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電車の前の席に、野茂英雄にそっくりな人が座ってました。「うわぁ!そっくり!!」って思ってたんですが、あまりにも似ていたので、ホンモノじゃないか? と考えました。でも前にいる野茂英雄は、ドジャース時代くらいの年齢だったので、ニセモノだなと確定しながらも、いや、やっぱホンモノじゃないか? なんて。クルクル回転するくらい似てたんです。ジロジロ見てたら、野茂に気付かれました。おそらく「ああ、またか」と思っていたと思います。電車降りてコンビニに寄ったら、またさっきの野茂がいました。さっきは気付かなかったのですが、耳にピアスを付けていたので、やっぱりこの野茂はニセモノだと確定しました。でもホンモノの野茂が現在はピアスを付けている可能性もあるしなぁ、なんて考えていたら、ホン野茂っていう駄洒落が浮かびました。すいません、どうでしょうか?

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

成瀬大(なるせ だい)さん(27):鞄職人

成瀬さん、こんにちは。

こんにちは、どうぞよろしくお願い致します。

えっと、今回はお友達の鈴木さんからの他薦です。本日は鈴木さんにもご同席いただいています。鈴木さん、よろしくお願いします。

(お友達:鈴木さん)よろしくお願いします。

せっかくなので、鈴木さんから推薦された理由を教えてください。

(お友達:鈴木さん)はい。彼とは長い付き合いなのですが、最近ちょっとつまらない人間になってきたと思っています。

そうなんですか? 成瀬さん。

いや、そんな…。元々面白い人間ではありませんし…。

おふたりは、いつ頃からのお知り合いなんですか?

高校からです。

鈴木さん、高校時代の成瀬さんは爆笑王だったんですか?

(お友達:鈴木さん)専門学校も同じだったんですけど、そのときが一番壊れてました。

あの頃の成瀬さんに戻って欲しい?

(お友達:鈴木さん)はい。このインタビューをきっかけにして、いろいろ思い出して欲しいです。

わかりました。じゃ、成瀬さん、いろいろ思い出してくださいね。

はい。えっと、すごく緊張してます。

お仕事が鞄職人さんだと聞いております。独立されたとも。

はい。鞄をつくらせていただいております。

どういう鞄をつくってらっしゃるんですか?

本当にそこら辺に売ってるような鞄です。お客さんから「こんな鞄つくって売りたいんだけど」ってご注文をいただきます。1回サンプルをつくって、OKだったものを大量につくっていきます。

革の鞄ですか?

そうです!! 革の鞄です。茶色っぽいやつが多いです。

ハーレーダビッドソンの横に付いているようなヤツですか? なんかヒラヒラが付いてるような。

いえ…そういうのではなく…。もっと柔らかい系の鞄です。

鈴木さん、ここまでの成瀬さんはどうですか?

(お友達:鈴木さん)いえ、まだ始まったばかりなので(笑)。

独立される前は、鞄の会社にいたんですか?

はい。足立区にある鞄会社です。今はランドセルをメインにつくっています。

おお! 私の子も来年小学生なんで、この前足立区でランドセル買いましたよ!

本当ですか! 繋がりがあって嬉しいです(笑)。

7月くらいに行ったんですけど、店内ギュウギュウで。最近のランドセル事情ってすごいですよね。何年くらい前からあんな感じになったんですか?

私は新卒で入社してから丸6年働いたんですが、そのときは既に盛り上がっていました。会社に入る2年前までは小さな工房だったらしいのですが、倍々に売上が伸びていったと聞いております。

そのとき成瀬さんはランドセルの何係だったんですか?

僕はランドセルではなくて、普通の鞄のサンプルをつくる係でした。お客さんからの要望に沿ったものをつくっていました。

もともと鞄職人になりたいと思っていたんですか?

はい。専門学校が文化服装学院だったんですけど、バッグデザイン科というところがありまして。

西新宿のバカデカいオシャレなビルですよね?

いえ、バッグデザイン科は、あのビルの外れにあるすごく汚い建物でした。デカいビルはアパレル系というか、服装関係です。僕らはハジかれものみたいな感じでした(笑)。

鈴木さんも同じ科だったんですか?

(お友達:鈴木さん)はい。現在私もまったく同じ仕事をしています。

ああ、鈴木さんも鞄職人なんですね。

(お友達:鈴木さん)はい。今は、お互いフリーで、アトリエをシェアして仕事してるんです。

なるほど! 今もずっとご一緒だから、成瀬さんがつまらない人間になったとわかるんですね!

(お友達:鈴木さん)そうですね。

そうですね。

文化服装学院のバッグデザイン科を卒業したら、やはり鞄会社の職人さんになるパターンが多いんですか?

はい。職人さんだったり、デザイナーさんだったり、あとは販売だったり。基本はバッグ関係が多いです。

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なんか成瀬さん、落ち着いてらして、ぶっ壊れた感じは全然ありませんね。ツルツルして清潔だし。

すごく緊張してます。

ツルツルは緊張と関係ないでしょ。ご出身はどちらですか?

東京の練馬…上石神井です。

ずっと上石神井ですか?

ごめんなさい。生まれは世田谷です。

あやまらなくていいですよ。

小学校に上がるくらいに上石神井に引っ越しました。正確には上石神井と石神井公園と大泉学園の中間みたいなところです。

ご兄弟は?

おります。下にふたりいるんです。弟がふたり。

じゃあ男の子3人で何してました? わんぱく兄弟?

『遊戯王』とかやってましたね。

カードゲームでしたっけ? すいません、まったく詳しくないんですけど、『ガンバライジング』みたいな感じですか?

ガンバライジングってなんですか?

子供がやってるんですけど、ゲーセンにある仮面ライダーのカードゲームです。

ゲーセンではなくて、カードを並べてどいつが強いかみたいな感じのやつです。遊戯王のモンスターみたいのがいるんです。モンスターを5体くらい並べて、攻撃したりして相手を倒していくんです。

なんでもいいので、遊戯王の名前を教えてください。

「青眼の白龍<ブルーアイズホワイトドラゴン>」とか。

(お友達:鈴木さん)ブルーアイズホワイトドラゴン! いたいた!

ブルーアイズのホワイトドラゴンなんですか?

ブルーアイズのホワイトドラゴンなんです。

そいつが強いんですか?

そいつが一番強いんですよ。

そこに人間のカタチをした、モンスターみたいのはいないんですか?

ああ〜…いないですね。ちょっと説明すると長くなります。すみません。申し訳ないです。

もうちょっと教えてください。遊戯王のカードはどこで買うんですか?

石神井公園の近くに大成堂っていうおもちゃ屋さんがありまして、そこでよく買ってました。でもそういうのって、カードそれぞれの強さもあるんですけど、家庭の経済力もあるじゃないですか。1パック150円くらいなんですけど。

ああ、そうですね。その頃ってお小遣いっていくらでした?

月500円くらいですね。

じゃあ3パック買ったら…

アウトですね。

ですよね。

で、まぁ、その…パクリ合うのが流行ってて…

ええ(笑)。

別のおもちゃ屋さんに持っていくと、カードを買い取ってくれるんです。強いヤツだと500円とか1000円とか。それでまた買ったりしていました。

やりくり上手ですね! 先ほど「家庭の経済力…」とおっしゃってましたが、ご両親はどんなお仕事をやってらしたんですか?

父親は鳶職をやってました。でも小5の頃に離婚したんです。

その頃のことって、子供ながらに覚えてます?

えっと…そのときは一軒家に住んでたんですが、父親が庭で…なんか…その…植物を育て始めてまして…。

あの植物ですか(笑)!

まぁ、その(笑)。それをやり始めてから、父と母がすごく仲が悪くなって。それがすごく嫌でした。

「お父さん、何か変な物育ててるんだ…」って?

もちろん全然わからなくて、ただ大事に育てているのはわかってまして。僕も親父のことが苦手で、嫌いだったんです。大事にしてる植物を全部ダメにしちゃおうと思って、全部バキバキに折ったんです。

やりましたね(笑)。

全部折って普通に外に遊びに行って。それで家に帰ったら、親父が暴れてまして、家の中がめちゃくちゃになっていたのを覚えています。大事にしていたファミコンとかも失くなっていて、結局売られていたんですけど(笑)。

そして離婚されたと。

結局それが元凶だったとは思うんですけど、その後、親父はどうして目覚めたのかわからないのですが、暗黒舞踏に走り出しまして。

すごい展開ですね(笑)。お父さんは今も暗黒舞踏をやってらっしゃるんですか?

今もやってます。YouTubeにもあげてるんですけど、再生回数は200回くらいですね(笑)。

元々お父さんは、そっちの道の方なんですか?

暗黒舞踏まではいかないんですけど、寺山修司関連の人たちの影響をすごく受けていたらしくて。インドに行ったりとかもしていたようです。

それだったら全部繋がりますね。お庭のお話も。

母親ともアングラな会で繋がったと聞いています。

アングラな会…っていいですね! 大堀さんは、寿司屋で離婚発表があったらしいのですが、成瀬さんはご両親からそういうのありました?

いえ、無かったです。離婚が決まって、すぐ引っ越したので。とうとう来たんだなーって思いました。

どちらに引っ越したんですか?

やはり上石神井です。

(お友達:鈴木さん)あたご荘だよね。

あたご荘?

はい。住んでいたアパートの名前です。母と弟ふたりで住んでました。

お母さんは、お仕事始めたんですか?

はい。薬局か何かで働いてましたね。死ぬほど大変だったと思いますよ。

ですよね。ご飯とかどうしてたんですか? 兄弟で「チン」したり?

そうですね。一品料理とか。スパゲッティとかが多かったような(笑)。

でも食べ盛りでしょう? 足りなかったのではありませんか?

そうですね。でも貧乏なのはわかってるので、友達の家に行って夕飯だけ食べて帰ってきたり。貧乏だからどうのこうのっていうのはありませんでした。しょうがないなって。

ちょっと、しんみり系思い出させちゃってすいません。

いえいえ(笑)。

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中学校も上石神井ですか? 部活に入ったりとかは?

はい。部活も水泳部に入ったんですけど、一年で廃部になって(笑)。

中学で廃部って珍しいですね。

人数が少なすぎて廃部になりました。その後、陸上部に移ったんですけど、走るのは好きじゃないって気付いて。そこからは結局帰宅部みたいな感じになりました。

家で何してたんですか? さすがに遊戯王じゃないですよね?

じゃないですね(笑)。実は、知り合いにも…鈴木にも話してないんですけど、中学が一番の暗黒時代でして…。

暗黒!お父さんと一緒ですね! …あ、すいません。

いえいえ(笑)。いじめまではいかないんですけど、いじられて…いじめに近い…

すいません、なんか思い出したくない思い出ばかりではありませんか?

いえ、大丈夫です。…えっとモリちゃんとか。

(お友達:鈴木さん)モリちゃんか…。超わかる。

誰ですか? モリちゃんって?

モリちゃんっていうのにいじられていました。モリちゃんは、中流階級の人間で家が近くて。僕はあたご荘の人間じゃないですか?

あたご荘の人間(笑)。やっぱり、あたご荘が気になるんですけど、最近「荘」って、あまり無いですよね? 成瀬さんが中学の頃でも珍しかったのでは?

でもあったんです(笑)。

間取りとか訊いてもいいですか?

はい。リビングがあって、キッチンダイニングがあって、1部屋あって、もう3畳がひとつ。割と大きかったんですよ。2階建てのアパートで。

そんなあたご荘での暗黒時代を教えてください。

あたご荘ではゲームばっかりやってました。『クロノ・トリガー』とか『ファイナルファンタジー』とか。中古で買った『ファイナルファンタジーⅦ』とか。頑張って買ったのは『ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち』ですね。

頑張って買う、というのはどういう意味ですか?

高いんです(笑)。でも頑張って買ったということです。ひたすら家でやってましたね。

放課後はずっとあたご荘にいると。

外でも遊びましたけど、やはりいじられるんです。いじられから、いじめに発展するのって容易いじゃないですか? ですから嫌なことがあると家に帰ってずっとゲームをやって。友達が来ても居留守してゲームをやってました。

居留守(笑)!

カーテンを閉めて、電気も消して(笑)。

でも弟さんがいるでしょ?

「いないっていって!」とか「もう出るな!」とか。

アハハ!!

僕がいない体で。電気がついてても何もいわなければ、諦めて帰るから(笑)。

でも思春期じゃないですか?

はい。

あたご荘に成瀬さんのプライベート空間はあったんですか?

一応、三畳のところに僕はいたんですよ。

良かったですね! 悶々としたものを3畳の中で解消していたんですね!

はい。