ギュウギュウの朝の満員電車。ドアの端に寄っ掛かり、網棚のへりを掴みながら、気持ちよさそうに立ち寝しているわんぱく女子高生を見ました。とっても素敵な寝顔でして、たまに「ムニャムニャ〜」って、超可愛い!! ああー、リアル牧野つくしだなーって思いました。

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

高橋亜矢(たかはし あや)さん -仮名-(26歳): 会社員

今日は遅くにすいません。 

いえいえ、大丈夫です。

帰れますか?

大丈夫ですよ(笑)。

亜矢さん、ご自宅はどちらですか?

川崎です。川崎の幸区です。

あ、私も小学校のとき幸区だったんですよ。幸区のどちらですか? 駅でいうと?

川崎駅です。駅から3、4分歩いたらすぐ。THE川崎って感じです。

完全にTHE川崎ですね! ちょっとデンジャラスなイメージもあったり。あ、でも最近は違うのか。なんでしたっけ? あの商業施設?

ラゾーナ川崎ですね。でも、高校生になるまでは、あっちの方はなんにもなかったです。それに相変わらずガラ悪いですよ(笑)。

今も悪いですか?

昔に比べると、よくなったとは思いますけど、やっぱりまだ(笑)。母親もずっとあの辺なんですけど、「川崎は全然ガラ悪くないよ」っていっています。でも「あそこの道は歩いちゃいけない」っていわれて、「なんで? 」って訊いたら「おじさんに痰を吐かれたことある」って。

めちゃくちゃ悪いじゃないですか(笑)。

母親基準だと、痰は悪くないようです(笑)

堀之内とか、まだ賑わっているんですか?

うーん、昔に比べると、だいぶ廃れている感じはありますね。でも私の弟がその辺でコンビニのバイトをやってたんですけど、日本で一番精力剤が売れるコンビニだったそうです。ゼナとか。

ゼナですか! でも幼い頃から近くに風俗街があるっていうのは、どんな感じなんでしょうね?

そんなにあっちに行きませんから(笑)。でも高校生のときに自転車で冒険したことはあります。度胸試しというか。

お友達と?

いえ、ひとりで。覚えているのは〈アメリカンSM〉って看板ですね。アメリカのSMってなんだよって思いながら。あと、写真パネルでお姉さんを見られるところあるじゃないですか。

はい(笑)。

「見るだけならタダだよ~ん」って書いてあったんです。その「よ~ん」にすごく時代を感じました。

「よ〜ん」も高校生のときですか?

それは最近ですね。

まだ冒険されているんですね(笑)。でも川崎も変わって、武蔵小杉とか大変なことになってるじゃないですか? やっぱりあるんですか? 川崎格差みたいなの。

武蔵小杉のことを〈ムサコ〉っていってるヤツはぶっ飛ばしたいですね(笑)。

はい(笑)。

何もなかったのに、急に色気付きやがって(笑)。

武蔵小杉には行くんですか?

行かないです、行かないですよー。ムカつくから。乗り換えでしか行かないですよー。

ラゾーナがあるから、わざわざ行くことないか。

そうですよ。川崎には映画館が3つもあるんですよー、オラ!

溝の口はどうですか?

悔しいです。マルイしかないくせに、ウリャー!

結構、口が汚いですね。さすがTHE川崎ですね。川崎には他に何があります?

川崎にもマルイありますよ。うーん、でもあとはカラオケ屋とパチンコ屋ばっかりだな。

そのガラの悪さで、ちょっとは鍛えられました?

そうですね。変な人がいるのが当たり前の環境でしたから。女装してる名物おじさんとかいるじゃないですか?

いますね。

そういうのって、大体は「ああ、あのおじさんね」ってなると思うんですけど、うちの場合は…

うちの場合…(笑)。

はい(笑)。うちの場合は3人くらいいるから、どのおじさんのことを指してるかわからないんです。

どんな3人ですか?(笑)

ピンクの人か、臭い人か、臭くなくてピンクじゃない人です。

アハハ! 臭くなくてピンクじゃない人はどんな人ですか?

スーパーとかで見かけて、「女性かな?」と思ったら、うっすらヒゲが生えてるくらいの人です。無個性ですね。

川崎を出たいと考えたことはないんですか?

前にひとり暮らしを考えて、川崎を出ようとしたこともあったんですけど、ちょうどその頃、駅の前に座れる石みたいなのがあって、おじさんとかおばさんがよく休憩してるんです。そしたらそこで、その石を机にして中腰でいなり寿司を全力で食ってるおじさんを見かけたんですね。これでしばらく離れられないと思いました(笑)。

亜矢さんのツボがよくわかりました(笑)。面白い方ですね。

面白い人のエピソードとかをネタにするのが楽しいんです。

そのネタはどこで発表しているんですか?

家ですね。割と家族が仲良いので、家族に話します。

亜矢さんは、「いなりおじさんいた」とか「臭くないピンクじゃない人いた」とか話して、で、お母さんは「タンを吐かれた」と。

そんな感じですね。まぁ、家族もちょっとおかしいので。

どんな風におかしいんですか?

まず、弟がジャニーズ好きなんです。

弟さんは何歳ですか?

22です。大人です(笑)。

誰が好きなんですか?

亀梨くんですね。

昔からジャニーズ好きだったんですか?

V6の長野くんがウルトラマンティガをやってたので、そこでジャニーズの存在を知って、スタートしたようです。ジャニーズの動画とかを見せられます。

可愛い弟さんじゃないですか。

可愛いんですかねぇ? ただ、「3Dプリンターで山Pをつくりたい」っていわれたときはヤバいヤツだと思いました。

いいですね! じゃ、お母さんは?

お父さんとお母さんはお見合い結婚なんですけど、お母さんのお見合い写真を見せてもらったことがあるんですね。それがどう見ても、男の車に乗っている写真なんですよ。

はい(笑)。

彼氏に向かってピースサインしてるヤツ。それ渡すかね? って(笑)。「どうしてお父さんと結婚したの?」って訊いたときも、「喫茶店で初めて会って、ご飯を食べて、お父さんが払ってくれたんだけど、お父さんがそのレシートを私にくれたのね。私この人と結婚するな」って思ったって。

んん?

読解力がかなり必要なんです(笑)。私もいまだに意味がわかりません。

そうですね。お父さんはどうですか?

お父さんはかまって欲しいんですけど、家族全員に無視されてる。

あらー。お父さんはどのように、かまって欲しいアピールをしているんですか?

「斎藤さんだぞ」っていわれても、斎藤さんじゃないし。

フフフ。お父さんはハゲてるの?

ハゲてません。

素敵なご家族ですね! じゃあ、ずっとTHE川崎で育ったと。

いえ、その父の仕事の関係で、小3から小6までは新潟市にいました。そのあと、また川崎に帰ってきたんですけど。

やっぱり新潟は雪が多いんですか?

そうですね。降った日は、皆、長靴登校になるんですけど、長靴をいつも履いてるのに、下駄箱が真四角なんですよ、長靴が入らない。クッと曲げなくちゃならない。

はい(笑)。

何考えてんだ? こんなに降るのに、って。それが新潟の第一印象です。

着眼点がステキですね。

あと思ったのは、関東甲信越で天気予報をまとめられているので、新潟は関東だっていい張るヤツが結構いるんですよ。おかしいぞ、おいって。

お、ヒートアップしてきましたね、いいですよ、THE川崎ビッチ。

ラフォーレ原宿・新潟店とか。なんだ、それ。

ラフォーレ新潟店じゃなくて(笑)?

はい。ラフォーレ原宿・新潟店なんです。あと新潟のテレビとかー…

ジャンジャンいってください。

『夕方ワイド新潟一番』っていう番組があったんですけど、どうしようもなくて。

お願いします(笑)。

夕方に帯でやってる番組なんですけど、そこの一番の人気コーナーで〈駅前かえるコール〉というのがあって。

いいじゃないですかー、心温まるヤツでしょ。

駅前とかに集まって、女子高生がお母さんとかに電話をして、「今から帰るねー。その前に問題です。私が好きなお母さんの料理は次のうちどれでしょう。1.ビーフシチュー、2.チャーハン、3.餃子」っていう…何じゃこれ(笑)。

最高じゃないですか!

ないないないない。

亜矢さんは「何がかえるコールだよ」って?

はい。悪態ばかりついていました。

「川崎だったら、tvkが観られるのに」とか?

いや、tvkはtvkで毒づいてましたけど。

どんな(笑)?

だってtvkって、やたら音楽のCMとか流すでしょう? 全然知らない外人のコンサートをウドー音楽事務所がやるでしょう? めっちゃ高いでしょう? 1万円とかするでしょう? 全然知らない外人なのに。

いや、知ってますよ。ああいうCMを観て、角谷さんはエリック・クラプトンに行くんだから。

基本、誰だよっていう。

わかりましたよ。じゃあ、新潟では初恋とかしました?

いや、あんまり恋愛自体が人生で少ないです。

これまで?

多少、人並みにはあるんですけど、そんなに得意じゃないのかもしれませんね。

小学生の頃とか好きな子とかいなかった?

あー! いないです!

あー! いない!…ですか(笑)。

はい。家に帰ることだけを考えて。

かえるコールもしないのに? じゃあ、家に帰って何をしてたんですか?

ケーブルテレビに入ってたので、吉本系の番組ばかり観ていました。それで芸人さん好きになって。

その頃は誰が好きだったんですか?

ハリガネロックです。

渋いですね。

渋いですか?

ハリガネロック好きな小学生なんていないでしょう(笑)。

確かにあんまり聞かないですね。

解散したのって、最近でしたっけ?

はい。私は年代で覚える癖がすごいので、2014年ですね。

ご自身でネタづくりとかは? なんか持ってそうですが。

確かに小学校のときは漫才師になりたいと思ってましたが、ネタというより、先生とか人のことをやたらいじってました。男子が女子にひどいあだ名とかを付けるじゃないですか。でも私が名付け親だったり。男子がそのあだ名でからかうと、その子が泣いちゃったり。

付けたあだ名、覚えてませんか?

杉田玄白とか。

アハハ!! 女の子ですよね? その子、杉田玄白に似てたの?

似てました。

めちゃくちゃ可哀想じゃないですか(笑)。玄白っていわれてるんでしょう?

最終的にターヘルになった。ターヘル・アナトミアの解体新書のターヘル。

亜矢さん、最悪ですね(笑)。

口があまり良くないんです。

「あまり」じゃないでしょ! 「とても」でしょ! で、小学校6年生で川崎に戻って来ました。「亜矢、帰って参りましたー!」「おかえりー!」みたいな感じになったんですか?

いや、なりませんでした。誰も覚えてなかったですね(笑)。

亜矢さんは覚えてたんですか?

はい。私としては久々に会ったみたいな感じなんですけど、全然あっちはそうじゃなくて。そのときくらいには、私も性格が暗くなって、何か学校にも行かなくなっちゃって。

いつからですか?

小学6年のとき、新潟最後の年に3、4ヶ月行かなくなりました。女子との絡みが嫌になっちゃって。女子って、「○○さんが嫌いっていってたよ」とか、全然要らない情報をいってくるじゃないですか。ああいうのが本当に嫌になって。学校で45分も勉強に縛られるんだったら、自分でバッと15分やって、遊んだ方がいいという思考に辿り着いちゃったんです。家でずっと漫才を見て。引き篭もっちゃったんです。

あらー。

それで親がおかしいと思ったらしく、小児精神科みたいなところに連れて行かれたら、そこでアスペってわかったんですよ。

アスペルガー症候群ですか?

はい。アスぺだとわかって、「これからの学生生活はとんでもなく辛いと思うよ」っていわれて。

お医者さんにそういわれたんですか?

はい。アスぺは学生時代が一番苦労するって話をされて。もうその日は恐怖でしたね。中学、高校になってしまったときのことを考えて。

でもアスペルガー症候群って、幼い頃にわかるっていうじゃないですか?

親は、昔から変だったっていってました。ちっちゃい頃から、母方の祖母とかも、こいつはやべえっていってて。親としては、「やっぱりなあ」って感じだったらしいんですけど、私としては結構ショックで。これから社会でやっていけるのか? という心配があって。

では川崎の中学校にも行かなくなったんですか?

いえ、行きました。さすがにアスペで学校行かなくなったら、親にすごく迷惑かけるなと思って。

偉いですね。

行ったんですけど、でもやっぱり女子にはバレるんですよね。

はい。

こいつおかしいって。3年間いい思い出なく。

3年間、辛くはなかったのですか?

なにくそ根性ですよね。罵詈雑言を毎日聞かされますけど。

いじめとかそういう感じではなかったのですか?

完全にいじめでしたね。川崎市の教育委員会が揺れたっていわれました。それくらいのレベルだったんです。だから女子とはまったく仲良くなれなくて、男子は割とそこまでしてこないから、ちょっとイケてない男子とつるんでました(笑)。

(笑)。イケてない男子とは、どんなことをしてたんですか?

「あそこの公園の角っこには、エロ本の自販機がある」って、教えてあげたり。

優しい(笑)…かな?

「教えてあげたから500円くれ」って。

アハハ!

これこそが情報ビジネスだと思いました。

はい(笑)。で、儲かりました?

2000円入りましたね。あとはパソコンをいじってたので、「ネットの履歴を消す方法を教えるから100円くれ」とか。

最高!! 中学男子には必要ですものね!

だから男子とは仲良かったんです。

中学生の頃もハリガネロックですか?

はい。いまだにお笑いのライブとかにも行きますから、生涯を通しての趣味みたいなところはありますね。

ハリガネロックが解散したときは、やっぱり悲しかったですか?

うーん、その前から、もう無理だろうなっていうのはあって(笑)。M-1グランプリの敗者復活戦とかも足繁く通ってたんですけど。

会場に行ってたんですか? 大井競馬場とかですよね?

はい。

マジですか(笑)。超寒いでしょう?

超寒いですよ。10年くらい大井競馬場とか野外で観てて。そのあと、M-1が終わって、THE MANZAIになったとき、家で観たんですけど、「お笑いって、暖かいところで見るもんだな」ってすごく実感しました(笑)。