タトゥー進化論 01 人類最古の天然ミイラ〈アイスマン〉のタトゥーは何を語る?

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タトゥー進化論 01 人類最古の天然ミイラ〈アイスマン〉のタトゥーは何を語る?

タトゥーの歴史に焦点をあてた連載企画「タトゥー進化論」。第1回目は現存する人類最古の天然ミイラ〈アイスマン〉に施されていたタトゥーを契機に、タトゥーを施していた理由や起源について検証していく。装飾のためか、治療のためか、はたまた火の使用とともに、生まれたものか。謎に満ちた人類の歴史とともに、タトゥーにまつわるロマンを探る。
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Illustration by 苦虫ツヨシ

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©EURAC/M.Samadelli/M.Melis

標高3210mの地点に、うつ伏せで倒れていたところを、アルプス登山をしていた年配のドイツ人夫婦に発見された。身体は茶褐色に変色しており、ずいぶん前に死亡したのはあきらかであった。この年は記録的な猛暑日が続き、行方不明になっていた数十年前の山岳遭難者が、溶け出した氷河の中から多数発見される非常に珍しい年だった。このミイラも過去の登山者だろうと誰もが思い込んでいた。

身体のいたるところから149点のサンプルを採取した結果、アイスマンの謎が次々と解き明かされた。DNA鑑定によると、アイスマンは身長157.5㎝、体重50㎏、年齢は45歳前後で筋肉質。髪は黒っぽく、瞳は茶色、肌は典型的なヨーロッパ系の白色。血液型はO型。死因は、後ろから矢で射られた他殺。殺害の動機は不明。

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アイスマンにあったタトゥーの箇所とバリエーション。実物は茶褐色なのでモノクロ写真が見やすい。©EURAC/M.Samadelli/M.Melis

CTスキャンの画像でも、膝と臀部の関節は軟骨がかなりすり減っており、腰と膝に痛みをともなう関節炎の症状がでていたのは間違いないとされた。ところが肩や肘、指の関節には異常が見当たらない。そこから導きだされた生前のアイスマンの生活は、狩猟採集民族ではなく、農耕牧畜社会の一員で、ときに重いものを運びながら絶えず移動する〈交易・行商〉に携わっていた可能性が浮上した。

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パジリク戦士のタトゥーの箇所とその紋様の図解

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アルタイ山脈で発掘されたパジリク文化のタトゥーをしたミイラ。ロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館にて(写真提供 : ケロッピー前田)

アイスマンのタトゥー研究に貢献するため誰でも無料で閲覧できるウェブサイト、Iceman Photo Scan