写真家パーカー・デイの潜在意識から生まれた奇想天外なフリークたち

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写真家パーカー・デイの潜在意識から生まれた奇想天外なフリークたち

ド派手なメイクや衣装を身にまとい、まるでアニメや化け物など、この世の人とは思えない奇想天外なキャラクターを創り上げ、ポートレート写真を撮りおろした写真家、パーカー・デイ。〈ジェンダー〉〈アイデンティティー〉〈ジェンダー・アイデンティティー〉を作品のテーマとしているという彼女のインタビュー。

パーカー・デイ(Parker Day)はカリフォルニアに拠点を置く写真家だ。彼女が撮る、メイクやコスチュームで飾り立てた美しい奇人変人たちのポートレートは、とてもアーティスティックだ。インパクトのある強烈な写真は〈ジェンダー〉〈アイデンティティー〉、そして〈ジェンダー・アイデンティティー〉がテーマになっている。まず目につくのは、奇抜で人工的な衣装とメイクだ。モデルの多くは、ネット上のパーティー好きな著名人やアーティストなどで、モリー・ソダ(Molly Soda)や僕の妹であるペネロペ・ゲイジン、他にもスタイリッシュで変わった見た目の若者がいるが、あいにく僕はそれほどイケてないから、彼らの名前を知らない。デイの写真は、まるで宇宙で最もクールな高校の卒業アルバムのようだ。

デイへのインタビューはマイアミのアート・バーゼルで始まり、その後はオンラインで続けられた。彼女の個展「Icons」は1月にLAのSuperchief Gallery(スーパーチーフ・ギャラリー)で始まり、ブルックリンのSuperchiefでも開催された。彼女の写真の実物を観るのは素晴らしい体験だ。パーカー・デイ関連のイベントは、とにかく派手で奇抜なので、機会があればチェックすべきだ。

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BTS (Parker Day, shot by intern Marine Jugnet)

初めてあなたを知ったのは、僕の妹であるペネロペ・ゲイジンがあなたのモデルを務めたときです。妹をモデルに選んだ経緯と、メイクやポーズを決める過程について教えてもらえますか?

60年代風のラメのトカゲのアイデアは、ずっと頭にありました。それを具体化するのにピッタリの人物が現れるのを、ずっと待っていました。デスクに座っていたら、壁に掛かっていたペネロペの絵に、ふと目が留まったんです。お化けのような腫瘍のある赤い目をしたお茶くみ係の女性が、ハッと息をのんでいる絵です。その時、「そうだ、ペネロペこそが相応しい」とひらめいたんです。最高のメイクアップ・アーティストであるオスカー・アンブロジオ(Oscar Ambrosio)がメイクを担当して、小学生が造ったった図工の作品みたいに、ペネロペをキラキラにしてくれました。

妹の撮影の前に、自分で鏡の前でポーズをとって試したそうですね。

そうです。撮影やキャラクターのアイデアが浮かぶと、鏡の前に立ち、うまくいくか自分で試してみます。特に目的もなく鏡の前で、表情や仕草を試してみたりもします。アニメ風のメイクした顔、撮影でモデルにしてほしい表情などをよく試しています。

Blue Lady (Oscar Ambrosio)

キャラクターを思いつくのはどんな時でしょう。夢の中、 音楽を聴きながら、それとも記憶が基になってるのでしょうか? イメージは、いっぺんに湧くのでしょうか。それともバラバラに思いつくのでしょうか。

すべて自分の内側から湧いてきます。ランニングをしていると、頭の中がシンプルになってイメージが浮かんできます。また、ただ座っているだけの時間をつくり、頭に浮かんでくるアイデアに集中します。アイデアが浮かんだら、大急ぎで、傍にあるメモ帳に書き込みます。部分的にアイデアが浮かぶと (例えば〈キラキラした緑色の肌の女性〉とか)、それが次々とアイデアを引き寄せてくれるから、あとはそれを現実にするだけです。

作品はセルフ・ポートレートだと思いますか?

もちろんです。このシリーズを始める前、昔からの友人とディナーをしたんですが、「頭の中にある100人のキャラクターのポートレートを撮影することにした」と伝えたら、彼女は「頭がおかしくなったんじゃないの?」といいたそうな表情で私を見ていました。でも、私はやる気に満ちていました。それに言葉にすれば実現できるとわかっていますし。自分と被写体の中間に位置する、より象徴的で典型的な作品になっている、と感じてもらえたらうれしいです。

Classic White (Alex H.)

あなたの作品はとても映画的な感じがします。すべて事前にポーズが決められていますよね。あなたが親近感を持つのは、他の写真家ですか。それとも他のメディアのアーティストでしょうか。

本当にいろんなアーティストから影響を受けています。例えば、ロスコ(Rothko)のピュアな色彩を観るのが大好きです。でも、ウィージー(Weegee)やウィリアム・クライン(William Klein)、ダイアン・アーバス(Diane Arbus)なんかのモノクロ写真を観ても撮影意欲が湧いてきます。彼らの作品の完璧な構成、微妙な表現やジェスチャーは参考になります。絵画ではフランシス・ベーコン(Francis Bacon)が大好きです。彼は「自分は非常に整然としたイメージを好むが、それは偶然に生まれたものでなくてはならない」という趣旨の言葉を残しています。とても心に響きました。

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いずれは映画を撮りたいですか? これまでに動画を使った作品はありますか?

いつかは撮るかもしれません。でも、今のところは感情や物語の内容を、1枚の写真に収めようと挑戦するのに満足しています。ショートフィルムやミュージックビデオの美術は経験しました。楽しかったです。

Goosebumps (Maddy Ellwanger)

それはオンラインで観られますか? よければリンクを教えてください。

「Baby, Baby」はオンラインにはないけれど、「IMDb」のページはこれです。「バイブの歴史」のビデオはここで観られます。

LGBTQコミュニティーと関わりが深いようですが、やはりアーティストにはよくあることなのでしょうか?

そのとおりです。私は自分の好きな格好をする勇気や強さを持ったキャラクターの撮影に興味があります。LGBTQのコミュニティーにはそういうキャラクターがたくさんいます。シスジェンダーでストレート、という社会の標準から外れたアイデンティティーを持つ人は、自分のアイデンティティーの意味、それが暗示する物事について、深く考えざるをえません。自らのアイデンティティーの構造、落ち着ける居場所についても考えることになる。私はストレートでシスジェンダーの女性ですが、物心がついた頃からアイデンティティーについて考え続けてきました。着せ替え遊びをしていた子供のころからです。友達のピーターと遊んでいたことを、よく覚えています。2人ともまだ小さくて、彼は金のラメのドレスを来てはしゃいでいました。2人で裏のポーチに出て母親たちに、その素晴らしい姿を自慢しました。そしたらピーターのお母さんの顔が急に険しくなって、すぐ着替えなさい、と彼を叱ったんです。私はすごく混乱し、動揺しました。自己提示の重要性について、曲がりなりにも考え始めたのはそれからだったはずです。

God Bless America (Uhuru Moor)

僕も子供時代は、コスチュームとジェンダー・アイデンティティーに関する冒険が大好きでした。お気に入りのモデルはいますか?

アーニー・オメガ(Emie Omega)は素晴らしいモデルです!「H8」ではゴムのウィッグと〈8ボール・ジャケット〉を身に着けてもらいました。彼は、私の求める感情と激しさを体現してくれました。すべてが素晴らしいですよね? これぞアーニーです。ただ私の方向性が加わっているだけなのです。ジャンナ・ゲラー(Gianna Galler「Bunny」)とも一緒に仕事ができて最高でした。彼女は生まれ持ってのパフォーマーで、本当に魅力的です。それにすごく頭がよくて、この上なくクリエイティブだから、彼女のルックスやキャラクターとのコラボレーションは完璧でした。ウフル・ムーア(Uhuru Moor「God Bless America」)はシリーズのなかでも初期のモデルの1人で、撮影でのパフォーマンスに対する真剣さと、大胆不敵だったのをよく覚えています。まだ他にも大勢います。モデルはみんな大好きです。

H8 (Ernie Omega)

あなたはシンディ・シャーマン(Cindy Sherman)の大ファンなんですか? 彼女についてよく質問されませんか?

よく訊かれます! 大ファンではないでしょうが、身近なものに真剣に取り組み、決してそれを諦めない姿勢を彼女の作品から学びました。私の作品には俗っぽさや〈ミス〉や乱雑さが、ふてぶてしく、多分に内在していますが、それを名誉の印として掲げることを教えてくれたのは、シンディ・シャーマンやジョン・ウォーターズ(John Waters)のようなアーティストたちでした。

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ご自身を写真界のいち員だと思いますか? それとも別のシーンに属しているのでしょうか?

う~ん、自分は常に、一匹オオカミだと感じてきました(私は自宅で教育を受けたひとりっ子です)。それで満足してるし、違う世界に飛び込むのも苦になりません。

Where's the Party (Cameron Tyme Edison)

『Juxtapoz』のあなたの特集は気に入りましたか?

とても良かったです。ありがとう! 『Juxtapoz』の創刊号が出た当時のことを覚えています。父の経営するコミックブック・ショップに置いてありました。まだ、子供だった私の感性には、とても刺激的でした。それ以来、『Juxtapoz』が取り上げるアーティストたちからインスピレーションを受けてきたので、一周回って元に戻ったような感じがします。

あなたのお父さんのコミックブック・ショップについて詳しく教えてください。

そうですね、すごく素敵な匂いがしました。古い本やレコードに、ムスクの香りのするカーペット、それからキャメルのタバコ。最高でした。私の名前の由来でもある、チャーリー・パーカーが、いつもかかっていました。木製の金棚には本がぎっしり詰まっていて、マンガが山積みになっていました。カーペットはファンキーなオリーブグリーンで、天井は高く、本棚の上の壁には、60年代ロックのポスターがぎっしり張ってありました。バンドがデビューしたばかりの頃、ライブハウスで父が手に入れてきたものです(父にはその才能がありました)。正面のウインドウには、ベニヤ板で出来た実物大の〈クラム・ガール〉が飾ってありました。ロバート・クラム(R.Crumb’s)本人が描いたものです。伝説的な作品です。

Bunny (Gianna Geller)

写真家よりもマンガから受けた影響のほうが大きいのでしょうか?

ええ、影響を受けやすい子供のころに、スポンジのようにマンガを吸収しました。マンガの美学は、私がイメージするときの核になっています。

まだ等身大の〈クラム・ガール〉は持っていますか? 今はどこにあるのでしょう?

まだ持っていたら良かったのですが、何年か前に、他の犬のキャラクターの絵といっしょに、母がオークションで売ってしまったのです。しばらく前にシアトルの美術館で展示されていたのは知っていますが、その後は謎です。いつか買い戻したいですね。

〈クラム・ガール〉は見つけたんですよ!

お父さんのお店の名前を教えてください。

「Bob Sidebottom’s Comic Collector Shop」です。

The Female Gaze (Penelope Gazin)

Hellcat (Cat Black)

Face Off (Felicity Heath)

Head Shot (Parker Day)