FYI.

This story is over 5 years old.

江盛バイバルのエモエモ講座〈レボリューション・サマー〉

D.C.ハードコア・シーンの衰退後に現れた夏の革命。

こんにちは、江盛です。先日DASHBOARD CONFESSIONALのクリス・キャラバさんに昨今のエモ、いわゆる「エモ・リバイバル」について語って頂いたのですが、これが予想を越える反響を頂きまして、江盛としましてもとても嬉しく思いました。特にクリスさんの…

「僕は(このエモ・リバイバルが)スロー・ペースになることを望んでいる。僕のすぐ後の世代は速く進み過ぎたと思うんだ。独創的でもなく、説得力にも欠けていた。カーボンコピーのカーボンコピーみたいなバンドもどんどん現われた。僕は、また同じことが起こらないよう望んでいる」

…というご発言。分かります、江盛も同じ気持ちでございます。90年代からスタートしたエモ・ムーヴメントは、21世紀に入ってまったく別の音楽となって市場に消化されてしまいました。現在「エモ」って検索しても、真っ先に出てくるのはSUNNY DAY REAL ESTATEでもMINERALでもなく、ほんのりホストチックでヴィジュアル系チックなバンドばかり。江盛、ジジイです。分かっています、ジジイの戯言だと。でもそんな戯言にちょっとばかしお付き合い頂きたい。せっかく「エモ・リバイバル」のE-BOY、E-GIRLちゃんたちが、ホストくんたちに負けじと素直にオリジナル・エモ的なサウンドをアプローチしてるんだから、またまた消化されないように、江盛も応援したいのです。

Advertisement

正直まだまだ「エモ・リバイバル」のキッズたちは、オリジナルのそれを越えるオリジナリティーを確立出来ていませんが、彼らのインディペンデントな姿勢を見守りつつ、ここに至るまでのエモ・ムーヴメントを振り返ってみたいと思います。…なんつってたら、今日のアップル・ミュージックの「For You」に「ベスト・オブ・1990年代エモ」が!コレは江盛へのお告げでしょう!江盛、エモります!

さて早速参りますが、今回は90年代のエモ・シーンを語る上で欠かせない波です。80年代中盤、ワシントンD.C.のお話。はい、エモ・シーンもやはりココから生まれました。BAD BRAINSMINOR THREATもストレート・エッジもワシントンD.C.ですからね、ホントD.C.ってばスゲーところだなって思いますね。時は1983年、シーンを驚愕させたイアン・マッケイ率いるMINOR THREATが解散します。更に共にシーンを形成していたFAITHやVOIDも同年に解散。D.C.のハードコア・シーンは一気に衰退します。また、D.C.を問わず、当時のハードコア・シーン自体も暴力やら差別やらが蔓延しており、MINOR THREATが提唱した健全なシーンは崩壊寸前でありました。

ところがどっこい、ココで巻き込まれないのがD.C.シーン。地元ではきっちりとMINOR THREATの魂は受け継がれていたのです。出て来ましたよ、RITES OF SPRING。MINOR THREATの大ファンだったというギー・ピッチオットを中心に84年に結成。ハードコアをベースにしながらも、カラフルで泣き入りのギターワーク、ほんのり変拍子も入り混じるリズム、ギーのソウルフルなヴォーカル・スタイル、そしてちょっぴりセンチメンタルで私的な歌詞。これぞ「ポスト・ハードコア」なワケです。

これに感化されちゃったのがオリジネイターだったイアン・マッケイ。今度は彼がRITES OF SPRINGのファンになっちゃうから面白い。彼のレーベルであるDISCHORDに招き入れ、更にはイアンも同様のアプローチをするバンドEMBRACEをex FAITHのメンバー等と結成します。

そして迎えた1985年。RITES OF SPRING、EMBRACEに続こうと、「俺たちのD.C.ハードコア・シーンを取り戻そう。俺たちの時代なんだ」と、DAG NASTY、GREY MATTER、BEEFEATER、FIRE PARTY、SOULSIDE、THREE、HAPPY GO LICKYなど、従来のハードコアの概念を打ち破り、進化させた個性的なバンドが登場。これこそが「レボリューション・サマー」と呼ばれるムーヴメント。ここで「ハードコア=己に正直に進み続けること。まずは自分の周りから、自分の生活から整えて行こう」みたいな雰囲気が生まれたと思いますね。

ただこの「レボリューション・サマー」は、主要バンドの解散により長続きはしませんでした。ただその意思は確実にその後のシーンへと続きます。特にイアンとギーはFUGAZIを結成し、その後の影響力はみなさんご存知の通り。更にこの「レボリューション・サマー」の種こそが、90年代から始まるエモ・シーンを大きく花咲かせたのは間違いありません。

ちなみにこの「エモ」って言葉は、RITES OF SPRINGの登場に「エモコア」とか「エモーショナル・ハードコア」と称されたのが始まりとされていますが、D.C.の当事者たちはこぞってこの言葉を嫌っていました。「グランジ」とか「ポストロック」とかと同じですねぇ。だからなのか、90年代以降のD.C.バンドは「エモ」というより「ポスト・ハードコア」の様相の方が強かった。この辺りの感じも面白いですね。

以上「レボリューション・サマー」でした!