Who Are You?： 長山壮太さん（26歳）無職

すれ違ったではなく、見続けたのですが、先日向かい側のホームに凄くボインが似合う女性がいました。本当にボインが似合ってる女性なんです。服が似合ってるというのは、服が似合っていない場合もありますが、この女性のボインの場合は、似合っていないパターンが無いので完璧です。更にほんのり、飲んできたのかなぁ～、桜色のお顔と乱れた髪がまた素晴らしかった。何度も何度も時刻表経由で拝見させていただきました。

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません？そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

長山壮太（ながやま そうた）さん（２６歳）：無職

長山さんは、タモさん…友達の輪系なんですね。小城さんと吉田さん。このお二人とお知り合いだと。

はい。吉田くん…ヨッシーと呼んでいるんですけど、彼は高校の同級生です。それで小城くんは高校の後輩なんです。

え？…ってことは、吉田さんと小城さんも同じ高校だったってことですか？聞いてなかったです。これはもしかしてヤラセ系？

いえいえ（笑）。ヨッシーと小城くんは、それほど絡んでなかったですから。でもヨッシーと僕はダンスをやっていて、小城くんも「入れてください…」って途中で来たんですけど、それほど真剣にやらずに辞めてしまいましたね。彼はモテたいだけだったので（笑）。

彼らしいですね。でも長山さんは二人共かなり絡んでると。

jそうですね。小城くんとはのちにバンドも組みましたし、今もしょっちゅう会っています。ちなみにバンドは1日でクビになりました。バイトしてベースも買ったんですけど。

そうですか。でも先日も甲把さんに小城さんの近況を聞いたので、ヤツのことはもうイイです。吉田さんとは会っていますか？

最近は会っていないんです。

で、すごく思ったんですが、長山さんと吉田さんは全然違いますね。長山さんは今日も午前中に「よろしくお願いします」ってメールをくれて「しっかりしてるなぁ」と思いつつ、吉田さんは当日来ませんでしたからね。

（笑）。いえ、僕も同じような人間だと思います。でも彼は本当に自分のペースで生きて行くタイプ。一匹狼で高校のときもイケてましたね。僕は気にしちゃうタイプで、怒られるのも嫌だなぁって考えてしまうんです。

長山さんもお二人と一緒の多摩地区の出身ですか？

はい。僕は町田出身です。

アナーキーなお二人に比べ、長山さんはすっきり爽やか。品の良さそうな感じですが、どんな子ども時代を過ごしていたんですか？

サッカーをやっていました。

似合いそうだな、こりゃまた。

FC町田っていう、今ゼルビアっていうんですけれど、そこのユースクラブにいました。太田選手っているじゃないですか、日本代表の。

すいません、サッカーは詳しくないんです。

ああ、すいません。その太田選手が一歳上にいました。

ユースクラブって簡単に入れるのですか？

いえ、セレクションというのがありまして、そこで受かったら入れるんです。そんなに難しいセレクションでは無かったですよ。

でも入ったんだからすごいですね。ちなみに中学校になると部活でもサッカー部ってあるじゃないですか。ユースクラブに入っている子は、部活のサッカーには入れないのですか？

いえ、入れるんですけど、試合には出られないんです。ユースの方が力入れているところが多いので。中学に入る前に部活が強い学校か、それともジュニア・ユースか…って選ぶんです。だいたいみんなジュニア・ユースに行くんですけど、もっと練習をしたいからって部活に入る子もいるんです。

小学校からユースに入れるなんて、長山さんはサッカーがうまかったんですね。

でもすぐに辞めてしまいました。

あらもったいない。なぜですか？

多摩センターを歩いていたら、ウィンドミルっていうブレイクダンスの技をやっている人がいたんです。もう咄嗟に「これだ！」ってなりまして、そっち方向に行きました。

元々ブレイクダンスに興味はあったのですか？

そうですね。ジャッキー・チェンとかアクションは好きでした。あと大きかったのは岡村隆史ですね。

え？ナイナイの？

はい。岡村のブレイクダンスは相当デカイです。

そんなに凄かったんですか？

僕らの世代は完全に岡村世代で、彼を見てブレイクダンスを始めた人はすごく多いんです。チビタイガーマスクとかですね。

そんなに岡村にダンスの影響力があるなんて知りませんでした。ひょうきん族世代なので。

あとガレッジセールのゴリも大きかったです。韓国にダンスバトルしに行く番組とかもありました。それで完全に影響を受けて、一人でダンボールとか敷いてやっていたんです。

じゃあ本格的に中学校くらいからダンスですか？

はい。それで自然とダンス仲間が増えました。学校の友だちより多かったと思います。

吉田さんは調布駅前で踊っていたと言っていましたが…

あ、僕もです。彼とは同じチームだったんです。でもヨッシーは途中でダンスを辞めて、スケボーに移行しました。20歳くらいの頃だったと思います。

高校で吉田さんと会ったんですよね？

はい。確か自己紹介かなんかで、ブレイクダンスをやっていることを言ったら、彼から話しかけてきました。今考えると、そんなキャラではないのですが（笑）。

お互いにブレイクダンスを見せ合ったりしたんですか？「俺より下手だなぁ、コイツ」なんて。

いえいえ（笑）。でも彼は本当に運動神経がいいので、どんどん上手くなっていきましたね。

吉田さんはリンガーハットのちゃんぽニストとしてバイトしていましたが、長山さんは？

安楽亭です。

ヤキニクニスト！

でも固定で週５とかでキツくて。一週間で辞めました。あとはファミマとかですね。

高校はちゃんと行ってましたか？彼はギリギリだったようですが。

はい、そこは（笑）。

卒業後はどうされたんですか？

大学に行きました。多摩大学っていう。

じゃ、すぐ近くですね。学部は？

情報経営学部です。IT系のやつで…プログラミング、経理、経済、簿記とか、そんな感じの学部です。

大学入ってもダンスですか？

はい、もう三昧でした。まだまだ楽しくって楽しくって。

どんなところが楽しいんでしょう？

身体ひとつで表現出来るところです。やればやるほど、どんどんいろんな技が生まれて来る…それが無限なんですね。完璧に出来ても、それがまだ答えではないし。そこが魅力でした。あと、自分の頭の中で考えたことがアウトプット出来たとき、それに周りが反応してくれることが凄く嬉しかったです。

大学の同級生と一緒にダンスしたりとかは？

それは無かったです。そこでは孤独でしたから…

あらー、じゃサークルとかも？

はい、入っていません。「なんで俺ここにいるんだろ」って感じでした。合わなかったんですよね。完全に浮いてました。

じゃ、大学の女の子との交流も。

もちろんナシです。

（笑）。その分、ダンス方面でおいたを？

いえ、それはしませんでしたが（笑）。高三から23まで付き合った子がいました。それ以降は無いんですけど…

あら、こんなに白シャツが似合うのにもったいない。その子はダンス繋がりですか？

はい。高三のときに一緒に文化祭に出たりしました。

じゃあ、大学に友だちはいなくても寂しくはなかったんですね。よかったです。ではダンス三昧の日々。大会とかも出たりしていたんですか？

はい、全国大会にも出ました。僕たちは関東代表で、大阪のZeppなんばでやりました。

成績は？

優勝しました。

おお！！すげえ、日本チャンピオンじゃないすか！

でもその大会直前に彼女に振られたんですけど。「好きな人が出来た」って。

あらー。じゃ、その悔しさから、グルグル回るのが倍になって優勝したんですね！号泣しながら回ったんですね！ある意味良かったかもしれませんね。で、優勝したら状況は変わりしましたか？

優勝とは関係ないかもしれませんが、ちょくちょく他の大会やイベントにも呼ばれるようにはなりました。ちょっとだけですがギャラも貰ったり。それは嬉しかったですね。

大学は卒業されたんですか？

はい。えっと…でも今年です。

むむ？今26歳ですよね。

１年休学して、２年留年して、６年かかって卒業しました。

このコーナーは辞める人多いんですが、長山さんは辞めない人ですね。まず、なぜ休学したんですか？

19だったんですけど、本当に思い描いていた大学生活とは違ったんです。楽しくなかったですし（笑）。辞めて海外行くとか、何か動いた方がいいんじゃないかと思っていたんですが、それでも辞める勇気は無くて。ひとまず休学を選びました。それで復学はしたんですが、ほとんど学校は行かずで。

よく辞めなかったですね。

うーん、６年間あいまいにしていただけなんです。ずっと親とか祖父母に甘えていて。それでやっと去年になって、このままじゃヤバいと思うようになり、学校に行き始めました。でも卒業するには１40単位必要だったのですが、60単位しかなくて。もちろん就活なんて関係ありません。なんとか一年間頑張って卒業出来ました。

もうちょっと早く気付けばよかったですね。で、卒業して今は？

ダンスも卒業して、スケボーしてます。

いや、そういう意味じゃなくて。仕事的な。

ああ、すいません。祖父の仕事…バラ園なんですけど、それを手伝ったり、日雇いのバイトしたり。

無職ということでよろしいでしょうか？

はい。でもすっごい面白いんですよ、スケボーが今！

え…ええ。

地元で一人で滑ってたら、声をかけてくれた人たちがいて。それがみんな30オーバー、40近い人もいます。それなのにメチャメチャ滑るし、攻めるし、話も面白いし。今はその人たちと一緒にいるのが一番楽しいんです。

新しい出会いですか。

ええ、ニートだったり、若ハゲだったり、アーティストだったり。なんかこの30代の人たちの価値観とか考え方とかがすごく刺激的なんです。本当に最高で、カッコイイんです！

ありがとうございます。ジジイを褒めてくれるのは嬉しいのですが、あまり良い見本ではないような気もする。そのジジイたちに、今後の身の振り方とか相談しないのですか？

そうですね、飲みに行ったりしたときにします。でもみなさん自分勝手に生きて来られた方々なので、あんまりアテにならないです。

アハハハ！ステキ！じゃ、ジジイたち見て、安心しちゃうパターンですか？

はい、その通りです。なんかこれまで「ああしなきゃいけない」、「こうしなきゃいけない」の中で、すぐにストレスっていうか、面倒臭くなっちゃう自分がいまして、それをどうしたらいいんだろうって常々思っていたんです。それを相談したら「結局はね、イイの。笑ってれば」って。

ナイス答え！！

だから、これから自分はどう生きて行くんだろうっていうのはもちろんありますし、何がしたいのかも分かりません。でも今は楽しいし、楽しいことをやって行こうとは思っています。「早く仕事しろよー」とは、スケボー先輩たちに言われていますが。

可愛いがられてますね。でも先輩方がおっしゃってる通り、バイトくらいした方がいいのでは。

そうですねぇ、それも考えてはいるんですが、やっぱ仕事系はまだ危ないかなぁ。ちょっと今は充電中で。

危ないかなぁ…って（笑）。

本当にスケボーが楽しいですし、それにまつわる人たちも楽しい。街中を遊び場にしているとことろもカッコイイと思いますし。だから僕もいろんな遊び場や遊び方を探しているんです。

ピーターパンですね！じゃ漠然とでいいので、何かありません？やりたいこと。なんでもいいです。

ええっと…そうですね……、もう40近くなって、身体もキツくなってきそうだから、スケボー先輩たちの映像をきちんと残しておきたいです。

（笑）。よーく分かりました。長山さんのことよーく分かりました。本物はここにもいましたね。最後にスケボー以外でなにかありません？

明後日水族館でデートします。

お、彼女出来たんですか（笑）？

いえ、まだ付き合ってませんが、一昨日渋谷のアップリンクの横の駐車場でキスしました。

（笑）。もう付き合えるでしょ。

でも結婚とか言われたら、僕甲斐性ありませんし。

だから仕事すればいいじゃん（笑）。

あ、そうだ、すいません、小城くんのときみたいに、こちらで仕事募集していただけませんか？なんでもしますので。

ハイハイ分かりました。すげえインタビュー前とイメージ変わったです。

ありがとうございます。

※長山さんへお仕事くださる方はVICE Japanまでご連絡ください。御本人とお繋ぎ致します。

※「Who Are You?」では、インタビューを受けて下さる方を募集しています。お名前、ご年齢、性別、お住まい、ご職業、応募の動機を明記の上、こちらまでお問い合わせください。