先日のWBA世界ミドル級世界王座決定戦で、ロンドン五輪金メダリストの村田諒太がアッサン・エンダム(Hassan N’Dam N’Jikam)からダウンを奪いながら、1-2の判定で敗れ、その不透明な試合結果には批判の声があがっている。試合後、WBA会長は判定を不可解とし、再戦を要求。また、村田選手にはWBC、WBOから世界戦の打診もあるようで、ボクシング界は話題に事欠かない。

いつの時代も世間の注目を集めるボクシングだが、そのルーツは、拳に薄布すら巻かないステゴロ競技〈ベアナックル〉だ。イングランド発祥のこのスポーツ(?)は、数ある格闘技のなかでも、ひときわ暴力性が高い。試合結果がドローであろうとも、流血必至のこの競技が、18世紀には国民的スポーツとして隆盛を極めた。人気の高まりは英国王室をも飲み込み、貴賓たちが試合結果の速報を求めたほどだ。その後、数世紀を経た現在も、ベアナックルの歴史は続いている。しかし、血生臭さと黒い噂がつきまとう、荒くれ者たちの決闘は、陽の光もあたらない藁の塊のなかに押し込まれてしまった。

輩の殴り合いだと忌避されがちなベアナックルだが、あらゆるキャリアの持ち主が参戦して競技を盛り上げている。20歳年下の選手との殴り合いも辞さない46歳の弁護士ファイター、セス・ジョーンズ(Seth Jones)は、ドラッグの密輸で収監された結果、覚醒して法学を修めた変わり種だ。

ベアナックルの世界から、個性的なキャラクターも生まれた。血まみれの世界から身を引き、〈ミスター・ハッピー〉と名乗り、幸せな生活のハウツー書籍を出版したジェームス・ランバート(James Lambert)は、無敗を誇りながらも「結局、闘いでは幸せになれなかった」と自省する。

現行のベアナックルを支える興行団体〈B-BADプロモーション〉のアンディ・トップリフ(Andy Topliffe)は、ベアナックルを表舞台に再び、と奮闘を続けている。そんな彼の努力と、関係者の熱意が身を結び、150年ぶりに英国対米国のビッグマッチが実現した。

英国を代表する、ニューカッスルのジェームズ・マクローリー(James McCrory)には帰る家があり、そこには、彼を憂う恋人もいる。パンチドランカーのジェームズは、試合で記憶を失うリスクも承知している。それでも彼は、「彼女や母親にはわからないだろうが、俺には闘いが必要だ」と試合に挑む。

原題:Bare-Knuckle Boxing in the UK(2014)