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Who Are You?: 甲把憲太郎さん(30歳) 会社員

今日も午前中に仕入先さんを回って来たんですが、「ああ!アマか!!」と言われました。尼崎の人はそういうイメージの方がいいんじゃないですか。ちょっとアウトサイダー的で。
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photos by SUSIE

近所に東京中日スポーツの販売店があるのですが、そこの新聞自動販売機にすれ違うたび、今季ドラゴンズのさっぱり具合が目に入って来ます。「山井で台無し 雨に吹き飛んだ最下位脱出」とか「悪夢の大逆転負け 又福で7失点」とか。でも負けても一面記事なのだから愛だよなぁ~って思ってたんですが、お店の人がスワローズのシャツ着てました。難しいですねー。

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

甲把憲太郎(がっぱ けんたろう)さん (30歳):会社員

「がっぱ」さん…珍しい苗字ですね。

はい。父親が高知県の生まれなんです。そこのある地域では多いそうです。

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現在のお住まいは兵庫県で、今回は東京に出張ですか?

はい。

で、この「Who Are You?」では、初めての「いいとも」みたいな繋がり系なんですね。友達の輪です。以前ここに出てくれた無職の小城さんが、このコーナーで仕事を募集しましたが、「ウチで働きませんか?」とメールをくださったのが甲把さん。

はい。

彼は合格しましたか?

いいえ、今回はご縁がありませんでした。ちょっと条件が合わなくて。

というのは?やっぱあの人はダメでしたか?

いえいえ(笑)。実は今度、東京にも営業所を出したいなって思っていまして。なので、ぜひ小城さんに「一緒に働きませんか?」と誘ったのですが、小城さんの希望と少し合わなかったようです。それに「僕は会社に出社したくないんです」って言ってましたし。

せっかくのお話なのに断りやがったと!!ま、小城さんらしいと言えばらしいのですが(笑)。

実は今日小城さんと会って来たんです。

え?さっき面接だったんですか?

いえいえ。メールのやりとりで仕事の話は終わったのですが、せっかくだからコーヒーでも飲もうと。今回、東京に来たので、そのついでに多摩で会って来ました。

多摩まで!甲把さん、なんだかお優しいですね。ヤツは元気でしたか?

はい、とてもお元気そうでした(笑)。タリーズ・コーヒーで一時間半くらいずっとお喋りされていました。

すいません、なんだか変なの紹介してしまって。ちなみにどんなお仕事をされているのですか?

家族経営の会社なのですが、マンションや福祉施設、学校などの手すりのメーカーをやっています。

元々お祖父さんとかお父さんが始められたんですか?

はい、父が脱サラして始めました。

では甲把さんは二代目なのですね?

え、まぁ…二代目とか興味ないので分かりませんが。

兵庫県のどちらなんですか?

生まれも育ちも尼崎です。

あら、沖さんとご一緒。ではやはり確認しないと。上ですか?下ですか?ちなみに沖さんは真ん中でした。

私は上の方です。

お!ということは阪急沿線の高級ゾーン。

いえいえ、そんなことないです。普通の住宅街ですよ。所詮尼崎です。

やっぱり「尼崎出身なの!」なんて、しょっちゅう言われます?

はい。やはりまずはダウンタウンがあって。今日も午前中に仕入先さんを回って来たんですが、「ああ!アマか!!」と言われました。

「また言われた…」とか思うんですか?

いえいえ、そんなことないです。尼崎の人はそういうイメージの方がいいんじゃないですか。ちょっとアウトサイダー的で。

(笑)。ではどんなアマ時代を過ごされましたか?

どんなんだったでしょう…うーん、小学校の一年から剣道教室に通って、中学卒業までやりました。学校生活は……普通ですね。

普通?

うーん、身体が大きかったし、名前も目立つんで、なるべく静かにおとなしくしていました。目立たないように。

目立ちたがり屋さんじゃなかったんですね。それなのになぜこのインタビューを受けてくださったんですか?

VICEをいつも見ていて好きだったからです。それと小城さんも出ていたからなんとなくです。

いつもありがとうございます。しかし、よっぽどあの人が気に入ってたんですねー。なのに断りやがって。

ちなみに小城さんにはこのインタビューのこと内緒にしています。ビックリしてもらおうと思って。

すっかり仲良しさんですね!で、小学校から剣道をやってて、中学で部活とかは?

部活も剣道です。

え?ダブルで?そんなに剣道が好きだったんですか?

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いえ、なんとなく…でも結局中学卒業で辞めたので、そんなに好きではなかったんでしょう。

いえいえ、9年間もやってんだから。早く気づいてくださいよー(笑)。趣味とかはありましたか?

いえ別に。普通に剣道やって帰って来て。高校に入学しても部活に入らないで、普通に過ごしていました。

どんな高校でしたか?

私立の学校なんですけど、国際科コースというところに。

普通科ではないんですね。でも国際科なら英語とか出来ないと入れないんじゃないですか?

いえ、普通のレベルの英語でした。入ってからの英語の授業は多かったと思いますが。あと中国語もやったりしていました。

放課後は何をしていましたか?

父親の仕事の手伝い…アルバイトをやっていました。高校時代はほとんどそればっかりでした。

趣味で楽しんだりは?

それも無かったです。

じゃ、高校を卒業されてからは?

自宅から通える大学に入りました。

サークルとか入りました?

いえ、どこにも入りませんでした。

もう~やっぱり~(笑)。なんかありません?大学生活を謳歌したとか楽しんだとか。

いや、すいません、ホント無いんです、そういうの。

でも4年間じゃないですか?放課後は長いですよ。

そうですね。何してたんでしょう…アルバイトやったり…。

じゃ、そのバイトで稼いだお金は何に使っていたのですか?もしかしてギャンブル?あ、風俗??

いえいえ(笑)。服買ったりとか…うーん、ホント趣味とか無いんですよね。全然出て来ない。…そう思うと悲しい人生ですね。

いえいえ!そんなことありませんって!すいません、追い込みました…。

ではでは大学を卒業してお父さんの会社に入ったのですか?

いえ、その前に不動産関係の会社に就職しました。

どちらの?

大阪です。

でも甲把さんの頃の就職活動って厳しかったんじゃないですか?

そうだったんですけど、まだ不動産は良かったんです。ですので、苦労することはありませんでした。

社会人生活スタート。いかがでしたか?

上司がめちゃくちゃ飲みに行くんです。それも決まって十三のスナックに。週イチは必ず連れて行かれていました。

十三!!ディープなところですよねぇ。更にそのスナックっていうのは、あのイメージ通りのスナックでいいのかしら?パープルな蛍光灯看板で、玉ちゃんが好きな。

はい、正にその通りです。カラオケがあって、奥にボックス席があって、カウンターがあって、中にママがいるやつです。

スナック歴、ほとんどないのですが、ごはんとかあるんですか?若いんだからガッツリ食べたいんじゃないですか?

そうですね、料理はお通しくらいで。だから出前取ったり、たこ焼き持ち込んだり。

わー、やっぱそうなんですね。テレビの世界みたい。

ええ。あと、そこでは80年代ポップスとかを覚えさせられました。メドレー歌っておけば間違いないことも覚えました。

では具体的なお仕事内容を教えてください。

最初は新築マンションの部署です。マンション・ギャラリーってありますよね。あそこに行くとスーツ着た人がいますよね、それです。

なるほどー、マンション買ったことないので分かりませんが、何となく分かります。ああいうギャラリーってたくさんお客さん来るんですか?

来るというか、来させなきゃいけないんです。入社してすぐの仕事は、手提げ袋いっぱいのチラシをとにかく撒くことでした。

どんなタイプのマンションを売っていたのですか?

ファミリー・タイプです。

ってことは、色々家庭事情が見えて来て面白そうですねぇ!例えば子ども。「帰ろうよ~!」とか愚図り出しちゃったり…

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あ、正に私の担当でした。まだ知識も浅かったので、先輩が接客している間は私が子守をするんです。

おお!連携プレー!

そこは認められていました。逆に子どもから「あのお兄ちゃんとこに遊びに行きたい~」なんて。

それで「ご購入~!!」とかもあるんでしょ。スゴイですね!

営業マンとしては優秀でなかった思いますが、子守だけは自信がありました。

あとお父さん、お母さん、どっちが購入の決定権を持っているか…とか。

はい、それはお話する中で「どっちが持っているか?」を判断して行くんです。大体分かって来るんですが、これがミスをすると…

わー、大変そう!

「奥さま、奥さま、」って言っていたら、実は隣の寡黙なお父さんが決定権を持っていたと。プライドの高い方だと本当に大変なことになります。逆に共働きのご夫婦で、「旦那さま、旦那さま、」なんて言ってても、奥さまの方が収入が多いパターンなどもあったり。

ややこしい(笑)!そこまで分からんっつーの!おじいちゃん、おばあちゃんなんかも連れて来ちゃったら大変ですね。

はい。でもおじいさん、おばあさんの存在が見えることもあります。

え?なんですか、それ?

ご一緒には来られないのですが、おじいさん、おばあさんの影がご夫婦の後ろに…。「あ、いてるな」って。

アハハハ!!お金を援助してくれると。

はい。ただこのパターンも、どちらのおじいさん、おばあさん…お父さんの方なのか、お母さんの方なのかを判断する作業がありまして…

止まらないっすね(笑)!

最終的に契約の時にはいらっしゃって「ああ、そっちやったか」って。これを的確に見分けられるのが凄腕営業マンなのかなと思います。

まじでスゴイっすね。カッコいいなぁ~。で、その後はどちらの部署へ?

仲介部門です。オーナーさんと買い手さんをつなげる仕事です。

ケイン・コスギみたいな感じですね。おじいちゃんが「家売りたいんだけど…」って甲把さんのところに相談に来て。ちなみにその値段を決めるのは誰なんですか?

査定をするのも私たちの仕事です。

「ゲッ!安っ!よそ行くわ!」なんて言われたことは?

毎回です。確実にお客さまが思ってらっしゃる値段よりは安いので。もちろん最終決定するのはお客さまなのでお任せしますが、最初から高いと売れないんですね。売れないままずっと出していると印象が悪くなる…それでドンと値下げすると、何が理由があるんじゃないかとこれまた印象が悪くなる…なので、最初に適正価格をきちんと説明するんです。

査定の基準を教えてください。

周りの物件や土地が売れた以前の記録や、そこに問題がないかを登記で調べてます。また近くに何があるのか…学校とか病院とか駅などですね。そこから値段を出します。

人気物件ってどんなのですか?

マンションはもう立地ですね。それこそ駅から近いとか。土地は間口が広い…面している道に大きければ大きいほどいいですし、あとは南向きとか、地域性とかです。

ホントに甲把さんがケイン・コスギに見えて来ました。それなのに不動産会社を辞められたのはなぜですか?

前からいつか自分で商売をやりたいと思っていたんです。それで修行じゃないですけど、家の会社に入って勉強しようと思ったんです。

その会社名が株式会社アサヒ工業。このホームページにいるキャラクターはもしかして…

はい、私です(笑)。

他にもキャラクターたくさんいますね。ふくろう君かー。ん~、なになに…

…いいヤツですねー。キャラクターとかサイトとかは甲把さんが提案されたのですか?

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はい、そうです。

お父さんは何か言いませんでしたか?「余計なことするな!」とか。

いえ、ありません。ノータッチです。サイトもあんまり見たことないと思います。あ、これも見て頂けますか?ポスターを作ったんです。今日お客さんに配ったものなのですが…

あら可愛い!ちょっとポストロックバンドのジャケみたいですね。

…ポストロックですか?

いえ、なんでもございません。もう甲把さんは手すりのプロですね。手すりの種類ってどれくらいあるんですか?

いろんな形で作れるんで無限にあります。うちで作っているのは、回りに樹脂が巻かれているものでして…

アサヒ工業さんが作られているのは、そんじょそこらの手すりではないと。

まぁ、そうですね(笑)。夏は熱くならないですし、冬でも冷たくならない。いつでも触った感覚が心地良いものなんです。実は結構出回っているんですけど、業界的に表立っているものではないので。

確かにすいません。これまで手すりを気にしたことは、あまりありませんでした。ちなみにうちに手すり付けてください…って頼んだら付けてもらえるのですか?

もちろん出来るんですけど、個人さまにはやっていません。ちょっとそれは大変なんで。

と言いますと?

大きい建物に対してたくさん納めるというスタイルでやっていまして、個人さまだとどうしても商売的にもスケジュール的にも厳しくなってしまうんです。

なるほどね。やはり福祉施設とか老人ホームとかからの注文が多いのですか?

はい、一番多いです。あと手すりが無い階段などに新たに付ける業務も多いです。少し前に建ったマンションの階段には手すりが付いていないものが多いんです。当時はそんな規制が無かったので。でも今は絶対に付けなくてはいけないようになったんです。

世の中になくてはならないものなんですね。

そうなんです。それを古城さんにも熱く伝えたんですけど。

でもヤツは断ったと。しようがないですねぇ。ちなみに東京営業所で働く方は見つかったんですか?

いや、これがまだ見つかっていないんです。

またこちらで募集しましょうか?

ありがとうございます。でも、もう大丈夫です(笑)。

ですよね、またあんなの来ちゃったら…ねぇ。

でもご興味ある方はサイトの方からご連絡頂けましたら幸いです。大阪でも募集しております。どうぞよろしくお願い致します。

「Who Are You?」では、インタビューを受けて下さる方を募集しています。お名前、ご年齢、性別、お住まい、ご職業、応募の動機を明記の上、こちらまでお問い合わせください。