたので、彼自身もこの役からは逃げられないというか、この役をはずしたらダメだろう、という気持ちだったんです。一番セリフが多いし、大変だっただろうけど、エネルギーを感じましたね。まだまだ改善の余地はあって、次のブルーシアターではもっと良くなり、役をものにしてくれたら、渋川清彦という役者自身もグレードアップするだろうな、という役柄である気がします。

太田莉菜は、舞台も、お客さんの前で芝居をするのも初めてだし、色々と大変だったはずです。窪塚洋介、渋川清彦の間に太田莉菜が入ることで、別のリズムが生まれました。それは、ホッとするような、夏の風のような、いい化学反応でした。赤レンガでの初めての経験が次のブルーシアターに繋がるでしょう。これから稽古に入るんですけど、更に良くなる様に磨いていきたいし、磨いて欲しいです。

ミュージシャンの方々には、東京公演に向けて何か期待していますか。

一流のミュージシャンをスクリーンで隠したうえに、決められた演奏をお願いしました。中村達也さんも、ヤマジカズヒデさんも、そういった経験はなかったのに快く引き受けてくれて、なおかつ楽しんでくれたのが凄くうれしかった。そして、役者のセリフとともに音楽を演奏する喜びを、前回の舞台で感じたようで、盛り上がってくれました。それが、あの「爆発的な」空間を生んだのでしょう。演技と映像、音楽を融合するのが初めての体験で、本番を迎えるまで、どうなるかわかりませんでした。あっという間に7回の公演が終わって、どうすればもっと良くなるのか、みんなわかったはずなので、更なる爆発を期待したい。もちろん、セッションのような舞台なので、お互い足し算、引き算を組み合わせて、新しい挑戦はしたいです。

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監督ご自身が2014年から今まで小笠原で過ごしたなかで、一番記憶に残ってる風景を教えてください。

小笠原で過ごすと、パラダイス感、時間感覚の喪失といった心地良さを受けるでしょうけれど、長い年月、東京と小笠原を往復しているあいだに、そのファーストタイムの感覚がどんどん薄れて、小笠原にいるのが当たり前のようになったんです。何がどう作用してそうなったのかは、わかりません。それでも、夕陽があれほどきれいな場所は、世界でもなかなかないでしょう。小さな島なんで、どこにでも10分で行ける。10分のパラダイス、って呼んでいます。夕陽を見ると、今日一日がどんな日だったか、雲の流れでわかるし、明日はこうなるんじゃないかな、っていうのもわかる。そうやって、地球の流れみたいなものと触れ合う。地球と触れ合う、よくある言葉だけど、その言葉を実感できたのが大きな収穫で、地球とここまで直に接するのは、都市生活ではあり得ない。それは、自身に大きな影響を及ぼしているはずです。そうやって夕陽を見てる黄昏時のブルーがブラックに変わる時間から、この作品は生まれました。

今回初めて『怪獣の教え』を観に来る皆さん、前回に引き続き2回目の皆さんに向けて何かメッセージを貰えますか。

演劇というのは、商業なんだけど、創っている本人たちには商業的な気分があまりなく、本当に、別の次元に行きたい、という気持ちで全員が参加しています。『怪獣の教え』を観て、空間を共有すれば同じ経験が出来るはずです。そこから何を得るのか、何を感じるのか、それは観客の皆様にゆだねています。舞台の空間に、すでにメッセージがある。それは、これからどうやって生きていくのか、ヒントになるでしょう。僕もそこで大きなヒントを得ています。2016年から2017年に移行しようとする季節のなかで、それをみなさんと共有できたら、こんな幸せなことはないですね。

ライブシネマ 演劇+音楽+映画『怪獣の教え』

2016年9月21日〜9月25日 「Zeppブルーシアター六本木」にて上演

チケットぴあローソンチケットイープラスZeppブルーシアターチケットで発売中。

怪獣の教え・公式サイト: http://kaijuno-oshie.com

PARCO STAGEサイトの『怪獣の教え』
公演情報: http://www.parco-play.com/web/program/kaiju/