FYI.

This story is over 5 years old.

トキシック・ショック症候群(TSS)は避けられないのか

「夫は、TSSについて聞いたこともないし、何も知りませんでした」と彼女はマンチェスター・イブニングニュースでインタビューに答えている。 「もし、誰かのパパがこの記事を読んだら、娘を救えるかもしれないんです」

2014年2月、13歳の少女が下痢と嘔吐に見舞われ、病院で診察を受けた。医師は、単なる胃の病気と診断し治療したが、ジェマ-ルイーズ・ロバーツさんは、タンポン使用の悪影響で3月1日に死亡した。家族は娘の死後、トキシック・ショック症候群が死因であった、と知らされた。

先月、SEPSIS(敗血症)とSEPTEMBER(9月)をかけた敗血症月間にちなんで、ジェマ-ルイーズさんの母親、ダイアンさんが、一年前を振り返り、トキシック・ショック症候群(TSS)は過去の話ではありません、とメディアを通じて伝えてくれた。

関連記事:タンポン使用の弊害 片脚を失った女性モデル

関連記事:タンポンで膝下を失ったモデル ローレン・ワッサー インタビュー

1980年代初頭、TSSへの不安が女性のあいだで広まった。 1980年だけでも、38件の死亡例を含む813件のタンポンに関わるTSS症例が疾病管理センターに報告されている。タンポン・メーカーは訴えを起こされ、当時人気の超吸収タンポン「Rely」は、すぐに市場から姿を消した。 1982年までに、タンポン・メーカーは、自社製品に警告を記載するよう法律で義務化され、ラベルには「タンポンは毒素性ショック症候群と関連が… 稀ですが、死に至る深刻な病気を引き起こす場合が…」と記載されるようになった。

Advertisement

しかし、TSSはなくなっていない。2015年初頭、ロサンゼルスのモデル、ローレン・ワッサーは、TSSの合併症により右膝下切断の後、Kotex社に対して訴訟を起こした。

ニューヨーク医科大学スクールの微生物学と病理学の教授である、フィリップ・ティエルノ氏によると「最初の悲劇から30年以上経過しているが、タンポン・ユーザーはTSS発症の可能性に配慮すべきです」さらに「疾患は稀であるが、タンポン・メーカーは彼らの製品をより安全なものにするために、いっそう努力すべきである」と付け加た。

1980年代、ティエルノ氏は、タンポンに使用される合成繊維(主にレーヨン)とTSSに関する研究の第一人者だった。タンポンを使用した女性の、発疹、嘔吐、発熱を取り上げた雑誌『コスモポリタン』の記事を妻に見せてもらったのがきっかけだ。「この特集に掲載されている女性たちには共通点がある」と妻に伝えた。「彼女たちは生理中で、タンポンを使用し、ブドウ球菌を持っていた」

妻は「あなたはブドウ球菌の専門家ではないでしょう?あなたには解明できないんじゃないの?」と応えた。

ティエルノ氏は、水に触れるとゼリー状になる合成繊維でできたタンポン「Rely」を検証し、ゼリー状の塊が黄色ブドウ球菌を繁殖させる温床になることを発見した。これこそ、問題の原因だった。

1980年代後半に、ティエルノ氏と同僚のブルース・ハンナ氏は、タンポン生産に使われる合成繊維とTSSとの関連性を発表した。材料の多くはすでに使用を禁じられていたが、ブドウ球菌が増殖し血液感染するのに理想的な環境を、合成繊維が産み出していたのだ。

黄色ブドウ球菌保菌者の33%に、TSS発症のおそれがある。

「ほとんどの人は、少しばかりのブドウ球菌を保持していても全く問題はありません」とオレゴン健康科学大学のジョン・タウンズ氏は説明する。 「しかし、多量のブドウ球菌を保持していれば、それはみるみる増殖します」「細菌が、あなたを病気にする毒素の生成を始めるのです」

タウンズ氏は明言する。「タンポンそのものがTSSを発症させることはありませんし、良好な衛生状態で使えば、大抵のリスクはなくなります。しかし、ロバーツさんのような若い女性には抗体がないので、TSS、具体的にはTSST-1、つまりブドウ球菌によって生成された毒素は致命的です」

齢をとるとともに、感染から身体を守るための抗体が生成されますが、「TSST-1に感染し、抗体がなければ、深刻な事態を引き起こす可能性があります」とタウンズ氏は強調した。

医師は、インフルエンザに罹患した思春期の少女に対して突っ込んだ質問をしなければならない。「生理中ですか?タンポンを使っていますか?使っているならば抜きなさい」。医師はそう対応すべきだった、とティエルノ氏。「TSSは、若者の疾患です」

彼は著書『The Secret Life of Germs(病原菌の秘密の生活)』の中で、16歳以下の少女の半分だけがTSST-1を撃退するための適切な抗体を持っている、と報告している。さらに、彼女たちが、タンポンを長時間着用した場合、例えば、金曜の夜から土曜の朝にかけて9~10時間の睡眠をとる、そんな状況でTSSのリスクは高まるそうだ。

タウンズ氏は、「殆どの人は、タンポンを入れると、長い時間つけたままにしています」それに対して 「膣に集まるブドウ球菌に繁殖する時間を与えないのが理想です」

Advertisement

年齢によって、防御抗体がある人にとっても、脅威が完全にないわけではない。2015年4月、ニューヨーク市の民主党議員であるキャロリン・マロニー氏は、タンポン使用の影響で死亡した44歳の女性の名前にちなんで、ロビン・ダニエルソン・フェミニン衛生用製品安全法と呼ばれる法案を提出した。

タンポンの素材になる合成繊維が、黄色ブドウ球菌の温床となるとわかっているのに、なぜ材料を綿にしないのか。ティエルノ氏は「それこそが、数十年、訴え続けた問題です」「綿100%のタンポンによるTSSの症例は一つもありません」と教えてくれた。

「殆どの人は、現在のタンポンは問題ない、と安心しています。それは80年代のことで、現在は違うと楽観していますが、そうではありません。今日この日に、私は死亡例を目撃しました」とティエルノ氏は語気を強めた。

13歳の娘をTSSで失った、ダイアン・ロバーツさんはも同じ意見だ。 「夫は、TSSについて聞いたこともないし、何も知りませんでした」と彼女はマンチェスター・イブニングニュースでインタビューに答えている。 「もし、誰かのパパがこの記事を読んだら、娘を救えるかもしれないんです」

女性が一生で消費するタンポンは約16,800個、という事実を知ったティエルノ氏は、全製品を綿製品にするように、タンポン・メーカに圧力をかけ続けるつもりだ。タンポンのラベルにせめて髑髏マークを追加するよう、彼はメーカに要求している。

ティエルノ氏は、1997年からタンポンの安全規制を推進してきたマロニー氏について、こう述べています。「彼女は、何度も何度も何度も、その法案を提出しています」。「男性が膣を持っていたら、最初にこの法案が成立していたでしょう。間違いありません」